0064:宇宙最強の男VS悪の帝王 ◆QXU.Tc2.M2
――長野山中の別荘地
「オイおめえ!」
山吹色の道着を纏った黒いツンツン髪の男、
孫悟空はその視線の先に居る最悪の吸血鬼、
悪の帝王こと
DIOをジっと睨み吸えていた。その悟空の険しい表情にいつもの陽気さは微塵も無い。
「こいつにいきなり襲い掛かったってのは本当か?こんな馬鹿なゲームに本気で乗る気なのか?」
悟空は傍らに横たわっているルフィにチラリと目線を配った後、その真意を確かめる様にDIOを問い詰めた。
「だとしたら、どうだと言うのだ?
そこの小僧が死のうが他の参加者を殺そうが、所詮は取るに足らぬ人間共、このDIOの知った事ではない」
事も無げに言い放つDIO。彼にとって自分以外の参加者など己の空腹を満たす餌でしかない。
主催者の意図に従う気は毛頭ないが、腹が減れば参加者を殺し、その血を啜る。
詰まるところ今現在の彼の行動原理はそれだけであった。ただ本能に従い他者の命を吸い尽くす。
そんなDIOの言葉を聞いたルフィがブルブルと身体を震わせ彼を睨みつけた。
「コノヤロ~!」
拳を握り締め今にも襲い掛からんと立ち上がったルフィだったが――
「やめろッッ!!」
悟空は手を前に突き出しルフィを静止させる。
「なんだよお前!?邪魔すんな!!」
「おめえじゃアイツには勝てねえ!殺されっぞ!」
先刻DIOと戦っていたルフィは、悟空が割って入るまで一方的に痛めつけられ、内臓にまでそのダメージを負っている。
悟空でなくともルフィに勝ち目がない事は誰の目にも明らかだった。
しかしその程度で引き下がるルフィではない。むしろ彼の性格を考えれば悟空の言葉は逆効果と言える。
「ンガー!!んなもんやってみなくちゃ分かんねえだろ!いいからそこどけよ!!」
悟空の言葉が癪に障ったのか、まるで駄々っ子のように食ってかかるルフィ。
悟空が譲らなければ延々と喚き続けるつもりだろう。
そして当然、隙だらけなその姿をDIOが見逃す筈もなく、
「フン」
鼻を鳴らしクナイを二本、悟空とルフィそれぞれダーツの的の如く狙いを付け投げつけるDIO。
狙うは頭部、命中すれば百点満点ゲームセットだ。
「危ねえ!」
間一髪それに気づいた悟空が喚き散らしていたルフィを蹴飛ばし、飛んでくるクナイからなんとか身を避わす。
「いってえな!急に何すんだーッ!」
助けられた事にも気づかず、単に蹴飛ばされただけと勘違いしたルフィは相も変わらず喚き散らすが悟空は既に取り合わず、
「・・・どうやら言っても聞いちゃくれねえみてえだな?」
意識は既にDIOの方へと向けられ敢然と対峙していた。
「フン、まずは貴様からだ!その後でじっくりと、小僧の方も始末してくれる!」
そう言って悟空に向かい歩を進めるDIO、迎え撃たんと身構える悟空、そして――
「WRYYYYYYYYィィィィッーーーッッ!!」
射程距離2mまで近づいたDIOは己の分身、ザ・ワールドを発現させ散弾の如き怒涛のラッシュを悟空に繰り出した。
(な!ざ、残像拳じゃねえ!!なんなんだこりゃ!?)
突如DIOの身体から出現した不可思議な人型のヴィジョンに虚を突かれたのか、
ガードの隙間から数発まともにパンチを食らった悟空は、体勢を立て直すため後方へと飛びのきDIOから距離を取る。
「むぅ・・・先程の小僧といい貴様も『スタンド』が見えるのか?」
明らかにザ・ワールドが見えている悟空のその反応にDIOは声を上げる。
「スタンド?」
DIOの疑問に首をかしげる悟空、だがそれも当然である。
彼の世界に『スタンド』などという概念はそもそも存在しないのだから。
「フン、まぁどうでもいい、見えていても『それ』が使えないのであればな、所詮このDIOの敵ではない」
本来、『スタンド』は同じ『スタンド使い』でない限り見えないのが、その
ルールだ。
しかし目の前の男は『スタンド使い』でもないのにスタンドが見えているではないか。
これも、この島がもたらす現象の一つなのか?
しかし単に見えているだけでスタンド使いでないのならば、最強のスタンドを持つ自分にとってなんら問題にはならない。
そう胸中で呟いたDIOは再び重火器の一斉放射の如くザ・ワールドのラッシュを放つ。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーッ!!」
時速300km以上コンマ数ミリ秒で繰り出される超高速のラッシュが悟空を襲う。
しかし悟空、先程とは打って変わって暴風の様に荒れ狂うパンチその全てを、ガードもせずに紙一重で避ける避ける避ける。
「む?こいつ!?」
原型も残さず葬るつもりで放ったラッシュが一撃も当たる事無く空振りに終わり、DIOは思わず目の色を変えた。
「ひゅ~、あっぶね!あぶねえ!さっきはつい驚いちまったけどよう、良く見りゃなんとか避わせっぞ!」
薄笑いを浮かべ挑発するかの様な悟空の台詞にDIOの顔が一層険しくなる。
しかし当の悟空は決して目の前の相手を挑発しているワケでも、ましてや侮っているワケでもなく、
それは未知の強敵に対する期待の表れ、つまりは『強いヤツがいるとワクワクする』彼の悪い癖だった。
「我が最強のスタンド、ザ・ワールドの攻撃を『良く見れば避わせる』だと?
マグレで避わせたからといって、いい気になるんじゃあない!」
DIOは思う。
マグレに決まっている。
でなければザ・ワールドのラッシュを、スタンドも持たないタダの人間がどうして避わせるというのだ?
「マグレなんかじゃねえって、それにそんくらいならオラにだって出来っぞ?」
そう言って腰を深く落とし構えを取る悟空。
独特ではあるが前傾姿勢なその構えは明らかに攻撃重視の型である。
「ほう・・・ラッシュの速さ比べか?面白い」
その顔に再び余裕の色を宿らせ、DIOはザ・ワールドを発現させる。
相手は多少身体能力に優れているとはいえタダの人間。
今度こそ確実に葬り去ってくれる、そしてその血を貪って糧としてくれる。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーッ!!」
三度、怒涛のラッシュが悟空を襲う、しかし悟空、今度はガードもせず避けもせず―――
「うおりゃああああああああああああああっっーーー!!」
独特の前傾姿勢から一足飛びで懐に飛び込み、散弾銃の如しザ・ワールドのラッシュに応戦。
手足が分裂したかと見紛う程の悟空の攻撃は宙空でザ・ワールドのパンチとぶつかり合い、
まるで金属音の様な硬物同士が激しくぶつかり合う音をひっきりなしに辺りに轟かせる。
「すっげ~」
轟音を轟かせ激突する両者、その限界を超えた超人同士の戦いは傍らで見ていたルフィのド肝を抜く。
DIOと悟空、その二人の攻防は全くの互角と言えた。
しかしその均衡が段々と崩れてくる、悟空がザ・ワールドのラッシュを押し返し始めたのだ。
「なにぃぃぃ~~~っっ!バ、バカなコイツ!コイツのスピードッ!ザ・ワールドより!!」
悟空の息もつかせぬ連続攻撃に次第に防戦一方となるDIO、その顔に既に余裕の笑みは無い。
「りゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃっっーーー!!」
その攻撃に既にガードすら間に合わなくなったDIOに対し、止めと言わんばかりに悟空は蹴りを入れる。
その蹴りを思い切り顔面に食らい後方の林まで吹っ飛ばされるDIO。
「ヌゥ、なんというヤツだ、ザ・ワールドのラッシュのスピードを上回るとは・・・」
すぐさま立ち上がるDIO。肉体的なダメージは思ったより少ないが、完全に力負けした事実に心中穏やかではない。
「今のでわかったろ?オメエじゃオラに勝てねえ」
降伏を進める悟空の言葉だったが、DIOは全く聞き耳持たず「フン!」と鼻を鳴らし悟空にゆっくりと近づいていく。
「まだやんのか?しょうがねえヤツだな」
半ば呆れた様に声を上げ再び構えを取る悟空、しかし次の瞬間彼にとって予想だにしてなかった事が起きる。
それは射程距離まで近づいたDIOがザ・ワールドを発現させ、繰り出したパンチに悟空がカウンターを合わせようとした瞬間だった。
ドギャッ!!
後頭部からコンクリートを鈍器で叩いた様な鈍い音が鳴り響き、悟空は前のめりにつんのめる。
振り向けば一瞬前まで前方にいた筈のDIOが悟空の死角、背後から後頭部を殴りつけたのだ。
「ク・・・ど、どうなってんだ?スピードはオラの方が上だった筈なのに、なんでいきなり後ろに?」
確実に合わせられる筈だったカウンターを外され、その上視認する事もできず背後に回りこまれ殴られた。
その不可解な現象に膝をつきながら悟空はワケも分からずDIOを見る。
「チッ!煮崩れしたカボチャの様に頭を粉々にフッ飛ばすつもりだったのだが・・・・・・・・・
貴様が単に頑丈なだけなのか?それとも我がザ・ワールドが思いのほか弱体化しているのか?」
舌打ちし、DIOは見下ろしながら持っていたクナイを一本悟空に投げつける。
「クッ」
飛んでくるクナイを避けるタメに悟空は膝をついた体勢からジャンプし空へと逃れ、次の瞬間――――
「 ザ
世 ・
ワ
|
界 ル
ド
」
――――時が止まった――――
空へ飛んだ悟空はそのまま宙に固定されてしまった。木々のゆらめきも草葉のざわめきさえも止まってしまった。
この何もかもが静止された世界でただ一人DIOは悠々と口を開く。
「フフフ、正に世界を支配する能力、これが世界(ザ・ワールド)だ!もっとも貴様には見えもせず感じもしないだろうがな」
そして懐から残ったクナイ7本全て取り出し――
「さっきは仕留め損なったが、今度は逃さん!」
そのまま宙に固定された悟空目掛けその全てを投げつけ、悟空に刺さるほんの数センチ手前でクナイが動きを止める。
「クックック、チェックメイトだ!」
今にも悟空に襲い掛からんとするクナイの群れ、その恐ろしい光景を見てDIOが邪悪極まりない笑みを漏らす。
そして――
「時は動きだす」
―――静止された世界が再び動きだした。
「いっ!!」
クナイを避けるタメに宙に逃れたはずなのに、目の前には突如出現したクナイの群れ。
またもや理解を越えたその現象に悟空は不思議に思う暇もなく、今まさに襲い掛かるクナイからもはや死は免れぬかと思われた。
その瞬間―――――
「界王拳!!」
悟空がそう叫ぶと彼の身体は灼熱色に発光し、遅いかかるクナイから身を守るべく超反応で手足を突き出す。
数倍に高められた身体能力を駆使し、死に至る急所だけは手足を盾にして防いだモノの、
数本のクナイはガードを掻い潜り悟空の胴体に無残にも突き刺さり、
「ぐぎ・・・」
鈍い呻き声を漏らし、空中から力無く地上に崩れ落ちた悟空はそのまま気を失った。
「フン!土壇場で何か妙な技を使って即死だけは免れた様だが・・・・ここまでだな」
勝利を確信したDIOが邪悪な笑みを浮かべ、瀕死の悟空に一歩一歩詰め寄る。倒れ伏した悟空の血を啜るタメに・・・
しかし――
「ム?」
横から異常に伸びきった拳がDIOに襲い掛かりその進行を阻んだ。そして後方にバックステップするDIO。
「お前の相手は俺だぞぉ!!忘れんなぁっ!!」
見るとすっかりダメージから回復しきったルフィがそこに立ち、猛っていた―――――
―――それは主催者の意図か、はたまた偶然か、
奇しくも長野の山中に飛ばされた彼は、草木の陰で世にも恐ろしい光景を目の当たりにしていた。
手足が異常に伸びる麦わら帽子の男と刃物を投げつけ分身する金髪の男との殴り合い、
そしてそれに割って入ったツンツン頭の田舎クサイ男。
「ウキウキキキウキィーー!(訳:じょじょじょじょじょ冗談じゃないのだ!)」
彼は元々アフリカのサバンナに生きる野生の猿であった。気配を殺し気づかれない様にする芸当は得意な方である。
そうして彼は草木の陰に隠れ、事の一部始終を覗き見していた。
『・・・そいつがいきなり襲ってきやがったんだ・・・』
『・・・こんな馬鹿なゲームに本気で乗る気なのか・・・』
『・・・他の参加者を殺そうが・・・このDIOの知った事では・・・』
三人の会話の内容からして金髪の男が悪者である事は一目瞭然。
そして金髪男から麦わら帽子の男を助けようと割って入ったツンツン頭の男が刃物でメッタ刺しにされた。
それを見て復活した麦わら帽子の男も今再び金髪男に挑んでいるが――――
「ウ、ウウ、ちっくしょ~っ!」
―――結果はご覧の通り、再戦虚しく麦わら帽子の男は金髪男の前に再び地を舐めた。
「フン!余計な手間をかけさせるな小僧!
貴様のおかげで、ヤツの血が栓を抜いたばかりのシャンパンみたいにドクドク外に溢れ出て勿体無いじゃあないか?」
―――既に麦わら帽子の男に興味は無いのか、金髪男は既に虫の息なツンツン頭の方に歩いていく。きっと彼の止めを刺すつもりに違いない。
「小僧・・・貴様は後でじっくりと料理してやる、この男の血を吸った後でな・・・おとなしくそこで待っているがいい」
―――ああ、どうしよう?やはり助けるべきなのだろうか?このままではツンツン頭が死んでしまう!
草木に隠れて彼は自問自答していた。あの金髪男の得体の知れない力はあまりにも強大だ。
自分なんかが出て行った所でたちまちの内に殺されてしまうだけだろう。
しかしこの武器を使えば・・・・・・あるいはあのツンツン頭を助けられるかもしれない!
そんな考えが頭をよぎり、彼は小脇に抱えた己の得物をチラリと見やる。
そう、彼に支給された武器、それは・・・・・・パンツァーファウスト!
およそ100mmもの弾頭直径を持つ弾を命中させれば、あの恐るべき金髪男だって一溜まりも無い筈。
しかし支給された弾はたった五発。
このまま黙って傍観に徹すれば、あの金髪男は草木に紛れている自分に気づく事はあるまい。
麦わら帽子とツンツン頭の二人は殺されるだろうが、自分だけはまず助かる。
生き残りを考えるなら、たった五発しかない貴重な弾をこんな場面で使うのは愚の骨頂と言えた。
しかし―――
(もし
ターちゃんなら・・・・)
「フフフ、さよならだ!このDIOの血肉となり生きるがいい」
そう言って意識を失い仰向けになった悟空の前に立ち、血を吸うためにゆっくりと右手を振り上げるDIO。
もはや目の前の『餌』を食らう事しか頭になかった彼は、草木の陰からスコープで狙っている襲撃者の存在など予想もせず―――
ドォン!!
悟空に向け右手を振り下ろした瞬間だった。
雷鳴を思わせる様な凄まじい爆炸音が鳴り響き、DIOの側頭部を中心に大爆発!もうもうと白煙を上げた。
草木に紛れていた襲撃者は寸分の狂いもなく見事ターゲットを、その100mm弾頭で撃ち抜いたのだ。
「ウキ!!ウキキキキ!ウッキーーーーー!!(訳:やった!やった!!やったのだーーー!!!)」
そして草木の陰に隠れていた襲撃者が、ターゲットを仕留めた事に感極まったのか叫びその身を躍らせながら姿を現す。
「な、なんだぁ?アレお前がやったのか?」
大砲を持った猿がいきなり現れたのを見て尻餅をついていたルフィが声を上げる。
そのルフィの言葉に答えるように猿はエッヘンと言わんばかりに胸を張った。
しかし――――
「お、おのれぇ・・・」
立ち込める白煙の中、呪い殺す様な恐ろしい声が響いた。
「ウ・・・ウキ?」
「う・・・うそだろ?」
ルフィと猿が一緒になって目を白黒させる。白煙が晴れた中からまだ生きているDIOが姿を現したのだ。
ザ・ワールドの腕を交差させガードした奥から覗かせるDIOの顔には血が滴り悪魔的な形相を呈している。
そして右腕の肘から先が吹き飛んだその断面からは、壊れた蛇口の様に血が噴出している。
スプラッター映画さながらな凄惨極まりないその姿は、通常の人間なら悶絶するどころかショック死していてもおかしくはない。
しかしDIOはそれでも生きて立っていた。
マグナムをも上回る威力を誇るパンツァーファウストの100mm弾頭だったが、その弾道が弧を描き、かつ弾速が遅かった事。
この二つがDIOにとって幸いした。
悟空に止めを刺そうとした瞬間に弧を描きながら向かってくる弾頭を、着弾直前に目の端で捕らえたDIOは、
すかさずスタンドを発現させ、その不死身の肉体の唯一の弱点――頭部を守るべく右腕を犠牲にして防いだのだ。
そしてDIOの眼光はギラリと襲撃者である猿に向けられていた。
「・・・・・猿?猿だとッ!?たかが猿如きがこのDIOに対してッッッ!!!」
怒りに震えるDIOの形相はまさしく悪鬼羅刹といった表現がピッタリであろうか?
そのドス黒い感情を惜しみなく表情に出し、DIOはルフィ達に突撃していく。
「コンニャロ~!来るなら来いってんだ!!」
DIOを迎え撃たんと迎撃態勢を取るルフィ。
対してDIOは懐から支給品である手裏剣を一本取り出しルフィに投げつける。
顔面目掛け飛んできた手裏剣を間一髪見極めなんとか右の肩口に逸らして受けるルフィ。
「いってぇ!」
そして手裏剣に気を取られている隙にルフィの懐まで飛び込んだDIOは、
「どけィッ!!」
ルフィを思い切り殴り飛ばし、生い茂った林の奥までぶっ飛ばした。
「貴様は後で料理してやると言った筈だ・・・・・まずはそこにいる猿を殺さねば気がすまん!!」
そう言って恐ろしい形相でにじり寄ったDIOは猿の顔面を残った左手で掴み、その身体を宙吊りにする。
「ウ・・・ウキ・・・・」
「猿の血など吸うのも汚らわしい・・・このまま顔面を握り潰してくれる!」
そしてDIOは猿の顔面を握り潰さんとその凶手に力を込めた瞬間―――
ドォン!
握り潰す前にDIOの背後が爆裂、その背中から白い煙が立ち上った。
「ぐ!今度はなんだぁ!?」
見ると数m離れた後ろに、ついさっきまで気を失っていた筈の悟空が、
ヨロヨロと左手を膝につけ、今にも倒れそうな姿勢で、しかし右の掌だけはしっかりとDIOに向け立っていた。
「貴様か・・・大人しく気を失っておけばいいものを・・・」
クナイにその身を無残に刺し貫かれ、己の血で悟空の道着は真っ赤に染まっている。だがそれでも――
「へ、へへ・・・オラまだ死んじゃいねえぞ?」
絶望的な状況に置かれながらも、悟空の眼光は少しも揺らいではいなかった。
「よかろう!ならば貴様の血でこの傷を燻蒸消毒してくれよう!」
肘から先が無くなった右腕を悟空に突き出し、DIOはその口元にある牙を光らせる。
「なぁ・・・血なんかよりもっといいモンくれてやろうか?」
「・・・なに?いいものだと?」
「かめはめ波だ」
ニヤリと笑みを零し悟空は両手を合わせると、その掌が輝きだし闇夜の山林を照らし始めた。
「か」
(なんだ?・・・なにをするつもりだ?)
「め」
その姿を見たDIOが本能的に危険を察知したのか――
「は」
掴んでいた猿を放り投げ――
「め」
構えている悟空に突っ込みスタンドを発現させ手刀を振り上げ――
「なにか分からんが食らえ!!」
「波ーーーーッッ!!」
DIOの手刀よりも悟空の行動の方がほんの一瞬早かった。
両手を突き出したと同時にそこから放たれた光波がDIOの腹部をブチ破る。
「な!なぁぁぁにぃぃぃっっ~~~~っ!!」
絶叫を上げ、腹から噴水のように血が吹き上がり、遥か後方まで吹き飛ばされたDIOはそのまま地面に倒れ伏した。
そして今の攻撃で全精力を使い果たしたのかガックリと膝を突く悟空。
身体のあらゆる部位からは血が止まる事無く地面に滴り落ちている。精神も肉体も既に限界なのであろう。
今のかめはめ波で仕留められなかったら自分にはもう打つ手が無い。頼むから起き上がってくれるな―――
しかしそんな悟空の願いも虚しくDIOは上半身をムクリと起き上がらせる。
「殺して・・・やる・・・・・」
DIOはボソリと幽鬼の様に呟き、殺意の塊を宿らした眼光を悟空に向ける。
「ま、まいったなぁ・・・あれでもくたばらねえなんて・・・・」
笑いながら悟空は半ば諦めたかの様に言った。
DIOはその場から立ち上がり悟空の元に歩を進めようとする――が、その足は小刻みに震えている。
「ヌ、ヌゥ・・・・」
そして、
―――ガクン
二、三歩歩いた所で己の意思とは無関係にDIOはその場で地面に膝を付けた。
「バ、バカなッ!このDIOがッ!!この程度のダメージでッッ!?」
ガクガクと膝を震わせながらDIOは這い蹲りながらも悟空を睨み据え、
(お、おのれ・・・ヤ、ヤツの・・・ヤツの血さえ吸えば、この程度の負傷なんぞ・・・)
餓えた狼の如く瀕死の獲物に近づいていく。
右腕を吹き飛ばされ腹にガッポリと大きな穴が開いているDIO。
全身をクナイで刺され出血多量、そして気まで使い果たした悟空。
どちらも既に限界であったが、その不死身性においてDIOは瀕死の悟空よりまだ余力を残していた。
這い蹲りながら段々と近づいて行くDIO。もう動く事すら出来ないのか諦めた様に地面に膝を付ける悟空。
しかしその時、横の木々の間からガサガサと・・・・・・
「ウガー!!もう許さん!!ぶっ飛ばしてやるッッ!!!」
ついさっきDIOに林の奥までぶっ飛ばされたルフィが、両手を広げ怒り心頭に戻ってきた。
(ク・・・小僧がいる事を忘れていた)
――DIOは考える。
今のこの状態で小僧と戦うのはマズイ!
忌々しい島の影響で不死性が弱まり、更にスタンド能力さえも弱体化し連続して時が止められない今、
仮に仕留める事が出来たとしても、確実に時間を取られる上に更なる負傷も免れないやもしれん。
この場にいる二人と一匹を始末してしまえば、その血を吸って傷などいくらでも癒せるが、
殺すのをもたついてる内に夜が明けてしまうかもしれない。
このDIOにとってそれだけは避けねばならない――
(・・・・・どの道、太陽が昇るまでに身は隠さねばならん)
「うぇ~!腹にデッケェ穴が空いてる~!」
DIOの凄惨な姿にルフィが気を取られたその一瞬だった。
ビシュッ!
「うわっ!!」
DIOは右腕から溢れる出血をシャワーの様にルフィの顔面に浴びせ、そして――
「こ・・・このDIOが、こんなクソカス共相手に・・・」
ルフィの目が血に眩んでいる間に、DIOは奥の山林に身を隠そうと無様にその身に這わせて行く。
「くぬ・・・・コンニャロ!逃げる気か!?」
瞼をこすりながら、血でぼやけた視界でDIOが逃げようとする姿を見たルフィは当然それを追おうとする。
しかし興奮するあまり足元にまで注意が向かず、
「イデデデデデデー!!」
落ちていた『棘』に足の裏を刺したルフィはその場で足止めを食らってしまった。
DIOは逃げる際に支給された『まきびし』を用意周到に撒いていったのだ。
ルフィはその場にへたれ込み草履を脱ぎ、素足にフーフーと息を吹きかける。
そしてその間にDIOは闇夜の山林の中に姿を消し、まんまとルフィから逃げおおした。
「くっそ~!あんにゃろめ!!」
DIOに逃げられたルフィは引っかかったまきびしと悪戦苦闘しながら悪態を付く。
「ウキ!ウキキ!!」
「ん?どうした猿?」
ルフィがふと見ると猿が慌ただしく声を上げ、そしてその先には悟空がグッタリと横たわっていた。
「おい!大丈夫か!?死んじまったのか!?」
「ウキキキウキウキウキキキーー!?」
駆け寄ったルフィと猿が悟空に必死に声を掛ける。
「あ、ああ・・・・で、でえじょうぶだ・・・心配すんなって」
ブルブルと唇を震わせ何とか『大丈夫』な事をアピールする悟空。しかしその姿はどこから見ても『大丈夫』ではない。
「ウキウキキキィウキィ・・・・・」
「へへ、そっかおめえ
エテ吉って名前なんか?
サ、サンキュー、エテ吉・・・おめえのおかげであいつ追っ払う事が出来た」
言葉が分かるのか目の前の猿に礼を述べる悟空。
「うっは~、お前、猿と話できんのか?」
猿――エテ吉と会話した悟空にキラキラとまるで少年の様に目を輝かせるルフィ。
「あ・・・ああ、オラ、ガキの頃からずっと山で暮らしてたからさ・・・猿の言葉とか・・・大体分かんだ」
「へースッゲー!!スッゲー!!」
「へ、へへへ・・・そ、それよりおめえ名前なんてんだ?」
悟空の問いにルフィはスックと立ち上がり鼻をこすりながら答えた。
「俺はルフィ!海賊王になる男だ!!」
自信満々に答えるルフィ、その目には一点の曇りも無い。
「そ、そっか・・・オラ孫悟空ってんだ。
なぁルフィ、エテ吉、わ・・・わりいんだけどオラをあの家まで運んでって休ませてくんねえかな?
オ、オラさっきのかめはめ波で力(リキ)全部使い果たしちまって・・・もう自分じゃ動けなくってさ・・・鼻クソほじる力もねえんだ」
そう言って悟空は、DIOとの戦闘で外観が少々破壊されたコテージをブルブルと震える指で指し示した。
【長野県/黎明】
【別荘地のコテージ】
【チーム名=スーパーモンキーズ】
【孫悟空@DRAGON BALL】
[状態]:出血多量、各部位裂傷、極度の疲労、重傷のため早急に手当ての必要あり
[装備]:無し
[道具]:荷物一式、支給品不明
[思考]:1、フリーザ達を倒す。
【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]:各部位に打撲、右肩刺傷、基本的に軽傷、疲労小、空腹
[装備]:無し
[道具]:荷物一式、支給品不明
[思考]:1、食料を探す、悟空の治療。
【エテ吉@ジャングルの王者ターちゃん】
[状態]:疲労小(PT内では悟空とだけ会話可能)
[装備]:パンツァーファウスト(100mm弾頭×4)@DRAGON BALL
[道具]:荷物一式
[思考]:1、悟空の治療。
2、ターちゃん達と合流。
【山中】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:右肘部から先を喪失、腹部に巨大な貫通傷、疲労大
[装備]:忍具セット(手裏剣×9)@NARUTO
[道具]:荷物一式
[思考]:1、夜が明けるまでに太陽から身を隠せる場所を探す。
2、参加者の血を吸い傷を癒す。
時系列順で読む
投下順で読む
最終更新:2024年08月15日 08:19