イタリア北東で生まれた鍛冶屋の息子は、後の人生においては勇敢な兵士となった。
剣林弾雨を乗り越えて、皆からの信頼を勝ち得た彼は、やがて、政治家となり、権力を束ね、
一国を意のままに動かして――、最後には残酷に処刑された、真っ逆さまに吊るされて。
※ ※ ※
何の変哲もない街中の通りを、褐色肌の少女がそこかしこに興味を散らしながら歩く。
周りの人々は視界に入ったその少女に思わず意識を寄せて、その幼げな様子から周囲に保護者の姿を探した。
けれども、そんなことは意に介さず、少女――リベッチオは、横目に通過する自動車を眺めながら、ふらふらと歩いていた。
(迷子に、なっちゃったかな?)
頭の片隅にそんな考えが少し浮かぶ。少なくとも、今リベッチオが見ている風景はリッベチオの知っている範囲の中では、存在しないもので、
そもそもこの場所にいること自体、目が覚めていきなりのことであった。けれども……リベッチオは頭を振る。
今のところは、そんなことは考えず、この街の様子を見て回ろう。寂しくなったころに、鎮守府の人が探しに来るだろうから、それで帰ればいい。
もし、探しに来てくれなかったのなら、一際泣いて、そのあと考えればいい。
イタリアの陽気さ、というべきか、今のところは現状をそんな風にとらえている少女が、やがて交差点に差し掛かろうとした辺りで――。
――ブレーキ音、制限速度を少し超えた程度の自動車が、突然現れた男を跳ね飛ばす。その通りの空気が凍り付いた。それを目の前で見たリベッチオも。
いや、彼女の場合はもっと深刻だったかもしれない。吹き飛んで行く男の姿を、艦娘の優れた動体視力でとらえたリベッチオは、壮年のイタリア人と見分けて、
……跳ね飛ばした運転手が、真っ青な顔をして車から降りてくる。周囲の群衆がざわつきだして、しかし、その男の姿は、どこからも消えていた。
※ ※ ※
「……ローマの親方は、吊るされて死んだよ」
人類の生存圏を犯す怪物、深海棲艦との戦いの最中。前線より救出された艦娘は、己をマエストラーレ級三番艦、リベッチオと名乗った。
陽気で活力にあふれる様子、その風貌の幼さも手伝って、監査役たちの頬も緩んでいった中で、ただその艦娘は、モデルとなった自身の轟沈後――
国とその独裁者がどうなったかを聞きたがった。伝えるのは酷だと考えていた監査役も、しかし隠しては艦娘としての活動に支障が出ると、
上層部からの命令に従って、その結末を、彼女に告げた。
聞き遂げたリベッチオは、大きな瞳から、その褐色の頬にぽろぽろと雫を落とし、やがて声を上げて泣き出した。
※ ※ ※
似ていないはずの壮年のイタリア人の男の死の幻影から、過去の己の親方を想起したリベッチオは、どうしようもなく寂しくなった。
その交差点から逃げるように走り出し、息が切れるまで走って、涙がこらえきれなくなったころにとぼとぼとした歩き方になって、
そのころには、リッベチオは、己が河川敷にいることに気がついた。
リベッチオは、流れ出る涙を必死で抑えながら、その場に腰を下ろすと、耐えるように流れる川の水を眺める。
水の色は、故郷の海の色とは似ても似つかない色で、リベッチオはまた少し寂しくなる。鎮守府にもなかったかつて経験したはずの、
故郷の気候がじんわりと恋しくなり始めていた。
「……帰りたいなあ」
小さくつぶやいたそのとき、リベッチオはパシャパシャと、人が水面を叩く音を聞いた。
断続的に聞こえて、だんだん弱くなっていくその音に、彼女は、……人が、溺れている?
すぐに周囲を見渡し、やがて、下流の方で溺れている男の姿を視界に収めると、リベッチオはわき目も振らず川に飛び込んだ。
(助けなきゃ、助けないと、リベは、リベッチオは――)
水流に沿って泳いで、男のところにたどり着いたときには、男はすでに動かなくなっていた。
けれどもリベッチオは、何とか男を助けようと、あまりにも体格も異なる相手を、必死に必死に引っ張ろうとした。
水を何度も飲んで、自身さえも溺れかけながらも彼女は、助けようとする手を緩めない。
そして、急に彼女の引っ張ろうとしていた重みの感覚が消えた瞬間、彼女は意識を失った。
リベッチオは目を覚ます。河川敷に戻っていて、目の前には髪に斑点のある溺れかけていた男が立っていた。男は、目を覚ましたリベッチオを見つめると、
「お前が、俺のマスターだ」
そう、告げた。
【クラス】
ハングドマン
【真名】
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険
【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力D 幸運E 宝具EX
【属性】
秩序・悪
【クラススキル】
吊られた男:
パラメーター、特に運に関してマイナス補正がかかる。
またこのサーヴァントは後述する理由により補正が増大しやすい。
【宝具】
『鎮魂歌の残響(ゴールドエクスペリエンス・レクイエム)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:1
ディアボロにかけられたすべてをゼロにするスタンド能力。この能力によりディアボロはあらゆる場所、あらゆる時、あらゆる世界で死に続け、
しかもそれには終わりがない。真実に到達することも。これ故、ディアボロの能力は著しく劣化している。
また、戦闘においても、敵対者の攻撃を受けた場合、容易に霊核を損傷するほどのダメージを受ける。
ただし、マスターとのラインによって、突発的な出来事によっては死ににくくなり、死んで消滅した場合も、アンカーにつながれる船のように、
マスターの傍に出現し続ける。また、この宝具は自立しており、マスターの魔力を消費しない。
『キングクリムゾン』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:-
深紅の帝王、ディアボロの絶対的なスタンド。
時間を数十秒の間消し去り、ディアボロだけがその間自在に行動できる。
時の流れをディアボロの物だけにするこの宝具は本来はEXにも相当するが、
レクイエムによる精神の摩耗により弱体化しており、展開できる範囲、時間ともに狭まっている。
『エピタフ』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
永久に刻まれぬ墓碑銘。十数秒後の未来を予知する。
この能力をキングクリムゾンと併用することによってディアボロは無敵を誇っていた。
しかし、これも精神の摩耗により、数秒後の未来しか予知できない。
【保有スキル】
なし
【weapon】
キングクリムゾンのビジョンによる打撃。しかし弱体化により、筋力敏捷耐久すべてBまで落ち込んでいる。
【人物背景】
イタリアに勢力を持つギャング組織「パッショーネ」のボス。性格は冷酷非道で残忍であるが、自分の絶頂の位置を揺るがされることを恐れ、
詳しい経歴、人物像をすべて抹消し、もう一つの人格、ドッピオの影に潜んで生きてきた。
しかし、ブチャラティチームの裏切りとその後の追跡によって、正体が露見。その後、チームの一員たるジョルノジョバーナに敗北し、
その能力ゴールデンエクスペリエンスレクイエムによって、無限に死に続ける存在となり、精神も根本より折られた。
【サーヴァントとしての願い】
死に続ける地獄から解放されたい。
【基本戦術、方針、運用法】
戦闘どころか日常生活でも消滅の危険がある(復活するが)エピタフとキングクリムゾンで何とか対処し続けよう。
戦闘では実は宝具で攻撃を回避するより、受けて消滅した方が魔力消費的には優しい。
何度も繰り返すことによって敵の弱点を突くことも可能なはずだ。
ただし、この戦法は主従両方にとって、精神衛生上よろしくない。
とにかく、マスターのリベッチオだけは守り抜こう。
【マスター】
リベッチオ@艦隊これくしょん(ゲーム版)
【マスターとしての願い】
帰りたい。鎮守府にも、イタリアにも。
【weapon】
艤装は身に着けていない。
【能力・技能】
艤装がないので、そこらの小娘と同等である。
【人物背景】
イタリア海軍の駆逐艦、マエストラーレ級三番艦、リベッチオをモデルにした艦娘。
性格は陽気であるが、幼さも見て取れる。
【方針】
生き残る。また、救助したおじさんも死なせない。
最終更新:2015年12月08日 18:27