たった一人だけの世界は、思いの外綺麗だった。
校舎の窓から見上げる空は何処までも広く、青々としている。
一瞬の煌めき。夢の終わり。
言葉にしたら色々と浮かび上がるが、棗恭介は軽く笑みを浮かべその思考を打ち切った。
もう、過ぎたことだ。
後のことは現実へと戻るだろう二人に全てを託している。
直枝理樹、棗鈴。
弱く、一人で立ち向かうことすらできなかった彼らも今では気高い強さを手に入れた。
今ならば、安心して見ていられる。

これでいい。

この物語の終わりは、彼ら二人が生き残り、未来を生きていく。
そんなビターエンドで十分に満足だ。
奇跡はもう起こらない。
恭介達に、未来など残っていない。
頬を撫でる風も、澄んだ土の臭いもこれで最後だ。
それは生の実感を感じさせるには十分な欠片が詰まっているけれど、自分には不要のものだ。

――本当に?

そう、信じたい。
生への渇望に未練はないと、思いたい。
棗恭介の人生は此処で終わりなんだと認めたい。
けれど、奥底に眠る炎はそんな弱音を許さず、煌々と燃え上がっている。
生きたい、と。

「諦め、わりぃんだよなあ、俺は」

いつだって、どんな時だって。
棗恭介という人間はそうだった。
諦めが悪く、友と明日の為になら何だってするスーパーマンだった。
その役目を終え、単なる棗恭介個人だけであっても、それは変わらなかった。
故に、彼の世界は未だ終わらず。
ほんの少しの可能性がこの掌に残っているなら、懸けてみたい。
だから、棗恭介は此処にいる。
聖杯戦争という青春からかけ離れた殺し合いの場に立っている。
狂気が蔓延る戦場で、恭介は不敵に笑う。
暗殺、同盟、離間。最後の一組になるまで生き残らなくては帰れない――最低な希望だ。
培ってきた常識も、胸に抱く優しさも必要ない。
大切なのは、抗い、そして勝つことだ。
甘く蕩けた思いで、この退廃した世界を勝ち抜くことはできない。

「その諦めの悪さで呼ばれた私はいい迷惑ね」
「そう言うなって、アーチャー。俺はお前のことを結構気に入ってるんだぜ?」

横にいるサーヴァントの少女が溜息をつくのとは裏腹に恭介は晴れやかな笑顔で口元を広げている。
それは呼び出された少女がロリだからではなく、自らが知っているものだったが為だ。
アーチャーの座を司る艦娘、天津風
まさか、昔の大戦で無骨な鉄の船であったものが少女として現れるなんて、さすがの恭介にも予想がつかなかった。
だが、知っている分、理解も早い。
彼女が願ったものはきっと――――平和だ。
夢や理想、想いこそが尊ばれる御伽話。
ただ、護りたかった。
届く範囲でいい、民を救いたかった。
抱いたモノは簡素なれど、愚直だ。
絶対に喪ってなるものかと願った輝きである。

「お前が戦ってくれたからこそ、今の俺達はこうして生きている。
 まあ、俺はもう死んじまってるんだがな」

残酷な現実に身を浸しても、曲がらぬ輝きは、尊ばれるべきだ。
戦争であっても、多くの人間が死に絶えた敗戦であっても。
彼女の根底にある救いたかったという気持ちは、間違っていない。

「けど、俺は死にたくない。まだ、生きていたい。もう一度、会いたい奴らがいる。
 俺達に死を強いた運命ってやつを――覆したい」

彼女が抱くものの全容なんてわからないけれど、それだけは確かだ。
信用する理由なんてその程度で十分である。

「俺は願いを叶える為なら何だってする。プライドなんてかなぐり捨てて、な」

けれど、そんな少女を、今から自分は穢す。
自分の願いを叶える為だけの武器にする。
彼女が持っている誇りなんてお構いなしに、卑怯なことだってやらせるつもりだ。

「その過程で、吐き気がする策だって練るし、それをお前に実行させる」

それは、彼女にとって道理が通らないことも承知の上で頼んでいる。
理屈ではわかっているし、今の自分が抱いているのが未練がましい感情論だ。
艦娘として。そして、サーヴァントとして。
愚直な少女に縋る自分には情けなさを通り越して吐き気がするけれど。

「俺は――」
「……もういいわよ。そんな辛そうな顔をしなくても、わかったから」

それでも、与えられなかった未来が欲しい。

「いいわ。あなたの要望通り、従ってあげる」

結局の所、恭介はどこまでも青春〈イマ〉に拘っていただけだった。
意地を張り続ける理由など、知れたことだ。
夢の中でしか果たせなかった青春を今度こそ貫きたい。
最後まで抗って、戦って、その果てに辿り着いても――笑っていられるのか。

「生きたいって想いに、嘘も真もないんだから」

それでも、恭介は選んでしまうだろう。
天津風は彼についていってしまうだろう。
諦めることを諦める決意を胸に、もう一度夢を見る。

「改めて、誓うわ。此度の聖杯戦争――あなたと共に歩むことを」
「……サンキューな」

それは、未来を取り戻す物語。


【クラス】

アーチャー

【真名】

 天津風@艦隊これくしょん

【パラメータ】
     筋力D  耐久C 俊敏C 魔力E 幸運C 宝具C

(改造時)筋力D+ 耐久B 俊敏B 魔力E 幸運D 宝具C

【属性】

 秩序・善

【クラス別スキル】

 単独行動:D
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクDならば、マスターを失っても半日間は現界可能。

 対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ないが、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】

 艦娘:A
生前艦艇・戦艦だった存在が少女の姿に変わった者に付与されるスキル。
水上での戦闘において有利な判定を得、そして鉄などの資源があれば火力の増強・損傷した身体を魔力を使用せずに修復できる。

 戦闘続行:A
戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

 守護:C
他者を守る時、一時的に防御力を上昇させる。
彼女は沈む瞬間まで、護り続けた。


【宝具】

『雲の通ひ路吹き閉ぢよ』
 ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:100

任意で連装砲、魚雷といった武装を顕現させることができる。

『乙女の姿しばしとどめむ』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
彼女とマスターが心の底から強くなりたいと願った時、その宝具は解放される。
改装を施すことで、ステータスを上昇させ、それまでに負った傷を全て治す。

『その風の名は――天津風』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1

上記の『乙女の姿しばしとどめむ』が解放されるのと同時にこの宝具も使用可能になる。
この宝具――兵装によって、強化型艦本式缶、三式水中探信儀が天津風に装備され、俊敏、潜水に対しての特攻が上方修正される。

【weapon】

『雲の通ひ路吹き閉ぢよ』

【人物背景】

陽炎型駆逐艦九番艦。
可愛い。

【サーヴァントとしての願い】

マスターである恭介に従う。


【マスター】
棗恭介@リトルバスターズ!

【マスターとしての願い】
死の運命を覆す。

【weapon】
なし

【能力・技能】
頭脳明晰で、身体能力も高い。

【人物背景】
リトルバスターズの一員。男キャラで唯一テーマ曲を持っていたり、活躍度からして存在感はメインヒロイン級。
今回はRefrain、虚構世界からの脱出~現実での覚醒までの間からの参戦となる。

【方針】
どんな手を使ってでも勝つ。

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最終更新:2015年12月08日 01:43