「マスター、お散歩に行きませんか?」
雪が溶けて日に日に暖かさを増していく季節のある日、ペリドットに誘われて散歩に出た。
ときおり吹く風に冬の名残を残しつつも、日差しに春の訪れを感じる。
雪解け水の水溜りを手を繋いで飛び越えたり、枯れ草の下から新芽を見つけて何の花かワクワクしたり。
ふと気がつくと腕を組んで歩いたりしていたが、まあ、よしとしよう。
雪が溶けて日に日に暖かさを増していく季節のある日、ペリドットに誘われて散歩に出た。
ときおり吹く風に冬の名残を残しつつも、日差しに春の訪れを感じる。
雪解け水の水溜りを手を繋いで飛び越えたり、枯れ草の下から新芽を見つけて何の花かワクワクしたり。
ふと気がつくと腕を組んで歩いたりしていたが、まあ、よしとしよう。
どれくらい歩いただろうか、吹く風に強い香りを感じた。
毎年この時期に僕が楽しみにしているあの花の香りだ。
「ペリドット、向こうへいってみよう」
彼女を促がし方向を変える。腕は離してくれないのですね……。
遊歩道を外れてけもの道を辿る。あそこだ、あの大きな木の下をくぐると……。
「うわぁ……すごいですねマスター。梅林ですか……あぁ、いい香り……」
「毎年、この時期に咲くんだ。少し早いかとも思ったんだけど……そうでもなかったね」
梅林を歩きながら花を見、胸いっぱいに香りを吸い込む。
僕の身体が春に目覚めていく。
「ずるいですね、マスターったら。こんなに素敵な場所を内緒にしておくなんて」
「いやいや、まだ花の時期には早いと思っていたからね。時期になれば、一緒に来ようと思っていたんだよ。独りで暮らしていたころは、ちょっと寂しい思いをしながら見ていたからね」
「ご心配なく。もう、貴方を独りにはしませんから。一人にしてって言っても、聞いてあげませんからね。ずうーっと一緒です。ずうーっと……」
組んだ腕に力が込められた。あったかいな……よし!
「え? マスター?」
腕をほどいて彼女を後ろから抱きしめ、そのまま樹に寄りかかる。
早春に彼女の温もりを感じながら花を見て、香りを楽しむ。いいものだ。それに、これなら僕の赤い顔も見られない。
もうすぐ李、その次が桃、そして桜か……。
よし、全部一緒に見に行こう。彼女と僕とで。
思いがけず腕に力が入り、彼女を強く抱きしめてしまった。
「すまん、苦しくなかったかい?」
「ええ、大丈夫です……」
後ろから窺った彼女の顔が紅梅と同じ色に見えたのは、僕の見間違いだったのかな?
確かめることもできずに、僕達は梅の香りに包まれていた。
毎年この時期に僕が楽しみにしているあの花の香りだ。
「ペリドット、向こうへいってみよう」
彼女を促がし方向を変える。腕は離してくれないのですね……。
遊歩道を外れてけもの道を辿る。あそこだ、あの大きな木の下をくぐると……。
「うわぁ……すごいですねマスター。梅林ですか……あぁ、いい香り……」
「毎年、この時期に咲くんだ。少し早いかとも思ったんだけど……そうでもなかったね」
梅林を歩きながら花を見、胸いっぱいに香りを吸い込む。
僕の身体が春に目覚めていく。
「ずるいですね、マスターったら。こんなに素敵な場所を内緒にしておくなんて」
「いやいや、まだ花の時期には早いと思っていたからね。時期になれば、一緒に来ようと思っていたんだよ。独りで暮らしていたころは、ちょっと寂しい思いをしながら見ていたからね」
「ご心配なく。もう、貴方を独りにはしませんから。一人にしてって言っても、聞いてあげませんからね。ずうーっと一緒です。ずうーっと……」
組んだ腕に力が込められた。あったかいな……よし!
「え? マスター?」
腕をほどいて彼女を後ろから抱きしめ、そのまま樹に寄りかかる。
早春に彼女の温もりを感じながら花を見て、香りを楽しむ。いいものだ。それに、これなら僕の赤い顔も見られない。
もうすぐ李、その次が桃、そして桜か……。
よし、全部一緒に見に行こう。彼女と僕とで。
思いがけず腕に力が入り、彼女を強く抱きしめてしまった。
「すまん、苦しくなかったかい?」
「ええ、大丈夫です……」
後ろから窺った彼女の顔が紅梅と同じ色に見えたのは、僕の見間違いだったのかな?
確かめることもできずに、僕達は梅の香りに包まれていた。