虹村億泰には、願いがあった。
それは、自分の父を殺すことだった。
とはいっても、殺意を抱くほどに父親を憎んでいたわけではない。
もともと普通の人間だった彼の父は、ある事件により醜い怪物に成り果ててしまったのだ。
しかも怪物となった父は、不死身の存在となっていた。
父を安らかに眠らせるため、億泰と兄の形兆は「スタンド」と呼ばれる超能力を修得した。
だが兄の力も弟の力も、父を殺すことはできなかった。
そこで形兆は、強引な手段で他者をスタンドに目覚めさせていった。
億泰も、盲目的にそれに従った。
だがそれでもなお、父を殺せる能力者は現れなかった。
行き詰まりを感じていたその頃、彼は聖杯戦争の舞台に招かれた。


◇ ◇ ◇


自分が置かれた状況を知った時、億泰はすぐさま聖杯の力で父を殺すことを考えた。
だがサーヴァントとの邂逅を果たした直後、彼はその考えがしばし頭から抜け落ちるほどの衝撃を受けることになる。


「わしが男塾塾長江田島平八である!!」


億泰は、たまらず尻餅をついていた。
彼が引き当てたサーヴァントは、バーサーカー。狂える戦士だ。
しかしだからといって、いきなり全身全霊の大声で自己紹介されるとは億泰も思っていなかった。
彼が転んだのは初っぱなから大声で自分の真名を宣言するという愚行に驚いたのではなく、ただただ音量が大きかったからである。

「えーと、あんたが俺のサーヴァント……だっけ。それでいいんだよな」
「わしが男塾塾長江田島平八である!!」

億泰の問いに対し、バーサーカーは先ほどとまったく同じ語句で応える。

「いや、それはもうわかったから! もっと小さい声でしゃべってくれよ!」

億泰が今いるのは、自宅である。
幸い(この世界での)兄は外出中だが、こんな大声で叫ばれてはご近所にどう思われるかわかったものではない。

「わしが男塾塾長江田島平八である」
「そうそう、そのくらいにしてくれよ……。ていうかよぉ、おっちゃん、それしかしゃべれないのか?」
「わしが男塾塾長江田島平八である」
「しゃべれねえみてえだな……」

顔にびっしりと汗を浮かべつつ、億泰は肩を落とす。

「これじゃ会話もできねえぜ……。とりあえず今は消えておいてくれよ、おっちゃん。
 用がある時は呼ぶから」
「わしが男塾塾長江田島平八である」

億泰の言葉に素直に従い、バーサーカーは霊体化して姿を消した。

「やれやれ、なんかすげえの引いちまったなあ……」

めまいを覚えながら、溜息を漏らす億泰。
目まいの原因は精神的なものだけでなく燃費の悪いバーサーカーに魔力を持っていかれたためでもあるのだが、まだ彼はそれに気づいていない。

(会話がろくにできねえってのは不安要素だが……。あのおっさんは強え。
 言葉で伝えられなくても、見ただけでそれがわかった。
 あんなのが俺の相棒なら、この聖杯戦争ってやつを勝ち抜くのも決して無謀な夢じゃねえぜ!)

心を落ち着かせるにつれ、億泰の瞳は光を増していく。

(待っててくれよ、兄貴! 必ず俺が、親父を殺すための力を手に入れて帰るからな!)


【クラス】バーサーカー
【真名】江田島平八
【出典】魁!!男塾
【属性】混沌・狂

【パラメーター】筋力:A++ 耐久:EX 敏捷:C 魔力:D 幸運:E 宝具:B

【クラススキル】
狂化:D
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
江田島の場合は思考が単純化し、「わしが男塾塾長江田島平八である!!」としかしゃべれなくなっている。

【保有スキル】
天性の肉体:B
生まれながらに生物として完全な肉体を持つ。このスキルの所有者は、常に筋力がランクアップしているものとして扱われる。

無窮の武練:A
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。

男塾塾長:C
最強の日本男児たる証。
健全な日本人男性ならば、彼に畏敬の念を抱かざるにはいられない。
ただし、狂化によりランクダウンしている。


【宝具】
『わしが男塾塾長江田島平八である!!』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-15 最大捕捉:80人
単なる名乗りが、言霊の域にまで昇華されたもの。
この名乗りを聞いた者は、強い衝撃を受け吹き飛ばされてしまう。
江田島の求める「男らしさ」を持った者であれば、抵抗が可能。
また、複数回受けることで耐性がついていく。
なお任意でオン・オフが可能なため、名乗る度にこの宝具が発動するわけではない。

【weapon】
頑健な肉体

【人物背景】
札付きの不良たちを集め、日本の将来を背負う人材へと育成する「男塾」の塾長。
宇宙空間をふんどし一丁で移動し、宇宙服だけで大気圏に突入して生還するという人間離れした肉体の持ち主。
歴戦の猛者を子供扱いして圧倒するなど、その戦闘力も凄まじい。

【サーヴァントとしての願い】
わしが男塾塾長江田島平八である!!(解読不能)

【マスター】虹村億泰
【出典】ジョジョの奇妙な冒険

【マスターとしての願い】
父親を死なせてやる

【weapon】
特になし

【能力・技能】
○スタンド「ザ・ハンド」
近距離パワー型のスタンド。ビジョンは人間型。
能力は右手で触れたものを「削り取り」、この世から消滅させること。
非常に強力な能力だが、本体の億泰がバカなため充分に使いこなせていない。

【人物背景】
杜王町に済む高校生。底抜けの単純バカ。
彼の父親はDIOの手下であり、DIOが死んだ際に埋め込まれていた「肉の芽」が暴走。
わずかな知性しか持たない、不死身の怪物になってしまう。
父を殺せる能力者を見つけ出すため、「弓と矢」でスタンド使いを無差別に増やす兄・形兆に従っていた。

今回は仗助と出会う直前から参加させられている。

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最終更新:2015年12月08日 18:07