「ば……馬鹿な……ッ!?」
「マスター……マスター!?」
信じられない。
二人の主従は、驚愕に目を見開きそれを見た。
隙は見せていない、互いに最大限の警戒はしていた筈だった。
敵の姿が見えない以上、攻撃手段は狙撃か暗殺かと大まかには予測していた。
だからこそ、その二点に焦点を絞り出方を伺っていた。
だというのに……何故だ。
「ゴフッ……!?」
何故……自分は今、胴体をぶち抜かれている?
血まみれの野太い腕が、胴より生えているのだ?
(どうして……私にもこいつにも、この敵の姿が察知できなかった……!?)
カランと、その手に持っていた魔術礼装が落ちる。
そして同時に血まみれの腕を引き抜かれる、彼女は自らが流した血だまりに前のめりに倒れ込んだ。
全身を駆け抜ける激痛も灼熱感は、相当なものであるだろう。
しかし、彼女はそれを感じることが全くできなかった。
自身が成す術なく、微塵も気づかぬ内に致命傷を負わされたという驚きと困惑が、事実を上塗りしているが故に。
この敵は、攻撃の終わりまで一切その姿を探知することができかった。
暗殺と言えばアサシンのクラスだが、如何に気配遮断スキルがあるとはいえ、攻撃の瞬間にはランクが下がる。
ならば自身のサーヴァントの実力があれば、その瞬間を見極め敵を迎え撃つことも不可能ではない筈だった。
しかし……それが出来なかった。
全く視界がその姿を認識できず、そして攻撃を許してしまったのだ。
何故だ、何故この様な事が起きたのだ。
(どう……して……)
そして。
彼女の魂は、覚めぬ眠りに着いた。
真相を知る事なく疑惑を抱いたまま……聖杯戦争から脱落したのだった。
(そんな……攻撃の『気配』は、探知できていたのに……!!)
主の死に引かれ、サーヴァントの肉体もまた光の粒子へと変換されてゆく。
彼は主を守れなかった自身の不甲斐なさを呪うと同時に、主と同じくこの見えざる敵にただただ驚くしかなかった。
敵からの攻撃が来るという気配そのものだけならば、彼女は確かに感知できていたのだ。
しかし、それにも関わらず……敵は一切視界に映らず、その存在を不完全にしか察することが出来なかった。
それが主の死という、最悪の結果を招いてしまった。
「申し訳ございません……マスター……!!」
無念としか言いようがなかった。
マスターを守りきれず殺した自責の念から涙を流し、悲しみを抱いたまま。
聖杯戦争から、彼は退場したのであった。
◇◆◇
「……よくやった、アサシン」
それからしばらくして。
一人の男が、離れた位置にある建物の影から姿を現した。
ユリウス・ベルキスク・ハーウェイ。
殺気と威圧感を周囲に振り撒くこの黒服の男こそが、見えざるサーヴァント―――アサシンの主であった。
彼は血だまりに沈む女性の魔術師を無感情に見下ろし、自身のサーヴァントの持つ力を改めて認識した。
(……使えるな。
条件や制約こそ厳しいが、満たす事さえ出来ればこいつは容易く暗殺が出来る)
彼が召喚したアサシンは、能力面で言えば破格と言えた。
暗殺に特化したクラスでありながらも高いステータスを持ち、そして何よりこの手際だ。
通常、気配遮断スキルは攻撃態勢に入れば大幅に効力を失う。
それ故にアサシンでの暗殺はタイミングを図らねばならないのが定石だが……このアサシンには、それを補う宝具がある。
今まさに見せてくれたように、気配を察知されてもなお敵に容易く接近し殺害を行える力がある。
マスター暗殺という視点から見れば、これ程使えるサーヴァントもそうはいないだろう。
もっとも、それを実行するには幾らかのハードルがあり、その条件は中々に厳しい。
クリアできなければ、アサシンでありながらも敵を『暗殺』できないという本末転倒な事態にすらも陥るのだ。
故に、タイミングを見極める必要がある。
時には敢えて敵の前にこの身を晒すという必要すらも出るだろう。
このサーヴァントの本領を発揮するには、命の危機に晒される事も考慮しなければならない。
だが……そんなリスクぐらい、容易いものだ。
自身の願い―――母と交わした約束のためならば。
この命など……惜しくはない。
◇◆◇
「…………」
呆気なく沈んだ敵を前に、アサシンは落胆せざるを得なかった。
彼等は及第点に届き、自身が獲物と認めるだけの敵ではあった。
しかし、そこまでだった。
結果は戦いにすらならず、こうもあっさりと片がついてしまった。
獲物としてカウントできる相手を仕留めたという成果自体に不満はない。
だが、満足ができたかと言われれば否だ。
「…………」
しかし、今は落ち込んでいても仕方はない。
これから先、どのような敵が現れるのかはまだまだわからない。
もしかすれば、望む力を持った獲物が現れるかもしれないのだ。
だから……今はただ只管に待とう。
自身の誇りと名誉にかけ、最大限の力を震える時を。
聖杯戦争は、はじまったのだから。
さあ……狩りの時間だ。
【CLASS】
アサシン
【真名】
プレデター@プレデターシリーズ
【ステータス】
筋力A 耐久A 敏捷D 魔力E- 幸運D 宝具A
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
気配遮断:C
自身の気配を消す能力。
完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
ただしこのアサシンの場合は、宝具の効果によってこの欠点をある程度補うことが出来る。
【保有スキル】
戦闘続行:C
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
狩猟民族の掟:EX
数多くの獲物を屠ってきた狩猟民族としての掟。
狩猟を何よりも最重要視する価値観を持ち、技の熟練と勝利と名誉をかけて狩りに臨む。
その名誉を求める価値観故に、弱い獲物を襲うことはできない。
具体的に言うと、『武器を持たない者、女子供や年老いた者、癌などの致命的な病気を患っている者』といった弱者を攻撃する事ができない。
ただし、武器を所持していたり戦闘意欲を持っていれば、本来は除外されるべき弱者でも狩りの対象にする。
その為に、アサシンでありながらも非戦闘時にある相手を暗殺できないという致命的なマイナス要素を持つ。
しかしこれはアサシンにとって絶対の掟であり、例えマスターの命令であっても聞くことはない。
また、妊娠している女性は例え何があっても絶対に攻撃を仕掛けることができない。
たとえ武装していても胎児が無抵抗であるため、狩りの対象にならない為である。
強敵への敬意:EX
勇敢な戦い手へは、性別に関係無く払う最大限の敬意。
戦いにおいて勇気と闘志を示した者には、例えそれが同胞を殺した異種族であっても、敬意や賞賛の念のようなものを示すことがある。
そして『狩りの獲物』としてでなく『強敵』と認めた相手には、誇りにかけてリストブレイドを除く一切の武装を外して白兵戦での決闘を申し込む。
自らの優位性を捨てての戦いを優先することはマイナス要素でしかないが、
これはアサシンにとって絶対の美学であり、例えマスターの命令であっても聞くことはない。
【宝具】
『狩猟に臨む光学迷彩(クローキングデバイス)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1~30
アサシンが生前より用いてきた光学迷彩装置が宝具として昇華されたもの。
身に纏ったスーツから発生する特殊なフィールドによって自らの姿を周囲の風景と完全に同化させ、一切見えなくする。
手に持った武器もこの際同時に見えなくなるのだが、手元を離れると目視できるようになる。
この宝具があるため、攻撃態勢に入り気配遮断スキルの効果が落ちても尚、姿自体は相手に感知されなくなる。
ただしあくまで隠せるのは姿だけであるため、気配までは隠すことができない。
また、濡れた状態だと正常に機能しないという欠点がある為、水中などでは意味を成さない。
水によって宝具が破損するという意味ではないので、水気がない状態で再度起動すれば問題なく使用できる。
『誇り高き死(プレデター・オブ・デス)』
ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:5000
アサシンの持つ最大にして最後の宝具。
自らの肉体を『獲物』として奪われることを由としないが故にその身につけた、驚異的な威力を誇る自爆装置。
アサシンが死ぬと同時に自動的に発動し、巨大な爆発を引き起こして周囲一帯を吹き飛ばす。
この宝具の発動は例えマスターの令呪をもってしても防ぐことはできない。
【weapon】
『リスト・ブレイド』
アサシンの基本装備にして、最も頼る武器。
右腕ガントレットに装着されている、長さ約50cmの鍵爪状の刃物。
他の武器を必要に応じて手放す場面があれど、破損等がない限りこの武器だけは死ぬまで手放すことは基本的にない。
『ショルダー・プラズマキャノン』
左肩に装着している自動制御のプラズマ砲。
装着しているヘルメットから照射される3本の赤いレーザーで狙いを定め、発射されるプラズマ弾で対象を撃ち抜く。
威力は高いものの、弾速が遅いため回避される事もある他、次弾発射にはチャージ時間が必要な為に連射が効かない。
また、照準がヘルメットのシステムに依存しているため、ヘルメットに異常をきたした場合は命中精度が大幅に低下する。
『レイザー・ディスク』
鋭い刃が付いた円盤状の武器。
投げると相手を一定距離ホーミングし、ブーメランのように戻ってきて回収することができる。
小型でグリップの周りに6枚の鋭いブレードがついており、この刃はグリップ自身に収納可能。
『スピア』
両側に鋭利な刃を持つ長さ約250cmの槍。
収納する際には50cmほどの長さに縮めることができる。
『ヘルメット』
アサシンが身につけている、マスクの役割も兼ねた頑丈な高性能ヘルメット。
サーモグラフィティーやズーム等の視覚補助装置及び射撃武装及び対象の詳細情報捜索時のロックオン用のレーザーサイト、
記憶媒体を取り付けられており、アサシンが見たものはヘルメット内部に録画されるので後ほど確認することが可能。
また、X線やCTスキャンに類する機能もあり、女性の体内の胎児や病人の肺癌といったものも見抜くことが出来る。
各種光線をアサシンの視認しやすい赤外線に変換し彼らの視覚を強化・補正する効果があるが、
このヘルメットが無くなるとアサシンの視界は本来の真っ赤なものになる。
【人物背景】
宇宙の様々な惑星を渡り歩き、その惑星に生息する
特に攻撃力に富み危険性の高い動物を狩猟することを主要かつ重要な民族的文化としている人型知的生命体。
極めて高い身体能力を持ち、あらゆる点において人類を凌駕している。
高度な技術で武装した人間を最大級の獲物と見定め、過去に幾度か地球に降り立ち狩りを行ったという伝承を持っている。
また、かつて紀元前2000年ごろ地球に飛来し、人類に建築技術を与え神として崇められた存在とも言われている。
狩猟に関しては独特の流儀や嗜好を持っており、戦場の熱気に引かれ、弱い者は決して狩ることはない。
また、狩った相手の生皮を剥いで木に吊るす・獲物の頭蓋骨や脊椎を戦利品として持ち帰るという猟奇的な傾向がある。
プレデターという真名は固有名詞ではなく、彼等に遭遇した人類がつけた呼び名
そしてこのアサシンは明確な個人のプレデターではなく、地球に残った様々な伝承が一つの英霊像を成してできた象徴的な存在である。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯自体にかける望みはない。
自らが狩るに相応しい獲物を見つけ出し、狩る。
【基本戦術、方針、運用法】
暗殺能力の高いアサシンでありながら、武装していない相手に一切攻撃を仕掛けることができないという異質なサーヴァント。
その為、マスター自身が敵の前にわざと身を晒して攻撃意欲を向けさせる・他者同士の戦闘に乱入するといった手を使わなければ
戦闘に臨むことができない。
ただし条件をクリアすれば、宝具を活かした確実性のある暗殺を実行が可能。
直接戦闘になったとしても高水準なステータス・豊富な武装で押し切る事が可能。
しかし、もしその最中でアサシンが敵を『獲物』でなく『強敵』とみなしてしまった場合は、
持ち味である武装をかなぐり捨てての肉弾戦を行うという厄介な事態になる為、扱いが極めて難しい。
【マスター】
ユリウス・ベルキスク・ハーウェイ@Fate/EXTRA
【マスターとしての願い】
ハーウェイの一員として、聖杯を弟のレオに捧げる。
【weapon】
ナイフや銃器等暗殺に向いた武器を必要に応じて使う。
【能力・技能】
隠密行動に長けており、生半可な監視では意味を成さない技量がある。
暗殺者として高い腕を持つ他、サーヴァント補助のためのコードキャストを使用可能。
『seal_guard』
相手のガードを封印するコードキャスト。
一時的に敵から防御するという選択を奪うことが出来るが、相手の技量・対魔力スキルによっては通用しない事もある。
『heal(64)』
味方の傷を回復させるコードキャスト。
サーヴァントの受けたダメージをある程度回復させることが可能。
【人物背景】
殺気と威圧感を周囲に振り撒く黒服の青年。
2030年代において圧倒的な武力と財力で世界の60%のシェアを管理・運営する巨大財閥『西欧財閥』の一員。
その盟主であるハーウェイ家の者であり、直轄の暗殺・諜報組織に属している。
西欧財閥を治める兄『レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ』の異母兄であり、一貫して彼の為に行動している。
彼自身は庶子でありハーウェイの家督には縁がないが、彼自身もそれに興味はない。
ハーウェイの子として生み出されたデザインベビーだが、胎児の状態で期待されていた全ての能力値が低く寿命もまた短い為に
不利益な存在でしかないと判断され捨てられるも、強靭な精神力を持って生き延びた。
そして六歳の時、大人たちの言う「利益」を生み出すため薬によって成人の体に成長し、
三年後に生存価値を認められ、初仕事を終えた事で現在の部隊に身を置くようになる。
凄腕の暗殺者として数多くの相手を葬ってきたが、殺人を楽しむことは一切なく、、ただ義務としてそれを遂行している。
レオの為にと口にしながらあらゆる行動を起こしているが、その実、レオ自身には特別な思い入れはない。
その根幹となっている行動原理は、彼を失敗作ではなく唯一普通の人間として気遣ってくれた人物であった
レオの母『アリシア』と交わした「レオのことお願いね」という彼女の最期の言葉。
彼女はレオの後継が生まれないようにと、ハーウェイより放たれたユリウス自身の手で暗殺されている。
その最期の言葉を忠実に守るために、ユリウスは生きているといっても過言ではない。
【方針】
聖杯を手に入れる為、アサシンの能力を活かして暗殺を狙う。
アサシン自体がクセの強いサーヴァントである為、できる限りその特性を引き出せる環境を作りたい。
最終更新:2015年12月21日 22:36