二振りの剣が、幾度となく火花を散らし合っていた。

 そうとだけ言えば剣豪同士の果たし合いであるが、その光景をいざ目にした者は、皆一様に怪訝な顔をするに違いない。
 隻腕の端正な顔立ちをした男が、鎧にも似た装束を纏った奇妙奇怪な剣士と剣閃を交わし合っているのだ。
 面、胴、小手、と時折鎧の底から聴こえてくるのはひょっとして剣道の掛け声であろうか。
 実際には剣道家も裸足で逃げ出す速度と威力の乱舞が繰り出されているわけだが、それを向けられる男は驚いた素振りの一つとて見せることなく、一本だけの腕と細身の剣でそれを一発残さずいなしていた。
 超人的な腕前と言う他ないだろう。
 それは見る者のみならず、巨大な鎧の内で息を荒げる剣士も痛感していることだった。

(化物か、こいつは……)

 考えてみれば当然のことだが、それでも改めてそんな月並みな感想を抱かずにはいられない。
 断っておくが、猿投山渦に英霊という存在を見くびっていたつもりは誓って皆無だ。
 かつて慢心から無様な敗北を喫した苦い記憶を省み、常に己の中の驕りを正視している彼にそんなことは有り得ない。
 それでも、よもやこれほどまでとは思わなかった。
 現の眼ならぬ心の眼を通じて繰り出す剣戟のすべてが、まるで予知されたように止められ、流される。
 傷一つ付けられないどころか、その髪の毛の一本でももぎ取れたかどうかからして怪しい話だった。

 挙動を予測して突きを放つ。
 しかし相手はその更に上を読み、止めた。
 止められてから猿投山は舌打ちをする。
 今、自分は勝負を急いだ。
 打った本人でさえ解る隙の大きさを、この英霊が見逃してくれるはずがない。
 そしてその通り、乱舞の間隙を見つけた隻腕の剣士はそれを瞬く間に掻い潜り、猿投山へと肉薄を果たす。

「胴ォォ!!」
「悪いが、既に遅い」

 とん。
 息巻いて強烈な一撃を見舞わんと吼えた直後、猿投山の胸が軽く小突かれた。
 彼はそれで動きを止める。
 それから、ゆっくりとその猛る剣を下ろした。
 光を絶ち、あらゆる感覚を己のものとした彼にはそれが何の音かが理解できてしまったからだ。
 切っ先で胸を突かれた。もしも相手に殺す気があったなら、今ので間違いなく自分は死んでいる。
 言い訳のしようもない、完膚なきまでの敗北だった。
 ……勝てないだろうとは内心思っていたが、これほどの差か。
 いざ実感させられると、なかなかどうして響くものがある。

「気は済んだか、マスター」
「……ああ。これだけコテンパンにされちゃあな」

 極制服の武装を解除すると、猿投山渦は苦笑をもって自らのサーヴァントへ向き直った。
 完膚なきまでの敗北を喫したにも関わらず、そこに挫折の色合いはない。
 端から負けを覚悟していたから? ――違う。彼は敗色濃厚と理解はしていたが、それでも勝ちをもぎ取ろうと奮戦した。
 その結果、絶対にどうしようも出来ない実力差を思い知らされて敗北した。
 ならば、今すべきことは情けなく敗走の悔しさに膝を抱えることじゃない。
 これを次に活かすことで、この剣をより鋭く、力強いものにすることだ。

 今此処に、猿投山渦が身命を賭して従うと決めた女傑の姿はない。
 命令は下らないし、あの勇ましき威光が射し込むこともない。
 だがそれでも、心の中はいつだとて彼女の輝きに照らされている。
 ならば、失望されないようにしなければならないだろう。只でさえ、自分は前科持ちなのだ。

「俺も賛成だ。今日び願いを叶えるなんて、ずいぶんと胡散臭い触れ込みがあったもんだぜ」
「賛成というのは――聖杯戦争の解体、という俺の目的にか?」
「そうだ、アサシン」

 この剣士は、セイバーのクラスで現界した英霊ではない。
 さらに言えば、剣士という呼称も彼を表現する上では的外れなものである。
 彼のクラスはアサシン。暗殺者。夜陰に乗じて事を成す、この世の影に住まう者。
 暗殺者ならぬ忍者。忍びの英霊、うちはサスケ。それが、このサーヴァントの真名であった。

「聖杯なんざで簡単に叶えられる願いに、一体どれほどの価値がある――
 皐月様ならきっとそう言うだろうからな。なら俺は、あの人の思う通りにするだけさ」
「皐月、とは……おまえの主か?」
「ああ。この猿投山渦が、生涯で唯一忠誠を誓ったお方だよ」

 彼が今どんな眼をしているのかは、目を覆った帯のせいで窺えない。
 だが、その眼はきっと晴れやかに澄み渡っているのだろうとアサシンは思った。
 何故ならその青臭くも直向きな在りようは、彼がこれまで幾度となく見てきたものでもあったからだ。
 形は違えど、似通ったものはある。
 そう、きっとあの『ウスラトンカチ』も同じことを言うだろう。
 猿投山渦と。
 そして、皐月、なる人物と。

 ――聖杯に託し、叶える願いに価値はない。この聖杯戦争には、必ず奇跡の輝きに比類するだけの闇がある。

 調べ、明かさねばならないだろう。
 聖杯を破壊するのは無論のこととして、この戦争を企てた黒幕と、その目的を。
 隻腕の忍は一人、怜悧な眼光を研ぎ澄ます。
 その眼には、三つの奇妙な勾玉模様が浮かび上がっていた。


【クラス】
アサシン

【真名】
うちはサスケ@NARUTO

【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷A+ 魔力A 幸運D 宝具A+

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
気配遮断:A+
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
忍術:A+
火遁・雷遁の術を基本とし、様々な忍術を使用することが出来る。
アサシンは忍の道を極めた、一つの極致の体現者である。

単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

破壊工作:B
戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。
彼の場合はもっぱら忍術・トラップによる妨害が基本となる。
このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格は低下していく。

千鳥:EX
対人魔剣/魔拳・千鳥。
腕や刃にチャクラを収束させ、雷遁の術の長所である切れ味を最大限活かして放つ彼の代名詞。
応用の幅は広く、投擲武器として射出する、槍や刀の姿を象る、全身から千鳥を放出するなど様々な芸当が可能。
また、一定の条件を整えた際には落雷を直接相手へ見舞う『麒麟』などの術が使用可能になる。

【宝具】
『写輪眼』
ランク:D+ 種別:対人宝具
うちは一族の血統にのみ現れるとされる特異体質、“血継限界”。
相手の行動を先読みしたり見切ることで相手の忍術・体術・幻術をコピーすることができる“洞察眼”、相手に幻を見せたり逆に精神属性の攻撃を無力化して跳ね返す“催眠眼”の能力と、さらに相手の異能を色彩で見抜く力を有している。これにより本来なら不可視の異能による攻撃を見抜くことも可能。
今回は同作のキャラが現れない限り、根本的に性質が違うためコピーできるものは体術や剣術のみとなる。

『万華鏡写輪眼』
ランク:A 種別:対人宝具
写輪眼の上位種。六芒星を模した紋様と中央に三枚刃の手裏剣の刻印がなされた特異な瞳。
視点のピントが合うと同時にその場所を焼き尽くす“天照”を発動可能になる。
あまりの灼熱に“炎すらも焼き喰らう”と作中で称されており、通常の方法では鎮火をすることもできない。
以上の性質を有するため、作中では“絶対に避けることはできない”“喰らったら終わり”とまで称された。しかしなんらかの予見ができたり、彼の視界から逃れるほどの速度で移動することができるのならば、回避することは可能。また、炎を自ら鎮火させたり、形を変えて盾や剣、己の技に宿したりすることのできる“炎遁・加具命”と呼ばれる瞳術も発動出来る。

『須佐能乎』
ランク:A+ 種別:対軍宝具
“万華鏡写輪眼”から派生する奥義。
強力な物理攻撃耐性、圧倒的な破壊力を持つ紫色・半透明の鎧武者を自身を媒介に召喚する瞳術。
そのステータスはサーヴァントすら大概の場合は凌駕し、圧倒的な力で押し潰す域に達している。

『輪廻写輪眼』
ランク:EX 種別:対人宝具
写輪眼が最終的に辿り着くとされる究極の瞳術――であるが、マスターの魔力回路量の問題などから発動不可能。
令呪三画を用いて自滅覚悟で使用を試みてもどうにもならない、それほどまでに膨大な魔力消費を必要とする宝具。
その代わりに、万一発動された場合起こる事象の程は余人の想像を凌駕して余りある。

【weapon】
長刀

【人物背景】
長い迷走と憎しみの末、救われた一人の忍。

【サーヴァントの願い】
聖杯の調査。及び聖杯戦争の解体


【マスター】
猿投山渦@キルラキル

【マスターとしての願い】
願いはない。皐月様に胸を張れるだけの戦いをする

【weapon】
三ツ星極制服『剣の装・改』
パワードスーツのような姿に変化する極制服で、これに加えて剣道の要領で繰り出す剣打を用いて戦う。

【能力・技能】
『心眼通』
彼は自ら光を絶つことで、超人的なほどに視覚以外のすべての感覚を常に研ぎ澄ましている。

【人物背景】
本能字学園生徒会四天王の一人で、役職は運動部統括委員長。
敗北を機に光を絶ち、『心眼通』を覚醒させることで弱点を克服した。

【方針】
聖杯戦争の解体

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最終更新:2015年12月08日 17:56