僕は小山田まん太。
これは、僕が体験した不思議なお話だ。
◇ ◇ ◇
その夜、僕は墓地を走っていた。
好きこのんで、夜の墓地なんておっかないところを移動してたわけじゃない。
塾からの帰りが遅くなったから、近道しようとしてたんだ。
けどそこで僕は、恐ろしいものを見てしまった。
それは筋骨隆々の大男が、別の男の胸を貫いている光景だった。
「ひ……!」
「うわあああああ!!」
僕があげようとした悲鳴は、別の悲鳴にかき消された。
悲鳴を上げたおじさんは、悲痛としかいいようがない表情でその場から走り去っていく。
割と近くにいた僕にもまったく気づいていなかったようで、動揺の度合いはかなり高かったみたいだ。
残されたのは僕と剣を持った男。そして男の近くにいた、いかにもきつそうな顔立ちの女性。
刺された方の男は、いつの間にか綺麗さっぱり消えてしまっていた。
「あら、見てたの? 運のない坊やね。
セイバー、口封じにやっちゃいなさい」
「はっ」
僕の存在に気づいた女性が、男に命令する。どうやら彼女の方が、立場が上のようだ。
……って、冷静に分析してる場合じゃない! 僕、殺されそうになってるじゃないか!
一刻も早く逃げないと! 葉くんがいれば守ってくれるだろうけど、今はいないし……。
あれ? 葉くんって誰だ? 学校にも塾にも、そんな名前の知り合いは……。
いや、違う。なんで忘れてたんだ。葉くんは、僕の親友じゃないか!
その瞬間、僕の頭に辞書で殴られたような衝撃が走った。
今まで忘れていた本当の記憶が蘇り、おまけに知らないはずの知識まで流れ込んでくる。
聖杯戦争? サーヴァント? なんだかずいぶん厄介なことに巻き込まれたらしい。
そうこうしているうちに、左手の甲になにやら刺青というか痣というかそんなものが浮かび上がってきた。
僕の中に埋め込まれた知識が、それが令呪というものだということを教えてくれる。
「あの子、マスターだったの!? だったら、なおさら放置しておくわけにはいかないわ。
セイバー、サーヴァントが来る前に殺しなさい!」
マスターの女性に指示されて、セイバーが改めて剣を構える。
そうだ、状況はまったく好転していない。むしろ相手の殺意が若干高まっている。
サーヴァントは……僕のサーヴァントはまだなのか! お願いだから、早く来て!
その時……
カラン、コロン
奇妙な音が、墓地に響いた。
「なんだ……?」
僕を殺そうとしていたセイバーが思わず手を止め、周囲を見回す。
カラン、コロン
カランカランコロン
また同じ音が、今度はさっきよりはっきりと響く。
「これ……下駄の音?」
僕は思わず、思ったことをそのまま口にする。
それを聞いた女性は、顔をこわばらせた。
「あの子のサーヴァントが来たのかもしれないわ! セイバー、早く!」
「はっ!」
今度こそ、セイバーが剣を振り下ろそうとする。
だけど、やっぱりそれは実行されなかった。
「悪いけど、もう遅いよ」
闇の中から、彼はゆっくりと姿を現した。
下駄を鳴らしながら近づいてくるその人影は、まだ顔に幼さを残す少年だった。
「あなたがその子のサーヴァントってわけ?」
「ああ、そうだ」
「そう……。でも遅かったのは、あなたの方よ。
そんな悠長に歩いてて、間に合うわけがないでしょう!」
女性の声を合図に、ついに剣が振り下ろされた。
もうダメかもしれないと、僕は観念する。
けど、僕の体が切り裂かれることはなかった。
「リモコン下駄!!」
その刹那、何かが二つ宙を舞った。それはセイバーの持つ剣を弾き、僕の命を救った。
それがさっきまでカラコロ音を立てていた下駄だと僕が気づいたのは、空中でUターンした下駄がセイバーの顔面に炸裂した瞬間だった。
「ぐうっ……!」
顔にきつい一撃を叩き込まれ、さすがにセイバーはひるんでいた。
そこへ、僕のサーヴァントが追い打ちをかける。
「髪の毛針!」
針と化した無数の髪の毛が、セイバーに襲いかかる。
そうとう痛いのだろう。セイバーは苦悶の表情を浮かべ、片膝をついた。
「何やってるのよ、セイバー! そんな子供に!」
女性がヒステリックな声色で叫ぶ。だけど、そんなことで状況は好転しない。
さらなる追撃が、セイバーを襲う。
「指鉄砲!!」
今度は、指先から光る弾丸が発射された。
それは今までの攻撃を上回る威力らしく、セイバーに命中したとたんに爆発を起こした。
連続する爆発。そしてそれがやんだ時には、セイバーの体は跡形もなく吹き飛んでいた。
「ひ、ひぃ……」
信じられないといった表情で、女性がその場にへたり込む。
僕のサーヴァントは、無表情でそんな彼女に近づいていった。
「ここで逃げてわずかに希望を繋ぐのと、最後の抵抗をして確実に死ぬのと、どっちがいい?」
「いやあああああ!!」
よほど怖かったのか、女性は絶叫を残してその場から去って行った。
「うーん、敵とはいえちょっと脅かし過ぎちゃったかな」
ポリポリと頭をかく彼に、僕はおそるおそる声をかけた。
「あのー……」
「ああ、ごめん。自己紹介をしてなかったね。
僕は君と組む、アーチャーのサーヴァントだ。よろしく」
「小山田まん太です。よろしく」
これが僕とアーチャー……鬼太郎さんとの出会いだった。
「ゲッ ゲッ ゲゲゲのゲ」という歌が、どこかから聞こえてくる気がした。
【クラス】アーチャー
【真名】鬼太郎
【出典】ゲゲゲの鬼太郎(アニメ第5シリーズ)
【属性】混沌・善
【パラメーター】筋力:D 耐久:B+ 敏捷:C 魔力:A 幸運:C 宝具:A
【クラススキル】
対魔力:C(B)
魔術に対する抵抗力。
本人のランクはCだが、宝具である「霊毛ちゃんちゃんこ」の力で1ランクアップしている。
単独行動:E
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
本来はもっと高くてもおかしくないが、高い不死性の代償で低ランクに抑えられている。
【保有スキル】
妖怪:A
生者にして生者にあらず。死者にして死者にあらず。
科学では語ることのできない存在。
種族ごとに固有の術を持ち、アーチャーは「髪の毛針」「指鉄砲」「体内電気」などの術が使える。
また対峙するサーヴァントが科学に精通しているほど、その攻撃によって受けるダメージが減少する。
騎乗:B-
乗り物を乗りこなす能力。
アーチャーは神秘性を持つ乗り物ならばBランクの効果を発揮できるが、神秘性がないものは自転車を乗りこなすのがやっとである。
心眼(偽):B
直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。
戦闘続行:EX
名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
アーチャーは後述の宝具の力により、規格外の継戦能力を持つ。
【宝具】
『霊毛ちゃんちゃんこ』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1-70 最大捕捉:5人
幽霊族が死に際に残すという「霊毛」を編んで作った衣服。
アーチャーの意思により自在に動き回る。
大きさも自在であり、大きく広がって包み込んだり、ロープ状になって敵を拘束することが可能。
また対魔術防具としても強力であり、着用している間は「対魔力」のランクが上昇する。
『リモコン下駄』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-70 最大捕捉:2人
霊毛ちゃんちゃんこ同様、アーチャーの意思で自在にコントロールできる下駄。
一見すると単なる木製の下駄だが、強い神秘を宿すため高い硬度を誇る。
『お化けは死なない、病気もなんにもない』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
アーチャーの尋常ならざる再生力が宝具となったもの。
アーチャーはいかなるダメージも回復することができ、自分に対する状態異常、ステータス低下も自力で解除できる。
ただし回復スピードは決して速くなく、回復を早めるにはマスターの魔力消費が必要となる。
【weapon】
宝具
【人物背景】
人類に害をなす妖怪と戦う幽霊族の末裔・「ゲゲゲの鬼太郎」。
彼は複数の世界でその存在を確認されているが、彼もまたその中の一人である。
普段は現世から少しずれた世界にある妖怪横丁の外れ・ゲゲゲの森でのんびりと暮らしているが、
妖怪が事件を起こせば現世へとやってきて仲間たちと共にそれを解決する。
勘違いしてはいけないが、彼は「善良な人間の味方」であり無条件で人間を守ってくれるわけではない。
私利私欲がゆえに妖怪に狙われる原因を作った人間には、冷酷な態度で接することも多い。
それで考えを改めなければ、その人間は破滅するのみだ。
【サーヴァントとしての願い】
マスターを守る。
【マスター】小山田まん太
【出典】シャーマンキング
【マスターとしての願い】
元の世界に帰る。
【weapon】
○万辞苑
まん太がいつも持ち歩いている辞書。
これで殴るとすごく痛い。
【能力・技能】
霊が見えるが、干渉はできない。
必死になれば、街で有名な不良と渡り合うくらいの戦闘力は発揮できる。
【人物背景】
少しだけ霊感を持つ少年。
15歳だが、身長80センチとすごく小さい。
日本有数の電器メーカー「小山田カンパニー」の御曹司で、親の後を継ぐため勉強漬けの日々を余儀なくされていた。
そんなある日シャーマンの少年・麻倉葉と出会い、彼の自由な生き様に惹かれ親友となる。
シャーマンファイトが開始されてからは、おのれの無力を知りつつも葉を友達として見守り続ける。
その友情はやがて、人類を救う奇跡の一翼となった。
【方針】
この世界からの脱出手段を探す。戦闘はできるだけ避けたい。
最終更新:2015年12月16日 18:28