違和感というものはまるでなかったのだ。
だからこそ、ここが自分の居場所だと完全に思い込んでいたのかもしれない。
何が可笑しかったと感じ取れたのだろう?
記憶を辿っても見当がつかない。
一つ分かった事は――自分が聖杯戦争に巻き込まれ、マスターとして選出された事。

「どうして……僕なんかが」

真っ先に彼――先導アイチが口にしたのは情けない言葉だった。
聖杯戦争の存在も知らないし、何より彼は戦争とも無縁な時代の人間。
漠然としたイメージしか出来なかったものの。
きっと強くて怖い人たちが殺し合う、戦場なのだと考えれば
なら自分は戦場に放りこまれた兎のような存在であると自虐していた。

いつ、どうして、どうやって、何故自分が聖杯戦争へ導かれたのか。
アイチが思うは、自分なんかよりも参加するに相応しい人たちがいたのに彼らを踏み躙った申し訳なさと。
戦う意思も覚悟もなく、死ぬかもしれない状況でどうしたらいいかと迷う優柔不断さ。

「誰かを殺すなんて……」

生き残るためにはマスターたる存在を、サーヴァントなる存在を倒さなければならない。
平穏な世界とは無縁の殺害行為を、ただの少年が実行する決意を固めるのは難しい話だった。

先導アイチは、確かに気弱な少年である。
学校でもいじめられる機会も少なくなく、しかし優しい心の持ち主でもある。
彼に果たして願いがあるのか?と問われれば、無いわけではない。
そもそも、人間誰しも些細な願いの一つや二つ。ない方が変だ。
アイチはもう一度『彼』と出会い、カードファイトがしたかった。
薄汚れた昔の自分に対し、あるカードをくれた少年に……

『彼』はどこで何をしているのだろう。
この先、『彼』と巡り会う事は出来るのだろうか?
アイチの夢であり、願いであり、不安であったからこそ聖杯はそれを『願い』として受け止めた。
かもしれない。
聖杯の思考などアイチに理解できない。

だが無情にも聖杯戦争は開幕のベルが鳴り響く寸前。
悩む時間も惜しいというのに。

「阿蘇神社にあった蛍丸でーす。じゃーん。真打登場ってね」

アイチのサーヴァントが召喚された。




「子供……?」

身の丈に似合わない刀を背負った子供――恐らくセイバーに対して、素っ頓狂な声を漏らすアイチ。
セイバーは少々むっとした表情で言う。

「何か不満? 俺がいれば楽勝だよ」

「え?! あ、いや、その……」

「ちゃんと敵は倒すし。いざとなったら守ればいいんでしょ」

「そ、そうじゃなくてっ……僕、人を殺したく、ないんです……」

平然と戦いについて語る子供のセイバーに、アイチは動揺しながらも何とか言葉を出した。
かき消されそうなか細い声なので、セイバーの耳に入っているかも怪しい。
恐ろしい沈黙の後、セイバーが問う。

「本当にそれでいいなら、いいけどさ」

「ご、ごめん。取り合えず……誰も殺さないで」

「はぁーい」

随分と間の抜けた返事をして、セイバーは霊体化をした。
アイチの方は安堵の溜息をする。
さて、聖杯戦争は結局どうするべきなのだろう。最初に誰も殺さなければどうにでも出来るはず。

(どうにかして逃げ出さないと)

戦場で逃げ出すなんてお前らしいなとクラスでは笑われるが、空想のイメージと現実は違う。

(本当に―――誰か死んでしまうかもしれないのに)

アイチには聖杯で願いを叶える勇気は無かった。
ただ、聖杯戦争を阻止する勇気があるかは定かではない。


【クラス】セイバー
【真名】蛍丸@刀剣乱舞
【属性】秩序・善

【パラメーター】
筋力:A 耐久:A 敏捷:E 魔力:B 幸運:E 宝具:D

【クラススキル】
対魔力:C
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:E
 申し訳程度のクラス別補正

【保有スキル】
直感:B
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
 また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。

戦闘続行:E
 名称通り戦闘を続行する為の能力。

夜戦:A
 夜間の戦闘時、筋力と耐久が2ランクダウンする。


【宝具】
『鳴かぬ蛍が身を焦がす』
ランク:D 種別:対人(自身) レンジ:- 最大補足:1人
 セイバーのマスターが就寝、気絶等意識のない場合にのみ発動。
 セイバーに蛍が群がり、傷を修復する。霊体化して体を休めるよりも回復力は断然早い。
 また、宝具を展開したまま戦闘が可能。

【人物背景】
刀工・来国俊が作成した大太刀。
第二次大戦後、連合軍により接収されて以後所在不明に。
それがサーヴァント(刀剣男士)になったもの。

【weapon】
大太刀

【サーヴァントとしての願い】
とくになし。マスターには一応従うつもり。




【マスター】
先導アイチ@カードファイト!!ヴァンガード

【マスターとしての願い】
誰も殺したくない。聖杯戦争から逃れたい。

【weapon】
なし

【能力・技能】
カードゲームに関わるある能力を持つが聖杯戦争では意味を成さない。

【人物背景】
普通の中学3年生。弱気な性格だが心は優しい。
参戦時期はアニメ一期第一話開始前。

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最終更新:2015年12月08日 01:24