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術伝流一本鍼no.28 - (2010/11/15 (月) 10:42:43) の編集履歴(バックアップ)


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術伝流一本鍼no.28 (術伝流・養生の一本鍼・基本編(2))

慢性期の養生の診察手順


(1)はじめに

 先回は、術伝流の慢性期の養生は、腹診中心に見ていくことなどを解
説しました。今回は、術伝流「養生の一本鍼」での診察手順について説
明していきます。

 術伝流講座では、まずこの手順をしっかり身につけ、まよわず手が動
くように練習しています。手順で迷っているようでは、診察内容がおろ
そかになるし、患者さんが不安になるからです。

 この診察手順は、江戸期の漢方古方派由来のものを中心に、筆者が現
在の人をみた経験をくわえたものです。

(2)礼と姿勢

 診察をはじめるまえにまず一礼します。初めての方が相手だったら名
前をつげたほうがよいでしょう。「丁寧に、きちんと治療します」とい
う思いをこめて。

 右側のすこし離れたところで、ゆっくり深い息を吐きながら礼をしま
す。座位の場合、両手で作った三角形の中に額をいれるようにゆっくり
息を吐きながら礼をし、吸いながら戻ります(写真1)。

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写真1

 ゆっくり深い息に合わせた礼をすることで、自分も落ち着きますし、
患者さんから信頼してもらえる確率も上がります。

 患者さんに近づいて右膝を患者さんの腰にかるく付け、ヘソを患者さ
んの顔にむけ、腰を立て、背は反らし気味に前傾し、肩を下げ肘は張り
気味で、手首は折らない姿勢になります。

 前にも書いたかもしれませんが、刺鍼のときもふくめ、こういう姿勢
になる(写真2)と、指が自由に動くようになります。

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写真2

「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな 引くも引かぬも 指にまかせよ」
                          (杉山和一検校)
への第一歩です。

 ヘソが患者さんのほうを向かず、腰が曲がり、背がそっくり返り、肩
が上がり、肘が伸び、手首が折れた状態(写真3)では、指が自由に動
きづらいことを確認してみてください。

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写真3

 刺鍼のときもそうですが、脈診や腹診のときも、手のひらや指が、ゆとりをもって自由に動くことが大切です。勘が働きやすいからです。
 そのためにも、まずは、手のひらや指がゆとりをもって自由に動けるような姿勢を取れるようになることを目指してください。

(3)脈
 人差し指、中指、薬指で、前腕手首近く親指側の脈を診ます(写真2)。
写真2:DSCF2702.JPG

 はじめは、こまかいことよりも、治療前後の脈を比較してザワザワした感じの脈がおだやかになっているかどうかがわかることが大切です。
 つぎは、左右差。このとき患者さんの肘が片方浮いている状態だと違ってきますので、両方の肘がしっかりベッドや布団についているか確認をしてください。
 そして、浮沈・数遅・虚実などの脈状や上焦・中焦・下焦などの部位脈が診れるようになるとよいです。
 脈は、薬や食品添加物、野草茶などにふくまれる漢方成分などで、変わりやすいので、脈の状態と患者さんの印象が異なっていたら、薬などを飲んでいないか確認したほうがよいでしょう。
 また、脈診から予想される体の状態と、舌診や腹診の結果をつねに比較しましょう。

(4)舌・顔
 まず、舌を出していただき、舌の表側を観察します。舌の色、乾湿、はれ具合、歯の痕、舌苔などの状態や、部位による変化を観察します(写真3)。
写真3:DSCF2703.JPG

 つぎに、舌先を上の歯に引っかけてもらい、舌の裏側を観察します。とくに、裏側の左右に1本ずつ走っている血管の太さや色を観察します(写真4)。
写真4:DSCF2704.JPG

 舌の状態も、脈診や腹診と比較します。

 また、ついでに顔の表情を診ておいて、治療後と比較します。治療前の浮かない暗い表情が、治療後に生き生き晴れ晴れとしてくれば、患者さんのそのときの状態に適した治療ができたといえます。

(5)腹
 そして、いよいよ腹診です。

1.手のひらで大雑把に
 まず、手のひらで大雑把な変化を見ます。手のひらを体温をはかる感じで、胸部から腹部に、以下の順で、当てていきます。

①鎖骨あたり。親指を開いて合谷を胸骨上部に当てるように(写真5:DSCF2706.JPG)
②胸骨中央。親指を閉じて手のひら中央を膻中に(以下、親指を閉じたまま)(写真6:DSCF2707.JPG)
③鳩尾まわり。手のひら中央を鳩尾に(写真7:DSCF2708.JPG)
④腹よりの左右の肋骨上。かるく押して左右の硬さを比較(写真8:DSCF2709.JPG)
⑤左右の上腹部。左右の張り具合を比較(写真9:DSCF2712.JPG、写真10:DSCF2713.JPG)
⑥臍まわり。手のひら中央をヘソに(写真11:DSCF2714.JPG)
⑦下腹部。手のひら中央を関元に(写真12:DSCF2715.JPG)
⑧左右の脇腹。左右の温度差などを比較(写真13:DSCF2716.JPG)

 手のひらで診るときにいちばんわかりやすいのは温度差でしょう。なれてくると、動悸などそれ以外の情報も伝わってくるようになります。

2.四指の先で細かく
 そのあと、四指の先でこまかく診ていきます。しこりやスジバリを中心に、以下の順で腹部を診ていきます。

①鳩尾。正中線上のすこし離れたところから、鳩尾のほうに指先をいれて、硬さを中心に診る(写真14:DSCF2717.JPG)
②中脘。鳩尾から指先をヘソのほうにズラして、鳩尾とヘソの中間あたりで凹んでいるところを診る
③肋骨下縁右。鳩尾あたりから指をすべらして、右の肋骨の中央あたりのすこし離れたところから、肋骨に直角の向きで、肋骨の下に指先をいれるような感じで、硬さを中心に診る(写真15:DSCF2718.JPG)
④肋骨下縁左。右と同じように、左肋骨の中央あたりのすこし離れたところから、肋骨に直角の向きで、肋骨の下に指先をいれるような感じで、硬さを中心に診る(写真16:DSCF2719.JPG)
⑤腹直筋、遠側の腹直筋のヘソより上。(4) から指を斜め左下にすべらせ、そこから正中線に平行に足のほうに指をすべらせてツボを探し、指先を奥まで差し入れてから、指先を横に振って、しこりやスジバリを診る(写真17:DSCF2720.JPG)
⑥腹直筋、遠側の腹直筋のヘソより下。 (5) の指先を皮膚表面まで上げ、そのまま足のほうへ指をすべらせ、ツボを探し、指先を奥まで指し入れ、指先を横に振って、しこりやスジバリを診る(写真18DSCF2721.JPG)
⑦腹直筋、近側の腹直筋のヘソより上。 (5) と同じような感じで(写真19:DSCF2722.JPG)
⑧腹直筋、近側の腹直筋のヘソより下。 (6) と同じような感じで
⑨臍下の丹田。ヘソから正中線上を足のほうに指をすべらせ凹んだところをさがし、静かに四指の先を奥まで差し入れ、呼吸に従って指先を押し上げてくる力の強弱を診る(写真20:DSCF2724.JPG)
⑩左右の脇腹。四指の先を差し入れ、左右交互に上下に振り(背から腹へ、腹から背へ)、スジバリの左右差を診る(写真21:DSCF2726.JPG)

3.古いツボの出やすいところ
 腹診のおわりに古いツボの出やすいところを診ます。
①章門。肋骨下縁で脇腹に近い左右の章門あたりを押して、左右を比較(写真22:DSCF2731.JPG)
②ヘソの斜め上。ヘソから2,3cm離れた、左斜め上、右斜め上の左右を比較(写真23:DSCF2732.JPG)
③ヘソの斜め下。ヘソから2,3cm離れた、左斜め下、右斜め下の左右を比較(写真24:DSCF2734.JPG)
④五枢・維道。蝶骨の腹よりの五枢・維道あたりを、蝶骨に親指の先を巻き入れるように押しつけて、左右を比較(写真25:DSCF2735.JPG)

(6)足
1.足先の冷え
 足は、まず、足先や足の甲に手のひらを当てて、冷えを診ます。足先、足甲の順で、左右の温度差を比較してみます(写真26)。
写真26:DSCF2740.JPG

 また、腹診のときにみた胸腹部の温度と比較してみます。

2.足の陰経陽経
 つぎに、膝から足首にむかって、下腿の陰経陽経をふれていき、各経絡の状態、まずは温度差、そして虚実などを診ます(写真27,28)。
写真27:DSCF2741.JPG
写真28:DSCF2742.JPG

 必要の応じて、大腿部も診ます。
 温度差は、胸腹部や足先とも比較してみます。
 素足の状態なら、凹凸、色、 浮腫、 静脈の状態(静脈瘤、細絡)なども参考になります。

(6)おわりに
 繰り返しになりますが、いちばん大切なことは、手順を迷わないことです。迷うと患者さんが不安になります。迷わずに、ボーっとしていても手が手順通りに動くようになるくらいまで、練習して身に付けてください。内容はそのつぎです。



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