友よ、私の行いを知れば、お前はまた私に失望するだろうか。
「死人になってまで、何をバカなことをしているのだ」と嘆くだろうか。
だが私は、この男に力を貸したいと思ってしまったのだ。
かつてその力で、化け物と戦っていた男に。老いを悲しみ、若さを渇望する男に。
◇ ◇ ◇
その男が記憶を取り戻したのは、滞在するホテルの一室であった。
男の名はストレイツォ。この世界での肩書きは高名な武術家であり、本来の世界では「波紋」と呼ばれる不思議な力を極めた男だ。
「どんな願いでも叶えることができる聖杯、か……。
私が引き寄せられたのは、当然かもしれんな」
誰もいない室内で、ストレイツォは呟く。
彼には、強い願いがあった。
それは、若さだ。
波紋を修得した者は、肉体の老化を抑えることができる。
だがあくまで抑えるだけで、完全に歳を取らなくなるわけではない。
今のストレイツォは実年齢よりは若いとは言え、それでも顔には多くのしわが刻まれていた。
彼は、老いていくのが怖かった。そして、若い頃に敵としてまみえた不老の存在・吸血鬼にあこがれるようになった。
「もしも若返り、その若さを永遠に保つことができるとしたら……。
戦いに臨むだけの価値は、充分にあるな」
わずかに喜色を孕んだ声で、ストレイツォは再び呟く。
「若さを求めるその気持ち、よくわかるぞ」
突如、無人のはずの空間から声が響く。
ストレイツォは、直感的に理解した。
自分に従うサーヴァントが、この場に召喚されたのだと。
「アサシンのサーヴァント、貴公の呼び声に応えて参上した」
そう告げたのは、片眼鏡が特徴の若い男だ。
上等な生地であつらえられた洋服のデザインが、彼が現代に近い時代の英霊であることを予想させる。
「アサシン……暗殺者か。正攻法で戦えるサーヴァントの方がよかったが、まあいい。
それより……」
ろくにコミュニケーションを取らぬうちに、ストレイツォは険しい表情でアサシンに歩み寄る。
「さっきの言葉はどういう意味だ。貴様は子供ではなさそうだが、老いを実感するような歳でもあるまい。
日々ゆっくりと衰えていく私の、何がわかる!」
ストレイツォの怒号が飛ぶ。だが、アサシンは動揺を見せない。
「おっと、落ち着けマスター。サーヴァントというものは、全盛期の姿で召喚されるものなのだ。
死んだ時の私は、今のマスター以上の老いぼれだったさ」
「何……?」
「私は自分の目的のために、若さを求めた。そして実際に若返った。
だが、肝心の目的は達成できなかった。そして、惨めな裏切り者として死んだ」
「…………」
「私は、自分の人生を後悔してはいない。聖杯に何かを願うつもりはない。
だが、マスターの願いには共感した。貴公になら、力を貸してもいいと思った。
ゆえに、ここに参じたのだ」
「なるほどな……」
ストレイツォの言葉から、怒気が抜ける。
「それが本当なら、見当違いの怒りをぶつけてしまったことになるな。非礼をわびよう」
「何、人同士のつきあいに誤解はつきもの。これから理解を深めていけばいいだけのこと」
素直に自分の非を認めるストレイツォに対し、アサシンは柔和な表情で返す。
だがその表情は、すぐさま冷徹なものへと変わった。
「さて……。このあたりで確認しておこうか、マスター。
この聖杯戦争において、願いを叶えるということは他者の望みを踏みにじることに他ならない。
いや、それだけでなく命をも踏みにじることになる。
その覚悟は、できているか?」
「愚問だな」
アサシンからの問いかけに、ストレイツォは即答した。
今の彼にとって、若返ることは他の全てを捨ててでも叶えたい悲願。
そのためならば、戦友のスピードワゴンだろうと、娘同然に育てたエリザベスだろうと殺せるだろう。
ゆえに、彼は叫ぶ。
かつて人を脅かす化け物たちに向かって口にした言葉を、今度は人に向かって。
「このストレイツォ、容赦せん!」
【クラス】アサシン
【真名】ウォルター・C・ドルネーズ
【出典】HELLSING
【属性】中立・悪
【パラメーター】筋力:B 耐久:D+ 敏捷:B 魔力:E 幸運:D 宝具:C
【クラススキル】
気配遮断:B
自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
【保有スキル】
武器職人:A
武器特化の「道具作成」スキル。神秘性を帯びた武器を作り出すことができる。
あくまで「特化」であり「専用」ではないので、武器以外のものもいちおう作れる。
ゴミ処理係:B
長年にわたり、化け物を狩り続けてきた者。
人あらざるものへ与えるダメージが上昇する。
宝具発動時には自らが化け物と化すため、このスキルは機能しなくなる。
吸血:―(C)
吸血行為と血を浴びることによる体力吸収&回復。
宝具発動時に付与される。
【宝具】
『意地も張れぬ繁栄』(ゴールデンエイジ・オブ・フェイク)
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
自らの肉体を吸血鬼化する宝具。
幸運と宝具以外のステータスが1ランクアップ。スキルに「吸血」が加わり、代わりに「ゴミ処理係」が失われる。
最大の恩恵である若返りがサーヴァントの特性ですでに満たされているため、アサシンはあまりこの宝具を当てにしていない。
【weapon】
鋼線
【人物背景】
イギリス王立国教騎士団「ヘルシング機関」局長、インテグラル・ヘルシングの執事。
かつてはヘルシング機関の主戦力であり、一線を退いた晩年においても生半可な吸血鬼では相手にならないほどの戦闘力を誇っていた。
主人や仲間たちからは絶大な信頼を寄せられつつも、実は影で敵対組織「ミレニアム」と内通しており、戦いの中で寝返る。
(裏切りにいたるまでの詳しい経緯は不明だが、状況証拠から突発的なものではなく計画的なものであったことがうかがえる)
人造吸血鬼となる処置を受けて全盛期の力を取り戻し、好敵手であったアーカードに挑むも、無茶な施術により得た力は短時間しか保たず敗北。
最後は裏切り者として彼なりのけじめをつけ、死んでいった。
今回はサーヴァントとなったことにより、全盛期かつ人間の肉体で現界。
またストレイツォに召喚されたことにより、「裏切り者」としての側面が強調されている。
【サーヴァントとしての願い】
ストレイツォの願いを叶える。
【マスター】ストレイツォ
【出典】ジョジョの奇妙な冒険
【マスターとしての願い】
永遠の若さを手に入れる。
【weapon】
○マフラー
波紋の伝導効率が非常によい、ある虫の腸から作られたマフラー。
本来の世界ではジョセフの波紋を散らす防具として使っていたが、攻撃に使うことも可能だろう。
【能力・技能】
○波紋
体内に太陽光と同じエネルギーを作り出す、特殊な呼吸法。「仙道」とも呼ばれる。
太陽光が弱点である吸血鬼やゾンビに対しては、非常に強力な武器となる。
それ以外にも「自身の老化を遅くする」「物をくっつけたり弾いたりする」「簡単な催眠をかける」「傷の治癒を早める」などその効果・使い道は多岐にわたる。
【人物背景】
波紋使いの長・トンペティの高弟。
兄弟弟子であるツェペリからの協力要請に応じ、師匠と友にウインドナイツ・ロットの戦いに参戦した。
トンペティの死後はその地位を受け継ぎ、信頼の篤い指導者となる。
しかしその一方で波紋でも防ぎきれない老いの影に怯え、かつて戦った吸血鬼・ディオの美しさに羨望を抱いていた。
今回は第2部開始直前、吸血鬼となる前からの参戦。
【方針】
聖杯狙い。
最終更新:2015年12月08日 17:57