0067:奇妙な遭遇
「ね、ねえ……まだ歩くわけ……?」
「当然よ。こんな所で突っ立ってる訳にいかないでしょ?」
舗装された道路を歩く2人の女性。辺りは闇に包まれており、おぼろげな月明かりだけが唯一の照明となっている。
「ま、まだ歩くの……リンスレット。育ちの良い私には酷だわ…」
「ワガママ言わない、置いてくわよ。あとリンスで良いって」
素っ気無いながらもどこか温かみを含んだ言葉。
それを知ってか知らずかもう一人の女性、
ブルマは膨れっ面のまま歩き続ける。
つい先程の事、リンスレットはちょっとした崖の上に立っていた。
別に飛び降りようとした訳ではない。何もせずに自殺するほど潔くはないし、するならもっと確実に死ねる場所を選ぶ。
気付いたら佇んでいた、つまり主催者達によって飛ばされたのだ。幸い舗装道路もすぐに発見し、その道なりに沿って歩き出した。
地図の通りならこのまま進めば街に着く。街ならば人も集まりやすいだろうし、雑貨品等も手に入れられるかも知れない。
もちろん『乗った』連中に遭遇する危険もあるが、泥棒稼業をやっている自分にとってその手の対処は熟知している。
…絶対に切り抜けられる保証は無いが。
頭にトレイン達の事が思い浮かぶ。トレイン、スヴィン、イヴ、三人とも自分よりも腕が立つ実力者だ。
よっぽどの事が無い限り心配は無いだろう。そうタカを括ってみるものの、どうにも嫌な予感は拭えない。
あの三人も強いが、このゲームに参加している者はより異常であってもおかしくないのだ。
現に妙な光線を発した大男が、ロクに抗えぬまま主催者の一人に殺された。異常なのだ、これは。
自分一人で脱出するのは無理だろう。トレイン達のほか、信用できる有能な協力者がいる。
三人の事も気掛かりではあるが、まず自分が生き延びなければ話にならない。
リンスは一旦思考を切り替えると、引き続き夜の道の先を見やる。その時だった――――
ガサッ
確かに音がした。脇の道、否、道とは呼べない草木が茂る奥から。
反射的に身構え距離を置き、緊張した目で木々の奥を見据える。そして現れた人物をその双眸が捉えた。
女性だ。年齢は自分と同じかやや上。体のあちこちが汚れており、心なしか両目が赤くなっていた。
泣いていたのだろうか…? 敵意は感じられなかった為、依然警戒を続けながらも尋ねる。
「貴女…大丈夫? 何かあったの?」
リンスレットの言葉にも呆けた様に反応しない女性、ブルマ。
話し掛けられた事にしばらく間を置いてようやく気付いたのか目に光が戻った。
次の瞬間、抱きつかれた。一瞬呆気に取られたが振りほどこうとする。しかしそれは途中で中断を余儀された。
ブルマは嗚咽を漏らして泣いていた。過酷なゲームにほっぽり出された彼女は平静を保てるほど強くはなかった。
出発地点から動く事なく震え、恐れ、泣いていた。
涙も出なくなり呆然と虚空を見つめながら、当てもなく歩き続きここに至ったのだ。
泣き続けるブルマからその経緯を知る事は出来なかったが、リンスレットはブルマを優しく抱きしめた。
そして今、落ち着いたブルマを連れて街へと向かう道中。
最初の印象こそ弱気なブルマであったが、いつもの調子を取り戻すと途端に明るくなった。
そのギャップに少々驚きはしたが、さっきの悲しげな態度から回復したのは喜ばしい事だ。
ブルマだけでなく、一人だけで行動していたリンスレットにとっても、この出会いは嬉しいものだった。
ブーブー文句を垂れるブルマに目をやった後、正面を見る。そこには街が広がっていた。
懐の武器を確認する。支給品のベレッタM92、これが自分達が持つ唯一の武器…
ブルマの支給品もあるにはある。精巧で特殊な力を持ち、山をも断つという剣だった。
しかし2人とも剣術の心得が無く、満足に振るう事すら出来なかった為、一度カプセルに戻して所持している。
徐々に不安と緊張が高まり、遂に街の領域に足を踏み入れる。
そこでリンスレットはある気配に気付く。ちょうど隣にある公園、そこに立つ一人の人物に。
「な、何?」
「しっ! 隠れて!」
急いで公園脇の茂みに身を隠す2人。公園中心部に居る人物に目を向ける。
後ろを向いているので顔は分からないが、何やらローブらしきものを纏っていた。
何やらボソボソ呟いている。興味本位で2人は聞き耳を立ててみた。
「…実に興味深いですね。別世界に属する住人を喚び出し制約の下に殺し合わせる。
お世辞にも良い趣味とは言えませんが素晴らしきはそのメカニズム。
私達が属する世界とはまた体系が異なる魔法と科学。恐らくこの舞台にはそれらが極自然に存在するのでしょう。
あの主催者達が何者なのかは現状では確認のしようがありませんが、今の私達では打倒はまず無理無理無理ですね。
何よりもこの忌々しい首輪、いくらこの私といえどこの最悪の条件下で外す事は容易ではないでしょう。
業に入っては業に従えとも言いますし、まずこのゲームから生き延びることが先決でしょうね。
当然の様に私の魔力も随分弱まってしまっているようです。この分では他の参加者も己の弱体化に戸惑っている事でしょう。
ダーク・シュナイダーは鬼畜街道驀進中であるのは想像に難くなく、ガラは気楽に気分で行動といった所でしょうか?
美しいお嬢さんが無事かどうかは分かりませんが、彼女のバイタリティを信用するとしましょう。
彼等との一刻も早い合流が理想ではありますが、いかんせん勝手の分からぬ未踏の地。
闇雲に探しても運良く再会できる確率は微々たる物でしょう。という事はそれまで独力か第三者と協力し合う、
大別して2つの選択肢があり、この危機的状況では後者の方が望ましいと思われますがどう思いますお嬢さん方?」
まくし立てるように長ったらしい台詞を区切ると同時に、グルンと首をこちらに向ける人物。びびる2人。
ローブを纏った男性はにこりと笑っているらしいが、どこか妙な威圧感がある。というか怖い。
あまりに唐突な出来事に絶句するリンスレットとブルマ。
返答を首を長くして待っている男性、アビちゃんこと
アビゲイル。
暗い公園を暫し静寂が支配していた。
【富山県東部、街の公園/黎明】
【リンスレット・ウォーカー@BLACK CAT】
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM92(残弾数:予備含め32発)
[道具]:荷物一式
[思考]:1.目の前の男にどう答えるか考える。
2.トレイン達、協力者を探す。
3.ゲームを脱出。
【ブルマ@DRAGON BALL】
[状態]:健康(泣き疲れ)
[装備]:なし
[道具]:荷物一式、支給品:雷神剣@BASTARD!! -暗黒の破壊神-
[思考]:1.目の前の男にどう答えるか考える。
2.孫悟空達、協力者を探す。
3.ゲームを脱出。
【アビゲイル@BASTARD!! -暗黒の破壊神- 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:荷物一式(支給品不明:本人は確認済み)
[思考]:1.お嬢さん方の返答を待つ。
2.ダーク・シュナイダー達と合流&脱出方法を探す。
3.ゲームの脱出。
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最終更新:2024年08月16日 20:23