0065:Scar Face ◆SD0DoPVSTQ





「ちっ……変な事に巻き込まれちまったぜ」
舌を打ちながら小さな住宅街と思われる場所を移動する。
「――これからどうするか」
過去に一大勢力マミーファミリーを築いた男は悩んでいた。
あれから信用できる仲間――たけしボンチューと出会った。
彼らとなら何とかやっていける。
一緒にいる内にそう信じている自分がいた。
そしてその暖かい世界が新たな自分の定位置なんだと信じていた。

この世界に来るまでは。

「なんだありゃ、化物め」
口からビームみたいなのを放った男。
そしてそれをあっけなく倒した奴。
マミーが今までいた世界とは根本からして違ってる事を嫌でも認識させられた。
頭の中で囁く甘い誘惑。
再びファミリーを築き力で他から身を守る事。
強ければ信頼なんてどうでもいい。
信頼をしてそれが裏切られた時のダメージを考えると恐ろしくなった。
そう、顔に傷がありマフィアの一員に見える彼もまだ子供だった。
たけし達を信頼するべきか?
たけしならこの状況でもみんなを引っ張っていってくれるという確信はあった。
だが、その力がこの世界でも通用するかどうかが問題だった。

悩んで頭の中がこんがらがりつつも歩みを止めないマミー
彼が十字路の曲がり角で曲がろうとした時、何かにぶつかった。
「きゃぁぁぁぁ!!!」
その声で思考を止め目線を前にすると、衝撃で後ろに転びつつも手と足で何とか距離を取ろうとする女性がいた。
「や、やい。ボクはキ、キミなんて怖くないぞ!」
座った状態で何かに負けないように虚勢を張ってる。
一瞬何かと考えたがすぐ察しはついた。
「あぁコレか」
自分の顔を右手でさすってみると至る所に凹凸を感じる。
つまりはこちらは何もしていないつもりでも、顔の傷が勝手に相手を威圧していたらしい。
昔自分で付けた傷だったが、さすっている内にまた傷が痛み始める様な気がした。
いや違う、昔を思い出して心が痛んでいるのか。
マミーの中で昔と今の状態が重なり始める。

「――傷が痛むの?」
ふと意識を戻したら、目の前の女性が起きあがってこちらを心配そうな顔で見ていた。
「これは昔の傷だ」
人を目の前にしながら心配されるような顔をしていたのかと思い、自分に苛立つ。
人に心配されるなんて俺らしくない。
そう突っぱねた筈だったがいつの間にか顔に柔らかい物が押しつけられる。
「――よく見たらキミ、まだ子供だもんね……」
「なっ……」
大きく包み込むように抱きしめられている。
反論しようにも強く抱きしめられている所為で巧く喋られない。
それどころか柔らかい物で呼吸すらままらななかった。
「キミもるーしぇクンと同じくらいの年だもんね……そんな子もこんな世界に飛ばされちゃってるなんて……許せないよ」

それから暫くして漸くマミーは彼女の胸から逃げだせた。
別に無理矢理放させようとすれば出来たのだが、先手を挫かれ調子が崩れた。
「――俺が怖くないのか?」
解放されてまず一言目にそれを聞いた。
「最初はゴメンね、でももう怖くないよ。この世界にきてパニックになっていただけだから」
彼女はてへっと笑い、本当にゴメンと手を合わせて謝った。
「――何故俺を信用している?」
それが今の自分が一番求めている答えだった。
顔に傷がある男をこの世界で見て恐れよりも先に、此方に心配して抱きついてくるその答えが聞きたかった。
「ボクはキミに似た子を知っているからね」
「俺に?――先程のるーしぇって奴か?」
「うん。どうしようもない位もの凄く下品で乱暴でそれでいて我儘なんだけど、本当は優しくて臆病な不器用な男の子」
「はぁ?」
言われてみた通り想像してみたが全くパーツが組み合わさらない。
ましてやそれが自分に似ているなんてちゃんちゃら可笑しい。
「――それだけで、そんな事で人を信頼していいと思っているのか?」
阿保らしいと吐き捨てながら尋ねる。
「ボクは、ボクはずっと一緒に暮らしてきたるーしぇクンを信頼しているから」
照れてはにかみながら彼女はそうハッキリと答えた。

「けっ、信頼なんてそう簡単に口にするもんじゃねぇんだよ」
そう言いながらもマミーはいつの間にか心の痛みが消えていることに気が付いた。
「――やるよ」
マミーはポケットにあったカプセルを放り投げた。
「どうせ、そのるーしぇって野郎を探しに行くんだろ」
そう、たけしボンチューを探しに行く自分のように。
「此処じゃないよりマシだろ」
カプセルから出てきたのはアタッシュケースとなにやら沢山の容器。
説明書に寄ればマシンガン、電磁ムチ、捕獲ネット、ウォーターカッター等の兵器が内蔵されているらしい。
「俺はこれで十分だからな」
そう言って容器を一つ手に取り楽々と握り潰してみせる。
中からは壁を失った液体が漏れてくる。
「うわー水だ、ありがとう!これだけあればお風呂だって毎日入れるよ!」
目を輝かせて沢山の容器を眺めている。
実際は圧縮して出す為大量に必要となる水の換えなのだが。
この辺には民家があるが水道、電気は通っていないらしい。
近くに川が流れていないことはないが、汚くて風呂は兎も角、飲み水としては期待できそうになかった。
海水も飲料水として利用するのは面倒だろう。
その点水がこれだけあれば色んな事が出来るのだろう。
この水の使い道を兵器として見出せなかった自分より似合っているのかも知れない。
マミーはそう思いながら相手が喜んでいる内に黙って後ろを向き去ろうとした。

「待って!ボクはヨーコ。大神官の娘ティア・ノート・ヨーコ
去ろうとするマミーの腕を掴まえて彼女は捲し立てた。
それが自己紹介だったのだと気が付いたのはそれから少し経ってからだった。
「……マミーだ」
「待ってって言ったでしょ!」
去ろうとするマミーを引っ張って「めっ」っと叱る。
「子供を放っておけないよ。お姉さんも一緒に行くからね」
「待っててね」とヨーコは自分のカプセルを渡すと、散らばった水の容器を再びカプセルに収納しようと悪戦苦闘し始めた。
その様子を見ている内にマミーは、此処に来て忘れていた物を完全に思い出した。
相手を信頼するからこそ、無理だと思った局面を乗り越えられてきたのだと。
彼の頭の中にはもう当初の迷いは消えていた。
「それ、ボクにはちょっとキツイからさ」
容器を一カ所に集めながらヨーコが言った。
収納に苦戦しているヨーコを後目にマミーはカプセルを放り投げる。
中から出てきたのは白と黄土色を基調にしたスーツ。
確かにこれでは女性は腰回りの露出を気にするかも知れない。
一緒に出てきた説明書を読むと『単純なエネルギー波やマグナム程度の威力なら無効にする柔軟力と衝撃吸収力を兼ね備えた防具』とある。
試しに握り潰してみようとしたがその柔軟力の前では無意味だった。
手足や頭など露出している部分は心許ないが胴体や腰、肩など覆われている面の防御力は信頼できる物なのだろう。
ただ一つの欠点は……
「だせぇ……」

「お待たせマミークン」
アタッシュケースを手にいつの間にか隣にヨーコが立っていた。
「待ってた訳じゃねぇ、そっちが付いてくるんだ」
「はいはい、それで良いから行こう」
マミーを軽くあしらうヨーコ。
ダーク・シュナイダーですら子供扱いの彼女の前では、どんなに威勢を張っても子供は子供だった。
「けっ」
それが面白くなくマミーは今日何度目かの舌を打った。





【東京都多摩地区/黎明】
【マミー@世紀末リーダー伝たけし!】
 [状態]:健康
 [装備]:フリーザ軍戦闘スーツ@DRAGON BALL
 [道具]:荷物一式
 [思考]:1、ヨーコを信頼
     2、たけし、ボンチューとの合流

【ティア・ノート・ヨーコ@BASTARD!! -暗黒の破壊神-】
 [状態]:健康
 [装備]:アタッシュ・ウエポン・ケース@BLACK CAT
 [道具]:荷物一式、大量の水が入った容器
 [思考]:1、マミーを護ってあげたい
     2、るーしぇ(D・S)との合流


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最終更新:2024年08月15日 19:55