外部から光が侵入せず、光源は内部に施されている照明のみ。
 明るいとは言い難いクラブ崩れ廃墟で女を侍らかせる白い髪の男が一人。
 瞳は赤に染まっており、それは疲れによる充血ではなく生まれながらにしての症状。

 アルビノ――世間一般にその記号を付けられた男の周りには酒が種類問わずに転がっている。
 瓶から升まで国境を問わず、一部には中身がまだ残っているにも関わらず捨てられていると同義の扱いだ。
 男が座っているソファーには一切溢れていない辺り、自分が良ければ全て良し、と生きてきた存在なのだろう。

 酒と女。
 二つの臭いが入り混じり、日の出を浴びるような世界に相応しくない夜の臭気が辺りを包む。


 だが、足りない。


 この空間を構成する香りの中で、重要な要素が抜けている。
 酒と女はその通りだ。まさしくこの二つがこの部屋を表す材料となる。
 その中で――表の世界に似合わない吐溜の汚れだ。


 血、血、血。


 立ち去ることを躊躇しない程の血。
 鉄の臭いを超越した肉が削ぎ落ち、腐り溶けたような目を背けたい現実の香り。

 撒き散っている液体は酒だけではない。
 寧ろ割合は低く、構成の多くが赤と黒を混ぜ合わせたキャンパスに不必要な色。
 公園の砂場に穴を掘り、水を注いで創り上げた小さな池に相当する程度の量はあるだろう。


「あぁ空になっちまった」


 空いたグラスを勢いで机に叩き付けるように男は置いた。間髪入れずに足も下ろしている。
 口が曲がっても上品とは言えない態度で退屈そうに天を見上げる。あるのは間接照明だけ。

「酒の味は進歩してるようだがなぁ……なんだよ現代ってのは、クソもつまらねえじゃねえか」

 この世に対し偉そうな口調で不満を零すと、何かが落下し男の足元に転がる。

 首だ。

 男が侍らかしていた女は既に死人と化していた。ならば男は殺人鬼なのか。一概には言えない。
 このアルビノは狂っている。しかし本人に言えば嫌われそうだが己の中に美学を持っている人種に分類される。
 何が起きたかは不明だが、女が男の逆鱗に触れたか、男が退屈しのぎに殺してしまったのだろう。


 踵で頭部を蹴り飛ばし、少しの間が経過した後に破裂音が響く。
 空気を斬り裂くような鋭い音と、一度聞いたら耳から離れないような鈍い潰れた音と共に。

 更に空間が血液の泥と化した中で、グラスの中で氷が回る音が聞こえてくる。
 カウンターに座り込んでいる――これも白髪の男だが、笑みを浮べながらグラスを回している。

「あ? 何してんだよ槇島」

 アルビノの男は首だけを後ろに倒し込みだらしない体制でカウンターに居る男に声を飛ばす。
 視界には先程蹴り飛ばした首が映るも、関係無いと謂わんばかりに全く触れていない。


「この女は聖杯戦争に招かれていない人間だ。彼女が消えたところで物語はどうなると思う?」

「知るかンなこと。死んじまえばそれで終わっちまうのが人間だろ」


 槙島と呼ばれた男の言葉を雑に処理した男は視線を止め、首を戻し机の上にある生きた酒を掴む。
 グラス並々に注ぎ、途中に氷が無いことに気付くも面倒になってしまい口に含んでいた。

「『私は血で書かれた本のみ信じる』ニーチェの言葉だがいいと思わないか」

「――そうだな」


 酒を平らげたアルビノの男が槙島の言葉に返しを行うべくグラスを置く。もう空になっているそのグラスには光が反射している。

「血が流れてんなら結構じゃねか。少なくともクソの蓄えにもならねえ会議で掲げられた理想よりは信じれる」


「聖杯と呼ばれる唯一無二の願望器を巡り一人だけが願いを叶える物語だ。
 これを書き上げるには大量の血液――多くの人間が必要となるだろうね。今君が殺した女の血も聖杯戦争を彩る大切な血肉となる――この物語に関しては」


 この声を聞いているのはアルビノの男一人だ。空間に存在する生命は二人だけである。
 しかし槙島の言葉は大衆向け……多くの人間を引き込むような謎の魅力がある。
 話している内容は一般に公開出来るような内容ではないが、群衆を煽る革命家のように言葉に輝きを持たしている。
 最もこの槙島と呼ばれる男が革命家を気取るような人間では無いのだが。


「何が聖杯戦争だ、何が物語だよ。世の中に英雄や救世主と呼ばれる人間ってのはいるだろ? そいつらは主役だ。
 けどよ、テメェの人生に英雄が現れても所詮は英雄止まりの他人だろ。主役はテメェが貼るモンだ。
 今死んだ女がNPCだろうが関係無え。此処でこいつの生命が潰れりゃ誰も続きを書くことをしねえし望まねえ、それだけだ」


「そうだね――じゃあ僕が抜けた世界ではどうなっているか」


「それでも廻るのが世界ってモンだろ」


「その通りだ……あぁ僕はこの世界で何をしようか」


 白い髪を持った男達の会話は繋がっていないようなやり取りだが、続いているらしい。
 世界の歯車と軸の話をする中で、主題は槙島が居た世界の話になったようだがアルビノの男はまたも雑に終わらせる。


 槙島が言葉を流すこの世界――聖杯戦争での目的と行動。
 願いを叶える権利など空想上の出来事でしかない幻想が現実となった空間で彼は何をするのか。

 答えは出ているのかもしれない。
 血で物語が書き綴られるのならば、血を流すことが登場人物の役目である。
 明確なソレは存在しないかもしれないが、槙島は世界の裏で聖杯に辿り着く男に成り得るかもしれない。


「選ばれた人間もそうでない人間もこの世界で生きていることには変わらない……どんな物語を彩るだろうね。

 君はどう思う――アサシン」


 アサシン。
 そう呼ばれたアルビノの男は「あ?」と言葉を漏らすもそれ以上は不満を告げなかった。


「俺は俺がやりたいように動くぜ槙島ァ。大体勝手に決められた他人がご主人様なんて気に食わねえ。俺はあの人の牙以外になるつもりは無えぞ」


「構わないさアサシン――こんな機会は二度と無い。なら聖杯の真意について触れようじゃないか」


 夜の主役は吸血鬼と犯罪者。
 聖杯戦争の主役は解らない。彼らの物語はこの先から綴られないかもしれない。

 ただ一つ言えるとすれば。


 その結末に血は必要である。


【マスター】
 槙島聖護@PSYCHO-PASS


【マスターとしての願い】
 不明。


【weapon】
剃刀


【能力・技能】
 格闘術を極めており、華奢な見た目からは想像出来ない程近接戦闘に長けている。
 銃火器の心得も得ており、単純な白兵戦ならあば人間相手には圧倒出来る能力の持ち主。
 彼の纏う空気と操る言葉は人々の心に入り込み掌握するカリスマ性をも持ちえている。
 また免罪体質の持ち主であるが、聖杯戦争で活かされるかどうかは未知数である。

【人物背景】
 シビュラシステムの誕生以降、最悪の犯罪者と呼ばれる。
 くだらないシステムに決められた世界に意義を唱え、人間としての意味を求めて行動していた。
 一説によれば彼の最期は嗤っていた。

【方針】
 聖杯に縋る願いは不明である。
 まずは表舞台に姿を表さないで裏の世界に徹し情報を集めるだろう。
 NPCにも興味を抱いているため、最終的には大掛かりな行動を取るかもしれない。


【クラス】
 アサシン


【真名】
 ヴィルヘルム・エーレンブルク@Dies irae -Acta est Fabula-


【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力C+ 幸運E- 宝具A+


【属性】
混沌・悪


【クラススキル】  
 気配遮断:D  
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。


【保有スキル】


 エイヴィヒカイト:A
 人の魂を糧に強大な力を得る超人錬成法をその身に施した存在。
 本来ならばこの存在を殺せるのは聖遺物の攻撃のみだが聖杯戦争では宝具となっており、彼を殺すには宝具の一撃が必要となる。
 また、喰った魂の数だけ命の再生能力があるが制限されており、魔力消費を伴う超再生としてスキルに反映された。
 A段階に達すると己の渇望で世界を創造する域となる。


 直感:B
 つねに自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
 視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。


 戦闘続行:A


 呪い:A
 ある人物から彼の二つ名である魔名と共に送られたもの。
 その内容は「望んだ相手を取り逃がす」
 本人が望めば望むほど、その相手は横槍などにより理不尽に奪われていく。


【宝具】


『闇の賜物(クリフォト・バチカル)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:1
エイヴィヒカイトの第二位階「形成」に届いた者にしか具現化出来ない物
彼の其れは『串刺公(カズィクル・ベイ)』の異名を持つワラキア領主、ヴラド三世の結晶化した血液が素体。
能力は 「血液にも似た赤黒い色の杭を全身から発生させる」。
この杭は、突き刺した対象の魂や血を吸収し、所有者に還元する効力を持っている。
飛び道具、武具、空中での移動など様々な用途に応用出来る。
この聖遺物との親和性は他のエイヴィヒカイトとは群を抜いている。
クリフォトとはカバラの『生命の樹』と対をなす『邪悪の樹』の名であり、バチカルはその最下層を示す。


『死森の薔薇騎士(ローゼンカヴァリエ・シュヴァルツヴァルド)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000
エイヴィヒカイトの第三位階、自身の渇望の具現たる「創造」能力。
元となった渇望は 「夜に無敵となる吸血鬼になりたい 」 。発現した能力は「術者を吸血鬼に変えて、周囲の空間を夜へと染め上げ、効果範囲内に存在する人間から力を吸い取る」こと。
渇望通り、吸血鬼と化して人間から精気を吸い上げる能力である。
発動すると周囲一帯が固有結界に似た空間に取り込まれ、例え昼であっても強制的に夜へと変わる。もっとも、夜時間帯に重ねがけした方が効力は格段に上がる。
この「夜」に居る人間は全て例外なく生命力をはじめとした力を吸い取られ、奪われた力の分、
この空間の主である吸い尽くした力を己の糧とし、それを抜いても己のを強化する。また、夜空には紅い月が浮かび上がる。
相手を弱体化させ己を強化し続ける卑怯な理だが弱点として【吸血鬼の弱点ソノモノが彼の弱点となる】


※まとめると月が紅い間は周囲の力(生命から魔力まで何でも)吸い取って自分の力にします。
 当然魔力を吸っているため枯渇の心配は無いし、自前なのでマスターの助けも要りません。
 デメリットはアサシンの癖に発動したら隠密何て到底無理なこと。極限に目立ちます。
 また、吸血鬼の弱点がアサシンの弱点となるので最悪「誰からでも」殺されてしまう心配があることです。


『???』
ランク:? 種別:? レンジ:? 最大捕捉:?
彼の中に眠るナニカ。性別、数――総てが不明。


【人物背景】
 聖槍十三騎士団第四位、ヴィルヘルム・エーレンブルグ=カズィクル・ベイ。白髪白面のアルビノの男。
 その体は日光を始めとした光全般に弱く昼はほとんど出歩かないが、逆に夜の間には感覚が鋭敏になるという吸血鬼じみた体質を持ち、
 それを自らのアイデンティティとしている。戦闘狂であり彼の歩んできた道には屍の山が築かれている。


 元は貧困街の出身であり父と姉の近親相姦で生まれ、「自分のちが汚れているならば取り替えればいい」と感じる。
 その後彼は親を殺しこれまでの人生とは別に暴力に溢れた生活を送るようになる。
 其処で遭遇したのが白き狂犬、其処で出会ったのが黄金の獣。そして彼の人生は世界の因子に成り得る奇妙な物語に巻き込まれる。


 なお、仲間意識は強く同じ騎士団の仲間を家族のように思っている。


【願い】
邪魔な奴は殺して樂しんで城へ帰還する。

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最終更新:2015年12月14日 20:55