彼が記憶を取り戻したのは、劇的な刺激があったからではない。
ただいつものように学校をサボり、顔なじみの婦人警官からの説教を受け流してやってきた裏山の斜面で寝そべっていただけ。
その時にふと思い出したのだ。自分には平凡な学生などではない、本物の人生があったことを。
それはまるで、親に頼まれていたお使いを思い出したような気軽さで。

「やれやれ。王ドロボウがこんな簡単に記憶盗まれてちゃ、立場がないね」

ジンは寝転んだまま、苦笑いを浮かべる。

「まったくだな。そんなことでは、先が思いやられる」

そこに響く、別の声。それは自分の元にやってきたサーヴァントのものなのだろう。
そう確信したジンは、体を起こす。
そこにいたサーヴァントは、黒いマントとシルクハットを身に纏っていた。
口元には、立派なカイゼルひげ。まさに、絵に描いたような「怪盗」である。
ただし、体格が2頭身で顔がほぼ球形でなければ、だが。

「えーと……。狸?」
「失敬な! 私は22世紀の科学で作られた、猫型ロボットだ!」

とぼけたジンの言葉に、サーヴァントは声を荒げて訂正する。

「猫かあ、そいつは失礼。しかし聖杯なんていうから神秘やら魔法やらをひっさげた英雄が出てくるかと思いきや、ロボットとはね。
 まあ俺からすれば、魔法も科学も不思議なものってことには変わらないんだけど」
「たしかに、発達しすぎた科学は魔法と見分けがつかないという言葉もあるな。
 それはさておき、普通の聖杯戦争ならたしかに私のような科学の化身はお呼びじゃない。
 だが今回の聖杯は、そういう輩も分け隔て無く召喚しているようでな」
「ふーん。何か理由があるのかな。まあ、聖杯の思惑がどうだろうと俺には関係ないか」
「先に話を振ったのはお前だろうに……」
「そうだっけ?」

あきれ半分のツッコミにも、ジンは笑顔だ。

「それより、自己紹介がまだだったよな。俺はジン。職業は泥棒さ」
「ふむ、ジンか……。私はエクストラクラス、盗人(シーフ)のサーヴァント。
 真名を怪盗ドラパンという。よろしく頼む」
「ああ、よろしく。ケチなパーティーの主催者様が招待状を一人分しかくれなくて、相棒を連れて来られなかったんでね。
 ここにいる間、代わりの相棒としてしっかり働いてもらうぜ」

二人は、しっかりと握手を交わす。

「さて、ジンよ。この聖杯戦争、お前はどう戦うつもりだ?」
「言わなくてもわかるんじゃないかな。俺たちは泥棒だぜ?」
「やはりそう来るか」

ドラパンが、にやりと笑う。つられるように、ジンも笑う。

『聖杯を盗み出す!』

二人の声が、完全に重なった。


「まあ、当然の考えだな。我々は泥棒だ。戦うより盗むのが本業だ」
「その通り。すげえお宝を目の前にぶら下げられて盗まないなんて、泥棒の名が廃るってものさ。
 俺たちが聖杯を盗めば戦争も続行不可能。みんなが争う理由もなくなって一石二鳥ってもんだ。
 やっぱり時代はラブ&ピースだよ。戦争なんかしてる場合じゃないぜ」
「だがジンよ、どうやって盗み出す。私は聖杯によってこの地に召喚されたが、だからといって聖杯のある場所がわかるわけではないのだ」
「それを考えるのが楽しいんじゃないか。お宝自体の価値ももちろんだけど、それを盗み出すまでの過程も大事だろ?」

目を輝かせて、ジンは言う。
その表情はあまりに無邪気で、ただでさえまだ若い彼をより幼く見せる。

「さて、そうと決まれば……」

ジンはカバンからノートを取り出すと、ページを1枚破いて筆を走らせ始めた。

「予告状か? しかし、どこに送りつけるんだ。
 聖杯と同様、管理者もどこにいるかわからないというのに」
「どうせ何かの方法で、主催者様は俺たちを監視してるんだろう。
 だったら、どこに出してもきっと届くさ」

予告状を書き終えると、ジンはそれを紙飛行機に折る。
そして、無造作に空へ放り投げた。



万能の願望機・聖杯いただきます!
HO-HO-HO!

王ドロボウ&大泥棒


【クラス】シーフ
【真名】怪盗ドラパン
【出典】ザ・ドラえもんズ 怪盗ドラパン謎の挑戦状!
【属性】混沌・中庸

【パラメーター】筋力:D 耐久:C 敏捷:B 魔力:E 幸運:B 宝具:C

【クラススキル】
奪取:A
他者の持ち物を自分のものとするスキル。
Aランクともなれば、一瞬の隙さえあれば盗み取ることができる。

気配遮断:B
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】
仕切り直し:B
戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。

単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
マスターを失っても、Cランクならば1日は現界可能。

【宝具】
『万物よ、欲望に染まれ(キンキンステッキ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-5 最大捕捉:10人
放出する光に当たった者を、金色のブロンズ像に変えてしまう杖。
一度ブロンズ像に変えられてしまえば、ドラパンが任意で解除するかこの宝具が破壊されない限り元には戻れない。
効果範囲はさほど広くないため、危険を冒して敵に接近しなければ有効活用できないのが難点。
その本質は「物質変換装置」であるが、他者に観測されている範囲が少ないため、効果が大幅に限定されてしまっている。

【weapon】
○シルクハット
自身に対して有害な電波をシャットアウトする効果がある。

○マント
ヒラリマントになっており、飛び道具を跳ね返せる。

○ヒゲ
1本1本が分身となる。解除すればまたドラパンの顔へと戻ってくる。

【人物背景】
フランスで名を馳せる義賊。
悪の科学者・ドクターアチモフに親友の少女・ミミミを人質に取られ、「親友テレカ」を奪うためにドラえもんズと対決。
しかし最終的には和解し、共にアチモフを打倒した。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯を盗み出す。


【マスター】ジン
【出典】王ドロボウJING

【マスターとしての願い】
聖杯を盗み出す。

【weapon】
○隠し刀
普段は左腕の袖に隠してある刀。
手に持つのではなく、固定具で腕に取り付けられている。
切れ味はいいがあくまで常識の範囲内であり、体が金属でできた敵を斬れずに苦戦したこともある。

【能力・技能】
高い身体能力を持ち、戦闘技術も備えている。
相棒の鳥・キールを右腕に融合させることで強力なビームを放つ「キール・ロワイヤル」という必殺技を持つが、今回はキールがいないため使用不能。

【人物背景】
輝くものは星さえも、貴きものは命さえ盗むと言われる王ドロボウの末裔。
様々なお宝を狙い、キールと共に世界中を放浪している。
今回はまだ王ドロボウとしての活動を始めて日が浅い頃、陽気さが目立つ時期から参戦している。

【方針】
聖杯を見つけ、盗む。他の参加者は基本的に無視。

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最終更新:2015年12月08日 18:31