科学の発展。


それは即ち人類の歴史の発展とも言える。


科学がより文明を発達させるとともに、人類の営みはより高度なものへとなっていった。


しかし。


科学は、人類に様々な恩恵をもたらしたその影で。



人類に、そして世界にとって大きな災いもまた、齎しているのである。





◆◇◆




「せ、セイバアァァッ!!」


少年の絶叫が、廃ビルに鳴り響く。
その眼前では、重厚な甲冑に身を包む一人の騎士―――少年のサーヴァントが、最期の時を迎えようとしていた。


「…………」


騎士の前に佇むのは、石灰色をした無機質―――言うなれば複数の石が組み合わさり人の形を成している―――な死神だった。
その死神は、右手に当たる部位で握りしめていた紅の十字架を騎士へと静かに向ける。
次の瞬間。
十字架は死神の手を離れると同時に、まるで意思を持つかのように騎士の背後へと浮遊し回り込み、その身を拘束した。
中空で、騎士を文字通り十字架へと磔にしたのだ。


「クッ……!?」


騎士は残る力の全てを振り絞り、脱出を試みる。
しかし、それよりも早く死神が動いた。
左の掌を騎士へと向け……


「やれ、ランサー」


主の声と共に、その掌から紫光のラインが走った。
同時に、左腕を中心に光の『腕輪』らしきオブジェクトが出現する。
形容するならば、三次元コンピュータグラフィックスで用いれる多角形―――ポリゴンが一番近い形になるだろう。


「あ……アァァァァァッ!!??」


放たれたラインに身を貫かれ、騎士は絶叫した。
この攻撃でもたらされたのは、ただ槍や剣で刺し貫かれたという肉体的な痛みだけでない。
身体だけではなく……己の中にある、大切な何かを奪われた喪失感。
その何かが何なのかすらも忘却してしまいそうになる虚無感。
自分という存在が薄れ消えゆく……その様な感覚に陥る、精神的な苦痛でもあった。


「…………」


そして、死神が手を下げ腕輪が完全に消滅した時。
騎士の姿は光の粒子と化し、虚空に消え去った。
少年の体が、膝から崩れ落ちる。
頼りにしてきたパートナーが、あまりにも呆気なく消えさってしまった。
絶対に勝ち上がろうと決めた仲間が、こうも簡単に……


「く……くそぉっ!!」


怒り・悲しみ・焦燥。
相棒の敗北から来るあらゆる感情を胸に、少年は目の前に立つ死神と、その後方に控える死神の主に走っていった。
馬鹿な行為なのは分かっている。
それでも、こうせずにはいられなかった。
散っていった従者の為、せめて一矢報いる為に。

少年は拳を振り上げ、死神の主に渾身の一撃を……



――――パァンッ。



「!?…………」


打ち込むことは、叶わなかった。
その拳が死神の主を捉えるよりも早く、その額が撃ち抜かれたのだから。
紅い血染めの花模様が、コンクリートの床を鮮やかに彩る。
今ここに、一人の主従が聖杯戦争から脱落したのだった。


「ふん……呆気ないものだな。
 この程度の連中ばかりならば、こちらとしても楽なものだが……」


拳銃を懐にしまい、死神の主は淡々と感想を述べた。
雄々しく剣を振りかざした騎士の勇姿も、決死の覚悟を見せた主の最期も。
何ら感じるところなど、彼―――アルバート・ウェスカーには無かった。
ただ、邪魔な障害が一つ消えた……彼にとっては、それだけでしかなかったのだから。


「…………」


傍らに立つ死神もまた、それは同じであった。
そもそも、この死神には感情というものがはじめから無い。
あるのは唯一、定められた目的を果たすという思考回路のみ。
故にこの戦いは、ただその障害を排除したというだけだけに過ぎなかった。


「まあいい。
 どの道、何者が相手であろうとやるべき事は変わらん……行くぞ、ランサー」


死神に霊体化を命じ、ウェスカーは静かに廃ビルを後にした。
始末すべき敵はまだ多い……早急に見つけ出さねばならない。
全ては、内に秘めた野望成就の為。
選ばれし人類のみによる秩序が築かれた新世界を創造する為。

自身と同じ……『ウィルス』に選ばれ生き残った、人を超えた完璧な肉体と頭脳を持つ人類のみが生きる世界を創り出すために。


(万能の願望器……その力が偽りなき本物ならば、それが成せる。
選ばれし人類のみが立つ新世界……私がその頂点に立つのだ)


発達した科学により生まれた災厄―――ウィルス兵器。
その力により人を超える力を手にする事に成功した男……アルバート・ウェスカー。
彼は紛れもなく、科学により生み出された『悪』であった。


「…………」


そして彼が従える死神もまた、科学が生み出した災厄が形を成したモノであった。
その名を、スケィス。
モルガナ八相が第一相……『死の恐怖』。
発達した科学が生み出した電子世界において出現した、本来存在してはならないイリーガルな因子の化身。
聖杯戦争という異邦の地に呼び出されても尚、スケィスの目的に変化はない。
主にして半身たる自身の大元―――モルガナ・モード・ゴンの思想通り、究極AIアウラを滅ぼす事。
その為に、聖杯の力を利用するのみだった。


アルバート・ウェスカーとスケィス。

科学の発展が生み出した二人の死神は、ただ己が目的を果たすべくその聖杯戦争でその凶刃を振るう。


【クラス】
ランサー

【真名】
スケィス@.hack// Vol.1

【パラメーター】
筋力A 耐久B 敏捷D 魔力E 幸運E 宝具EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:-
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
ただしスケィスはランサーのクラスに強引に当てはめられているためにシステムが認識しておらず、このスキルが機能しない。

【保有スキル】
戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

【宝具】
『禍々しき波―死の恐怖―(データドレイン)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大補足:1~100
モルガナ八相に付与されたイリーガル能力が宝具として昇華したもの。
発動と共にランサーの左腕を中心に『腕輪』の様な光のオブジェが出現し、そこから敵目掛けて紫光を放つ。
この紫光に貫かれたものは、その肉体を構成する『データ』を奪われ消失してしまう。
それは肉体的なダメージだけではなく、記憶や経験・能力といった自身に内在していたモノまでも削り取られる事を意味する。
この宝具を受け喪失したモノは、元凶であるランサーを倒さない限り回復する手段はない。
ただし、対魔力スキルのランク及び幸運値によっては単なるダメージ判定のみで済む場合もある。
また、この宝具の乱用はランサーとリンクしているマスターの肉体にもダメージを与える場合がある。
従来のシステムを逸脱したイリーガルな仕様である為、その反動で生じるバグデータが使用者を侵食する恐れがある為である。

『不死属性(プロテクト)』
ランク:- 種別:- レンジ:- 最大補足:-
モルガナ八相に付与された『不死』という属性が宝具として昇華したもの。
ランサーはこの属性の為に無限の体力を持つため、通常の如何なる攻撃を受けても倒すことはできない。
唯一撃破する手段は、一定値以上のダメージを与えた上で、何かしらの方法を用い不死属性を解除するのみ。
ただし、ランサーはこの聖杯戦争のシステムに強引にサーヴァントとして当て嵌められた影響で、この宝具が効果を成していない。

【Weapon】
『真紅のケルト十字』
先端が槍の如く鋭利な形状になっている、真紅に染まったケルト十字の杖。
直接手に取って振るう他、ランサーの意思である程度の距離ならば遠隔操作が可能。
また、敵の背後より拘束し磔にする事も出来るが、絶対の拘束ではなく相手の力次第では解かれる場合もある。

【人物背景】
ネットワークゲーム『The World』に出現した、『モルガナ八相』と呼ばれるウィルスバグモンスターの一体。
その正体は、The Worldの管理プログラムであるモルガナ・モード・ゴンが、
システム内に隠された八つの禍々しき波『八相の碑文』を因子として生み出した化身。
元々The Worldはただのネットゲームではなく、開発者であるハロルド・ヒューイックが
「限りなく人間に近い究極のAIを育成するため」に作り出した人間の思考サンプリングシステムだった。
そしてその中で究極AI『アウラ』が彼の考えた通りに誕生しようとしていたのだが、
人間の思考をサンプリングする内にモルガナ自身が人間に近い自我を持つようになってしまった。
モルガナは、アウラが誕生することで自分が不要の存在となり死ぬことを恐れ、暴走。
創造主であるハロルドの精神を狂わせネットに封じ込め、
そしてアウラを滅ぼす為に、直接手を下せぬ自身に代わる化身としてモルガナ八相を生み出したのである。
スケィスはその第一相であり『死の恐怖』の通称を持つ。
そしてこの聖杯戦争の舞台である電脳世界においては、元々システムを逸脱したイリーガルなバグ存在である
スケィスをランサーという枠組みに強引に当てはめているため、一部のスキルや宝具が機能しないという問題が生じている。

【サーヴァントとしての願い】
究極AIアウラの消滅。


【マスター】
アルバート・ウェスカー@バイオハザードシリーズ

【マスターとしての願い】
自らと同じくウィルスに選ばれた人類による、新たな新世界の創造。

【weapon】
『サムライエッジ』
ベレッタM92FSをベースにカスタムアップされた拳銃。
日本刀の刃を連想させる特徴のあるブリガディアスライドと、製作者が日系人であることがその名の由来。
装弾数は少ないものの、一発の威力は高くなっている。
また隠密的作戦を得意とするウェスカーに合わせ、レーザーサイトやサプレッサーなどの拡張パーツの装着に重点を置いた改造がされている。

【能力・技能】
ウィルスにより強化された、常人を超えた身体能力を持っている。
それによる拳法にも似た格闘術を繰り出し戦う他、特殊部隊隊長という経歴から銃器の扱いにも長けている。
また、極めて冷静沈着で鋭い観察力と洞察力を持ち、生物工学に精通する高い知識がある。

【人物背景】
ラクーンシティ警察署特殊部門『S.T.A.R.S』の総隊長であり、同隊アルファチームのリーダー。
しかしその本性は、製薬会社アンブレラの諜報・工作員である。
彼はアンブレラが開発した「T-ウィルス」によって生み出されたバイオ兵器の実戦データを収集する事を目的として、
S.T.A.R.Sのメンバーがバイオ兵器と殺し合いを行う様に、実験場である洋館への調査という名目で誘導を仕向けた。
そしてこの際、彼は友人より受け取っていた新型ウィルスを自らの肉体に注射し、その死を偽装。
生存者達の目を欺き復活を遂げると同時に、ウィルスによって超人的な身体能力を手にしたのであった。
同時に、彼はその激しい上昇志向からアンブレラ社にも見切りをつけており、
手土産としてアンブレラ社の研究データを敵対組織H.C.Fに持ち寄り、離反。
以後はその幹部として動いていたのだが、アンブレラ社が崩壊を遂げた事をキッカケに、アンブレラ創始者であるスペンサーの探索に移る。
そしてスペンサーを発見すると、彼は自身の出生の秘密を聞かされた。
『世界各地から才能ある子供を集めて『ウェスカー』というコードネームを与え、
完璧な肉体と頭脳を持つ従順な被験者に育て上げるべく、アンブレラによる庇護や極秘裏の監視下で英才教育を施す。
その後、全員のウェスカーに様々な手段で謎のウィルスを投与し、その経過を見る。
そうして、スペンサー自身がウイルスによる強制進化で新人類の創造主となる為の実験台とする』
この事実を知ったウェスカーは、自身がこれまでスペンサーの掌の上で踊らされていた事を知り愕然とした。
しかし同時に、彼はその野望に引かれ、スペンサーを自らの手で殺害。
自らがスペンサーに変わり、新世界の創造主となる事を決意する。
その後は野望成就の為に世界中で活動を続け、新型ウィルス「ウロボロス・ウィルス」の作成を開始。
適性のあるものには超人的な力を与え、適性のないものはクリーチャーと化すこのウィルスを世界中に散布する事で目的を果たそうとする。

【方針】
聖杯を手にし、野望を成就させる。

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最終更新:2015年12月09日 18:41