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はじめに

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先生方・保護者のみなさまへ


今、インターネットや携帯電話から子供たちにもたらされる情報に対して、その危険性が問題となっています。硫化水素による自殺の方法がネットで出回ったり、出会い系サイトが殺人に結びついた事件などがあり、マスコミでもネットを不安視する報道が相次いでいます。

これを受けて、2008年6月の国会で「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」、通称「青少年ネット規制法」が成立しました。この法律については、違法あるいは有害な情報から子供たちを守るという趣旨は理解できます。しかし、インターネットの仕組みを理解していない議員間で立案されたため、成立までには、インターネット事業者や携帯電話業界から大変な反発がありました。

それは、今の子供たちの生活から携帯やインターネットを取り上げることは、情報教育という面では後退であると考えるからです。また、インターネットの利用が悪いことであるかのように扱われることにも違和感があったからです。


子供にとって「インターネット」とは


教師や保護者の多くにとってインターネットとは、パソコンを使ってアクセスするウェブサイトがイメージされることでしょう。しかし現代の子供たちにとって、インターネットとは携帯電話から閲覧できる世界、すなわち携帯サイトや携帯メールなどを指します。

2007年の調査では、全国平均で中学生の5割強、高校生では9割強が携帯電話を所有しているというデータがあります。中高生の多くは、生徒個人が所有する携帯電話によってネットに接続しているのです。

とくに都市圏では、それ以外の地域に比べて、子供たちの携帯電話所有率が高くなる傾向にあります。東京のある私立中学校の調査では、入学時に女子の96%、男子でも72%がすでに携帯電話を所有していたという数字もあります。都市部およびその近郊では、私立中学校受験のために小学生から塾に通わせる家庭が多く、それをきっかけに親が携帯電話を持たせているようです。
子供とインターネットの議論は、もはやパソコンではなく、携帯電話を基本に考える必要があります。

子供たちのためにできること

子供たちがインターネットの違法あるいは有害な情報に惑わされないようにするために、どのようなことができるのでしょうか。そもそも携帯電話やパソコンを与えないというのも1つの方法でしょうが、すでに多くの子供たちがそういった機器を所有している以上、今さら取り上げるというのも難しいでしょう。

インターネットには、有用な情報もたくさんあります。また将来を左右するような人物と出会う場所でもあり、自分の隠れた才能を開花させる土壌でもあります。子供たちをインターネットや携帯から遠ざけようとするのではなく、インターネットの良い面を残しつつ、有害情報に惑わされないようにすることが大切です。

そのために私たちができることには、大きく分けて次の3つの方法があります。

  1. フィルタリング
  2. ペアレンタルコントロール
  3. 情報リテラシー教育

1.フィルタリング
青少年ネット規制法に関する議論で注目を集めたのが、「フィルタリング」という手法です。これは携帯ネットやインターネットから、特定の情報だけを遮断する仕組みです。ドリップ式のコーヒーメーカーで使用する“紙のフィルター”を想像していただければわかりやすいでしょう。飲むときに邪魔になる豆はフィルターで遮断したまま、必要な成分だけを取り出すことができます。

フィルタリングの難しい点は、どの情報が有用でどんな情報が有害なのか、子供の成長過程や置かれている環境、また性別によっても変わってくることです。そのため、パソコンでインターネットをフィルタリングするソフトウェアでは、年齢別に有害情報の種類を分けたり、遮断できる情報を保護者が選択できるなどの機能が豊富なものもあります。

一方、携帯ネットのフィルタリングでは、キャリア(docomo、au、SoftBank など)がそれぞれ提供していますが、個別の事情を汲んで細かく設定することはできません。

またフィルタリングの抜本的な問題として、有害な情報のみを見せなくすることができず、そのほかの有用な情報まで一緒に遮断してしまう可能性があります。フィルタリング機能を提供している会社自身も、「フィルタリングは不完全な技術である」と認めています。フィルタリングに全面的に頼るのではなく、他の方法と複合的に組み合わせるべきです。

フィルタリングは、機械的に機能するため、子供が保護者との対話を拒む第二次反抗期には、有用な仕組みです。しかし子供たちにとってはフィルタリングされているということがストレスとなり、その不満が保護者に向けられる可能性もあるため、運用には十分な観察が必要です。思春期を過ぎて大人への階段を上り始めた時期には、このような技術のみに頼るのではなく、子供との対話で動向を把握したり、情報リテラシー教育に比重を置くべきです。

2.ペアレンタルコントロール
欧米で広く取り入れられているのが、「ペアレンタルコントロール」という手法です。これはパソコンやインターネット環境などは親が与えたものであり、子供がそれらを使うのは親の監視下のみ、という考え方に基づいています。この方法は、小学生や第二次反抗期を迎える前の中学生あたりまでは、有効な方法です。

具体的には、パソコンを使うときには親が一緒に見ているという人的方法と、子供がどんなサイトに行き、どんな発言・行動をしたかというデータを取っておいて、あとで検証する機械的方法があります。後者はパソコンやインターネットに対しての高度な知識が必要になるため、日本ではあまり一般的ではありません。

ただし、携帯ネットの場合は、一般的に子供が自分で所持してどこでも使うことができるため、この方法を実践することはできません。

3.情報リテラシー教育
有害な情報を機械的に遮断してしまうのではなく、その情報はなぜ有害なのか、有害な情報に接したときにはどのように対処すべきかを教えることが、情報リテラシー教育です。子供の能力や、耐性を高めることがその目的です。また、自分の軽率な行動がどれだけ社会に大きな影響を与えるかを前もって教えておくことで、ネットでのいじめや掲示板のいたずら書き込みを抑制することが期待されます。

現在のカリキュラムでは、高校の「情報」の授業で「情報リテラシー」を扱っています。しかしインターネットや携帯電話は中学生(早くは小学生)から使いはじめる子供も多く、高校で学ぶのは遅いという批判が、子供たち自身からも上がっていました。そこで平成24年度(2012年度)からの新しい学習指導要領では、中学校の「技術・家庭」の授業で情報リテラシー教育を行なうことになっています。その代わり高校では、情報リテラシーは中学で学習済みとして、深く扱わないようになります。

この教材について

学習指導要領が平成24年度から施行されるとはいえ、それまでの期間、現実に子供たちと対峙しなければならない学校にとっては、教材の不足や先生方の負担が大きな問題となります。そこでこれらの問題をカバーするために、学校の授業の中で利用していただけるような、コンパクトな教材を作成することにしました。

各セクションは、学校の1時限の中で余裕を持って扱える分量にわけて構成しています。技術的に詳しくない先生方にも、ロングホームルームなどで活用していただけるよう、なるべく技術用語を避けて平易な言葉で記述してあります。

また学校での利用だけでなく、家庭内での情報教育の指針として保護者の方にも参考にしていただければ幸いです。

ライセンスについて

本教材は、クリエイティブ・コモンズ(CreativeCommons)ライセンスの「表示―継承」(by-sa)の条件で配布しています。原著作者としてMIAUの名前を表示する限り、無償で複製・配布したり、これを元に新しい教材を作ることができます。ただしその教材は、これと同じライセンスにする必要があります。
詳しくは以下のウェブページを参照してください。
http://www.creativecommons.jp/

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