唐突ではあるが―――――――――絶望とはどういう時のことをいうのだろう?
いや、絶望の定義だとかそういったかび臭い哲学の話じゃなくて、
どういうシチュエーションが絶望と呼称するに相応しいか、ということだ。
うん、それだけだとやっぱり抽象的すぎるし……そうだ、聖杯戦争に限って言えば、どうだろうか?
たとえば、竜を召喚できると期待して召喚したらもふもふの羊皮しかもっていなかったとか。
召喚したらドヤ顔で童貞宣言したあげく人間の価値をこき下ろしてくるとか。
アホ毛ぶるんぶるん震わせながら騎士道(笑)を言ってきて、ああもう相性最悪だわと戦う前から分かるとか。
開口一番『戦わないのが仕事なんですぞ(キリッ)』とか言ってきて執筆作業はじめるとか。
まあ、そういうのも辛いよな。わかる。僕もやったけどただデカいだけのダメサーヴァントだったし。
有料ガチャ引いたら☆3のクソなキャラ引いたようなもんだよ。うん。
でもさ、でもさ……今ならわかるよ……そんなもんじゃ絶望じゃないって……
だって、きっと「これ」よりはマシだと思うんだよなあ……
「いいいいやっふううううううううう!!!!!!!!!!!!」
「なにやってんだこのバカトカゲェェェェェェェ!!!!!!!」
いきなりドブ川でバタフライし始めるトカゲが僕のサーヴァントだなんてさぁ……ッ!
「ふう、肉体労働は科学者の本分ではないとはいえ、フィールドワークも疎かにしない吾輩。
一天地六全方位に隙のない吾輩の科学っぷりが凄過ぎて凄過ぎて震える。
あ、ところで勤労後にはシナチク牛乳が身体によろしいんだトカ」
「ドブでばちゃばちゃやってることの何処がフィールドワークなんだよ!
今の行為の一欠けらにでも科学の要素があったかよ!
なんで僕がお前にドリンク奢ってもらえるオーラ全開なんだよ!
っていうかシナチク牛乳? ネーミングだけで吐きそうだよ!」
紫色のマントを颯爽と羽織りながら、ぶるぶると水気を飛ばす二足歩行のトカゲに、
間桐慎二は張り裂けんばかりに吠えた。ツッコミ所が多すぎて、飲み物を所望している側よりも喉が渇く。
「カリッカリしてますなあ小僧。
お~~こわっ。普段大人しい子供こその爆発しやすきは現代社会の生み出した闇ですわ」
「爆発させてんのはお前だよ!! あ~~なんでこんなことになっちゃってんの……
終わったんじゃないのかよ、聖杯戦争は……ッ!!」
慎二は萎れた海藻のような髪を掻きながら、苦悶の渦の中で悶える。
そう、問題はこの両生類だけではない。その前段階から既に彼を唸らせる要因になっている。
聖杯戦争。間桐慎二にとって忘れようにも忘れられない、愚かさと嫉妬と葛藤と憎悪と恐怖の原風景。
じくり、と心臓が戦慄いた気がして慌てて両手を胸に充てる。大丈夫、増えてない。“僕は増えていない”。
聖杯戦争の末期、黄金のサーヴァントによって埋めこまれた小聖杯によって聖杯に“できそこないかけた”間桐慎二。
しかし、幸か不幸か、あるいは運命の皮肉か、
決して自分のものになることのない少女<とおさかりん>の決死の行動によって、彼は聖杯戦争を生きて終わることができた。
妹の口やかましい介護あってか無事退院もなり、この後の未来に思いを馳せて準備をしていた彼に待っていたのは、
新たなる聖杯戦争への扉だった。いや、無理矢理扉があいてグイ、と引っ張られたという方がただしいか。
(畜生、忘れられれば、それで収まってたのに。畜生、畜生……ッ!!)
だからこそ、彼の方針は未だ決まっていない。
僅かに収まった動悸にぜいぜいと息をしながら、左手甲に浮かんだ令呪を見る。
偽臣の書ではない、正統なる令呪。
それを見て胸に浮かぶのは、興奮と諦念。
「今度こそは」と思う自分と「もういやだ」と思う自分が相反して、千路に乱れている。
どちらだ、この胸を突き動かす衝動は、どちらに行きたがっている。
「→<シンジィ、気負いすぎると抜けるぞォ?>」
「それいろいろ混ざってるからやめろよバーサーカー!!」
もう半分涙目になりながら、慎二は叫んだ。
感情の整理だけでもいっぱいいっぱいなのに、宛がわれたサーヴァントはよりにもよってバーサーカーだったのだ。
しかも、極めつけの狂人。いや、そもそも人じゃないんだけど。
お爺様――間桐臓硯曰く、第四次聖杯戦争では間桐はバーサーカーで参戦したようだけど、結果は推して知るべし。
間桐にバーサーカーは鬼門なのだ。
自分のキャパシティが大容量とは思わないが、これは流石に限度があるだろう、と思う。
いっそ令呪でどうにかしてしまいたくなるが、それを慎二はぐっと堪える。
今回は自分が正規マスターだ。下手に令呪を消費すれば後がない。少なくとも、今はまだできない。
「ふふふふ……マスターもやる気のあまり“鎮まれ……僕の右手……ッ”ムーブをしておられる。
よござんしょ。三国一の智将と名高い吾輩にかかればロケットストーブに乗ったが如き安心の夜間急行。
ご近所でも評判のやればできる子ぶりを、見せつけるとしましょうや」
「……そういえば、お前もサーヴァントってことはなんか願いでもあるのか?」
ライダーとギルガメッシュで懲りたのか、はたまた無意識か、
かつての聖杯戦争では絶対に口にしなかったであろう問いを慎二はバーサーカーに投げかける。
「? まあ黒い服のおっさん達に追われないことが大前提ではありますが。
何やら芳香剤でも消しきれない科学的なにほひをビビッと感じてはせ参じた次第。
科学と聞いては黙ってられない我等科学の子ですが故に」
腕を組みながらうむうむと唸るバーサーカーに、慎二はああそうですかと感情の籠らぬ声で応じた。
とにもかくにもここでは目立ちすぎる。セーフハウスを確保しなければならない。
霊体化を指示しながら、慎二は踵を住宅街に向けた。
消える間際、バーサーカーは思い出したようにつぶやく。
「あとはとりあえずゲー君を見つけないとですなぁ~~
本当にどこに行ったのやら。珍しい蜘蛛型怪獣に出会ったんでお近づきの印に友情クロスしたら、
いきなり周りがクリスタルパレスになるものだから。きっと綺麗すぎてうっとりまだ見てるのでありますかなあ」
しみじみと頷くバーサーカーの台詞の行間にうすら寒いものを覚えながら、慎二は街を歩く。
顔も知らぬこいつの相棒の安否よりも、まず自分が生き残らなければ始まらない。
【クラス】バーサーカー
【真名】トカ@WILD ARMS 2nd IGNITION
【パラメーター】筋力E- 耐久C+ 敏捷C 魔力E- 幸運B 宝具B
【属性】混沌・狂
【クラススキル】
『狂化:EX』
「狂戦士」のクラス特性。理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。また、現界のための魔力を大量に消費するようになる――
はずであるが、普通に会話ができ、パラメーターの向上はなく、同時に現界のための必要魔力も増加していない。
これは、このスキルがバーサーカーが健常な状態から狂化したことを示すわけでなく、
我々の主観における正常から見て外れている(=狂っている)度合いを表しているためである。
少しでも意志疎通を試みれば分かるだろう。ナチュラルボーンキチガイ。まさしくインヴェーダーである。
【保有スキル】
『世界侵食:A+』
ある魔女っ子に曰く「世界観が違う」と言わしめたバーサーカーの存在自体を示すスキル。
淡水の中の海魚、泳ぐ鳥、魔法少女変身系アニメでやっさいもっさいと叫ぶような
「その惑星(ものがたり)に存在してはならないもの」を存続させる。
Cランク以下では世界からの修正力に多少抵抗できる程度だが、Bランクでは完全相殺し、
Aランク以上ではスキル保有者の持つ法則――空気とでも呼ぶべきもの――を周囲に影響させていく。
また、法則や制限などもまたこのスキルによって侵食を受ける。(神性がなければダメージが与えられない、など)
ランクが高ければその分抵抗は可能だが、
少なくとも同ランクより上のスキル・宝具でなければその
ルールをスキル保有者に強制できない。
なお、今回不在の相方がいた場合、スキルランクはEXになる。
『星の開拓者(偽):C』
あらゆる不可能事象に成功の可能性を付与するスキル。
その星における「不可能」に対し、他星存在であるバーサーカーはそれを可能とする「未知」を所有している。
そのため、バーサーカーの行うあらゆる行動に対し成功確率が0%と示されても、
それは小数点以下を切り捨てているためであり、実際は小数点以下の確率で成功する。
『被虐体質:B』
集団戦闘において敵の標的になる確率が増すスキル。
バーサーカーにおいてはその振る舞いを無視したくても思わずツッコミを入れたくなるようになる。
周囲にいる者たちはこのスキルに充てられ、新しい側面を見せるだろう。
【宝具】
『科学大迫力研究所(パラディグム・タイプ・リザード)』
ランク:E~C++ 種別:対人~対軍宝具
レンジ:1~30 最大捕捉:吾輩の器はうがい用のコップより深いトカ(1~10人)
バーサーカーの「科学」の象徴であり、彼の心象にして若かりし頃のヤンチャの具現。
天を驚かし地を動かし時にメランコリィな想い出の堆積した内的宇宙を固有結界として周囲に展開する。
基本となる世界はバーサーカーがファルガイアに建造した科学大迫力研究所だが、
「ヴィンちゃんとの付き合いは切っても切れない関係であります。ほら、この艶めかしい吾輩のしっぽのように」と言うように
オデッサ科学班統括の肩書を職権乱用して、オデッサが所有・運用した戦闘翼バルサキスやアルケミックプラント、
百眼(ヘイムダルガッツォー)を取り込み、異形の複合要塞となっている。
そこにはバーサーカーが製造・調整した改造タラスクやアームズキラーなどの大怪獣たちや、雑魚怪獣、トラップ、兵器類が犇めいており、
バーサーカーはそれらを暖かい春の朝に思わず2度寝してしまう程度の確率で制御することができる。(つまり半暴走である)
また、この宝具を応用することで固有結界内の怪獣や兵器、薬物などの一部を衛宮士郎の投影魔術のように現界させることも可能。
バーサーカーはそれらを自分の科学によって創ったものだと言い張るが、実際は内側から持ち出しているだけである。
顕現させる規模によって魔力消費も変動する。
『僕らに愛と勇気を教えてくれるデッカイ人(ブルコギドン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:吾輩のつぶらなお目目に映る限り(1~50人)
バーサーカーがライトノベル10巻分の艱難と辛苦を踏破して完成させた科学の結晶たる暴れ怪ロボット。
見た目は腕にドリルのついた二足歩行の牛であり、今一つ緊張感がないフォルムだが、そのスペックは超常にして天上。
64kgの特殊火薬を装填したグレネードランチャーでの『暴徒鎮圧』は鎮圧どころか鏖殺の域に達し、
腕のドリルハンドからくり出す『ドリルドリッガー』は青函トンネルも72時間で開通可能。
超合金ブルコギに鎧われた肉体は宇宙エンジン『ゴリ押し』を元にした永久機関で自己回復を行い、
その攻防ともに金城にして鉄壁なボディを駆るのは
やむにやまれず犯罪に手を染めた中年男性3人分の悪い心をベースに作られたアンチ良心回路を備えた電子頭脳。
もう那由多の彼方へ尖った性能が、一周まわってまともな超兵器になったという悪夢の大機関。
この宝具にもスキル:世界侵食が付与されるため、稼働し続ける限り物理的にも観念的にも世界を蹂躙する。
ただし、発動には他者に「ブルコギドンという超兵器が未完成である」ということを刷り込む必要がある。
もったいぶればぶっただけ、期待させれば期待させただけ信仰が宿り、
この宝具は強烈なギャップ燃えとして敵対者の脅威となるのである。
ただし、ハードSFのお約束として、50%の確率で暴走し、造物主に反逆を起こす。
なお、睡眠を誘発する魔術・特技だけは試してはいけないんだトカ。
『外典第六聖杯・輝ける銀腕(ディアフレンズ・アガートラーム)』
ランク:EX 種別:対人類宝具 レンジ:‐ 最大捕捉:-
人の意識を束ねる交感器にして人(アラヤ)と星(ガイア)を繋ぐ、契約の神造兵装。
最大出力で放たれる『天地満たす祈りの光(アークインパルス)』は使用される星の知性体の総数分のダメージを与える。
本来は別の英霊(聖杯戦争に呼ばれる場合はセイバーないしセイヴァ―と思われる)の持つ宝具であるが、この前遊びに行った際に借りパクした。
ただし、かつて選定の黄金剣がアルトリアが現れるまで抜けなかったように、この宝具を使えるのは「全人類の総意志」を背負った「人類」のみである。
なので、そもそもアラヤにもガイアにも属していない外宇宙生命体(バーサーカー)では使用はできない。何がしたいんだお前は。
【人物背景】
紫色のマントを靡かせた二足歩行の緑色のトカゲ。ファルガイアでは反社会武力組織オデッサの科学班統括(自称)を務めており、
相棒のゲーと共に、主人公の率いる治安組織「ARMS」とは時に協力したり時にバトルしたりいつもボケツッコミなどを繰り返していた。
登場とともにBGMと一緒にシリアスを因果地平に吹き飛ばす、明らかに出る作品を間違えているトカゲの人。
実はファルガイアの生物ではなく、ステシイガ太陽系第五惑星・通称リザード星出身の異星人であり、本当に世界観が違った。
彼は故障した宇宙船を治すためにやむを得ない事情から悪の組織に加担していただけなんだトカ。
常時ハイテンションでバーチカルな言動からは想像できないが、
他星の技術を難なく使いこなして改造・研究ができるあたり、技術力だけは折り紙つきである。
なお、聖杯の電脳に登録された情報ではなく、純正の生身で参戦している。(Extraのアルクェイドと同じ)
【聖杯にかける願い】
吾輩物持ちはいいほうでして3歳の頃から使っているご飯茶碗は今もヒビなくピッカピカなんで聖杯とかどうでもいいんだけど
科学と聞いて呼ばれなきゃ科学者じゃねえんだから響かせてやるぜ……本当の……『 科 学 』ってヤツをよォ……ッ!!
【マスター】
間桐慎二@Fate/stay night
【マスターとしての願い】
聖杯戦争に参加する……? もう一度、あれを……?
【weapon】
なし
【能力・技能】
なし。間桐の家系は代々魔術回路が劣化しており、ついぞ彼は魔術回路を持たず生まれてしまった。
故に魔術師としてはある程度の知識こそあれど三流以前の存在である。
ただし、学校の成績や弓道部で副部長を務めるなど、魔術以外の事柄についてはそつなくこなせる天才型である。
今回、マスターになれたのはバーサーカーのスキルによる影響が大きい。
【人物背景】
冬木の聖杯戦争に関わった少年。通称ワカメ。
本聖杯戦争では凛ルート・トゥルーエンド後より参戦(正確にはアニメUBW後)。
そのため、その鬱屈した自尊心はある程度抜けている。
【方針】
とにかくこんなバーサーカーじゃどうしようもないからひとまず生存の確保優先。
聖杯戦争を知っているというアドバンテージを生かす。
最終更新:2015年12月08日 18:09