【聖杯戦争】とは、まさしく異常事態である。
しかし、人々の大部分はそれに気づくこともなく、平穏な日常を送っていた


「やだ……もうこんな時間。帰らなくちゃ」
「ええ……まだいいだろ。もっと遊ぼうよ。せっかく知り合ったんだからさー」


深夜の公園を歩く、ふたりの男女も聖杯戦争のせの字も知らない一般人であった。
胸元を強調するような服装をしている、若干『遊び馴れている』と感じる若い女性。"ギャル"という人種であろうか。

「今日はもう遅いし……う、うちに泊まるかい?家賃二十万もする良い部屋なんだぜ?」

その女を必死に誘おうとしている男は、不良と聞かれたらそうでもなく、異性の気を引こうと必死に着飾ったことが見てとれる『チャラ男』であった。
しかし、女の派手な化粧で着飾った顔には、自分を引き留めようとする男に対して『めんどくさい』と感じていることは明らかだった。
相手を気遣うような事を言っているが、その実視線はずっと自分の胸元を覗いていることに女はだいぶ前から気づいていたし、相手の期待していることに付き合う気もなかった

そもそもこの男とは知り合ってまだ数時間もたっていない。
何かおごるからと、ぎこちなく自分をナンパしてきたので少し魔が差して、からからかい半分に付き合っただけであった。

「いや私たちまだそこまで親しくないし、とりあえず今日はごちそうさま」
「じ、じゃあ家まで送っていくよ。夜道はぶっそうだし」

男のしつこいアプローチに若干の鬱陶しさを感じながらも、返事を変えそうとして、立ち止まった。

「おい兄ちゃんよぉー……女がイヤがってんだろォー。てめーだけで帰れよ」

ふたりは眉を潜めた。如何にも悪い男ーー所詮『DQN』たちが絡んできたのだ
黒シャツにスキンヘッドの男が、虫か何かを払うように『シッシッ』と手を降っていた。シャツからみえ隠れするタトゥーが、否応なしに威圧感を感じてしまう

「女は俺達がちゃーんと……おいしく頂きますってか?」
「ギャハハハハ!!最高じゃんそれ!!」

太った体型のモヒカン男の言い回しに、何が面白いのか爆笑する金髪ピアスの男。女は予想外の自体に不安になり、横目で連れの男を見た。

「え……え……?」

男は固まっていた。

「兄ちゃん、とりあえずサイフとケータイ置いてきな。テメーはそれで見逃してやらあ」
「……はい」

何の蝶々もなくサイフとスマートフォンをスキンヘッドに差し出していた。その顔には恥じている様子はなく、諦めだけがあった。

「うわwwwwだっせwwww」
「へへ……貰っとくぜ」

さっきまで必死に食らいついていた女を守ろうともせず、その順丈な態度に男たちは爆笑した。女も呆れて侮蔑と軽蔑の眼差しを男に向ける。

「あんたってサイテー……」
「何いっているんだ!!僕がケンカしてケガすることを望んでいるのか!?」
「……は?」
「そ……そんな女だとは思わなかった!!見損なったよ!!」

女の額に青筋が浮かぶ。
あろうことか保身のために自分を売った矢先にこれである。不安よりもめらめらと怒りが湧き出てくる

「ははは、まー自己正当化しねーと、やってらんねーよな」

スキンヘッドもその物言いに苦笑していた。外見からして大した相手ではないと思っていたが、こうも弱腰だとは

「じゃあテメーはさっさと消えな!!」

モヒカンが男の襟首を掴み上げた。
弱者をいたぶる優越感を感じているのか、残虐な笑みを浮かべている。
情けない悲鳴をあげる男を尻目に、欲望にたぎった視線の中に微かな憐れみを含めたスキンヘッドが言った。

「なぁねーちゃん。こんな弱っちいヤローの精子なんか受け止めてやる必要ねーぜ」

ふと、そこで怪訝そうに眉を上げた。
いましがたやり取りを見ていた女が、固まっているのだ。口をあんぐりとあけ、自分達の背後を見ながら。

「あ?どうし……」

それが男の最後の言葉であった

呆然とするふたりの眼前に、それはいた。
異様な風貌の男だ。
がっしりとした骨太の体格に、溶接工のような服装をした怪人。
さきほどまでふたりを恐喝していた男たちは、その怪人の足元で屍を晒していた。
恐らく彼らも何が起こったのか理解できないままに死んだのだろう。
その顔には溶け合うようにして犬の死体が溶接されていた。
それに気づいた女が悲鳴を上げた。

男はどうかわからないが、すくなくとも女はすぐにこれをしたのがこの怪人だとわかった。左手にアーク切断機、右手に比較的新鮮な(腐敗していない)犬の死体を持っていたから

ジャリ、怪人のブーツが地面を擦った。

「大丈夫か?」

そう問いかけてきたのは、怪人ではなかった。女は再度目を疑った。
怪人と肩を並べるように現れたのは、西洋鎧で全身を固めた女(スカートを着用していたのと声で判断)だったからだ。
その手には、人ひとり簡単に切り裂けるような処刑斧を携えていた。

自分の常識に真っ向から喧嘩を売るような自体に、女は固まる。
「あ……あの!!ありがとうごまっ、ごまいざした!!」
しかし男は違った。今回ばかりは
恐喝してきた悪漢を殺害した相手に、警戒よりも感謝の念を感じたのだ。
臆病な男はいいように男たちに従ってしまったが、やはり内心では相当悔しかったのかもしれない。男たちの不可解な死に明らかな喜びを感じていた。
怪人は立ち尽くし、鎧の女は兜越しに男を一別した。

「僕たち困ってたんです!!救ってくれてありがとうござい」

「うるさい」

そしてズバッ!!と首を跳ねた。
技術ではなく、純粋な筋力のみで振るわれた処刑斧は遺憾なくその切れ味を発揮し、男は死んだ。
ゴロゴロと地面に転がる生首には、何が起こったのかわからないといった驚愕の表情が張り付いている。
切断された大動脈から、一呼吸おいて鮮血が噴水のように吹き出る。側にいた女の顔にも飛びちり、悲鳴が上がった。


「なぜこんなことをするのか?理由は単純だ」

「こんなゴミどもがのさばるから社会が汚れる。だからそいつらを殺せば社会はよくなる。生きて人に迷惑をかけるクズよりも殺して生ゴミにした方がずっと有益だ」

「ゴミが人間的に成長するまでに何人の人間が被害にあう?
精液は出してもまたすぐ溜まるし、金を使えばなくなるんだぞ?
そんか輩があちこちで性交し子種をばらまいてみろ…恐ろしいことになると思わないか?」

男たちの死体を、彼女は軽く足で小突いた。まるで汚物を扱うような仕草だ

「例えば……貧乏なくせに無計画に大家族を作り、国の保証にたかるような連中がいるだろう?
節度ある性生活を送る真っ当な納税者がその連中の尻拭いをしているこの世はおかしくないか?
誰も悪者になりたくないからがまんしているだけではないのか?」

足元の転がる生首を拾い上げる。
眼球が裏返り、白目を向いて口を開ける生首は妙に滑稽な表情だった。

「この男を殺したのはゴミを容認したからだ。女も満足にゴミから守れないならそもそもデートなどすべきではないのだ」

その生首を女に差し向けて、彼女は静かに問いかけた

「それを踏まえて、この男を殺した私を君は責めるかね?」


「せ……攻めません……!!」
女は鎧の女を肯定した。首を何度も横に降る。
「彼が私を売ろうとしたのは腹が立ったし…」

その答えに満足したのか、それまで緊張していた場の空気が弛緩した。

「そうか、ならいい……ところで、なぜお前は胸の開いた服を着ている?」
「え?」

瞬間、突如豹変した鎧に蹴り飛ばされた。
鳩尾に打ち込まれ、耐えきれずにその場で嘔吐する女。涙をにじませながら見上げると、それまでの穏やかな雰囲気など消し飛んでいた。

「とぼけるな!!お前はお前で自分の女体を見せびらかしていたんだろう!!
そもそもお前もおかしいのだ、ケーキをそとに放置しハエが寄ってきたら文句を言う女がなァ~~~~~~!!!」

激昂したように女を糾弾する。その声は狂気に染まっていた。兜から覗く視線は、路上の汚物を見るような冷たいものだった

「お前はお前でこの男が安全かどうかに気を回すべきだった!!しかしどうでもよかったのだろう?この淫売がっ!!」

衝動のままに、先客の血に染まった斧を振り上げる。

「つまりィお前もこのゴミどもと同類ということだ~~!!」

ズバッ!!なんの弁解もする猶予もなく、女は男と同じく首を飛ばされた。




◆◆◆◆◆



「また一歩、正しいことができたな。バーサーカー」

公園の処刑から数時間語、早朝。
鎧を脱いだ少女は、マンションの自室にて側にたつ怪人ーーバーサーカーに話しかけた
「……」
バーサーカーは答えない。もっとも、彼が此方の問いかけに答えることなどマスターとなってから一回もないのだが

『ガーディアンズ』
自己を極限まで鍛え、そのパワーを用いて、理想とする正義と友愛を実現する、暴力をもって暴力を排除する中学生騎士団である
かつては有志によるボランティア集団だったが、新リーダー就任により方向性が大きくかわり、不良の落書きを消す集団から落書き前に処刑する集団へと変貌した。
そしてその集団を率いていた元リーダーが鎧の女ーーネメシスである

「さて、と……」

ネメシスは眼前に山住となったステッカーに目を止めた。それは『GUARDIANS』と印刷されていた

ガーディアンズの目下の活動内容はとてもシンプルだ。
『GUARDIANS』のステッカーの張られた相手を処刑する。それだけである
新リーダーによって販売されたステッカーは分かりやすく言えば「こいつは悪いやつだから死んだほうがいい」という証明書であり、それを張られたものはどんな人物だろうが死刑に値する。

突如として参戦してしまった聖杯戦争だが、ネメシスはこの場でもガーディアンズの正義を貫くつもりである
引き当てた英幽は狂戦士『バーサーカー』と言えども、ネメシスと同じく正義を執行する立場のものであったのは幸いだ。聖杯を狙うなら、恩義ある新リーダーに捧げるのも悪くはない

コツコツと闇夜に紛れて活動していたのが効をそうしたのか、ネットではすでにネメシスのことや、意図的に流したガーディアンズの情報がちらほらとみえ始めていた。

「ーーここ横須賀に我らガーディアンズの正義を広めて見せる」

すでにネメシスは死体の身ではあるが、その信念は本物であった。若干、歪んではいるが……


【クラス】
バーサーカー

【真名】
犬溶接マン@Hitman

【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力E 幸運E 宝具C

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
狂化:B
バーサーカーの全ての行動原理は「犬の死体を悪人の顔に溶接する」ことに特化している

【保有スキル】
精神汚染:A
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。ただし、同ランクの精神汚染がされていない人物とは意思疎通ができない。

仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。


【宝具】
『ドッグウェルダー』
ランク:B 種別:対人宝具 
バーサーカーの「犬の死体を悪人の顔に溶接する」 という能力が宝具となったもの
属性:悪のサーヴァント、悪と分類されるNPC、敵マスターと対峙した場合、高確率で犬の死体を顔に溶接することができる。判定が出た場合相手は死ぬ。同ランクの幸運で対処可能

【人物背景】
溶接工のようなコスチュームを着込み、アーク切断機と犬の死体を持っているヒーロー。分類としてはヴィジランテに当たる。
能力は「犬の死体を悪人の顔に溶接する」こと。相手は死ぬ。
犬の死体は野良犬を罠に掛けて調達しており、必要に応じて予備も持ち歩く。

ヒーローである。

もう一度言うが、ヒーローである。ヴィランではない。
繰り返すが、あくまでもヒーローである。
素顔を見せるどころか喋ることすら一切なく、時にヒーローやチームメイト相手にすら襲い掛かるという完全なキチ……怪人のような有様でもヒーローである。
ちなみに活動拠点はゴッサムシティ。
つまりバットマンが活躍する裏で、彼も活躍している。犬を悪人に溶接して。
あと、彼が持っているのは切断機であって溶接機ではなく、溶接棒もないのだが、何故か犬の死体を溶接できる。
溶接した犬の死体も原型を留めているため、もう何かそういう超能力なのかもしれない。

【サーヴァントとしての願い】
????

【マスター】
ネメシス@血まみれスケバンチェーンソー

【マスターとしての願い】
正しいことを行う(今のところは新リーダーに献上する)

【weapon】
『処刑斧』
巨大な斧。一撃で首を跳ねることができるほどの切れ味
『鎧』
ガーディアンズの正装。
至近距離からの小型ミサイル直撃にも一回だけは耐えられるくらいの防御力を誇る

【能力・技能】
『改造死体』
分かりやすく言えばゾンビ。怪力で中々しぶとく、物理的に破壊でもしないと無力化は難しい。

【人物背景】
当初は町の掃除や独居老人の家を訪問したりなどの「ふつう」のボランティア活動を有志で行う善良な学生だったが、訪問しようとしていた老人のガス自殺に気づかず漏電による引火で巻き込まれる形で爆死。その後死体安置所から新リーダー「藍井ネロ」に引き取られ改造死体として復活し、以降は新生ガーディアンズメンバーとともに忠実な手下となる
母が男遊びに激しく、家に男が来ている間は夜中でも家に入れてもらえず、本人の語りから推測するにその時に性的ないたずらをされた可能性もある。この経験からやがて「汚い奴らを殺せるルールがあればいい」といった過激な思想を持つに至る。
与えられたルールにガチガチになるタイプで、特別扱いをひどく嫌う

【方針】
ガーディアンズとして活動し、ステッカーの概念を拡散し正義を知らしめる
ルールを厳守しなおかつ活動の邪魔をしない相手なら同盟を組むのも選択にはいる
私利私欲のために聖杯を望むもの、とくに魂食いなどの"ルール違反"に手を染めている主従は、ガーディアンズの名において問答無用で抹殺する。ついでにステッカーを貼られた相手も抹殺する方針

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最終更新:2015年12月08日 18:15