それは、買い物帰りのことだった。
「瑪瑙ちゃん、何を悩んでるの?」
隣を歩いていた漬物石姉さんが尋ねてくる。
「え、どうして?」
「妹のことは顔を見ればだいたい分かるよ。それで、どうしたの?」
やっぱり、僕や鶏冠石の面倒をずっと見てくれていただけのことはある。姉さんに隠しごとはできそうにない。そして、相談相手としてはうってつけの相手だ。
「そ、その、今度マスターとね……出かけることに、なってて。二人きりで」
こんなこと、姉さんぐらいにしか言えなかったかもしれない。きっと真面目に聞いてくれるだろうし、からかうようなことは何も……。
「まぁ、デートですねぇ……ふふふ」
「な、何?」
「なんでもないですよ。それで?」
どうして姉さん、楽しそうなんだろう……まぁ、いいか。
「だから、その……せっかく、マスターの隣を歩くんだから、女の子らしい格好をした方がいいかな……って」
「デートだから、やっぱりマスターさんにもその気になってもらいたいもんね」
「ね、姉さんっ」
何だろう、僕はからかわれるのが仕事なのかなぁ。
「それで、どんなお洋服を着るのか、迷ってるの?」
「う、うん。マスターの好みとか、そういうの分からないから」
僕はマスターと一緒に暮らしているのに、知ってることはそんなに多くない。友人関係、仕事内容、女の子の好み……マスターのことが、もっと知りたい。
……駄目だ、考えていたら恥ずかしくなってきた。
「顔が赤いよ、瑪瑙ちゃん」
「あ、うわわっ」
おかしそうに笑う姉さん。きっとだらしない顔してたんだ、情けない……。
「恋、してるんだね」
「え、こ、こぉ……それは姉さんだって、マスターさんと……」
「私の場合はもう恋じゃないから……ふふふ」
その笑顔が何を意味するかは、あえて聞かないでおく。本当に姉さんたちは仲がいいんだから……見てて恥ずかしくなるぐらい。
「えっと、それでどんな服を着ていくか、だよね?」
「え、うん。その、普段化粧しないから、そういうのも気を遣った方がいいのかな、とか」
「化粧はいらないよ。瑪瑙ちゃんはそのままで充分綺麗なんだから」
「そう、かな……」
同性だし、姉さんだけど、やっぱりそういうことを言ってもらえると嬉しい。だけどやっぱり照れくさい。言われ慣れてない言葉なだけあって。
「それじゃあ、後は服装だね。マスターさんの好みに合わせるの?」
「うん、できれば。そうしたらマスターも喜んでくれると思うし、マスターのことも知ることができるし……」
「私はいつも通りの瑪瑙ちゃんでも喜んでもらえると思うけどなぁ」
きっと、マスターも同じことを言ってくれると思う。だけど、それではいつもと変わらない。今度はもっと、その……。
とにかく、マスターのことをいっぱい知りたいし、もっと僕のことを……マスター。
「んー……それなら、こんなのはどうかな?」
「瑪瑙ちゃん、何を悩んでるの?」
隣を歩いていた漬物石姉さんが尋ねてくる。
「え、どうして?」
「妹のことは顔を見ればだいたい分かるよ。それで、どうしたの?」
やっぱり、僕や鶏冠石の面倒をずっと見てくれていただけのことはある。姉さんに隠しごとはできそうにない。そして、相談相手としてはうってつけの相手だ。
「そ、その、今度マスターとね……出かけることに、なってて。二人きりで」
こんなこと、姉さんぐらいにしか言えなかったかもしれない。きっと真面目に聞いてくれるだろうし、からかうようなことは何も……。
「まぁ、デートですねぇ……ふふふ」
「な、何?」
「なんでもないですよ。それで?」
どうして姉さん、楽しそうなんだろう……まぁ、いいか。
「だから、その……せっかく、マスターの隣を歩くんだから、女の子らしい格好をした方がいいかな……って」
「デートだから、やっぱりマスターさんにもその気になってもらいたいもんね」
「ね、姉さんっ」
何だろう、僕はからかわれるのが仕事なのかなぁ。
「それで、どんなお洋服を着るのか、迷ってるの?」
「う、うん。マスターの好みとか、そういうの分からないから」
僕はマスターと一緒に暮らしているのに、知ってることはそんなに多くない。友人関係、仕事内容、女の子の好み……マスターのことが、もっと知りたい。
……駄目だ、考えていたら恥ずかしくなってきた。
「顔が赤いよ、瑪瑙ちゃん」
「あ、うわわっ」
おかしそうに笑う姉さん。きっとだらしない顔してたんだ、情けない……。
「恋、してるんだね」
「え、こ、こぉ……それは姉さんだって、マスターさんと……」
「私の場合はもう恋じゃないから……ふふふ」
その笑顔が何を意味するかは、あえて聞かないでおく。本当に姉さんたちは仲がいいんだから……見てて恥ずかしくなるぐらい。
「えっと、それでどんな服を着ていくか、だよね?」
「え、うん。その、普段化粧しないから、そういうのも気を遣った方がいいのかな、とか」
「化粧はいらないよ。瑪瑙ちゃんはそのままで充分綺麗なんだから」
「そう、かな……」
同性だし、姉さんだけど、やっぱりそういうことを言ってもらえると嬉しい。だけどやっぱり照れくさい。言われ慣れてない言葉なだけあって。
「それじゃあ、後は服装だね。マスターさんの好みに合わせるの?」
「うん、できれば。そうしたらマスターも喜んでくれると思うし、マスターのことも知ることができるし……」
「私はいつも通りの瑪瑙ちゃんでも喜んでもらえると思うけどなぁ」
きっと、マスターも同じことを言ってくれると思う。だけど、それではいつもと変わらない。今度はもっと、その……。
とにかく、マスターのことをいっぱい知りたいし、もっと僕のことを……マスター。
「んー……それなら、こんなのはどうかな?」
◇ ◇ ◇ ◇
「マスター、今度のお出かけのことなんだけど」
「ん、どうしたの?」
いつもとどこか様子の違う瑪瑙。何というか、落ち着きがない。
「その……お金は僕が出すから、服を買うのにもつき合ってもらって、いいかな?」
「服? かまわないけど。というか、少しぐらいなら俺が……」
「う、ううんっ、そこまでマスターに甘えるわけにはいかないよ」
大げさに手を振って、俺の言葉を遮る。うーん、遠慮がちなのは分かるけど、もう少し甘えてくれても……。
「マスターに、選んでもらえればいいんだよ……」
「え、何か言ったか?」
「ん、どうしたの?」
いつもとどこか様子の違う瑪瑙。何というか、落ち着きがない。
「その……お金は僕が出すから、服を買うのにもつき合ってもらって、いいかな?」
「服? かまわないけど。というか、少しぐらいなら俺が……」
「う、ううんっ、そこまでマスターに甘えるわけにはいかないよ」
大げさに手を振って、俺の言葉を遮る。うーん、遠慮がちなのは分かるけど、もう少し甘えてくれても……。
「マスターに、選んでもらえればいいんだよ……」
「え、何か言ったか?」