「ちょっと、散歩に行って来ます」
「はーい。暗くならないうちに帰ってきてね」
保護者に見送られ、夏目貴志は家を出た。
当初は不安を抱えていたこの地での生活は、すこぶる順調だ。
自分を引き取ってくれた藤原夫妻はとても優しい人たちだし、学校でもたくさん友達ができた。
文句のつけようがない生活だと言ってもいい。
なのになぜか、胸の奥に引っかかるものがある。
(何かを忘れている気がする……。いったい、何を……)
答えの出ない疑問に苛立ちを募らせながら、人通りのないあぜ道を歩く。
その時、1匹の野良猫が夏目の前を横切った。
(猫……ニャンコ……先生……。うっ!)
突如として激しい頭痛に襲われ、夏目はたまらずその場にかがみ込む。
頭の中に蘇るのは、怠惰だが頼りになる相棒と過ごした真実の記憶。
続いて、聖杯戦争に関する知識が流れ込んでくる。
右手には灼熱のごとき痛みが走り、令呪が浮かび上がってくる。
(ここは……聖杯戦争の舞台……。俺の本当の居場所じゃない……?)
混乱する夏目。その前に、巨大な影が出現する。
「なんだ、ずいぶんと貧弱そうな人間だな。お前がこの俺のマスターか?」
頭上から響く声に返答しようと、夏目は顔を上げる。だがそこにあった姿は、彼を驚愕させるようなものだった。
「ゲェーッ! 象の妖怪!」
我を忘れて、夏目は叫ぶ。
彼の前に立っていたのは、はち切れんばかりの筋肉を誇る巨漢であった。
だが、それだけではここまで取り乱すはずもない。
異様なのは、その顔。
下半分は露出しているが、上半分は毛皮で覆われている。
そしてその毛皮からは、象そのものの鼻と牙が生えていた。
一見すると覆面をかぶっているようにも見えるが、それにしては鼻の様子が生々しすぎた。
明らかに、血が通っているようにしか見えない。
「妖怪ではない! 俺は象の超人! そしてランサーのサーヴァントよ!」
胸を張り、男は叫ぶ。
「サーヴァント……。そうか、お前が俺のパートナーってことか……」
「どうやらそのようだな。しかし、面白そうだからと聖杯戦争に参加してみれば、マスターがこんな貧弱な人間とはな。
こんなハズレを引かされるくらいなら、もっと慎重に決めるべきだったぜ」
ハズレ呼ばわりされ、夏目は露骨に不服そうな表情を浮かべる。
だが自分の体つきが華奢なのは自覚しているため、言い返すに言い返せない。
「まあいい。それでマスターよ。お前が聖杯に望むことはなんだ」
「望み……。いや、特にないよ。俺は巻き込まれただけなんだ。
元の世界に戻れるなら、それ以上は何も望まない」
「なんだと……? ちっ、腰抜けが。
それなら、俺は好きにやらせてもらうぜ」
夏目の返答に失望した様子を見せ、ランサーはきびすを返す。
「待て、どこに行く気だ」
「お前に聖杯戦争を戦う気が無いのなら、俺は勝手に暴れさせてもらうだけのことよ」
「それは許すわけにはいかないな」
毅然とした口調で、夏目はランサーを制する。
「ここは戦いのために作られた世界だ。争いが生じるのは仕方ない。
けど、無計画に暴れるのは許せない。
ここには俺の家族も、友達もいる。たとえ俺の世界にいる本物の模造品だとしても、みんな心を持った人間だ。
その人たちを、危険に巻き込むわけにはいかないんだ」
「何を甘っちょろいことを。お前のような弱っちい人間の言うことを、俺が聞くとでも思うのか?」
「そのための令呪だろう」
臆することなく、夏目は右手の甲に浮かんだ令呪をランサーの眼前に突きつける。
「俺ならば、お前が令呪を使う前に殺せるぜ」
ランサーの牙が伸び、夏目の首筋に突きつけられる。
さすがに冷や汗を浮かべる夏目だったが、それでも視線はランサーから外さない。
「殺してどうする。マスターを失ったお前は、消滅するだけだ」
「別のマスターを見つければいいだけのことよ」
「そう都合よく見つかるかな。まだ聖杯戦争は始まったばかりなんだろう?
もうサーヴァントを失ったマスターが、そうそういるとは思えない」
「…………」
しばし、沈黙。
「ふん、命を奪われかねない状況でそれだけ吠えられるとは、度胸はそれなりにあるようだな。
多少は見所があると認めてやろう」
「それじゃあ……」
「しばらくは、貴様に付き合ってやる。ふふ、この俺が人間を守るなどという、正義超人のまねごとをすることになるとはな……」
「ありがとう」
微笑を浮かべ、夏目は握手を求めて手を伸ばす。
その手を、ランサーの大きな手ががっちりとつかんだ。
【クラス】ランサー
【真名】マンモスマン
【出典】キン肉マン
【属性】中立・悪
【パラメーター】筋力:A 耐久:B 敏捷:D 魔力:E 幸運:D 宝具:C
【クラススキル】
対魔力:C
魔術に対する抵抗力。
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
超人レスリング:B
超人として生まれ持った才覚に加え、たゆまぬ鍛練と実践経験を重ねたリング上で闘う格闘技能。
Aランクでようやく一人前と言えるスキル。
ランサーは超人レスラーとしての活動期間が短かったため、経験不足によりBランク止まりである。
反骨の相:B
一つの場所に留まらず、また一つの主君を抱かぬ気性。自らは王の器ではなく、自らの王を見つける事ができない流浪の星。
同ランクまでのカリスマを無効化する。
ランサーは歪んだ歴史も含めると、3人の主に仕えながらそのいずれとも最終的に袂を分かっている。
連戦連勝:B
「4人抜き」の逸話がスキルとなったもの。
サーヴァントとの戦いに勝てば勝つほど、ステータスが上昇していく。
ただし一度でもランサーが敗北を感じると、効果はリセットされる。
友情パワー:―
ロビンマスクとの戦いで生まれた、小さな芽。
マスターとの関係性次第で、スキルとして目覚めるかもしれない。
【宝具】
『巨象の一刺し(ノーズ・フェンシング)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-3 最大捕捉:1人
ランサーを象徴する必殺技。
鼻を鋭い刺突武器とし、敵の体を貫くシンプルにして強力無比な一撃である。
【weapon】
○ビッグタスク
伸縮自在な、2本の牙。
血に反応して本人の意志とは無関係に動くという恐るべき性質を持つが、
返り血などに反応して自身を襲う可能性もある諸刃の剣である。
【人物背景】
キン肉星王位争奪戦において、フェニックスチームに参加した超人。
元はシベリアの永久凍土の中で眠っていたマンモスだったが、超人として現代に蘇った。
一回戦ではビッグボディチーム相手に怒濤の4人抜きを見せ(しかも最後は、フェニックスの見せ場を作るため余力を残しながらもK.Oされた振りをした)、
その後もチームの主力として大車輪の活躍を見せる。
しかしフェニックスには捨て駒としか認識されておらず、決勝戦において見捨てられる。
それに激怒したマンモスマンはフェニックスの妨害を排除し、キン肉マンチームのロビンマスクと正々堂々と戦った末にその命を散らした。
後の世ではフェニックス、悪魔将軍と並び、「伝説の悪行超人」として語り継がれている。
時間超人によって改変された歴史では、未来より来たウォーズマンによって正史より早く目覚めさせられ、彼のタッグパートナーに。
だがウォーズマンでは彼の凶暴性をコントロールしきれず、彼を裏切ってネプチューンマンのパートナーとなってしまう。
さらにそのネプチューンマンをも見限り、最後はフェニックスと思わしき人物に連れられいずこかへと去って行った。
【サーヴァントとしての願い】
存分に暴れる。
【マスター】夏目貴志
【出典】夏目友人帳
【マスターとしての願い】
元の世界に帰る。
【weapon】
○友人帳
夏目の祖母・レイコが打ち負かした妖怪達の名前を記した記録帳。
ここに名前を書かれた妖怪は、持ち主の命令に逆らうことができない。
この聖杯戦争においては意味をなさない代物だが、強い神秘が宿っているため何らかの使い道はあるかもしれない。
【能力・技能】
○霊能力
祖母から遺伝した、非常に強い霊感。
妖怪をはっきり視認することができる。霊体化したサーヴァントも見えるかもしれない。
また本格的な修行を積んだことはないものの、その才能ゆえに簡単な術なら教えられさえすればすぐに修得できる。
【人物背景】
生まれつき妖怪が見える少年。現在は高校生。
両親を幼くして亡くし、妖怪が見えるゆえの奇行から疎まれ、親戚中をたらい回しにされる。
しかし現在は遠縁の藤原夫妻に引き取られ、実子同然の愛情を注がれて幸せな日々を過ごしている。
一方で友人帳や自身の強い霊力を狙われ、悪質な妖怪に幾度となく襲われている。
また人間・妖怪問わず困っている相手を放っておけない心優しい性格のため、自分からトラブルに首を突っ込むことも少なくない。
【方針】
生存優先。NPCへの被害も、可能な限り防ぐ。
最終更新:2015年12月08日 01:58