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 合宿に向けていろいろと準備していたら、あっという間に当日が来た。
 ビバ! 合宿である。

紬「本当はもう少し大きなところを借りたかったんだけど……都合が合わなくて」

 なにをおっしゃる。

一同「おぉおぉおーっ!!」

律「こりゃまた、一段とすげーなー!」

唯「すっ…………ごーい!!」

純「ムギ先輩……一生ついていきます……」

 想像以上でした。ムギ先輩すごい。ここまでとは……。


律「っしゃー! あっそぶぞー!! ついてこーい!!」

純「はい! 律先輩!」

唯「ひゃっほーう!」

澪「うぉおーい!!」

 はっ。

澪「遊ぶのは練習してからだ!」

純「すいませんでしたあっ!」

 ……危ない危ない。澪先輩の意見には逆らえない。
 律先輩につられて飛び出してしまったが、落ち着けわたし。

律「ちぇー」

唯「つまんなーい……」


澪「多数決! 多数決にしよう。先に練習したい人!」

梓「はい! わたし練習がいいです!」

純「わ、わたしも!」

律「ぐぬぬ……向こうは早くも半数を獲得したぞ唯隊員!」

唯「りっちゃん隊員! 澪ちゃんが後輩二人とも独り占めしてます!」

律「だいじょうぶ、我々にはムギ隊員が……ムギ隊員が……!」

紬「遊びたいでーす♪」

 ……ムギ先輩、ナイス。と、心の中で思ったのは秘密にしておこう。


律「さぁー、これで三対三だぞ澪ー。……お前だって遊びたいだろー?」

澪「そ、それは、そうだけど……今年は! ちゃんと練習するんだ!」

唯「さぁ、最後のひとりは憂だよ! 遊びたい? 練習……って、憂はすることないけど……」

憂「えと、あの、けいおん部の決め事だし、お姉ちゃんたちに任せるよー」

唯「むー、そうだね。あずにゃん、純ちゃん、せっかく海に着たんだから遊ぼうよー、ね?」

 唯先輩が今にもわたしたち二人を捕獲しようとしている。
 律先輩が澪先輩を止めている間に、わたしたちを引き入れようと……。素晴らしいコンビネーションだ。

 その様子を楽しそうに見守っているムギ先輩ポジションがちょっぴり羨ましい。

梓「わたしは、澪先輩の言うとおり、ちゃんと練習してから遊んだほうが……」

唯「ちぇー、あずにゃんのケチ。純ちゃんは? さっきいっしょに飛び出してたじゃん」

純「わ、わたしは……」

 決定権、わたし。
 遊びたい。
 でも澪先輩に可愛がられたい。
 二つのせめぎあいがわたしを悩ませる。


梓「純、今日は合宿に来たんだから、ちゃんと練習しよう?」

 真面目な同級生が練習を勧めてくる。
 なんとなく、梓のことが不安になる。こんなんでこの子は、ダメになってしまわないだろうか。
 前にも、けいおん部やめる、とかいいだしたし……。

純「梓、澪先輩、ごめんなさい。遊びたいです!」

澪「純!? くそう……、ムギの裏切りが予想外だった……」

唯「やったー! 純ちゃん大好き!」ぎゅっ

律「っしゃー! さっすが純! いっくぞー!」

純「ほら、梓も早く着替えてきなよ!」

梓「あっ、純! もう……」

紬「ごめんね澪ちゃん。でも今年は一年生二人はいったし、親睦を深めるのもいいかなって」

澪「まぁ……そうだな」


憂「ほら、梓ちゃん、みんな行っちゃったよ?」

梓「うん……」

憂「いっしょに着替えていこうよー」

梓「……そうだね、いこっか」



紬「浜辺にあるもの全部片付けて! お船もいらない!」



憂「紬さん……」

梓「あはは……」


~~~~~~

律「いっくぞー唯!」

唯「純ちゃん! 気をつけてね! りっちゃんのサーブはすごいよ!」

純「はい!」

律「スーパーウルトラデリシャス……えーとなんだっけ山嵐!!」サーブ!

唯「純ちゃん!」トスッ!

純「任せてください! とう!」アタック!

律「うおっ!?」

パチーンッ!

律「いってて……」

純「あっ……だいじょうぶですか律先輩!」

唯「純ちゃん強く打ちすぎだよー」

純「百八式より危険だと思うとつい力が入っちゃって……」

律「まぁビーチボールだし当たっても痛くないけどな! わはははー!」

唯「わはははー!」


唯「ビーチバレー楽しいよー! みんなでやろうよー!」

律「二対一はさすがにきついから誰か助けてくれ……」

純「ほら、梓もやろうよー、そんなすみっこにいないでさ」

梓「わたしは別に……」

憂「じゃあやろっかなー」

律「おっ、7人もいるし、チーム戦するか! 二年生チーム対一年生チームな!」

純「ほら梓! チーム戦だって! 梓がいなきゃ二対四だよ!」

憂「梓ちゃん、いっしょにがんばろ?」

律「梓……怖いのか?」

梓「なっ」

唯「りっちゃん、ダメだよ、あずにゃんはわたしたち二年生との実力差を認めたくないんだよ」

律「ふふ、そうだな唯。じゃあこの戦いは我々の不戦勝――」

梓「やってやるです!」


澪「じゃあわたしは審判やるよ」

律「とかいってー、ボールが怖いんだろー?」

澪「違う! 四対三じゃ梓たちがかわいそうだから、それだけだ!」

紬「澪ちゃんの分もがんばるね!」


純「憂、梓、先輩だからって遠慮は無しだよ……!」

梓「もちろん!」

 律先輩、いい感じに梓を炊きつけてくれたな……。
 負けず嫌いな子はこうして扱えばいいのか……勉強になる。

唯「うい……今は敵同士でも、この戦いが終わったら……!」

憂「うん、お姉ちゃん、わかってるよ……!」

唯「ういぃっ!」だきっ

憂「おねえちゃあん!」ぎゅっ


 平沢姉妹による、前座の小芝居が終わり、ついに学年対抗「ドキっ!? けいおん部だらけのビーチボール大会」が始まった。
 遊びたいとはいったけれど、一応確認しておこう。今日は合宿のために海に来ています。
 けいおん部の。

澪「じゃあ、サーブは一年生チームからな、当然」

憂「いきまーすっ」

 中学から同じクラスだったからわかる。
 憂は運動も出来る。体育の授業、彼女は常に輝いていた。

 この勝負、もらった!

憂「そー……れ!」サーブッ

 ぽーんと上がるビーチボール。ぽーんとゆれる……いえなんでも。

唯「ほいムギちゃん!」レシーブッ

紬「りっちゃん!」トスッ

律「そいきたーっ!」アタックー!

 ……。

澪「はい、二年生チーム一点」

 なんというコンビネーション。


純「ちょっ、みなさん、もうちょっと手を抜いてくださいよ!」

律「正々堂々、いざ尋常に……それがけいおん部のモットーだ!」

唯「社会の厳しさを教えてあげるよ!」ふんすっ

紬「うふふ~」

 いつもはおちゃらけて見えるのに、今はあまりにも大きくみえる……。

 これが、二年生の力……!

梓「そのやる気を練習で出してくださいよ!」

澪「全くだ。はい、サーブ権交代、二年生チーム」

 ちなみに、サーブは交互に打つことにしている。
 五点マッチ。ジュースは無し。あと四点しか失点できない。


唯「じゃあいくよー、平沢家に伝わる、一子相伝の必殺サーブ……!」

憂「一子相伝……? そんなサーブがあったなんて……!」

唯「唯ストサーブっ!?」パシーン!

純「ほいっ」レシーブッ

梓「憂!」トスッ

憂「それっ!」アタック!

唯「あぁん!」ズザッー

 ……唯ストサーブ、破ったり。
 ていうか変な姿勢で打ったせいで転んでるし……

唯「ごめんごめん……」

律「唯、ドンマイドンマイ!」

紬「唯ちゃん、まだ試合は始まったばかりよ!」

 青春だなぁ。無駄に。


澪「これで一対一だ。お互い張り切りすぎて怪我しないようにな」

梓「よし……!」

律「梓ー、緊張してんのかー?」

梓「ち、違います!」

純「梓、遊びなんだから、力抜いて」

梓「そ……れ!」パスッ

梓「あ……」

 言わんこっちゃない……。
 梓のサーブはいびつな放物線を描きながら……わたしたちのコートに落ちた……。

律「よっしゃー! 一点もうけー!」

唯「いぇーい!」


澪「二対一だ、サーブは二年生チーム」

唯「りっちゃん! このまま一気に決めちゃおう!」

律「まっかせろー! いっくぜー!」

律「そらっ!」サーブッ


憂「梓ちゃん!」トスッ

梓「あっ……純っ!」パスッ

純「えぇええ無茶ぶり!?」ズザーッ

純「うあーっ……砂まみれ……」

紬「だいじょうぶ? 純ちゃん」

純「あ、はい、だいじょうぶです……」

梓「ごめん純、ちょっとぼーっとしてて……」

憂「ううん、わたしのトスが悪かったよ、さっきのサーブは気にしないで、がんばろ?」

純「絶対勝つよ!」


 三対一……、圧倒的不利な状況……。
 しかしここで大逆転しょーり! ……できたらかっこいいじゃん!

純「行きます!」

 力を抜いてー、いつもどーり。

純「それ!」サーブッ


唯「任せて! ムギちゃん!」トスッ

紬「えいっ!」ポーンッ


梓「憂っ!」トスッ

憂「はいっ」ポーンッ


律「おっ、いいねぇ!」トスッ

唯「そりゃーっ!」アタックッ

ザシュッ

純「しまったー!」


澪「四対一。サーブは二年生チーム」

律「ふっふっふ、圧倒的ですな唯隊員」

唯「そうですな、ムギちゃん隊員」

紬「ふ、ふっふっふ……!」

澪「意地が悪いぞお前ら……」

律「そんなこというなら澪がそっちチーム入ればいいじゃーん」

澪「なっ」

 澪先輩がこっちチームに!
 背高いし、運動神経よさそうだし……。

純「澪先輩! ぜひ! 助けてください!」

梓「澪先輩……!」

憂「澪さん……」

 澪先輩はやさしいから、わたしたち三人に頼まれたら断れないだろう。
 今度こそ、この試合、もらった!


――白い砂浜に、澪先輩の鼻血が舞った。


 五対一、ゲームセット。


 決まり手、ムギ先輩のサーブ。


 ちなみになぜか梓も顔を真っ赤にして鼻血を出していた。




 二年生対一年生のビーチバレー対決は、二年生の圧勝。
 唯先輩が「これが先輩の力だよ!」とかいって胸を張っていた。

 そして現在、負けたわたし達は罰ゲーム執行中である。

梓「罰ゲームがあるなら、最初から行って欲しかったです……」

純「まぁまぁ、先輩のために動くのは後輩として当たり前のことだよ」

憂「お姉ちゃんのために頑張るのも妹の仕事だよー」

澪「悪いな、みんな」

純「いえ、澪先輩こそ、すみません。いっしょに罰ゲーム受けてくれるなんて……」

澪「ジュース運びくらい、手伝うさ」

 ああ、さっきはちょっとかっこ悪かったけど、やっぱり澪先輩はかっこいい!


梓「あ」

憂「どうしたの?」

梓「ねえ、知ってる? フジツボの話……」

澪「ひぃっ!?」ビックゥ!

純「うわっ!」

 短い悲鳴を上げて、澪先輩がわたしに縋り付いてきた、えっ、なんかすごい怖がってる……。

梓「昔、フジツボで足を切った少年が……」

澪「おぁわ!? あ、あずさ! ややめろぉぉおおぉっ!!!」ぎゅうーっ

純「み、澪先輩、痛いですって!」

 あの、憧れの澪先輩が、梓の話を聞いて、こんなにもうろたえている……。
 澪先輩の知らなかった一面を見れて嬉しいような、悲しいような……。


梓「ご、ごめんなさい、こういう話苦手とは知らなくて!」

澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ……」ブツブツ

純「ちょ、耳元でささやかないでくださいよおっ、憂助けてー!」

憂「澪さん、だいじょうぶです、もう終わりましたよー」

澪「はっ」

澪「な、なーんてな! はは、後輩の怖い話くらい、こう、オーバーに怖がってやろうと思ってな!」

純「……クラゲの話なんですけど」

澪「ひぃっ!?」ブルブルガタガタ

 なんか……叩かれるとわかっていても律先輩が澪先輩をからかいたがる理由がわかってきた気がする……。
 やっぱり、澪先輩の知らなかった一面を見れて、嬉しい、と断言しよう。



~~~~~

律「おっそいぞー」

 すいませんでした。

唯「のど渇いたよー」

 今すぐに用意します。

紬「みんな、おつかれさまー」

 あなたは天使ですか。

 ぷしゅっ、と、ペットボトルのコーラをふたを開ける音が、連続する。
 わたしも開けよう。純ジュワー、なんちゃって。

ぷしゅっぶしゃああああじゅわああああっ!!

純「うわぁああっ!?」わぁああ!?」 ぁああ!?」 ああ!?」 あ!?」 ←エコー

唯「純ちゃーん!!」ちゃーん!!」 ゃーん!!」 ーん!!」 ん!!」 ←エコー

じゅわー……

純「……」ポタポタ…

 澪先輩をからかうのに夢中で、コーラが振らさっていたことに気づけなかった、わたしが悪い。



純「やらかした……」ベタベタ…

梓「純、だいじょうぶ?」

憂「ほら、タオル」フキフキ

純「ありがと、憂」

律「ひとしきり遊んで汗もかいたし、ちょうどいいから風呂はいるか?」

唯「おっ、いいですなぁりっちゃん!」

澪「そうだな、お風呂からあがったら練習だからな!」

紬「練習の前にご飯にしましょ? こっちきてからまだ何も食べてないし……」

澪「あ、ああ、そうだな」

唯「おっふろーおっふろー♪」



~~~~~

 さすがムギ先輩。
 浴室、いやこれは大浴場と呼ぶべき代物。立派だ……。

 けいおん部最高……!

 キャッキャッウフフなトークがなんとも女子高生らしい。

 おや、梓が湯船につかろうとしてる。すごいゆっくり。熱いの苦手なのかな。
 唯先輩が近づいて……。

 沈めたー!

梓「いったぁーい!!」

 あぁ、日焼けか……。大変そうだなー。


紬「澪ちゃんの髪きれいねー」

澪「そう? ムギの髪も、きれいな色だけど……」

紬「うふふ、これ自毛よー」

純「ちょ、えっ、自毛!? そのふわっふわな素晴らしい髪の毛が!?」

 聞き捨てならない。使ってるシャンプーとか、ぜひ聞きたい。

紬「椿油を使ってるの~」

 つ、椿……、あの、赤いシャンプーじゃなくて、椿油、高そう……。

純「なるほどなるほど……」

唯「純ちゃーん!」だきっ

純「うわっ!?」

唯「純ちゃんはこのモコモコがかわいいんだから、クセっ毛のままでいてねえ!」すりすり

純「わ、わかりました! わかりましたから!///」

 お願いですから裸で抱きつくのはやめてください。



~~~~~

律「飯、だぁー!」

憂「用意できましたよー♪」

唯「ばーべきゅー! ばーべきゅー!」

澪「憂ちゃん、ありがとな。こんなに手際よく準備してくれるなんて」

憂「いえ、部外者なのに、誘っていただいて、これぐらいじゃ足りないくらいです」

澪「憂ちゃん……」

唯「ういは自慢の妹だからね!」フフン

澪「お前も見習え!」


紬「純ちゃん、バーベキューってどんなふうにすればいいのかな?」

純「どんなふうって……、炭火で串に刺したお肉や野菜を焼いて、食べるだけです」

紬「串に刺して……、豪快ね!」

 まさかムギ先輩……。

紬「あのね、バーベキューって一度やってみたかったの! でも、よくわかんなくて……」

 ……このお嬢様はものをしらなすぎる。

紬「楽しいわねー」

純「そうですね」

 今度、鈴木純特製もんじゃ焼きを振舞ってあげよう。きっと知らないだろうから。


~~~~~

澪「ご飯も食べたことだし……、練習! 練習するぞ!」

唯「えー……」

律「もうちょっと遊ぼうぜ~?」

梓「ダメです! ちゃんと練習しなきゃ、なんのための合宿ですか!」

 さすがに、これ以上は遊びすぎな気がしたのか、唯先輩も律先輩もしぶしぶスタジオにはいっていった。

純「憂は?」

憂「わたしは……、どうしよっかな」

純「憂ってオルガンとか弾けたよね、合宿だし、ムギ先輩に教えてもらえば?」

憂「邪魔にならないかなぁ……」

純「ムギ先輩だよ? きっとこう、優しく教えてくれるよ、ほら、スタジオいこ」

憂「うん、そうだね!」


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最終更新:2011年03月15日 15:18