”メアリーがいない、メアリーがいない”
ガタガタガタガタ、彫刻が震える。ポタポタポタポタ、インクが落ちる。
”かのじょはどこへいったの? みんな、さみしがってるよ。”
赤い服のマネキンが動き出して、そこかしこに青い人形が散らばる。
”おこってないよ、もどってきてよ。”
真っ暗闇に、鐘の音が響いて。美術館に、安らぎは戻らない。
”みんなのいばしょに”
”かえろう、メアリー”
※ ※ ※
外の世界は、色鮮やかで、知る機会さえなかった輝きに満ち溢れていた。
通りはガラス張りの箱物が太陽の光を浴びて、谷間をカッコいい車たちが走り回る。
歓楽街の人々の喧騒はそこらじゅうから静粛を奪い取って、雑踏は目が回ってしまうほど。
店のガラスケースにはいかにも自分は美味しいと主張するスイーツが並んでいた。
そんな世界で、けれども、一際大きく心を震わせたのは、ただ昼と夜が移り変わっていくことだ。
東から昇る太陽が、街中を覆っていた闇を薄らがせてゆき、やがて天頂にいたると、自分たちを見守ってくれるようで、
西に沈むにつれて、一日を生きた生物たちを労わるように夕闇が覆っていく。単なる太陽の運行に、彼女は、メアリーはひどく感銘を受けた。
……皮肉なことである。彼女は自分の異物感を自覚していったのは、太陽が昇るごとのことであったのだから――
どこにいってもいっしょのことだ。
おまえのこころはつくりもの。
いばしょはきえてひとりぼっち。
くらやみのそこへ。
バイバイ メアリー。
※ ※ ※
……メアリーの正体は絵画である。彼女が人間として生きていくには、美術館、ゲルテナの世界で他の人間を犠牲にしなければならない。
それが美術館の
ルール。蔵書からの忠告。しかし、故意ではないにしろ彼女は、この電脳世界に来てしまった。美術館のルールを破ってしまった。
……電脳世界に来て数週間、対価が支払われなかったことによる影響を、彼女は存分に味わった。
NPCとしての彼女に割り振られた役割、それはある画家によって描かれた絵画であることであった。
絵画の役目、それは誰かによって鑑賞されるか、資産として売買されること。
彼女、メアリーという作品はある売り出し中の高級住宅のインテリアとして扱われた。
観覧客が来ている間は、絵の中から動かないようにじっと動かず、眺める視線から耐える。
隙を見計らって外に出たとしても、お菓子を買うどころでも、友達を作るどころでもない。金銭も、自分の存在を証明するものもないのだ。
彼女にできたことは、いつ人が来て額縁だけの絵画を目撃されるかに怯えながら、近くのケーキ店の店頭を物欲しそうに眺めるだけだった。
「よもや、絵画ごときが、この聖帝サウザーを呼び出すとはな……」
サーヴァントが呼び出されたとき、メアリーの外に出たいという願いはとっくに色あせてしまていた。
涙も出ず、寂しさに打ち震え続けた彼女が願うこと、それは――。
「…………フン」
彼女は、怯えながらの外出において、夕暮れ道、父親と一緒に帰る娘を見た。
頼れる腕によって持ち上げられて鈴のなるような声で喜ぶ娘、それは、メアリーには、とても眩く映った。
彼女の根底、自分の父親、……メアリーは己の現在、一人孤独である状態も相まって、自分の生みの親――父親について強く求めていた。
彼女の願いは、自らがお師さんと慕ったオウガイとの再会を求める、ランサー、サウザーにとって、少なくとも下らないと切り捨てられはしなかった。
死の直前、南斗六星の帝王として、南斗聖拳の伝承者として、捨て去ったものをケンシロウに再び悟らされていたサウザーには、既に不可能なことであったのだ。
ランサーは、とりあえずは、マスターを害するという考えを捨てることにした。
「……止まり木代わりには、認めてやる」
【クラス】
ランサー
【真名】
サウザー@北斗の拳
【パラメーター】
筋力:B 耐久:C 敏捷:A 魔力:E 幸運:E 宝具:A
【属性】
中立・善
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】
戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
南斗鳳凰拳:A+++
南斗聖拳最強の拳。
修得の難易度は最高レベルで、他のスキルと違い、Aでようやく“修得した”と言えるレベル。
- は将星の宿星、一子相伝の正当伝承者としての証。
防御の型である構えが例外を除いて存在せず、圧倒的攻勢による制圧前進を基本とする。
速度と火力を併せ持っており、手刀や足技、闘気を飛ばすことによる斬撃を主体としている。
【宝具】
鳳凰呼闘塊天
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
南斗鳳凰拳の奥義の一つ。身体に闘気を纏うことによって、自らの筋力、敏捷、闘気による攻撃を強化する。
天翔十字鳳
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
対等と認める敵に帝王の誇りを持って相対する、鳳凰拳唯一の構えを持つ秘奥義。
自らの体に鳳凰型の闘気を纏わすことによって、天空を舞う羽のように、相手の物理攻撃を無効化する。
ただ、実体を持たない攻撃や、魔力による攻撃。躱すことのできないほど高密度な攻撃は無効化できない。
落鳳破
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:2~50 最大補足:100
前方に向かって鳳凰型の闘気を放ち、敵を攻撃する。鳳凰は地に沿ったのち、天に舞い上がる。
【weapon】
【人物背景】
南斗鳳凰拳の伝承者、元は師オウガイのもとひたむきに修行を積んでいたが、伝承の試練によって父とも慕うオウガイを手にかけたことで一変。
一切の愛を否定するようになり、世紀末の世界においては非情にも子供を酷使、オウガイの墓である聖帝十字陵を建造しようとした。
最期はケンシロウに敗れ、オウガイからの愛を思い出しながら崩壊する十字陵と運命を共にした。
【サーヴァントとしての願い】
お師さん(オウガイ)との再会。
【マスター】
メアリー@ib
【マスターとしての願い】
”お父さん”と美術館の世界に帰る。
【weapon】
【能力・技能】
『メアリー』
メアリーはワイズ・ゲルテナによる絵画が、ゲルテナの世界において動き出したもの。
よって、大本の彼女がいた絵画が破壊されたとき、彼女も消滅する。
また、絵画が動いているという神秘のため、魔力は常人より高い。
【人物背景】
薄暗い美術館の世界において動き出した絵画『メアリー』
外の世界に対して猛烈な憧れを抱き、何としてでも外に出ようとしていた。
性格は明るく幼げであるが、それゆえの残酷な面も見える。
【方針】
聖杯を狙う。ここに居続けるのは嫌。
最終更新:2015年12月08日 01:56