見渡す限りが白の世界。障害物が何も無く、まさに虚構。よく言えば純粋な場。
その寂しい場所にいるのは、一人の少女ともう一人。
その少女は逃げていた。6歳の幼い体を必死に走らせ、目に涙を溜めながら、その子は走っていた。
ーーみ……り……まって……みどりーー
少女に向かって、誰かが声を掛ける。その声を聞いて、少女はより一層走り出した。明らかに顔には恐怖の色が浮かんでいる。
ーーまって……ま……てよ……みどり…ーー
逃げても、逃げても、不思議なことに、声との距離は離れない。
少女の息が跳ね上がる。顔が青ざめ、震えが強まる。だが、足を止める事はない。止めてしまったら、もう動けなくなる。そう思っているかのようだ。
事実、足を止めてしまったら、少女の命運は尽きるだろう。
ーーねえ…一緒に遊ぼうよ…みどり…ーー
少女を追いかけているのは、ボンテージを着た若い女。いや、まだ年若い、少女と呼べる年頃のそれだ。
その顔つきには、不思議と逃げる少女と似通っている。
右手には、鋭いナイフのついたグローブをはめていてる。
残虐な表情を浮かべ、女は少女を追いかける。楽しくて、楽しくて、仕方ないというような表情で……
それは心底楽しんでいた。心底を怯えさせ、怖がらせ、追いかける事を。それが楽しくて仕方ないのだ。
ーーみどり、もっと遊びましょうよ…ねえ…ーー
カチャリ、カチャリ、鉤爪を鳴らし、その音が響く。それとともに発せられた声は、前よりもずっと鮮明だ。
「遊べっつってんのよみどりイイイ!!!」
女が叫ぶ。狂気の表情で、よりはっきりした声で。
限界が来た。
口を大きく開け、裂けんばかりに悲鳴を上げる少女。
瞬間、少女が消えた
◆ ◆ ◆
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
悲鳴、いや絶叫。それが響き、少女は身を震わせる。
そこは森だった。深い木々が生い茂り、日の光を遮る暗い森。
「うう……ぐすっ……ぐすっ……ううう」
16歳ほどの少女が、木にもたれかかり、嗚咽を漏らす。
それは、確かに白い世界で逃げ回っていた女の子。だが、あの時よりも体は大きい。
白池町幼女29人連続殺人事件。その犯人、百合川サキ。
その妹である『百合川みどり』が、10年間の眠りから覚めた瞬間であった。
◆ ◆ ◆
みどりが目覚めた後、なおも白い夢の世界に、サキは居た。
狙っていた少女が消えたあたりを、じっと見つめて立ち尽くす。
その姿が一瞬で揺らき、顔が焼け爛れたセーターの男に変化する。
「……クッソ!ちょっとばかし遊びすぎたか」
醜い顔を歪め、せっかくの獲物を逃したことを悔いる。
みどりの夢の中に現れたサキは、本物では無い。
この男、フレディ・クルーガーが変身していたのだ。
久々の獲物。それもかなり……好みのタイプ。それをいたぶるのが楽しすぎて、仕留め損なった。
いや、今の俺じゃあパワー不足。殺すことは出来ないだろう。
フレディは殺人鬼だ。
ただの殺人鬼ではない。人々の恐怖をエネルギーとする、夢の中に現れる悪魔。
彼にとって億単位の賞金には、さほど興味は無い。
自分のやりたいように楽しみ、殺す。それがフレディのスタンスだ。
しかし問題があった。
この場にいる人間のどれだけが、エルム街の殺人鬼であるフレディ・クルーガーを知っているかということだ。
フレディにとって力を発揮するには、自身に恐怖する者の存在が不可欠。
だからもし知らない人間ばかり、つまりフレディを恐れる者が少ないなら、たとえ自身のフィールドである夢の中でも、力を十分に発揮することはできないだろう。
フレディはそれをわかっている。だから、早急に力を蓄え、また、現状どの程度自分が猛威を振るえるか、試す必要があった。
そんな時に見つけたのが、森の中で眠っていた百合川みどり。
力を試すには、当然誰かの夢の中に入る必要がある。
偶然にも、ぐっすりと眠っている人間、しかも子供を見つけた事は、かなりの幸運だった。
だが、最初は少女が、エルム街の殺人鬼を知っているかどうか、少々不安だった。
しかし、いざ実行に移してみると、難なく夢に入り込めた。
それには流石に驚いた。あの少女、みどりは自分のことを知らなかった。だが、夢に入れる。
あのミカモトレイとかいう男がなにかしたのだろうか?
もし奴がやったのなら、自分の想像よりも上の力を、あの男は持っているのかもしれない。
だが、夢に入れるからといって、安心はできない。
たった今、みどりに恐怖を与える事はできたが、人を殺せるほどかと聞かれると、残念ながらまだまだ足りない。
なぁに、もうちょっとの辛抱だ。ここは殺し合いの場。恐怖が必要な俺にとっちゃ都合が良い。
ここは俺のフィールド。誰の夢だろうと俺が主役。つまり無敵だ。
エルム街の悪魔の恐怖を、ここにいる全員にたっぷりと教え込んでやる。
人々の意識の間、夢の世界を、フレディは歩き出す。己の恐ろしさを皆に広め、殺戮を行うために。
◆ ◆ ◆
「うぅ……ううう……」
短い嗚咽。みどりはまだ泣いていた。
とっても怖い夢を見たのだ。自分を虐める姉が、遊ぼうと追いかけてくる。
16歳の肉体に、6歳児の精神。
百合川みどりは、実の姉であり、最悪の幼女殺人犯となる姉、サキの手により、10年間昏睡し、植物人間となっていた。
奇しくも、姉と同じ子供殺しの手によって、みどりは目覚めた。これも運命だろうか。
どのくらい時間が立っただろうか?
気づけば、みどりは泣き止んでいた。
姉と似通い、若い身でありながら美人の類にあるその顔は、涙で顔が濡れ、まぶたが赤く腫れている。
朝方の肌寒さを感じ、薄着のために少し震える。
きょとんとした目で、みどりは周りを見渡した。そして呟く。鼻声ながらに、ひとつの根本的疑問を。
「ここ…どこ?」
【B―1/森/一日目/朝】
【百合川みどり@ゾンビ屋れい子】
[状態]: 健康な肉体。夢の内容に対する恐怖。
[服装]:薄手のシャツと半ズボン
[装備]:
[道具]: 基本的支給品 ランダム支給品×3
[思考]
基本:おねえちゃんこわい
1:ここ……どこ?
[備考]
※本編みどり編開始前からの参戦
※
オープニングの際はまだ意識がなかったため、状況をまったく理解していません
※精神構造が6歳児のままなので、難しい漢字などは読めず、知識がほぼありません
【フレディ・クルーガー@エルム街の悪夢】
[状態]: 健康的な肉体。
[服装]:赤と緑の横縞のセーター
[装備]: フレディの鉤爪
[道具]: 基本支給品 ランダム支給品×2
フレディの鉤爪@エルム街の悪夢
[思考]
基本:このゲームを楽しむ
1:他者に自分への恐怖を与え、力を取り戻す
[備考]
※「フレディvsジェイソン」終了後からの参戦。
※夢の世界に入り込んでいるため、現在会場内にフレディは居ません。
※夢の中での行動にはあらゆる意味で制限がありません。しかし、それが現実に干渉する能力は下がっています。
戦闘ダメージなどはある程度反映されますが、他者を殺すまではできないでしょう。しかし力を取り戻した際はこの限りではありません
最終更新:2014年02月09日 16:15