悪魔のごとき男がいた。
最下層の生まれだった彼は貴族の家に入り込み、その家の財産を乗っ取ろうとしていた。
だが計画成就まであと一歩というところで、その家の息子にしっぽをつかまれてしまった。
迫り来る破滅に焦燥感を募らせているさなかに、彼はこの地へ呼ばれた。


悪鬼のごとき男がいた。
男は人を斬る快楽に取り憑かれ、争乱が終わった後も闇の世界の住人として刃を振るい続けた。
やがて伝説の剣客と戦った彼は刀を持つべき腕を砕かれ、自ら命を絶った。
そして今、彼は悪魔のごとき男のサーヴァントとして現世に降り立った。


◇ ◇ ◇


(何で、何でこんな……)

男は自分に起きた事態が理解できず、ただただ怯えていた。
たしかに他のサーヴァントに拠点を突き止められ、奇襲を許したのは失策だった。
だが男のサーヴァントは、いち早く奇襲を察知した。
ならばそこからは、真っ向勝負になるはずだった。
しかし男のサーヴァントは突然動きを止め、一切抵抗を見せぬまま首を切り落とされてしまった。
そして彼自身もまた、サーヴァントと同様にまったく身動きが取れなくなっていた。

(逃げなきゃ、逃げなきゃ……。何で、何で動けないんだ!)

自分が取るべき行動は、逃走だとわかっている。
なのに男の脚は、まるで石にでもなってしまったかのように動かない。

「俺の宝具はどちらかといえばマスター対策で、サーヴァントには効かないことが多いんだがね……。
 たまたまお前のサーヴァントは、効く類の英霊だったようだ。運が悪かったな」

血の滴る刀を手に、敵サーヴァントは悠然と男に歩み寄る。

「そしてお前も、心の一方を破れるだけの力はなかったようだな」
「こ……殺さ……ないで……」

ありったけの力を振り絞って口を動かし、男は命乞いをする。
それを聞いたサーヴァントはにやりと笑うと、ためらうことなく刀で男の頭部を叩き割った。


◇ ◇ ◇


ディオ・ブランドーは建物の外で、自分のサーヴァントが出てくるのを待っていた。
奇襲を仕掛けるには自分がついていくよりも、サーヴァントだけを突入させた方がよいと判断したためだ。
だがその間、自分が無防備になるのは避けられない。
ゆえに彼は物陰に隠れてできる限り周囲を警戒していたのだが、結局それは杞憂に終わった。

「片付いたぞ」

建物から出てきたサーヴァントは、おのれの主に歩み寄りながらそう口にした。
いたって落ち着き払ったその態度は、とても人を殺した直後には見えない。

「ご苦労。早かったな」
「殺しやすい相手だったからな。俺としては物足りないくらいだ」

素っ気ない言葉で返すと、サーヴァントはすぐに霊体化して姿を消してしまった。

(愛想のない男だ……。まあいい。別に俺たちは仲良しこよしになる必要はないんだからなあ。
 しっかり俺の命令を聞いてくれるなら、それ以上は望まんさ)

ディオの元に召喚されたサーヴァントの真名は、鵜堂刃衛。
極東の国で凶刃を振るった殺人鬼だ。
普通の人間ならば嫌悪感を催すような経歴の持ち主だが、生粋の悪党であるディオにとってはむしろ都合がいい。
なまじ正義感の強い英雄などを引き当ててしまうより、自分と同じ外道のほうがよほど制御しやすいからだ。

(ジョナサンに計画を気取られ、俺の人生もはや崖っぷちかと思ったが……。
 どうやら運命はこのディオに味方してくれているようだ。
 聖杯を手にすればジョースター家どころではない、世界そのものを俺のものとできる!
 結果として何年も費やしてきた計画が無駄になることに、思うところがないわけではないが……。
 些細なことよぉぉぉぉぉ!!)

夜のとばりの中で、ディオは凶悪な笑みを浮かべた。


◇ ◇ ◇


(ずいぶんと燃えているようだな。まあ、けっこうなことだ)

霊体化したまま主を見つめつつ、刃衛もまた心中で呟く。
彼の目的は、戦いそのもの。ゆえに聖杯を手にするつもりはないし、戦いの場さえ用意してくれるなら主は誰でもいい。
まあ生前に雇われていた金の亡者よりは、今の主の方が多少は気が合いそうな気はするが。

(今のところ、ぬるい相手とばかり当たっているからな……。
 早いところ、抜刀斎のような面白い戦いのできるやつと出会いたいものだ)

刃衛の顔にも、ディオに負けず劣らずの禍々しい笑みが浮かんでいた。


【クラス】アサシン
【真名】鵜堂刃衛
【出典】るろうに剣心(実写映画版)
【性別】男
【属性】混沌・悪

【パラメーター】筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:E 幸運:D 宝具:C

【クラススキル】
気配遮断:B
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】
自己暗示:C
自身にかける暗示。精神攻撃に対する耐性を上げるスキル。

戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
かつて戦場で死にかけながらも、奇跡的に息を吹き返した逸話に由来する。


【宝具】
『心の一方』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:30人
二階堂平法奥義。
目から発した闘気を敵に叩きつけ、恐怖心により相手の体を麻痺させる。
麻痺の度合いは調整が可能で、強くかければ肺まで麻痺させ窒息死させることもできる。
刃衛と同等以上の闘気を放てば、打ち破ることができる。
宝具となったことで多少の神秘は帯びているものの魔術の類ではないため、魔力関係の防御は意味をなさない。
もっともたいていのサーヴァントは十分な闘気を持っているため、武術の心得がなかったり精神力の弱いサーヴァントでなければ効果は薄いだろう。

【weapon】
○日本刀
かつて鳥羽伏見の戦いで緋村剣心が放棄し、その後偶然刃衛が手にした物。
斬られた者の怨念が染みついている。

【人物背景】
闘争と殺戮の快感に取り憑かれた、狂気の剣客。
明治維新後は悪徳事業家・武田観柳の用心棒となり、抜刀斎の名を騙り邪魔者を始末していた。
やがて本物の抜刀斎・剣心と邂逅。
死闘の末に利き腕の関節を破壊され、剣の道を断たれたことで自害する。

なお適正としてはセイバーの方が高いが、平行世界の刃衛が暗殺者として名を馳せていることや、
マスターであるディオの人格からの影響によりアサシンとして召喚された。

【サーヴァントとしての願い】
強敵と殺し合う。


【マスター】ディオ・ブランドー
【出典】ジョジョの奇妙な冒険
【性別】男

【マスターとしての願い】
世界をこの手に。

【weapon】
特になし

【能力・技能】
ラグビーの花形選手として活躍できるだけの身体能力を持ち、チンピラ程度なら一方的にたたきのめせる。
ただし、当然のことながらサーヴァントに対抗できるような力ではない。

【人物背景】
貧民街で生まれ育った、強い上昇志向とどす黒い心を持つ青年。
父の作ったつながりから名門貴族・ジョースター家に養子として迎え入れられ、長い年月をかけて家の乗っ取りを企む。
だがジョースター家の長男・ジョナサンに計画を看破され、追い詰められた末に石仮面の力で吸血鬼に……というのが本来たどるはずだった運命。
今回はジョナサンに乗っ取り計画を気づかれてから、石仮面の力を知るまでの間から参加させられている。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2015年12月08日 17:52