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術伝流一本鍼no.14 - (2015/07/31 (金) 14:13:09) の編集履歴(バックアップ)


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術伝流一本鍼no.14 指まわりの痛みに糸状灸

(1)先急一本鍼  (運動器) 指まわりの辛さ

(1)基本的に

 応急処置の原則は「遠くに強く引く」でした。

 患部が胴や頭などの体幹部にあるときには、「遠く」として手
足の甲が使われますが、患部が指周りのときには手足の甲は「遠
く」とは言えませんし、手足の甲を使っても邪気を体の外に引け
ません。手足の甲の方が胴体に近いからです。

 また、指周りは、鍼すると痛がられるので、鍼は使いにくいこ
とが多いです。接触鍼なら可能ですが。そのため、鍼の場合には、
巨刺を接触鍼でしたりしますが、調節が難しくなります。

 指周りや手の平、足の裏などの辛さには、灸、特に硬く細く捻っ
た糸状の直接灸が効きます。

 突き指、指の捻挫、使いすぎによる指周り、手の平、足の裏な
どの炎症、腱鞘炎による指の痛みなどに効果があります。手首足
首などの痛みにも効果があります。

 手首足首などでは他の方法もありますので、患者さんと相談し
て適切な方法を選んでください。

 灸の熱さに弱い人の中には、指まわりでも鍼の方が良いと言う
人もいます。

(2)ツボ探し、糸状灸の作り方、立て方

ポイント1.鍼柄くらいの太さのものでツボを特定する

 この方法のポイントの1つは、ツボ探しです。指周りのツボは
細かいので、達人ならともかく、普通の人には指では探せません。
鍼柄位の太さの物で探します。術伝では、直径1.5mmのステンレ
ス棒を加工しツボ探し棒を作りました。

 ツボの出てそうな辺りをその太さの物で縦や横に辿ってみて、
一番ペコペコしてヘコんでいる所を探します。そこをその太さの
物で押してみて、ツンという感じ、ピリビリという感じで痛かっ
たら、そこがツボです。

 角度によっては感じないこともあるので、押す角度を工夫して
ください。いくつか候補があった場合には、押した痕が広めに赤
黒く深くヘコみ、なかなかヘコみが浅くならなくて、かつ、色が
薄くならない方を取ります。

 鍼柄の太さで探しにくかったら、少し太い直径3〜5mm位の物
で探してから、鍼柄位の太さの物で探すと見付けやすいです。

 竹串の先端を鍼柄の太さ位の所で爪切りなどで切り落としてか
ら、両端を爪ヤスリなどで丸めると、ツボ探しの道具ができ上が
ります。指、竹串の太い方、竹串の細い方の順で探せば、誰にで
も見付けられます。

 この道具は、円皮鍼や皮内鍼、またはマグレインなどの粒鍼を
貼るときのツボ探しにも使えます。耳鍼のときには、先端を痛く
ない範囲でもう少し細くしたものを使います。エゴマ油やビーワッ
クスなどを塗ると汚れが付きにくく、使いやすくなります。

ポイント2.モグサを細くひねる

 もう1つのポイントは、モグサを硬く細く捻ることです。底面
の直径は0.5mm以下を目指します。

 それ以上太いと熱くなりすぎるし、痕が残りやすくなります。
また、ピンポイントで施術した方が効果が上がりやすくなります。
0.5mm以下なら、黒く痕になっても暫くするとポロッと剥がれ
落ちて、痕が残りません。

 細く作るコツはモグサを摘むときに薄く剥ぐように摘むことで
す(写真1)。

写真1

そして、力を入れて一度捻れば、硬い糸状灸ができます(写真2)。

写真2

 最も子供用は、同じ細さで力を入れずにフンワリとしたものを
作った方が良いです。

 長さは少なくとも5mmは必要で、あまり短いと線香を近づけ
た時に熱いと言われます。

 細くて立ちにくいので、灸点墨をツボに付けて立たせます。ス
テンレスのツボ探し棒の頭の方を使って墨を付けています。細い
灸を立たせるのに紫雲膏やオイルを使う人もいますが、どちらも
油が使われているため必要以上に熱くなりやすいので、あまりお
勧めできません。

 糸状灸が上手に作れない人は、手指用糸モグサを使うとよいで
す。しかし、糸状灸に比べると大変熱いですから、途中で消すこ
と(八分灸)が必要な場合もあります。手指用糸モグサの場合は、
糸モグサそのものを灸点墨の中に挿し入れて墨を付けてから立て
ても良いです。

(3)手順

 鍼による応急処置の手順と基本的には同じです。

 まず、どういう動作でどの辺りが辛いか良く確かめます。また、
指周り以外に辛さを感じている場所があるかどうかも確認します。

 肘膝、腰肩などにも辛さがあるときには、先にそちらの治療を
した方がよいです。胴体よりを治療した後に邪気を末端に引いて
くると、また指周りが痛み出すことがあるからです。

 治療は井穴から。最も痛い場所の延長線上の井穴に灸点墨を付
け、硬く細く捻った糸状灸を1壮します。これは鍼の手足の甲へ
の引き鍼に相当します。

 次に、その井穴と最も痛む所を結ぶライン上のツボを探します。
指関節周りの窪みなどでペコペコとヘコんだ所が狙い目で、最も
痛む所よりも少し胴体よりの手首足首近くにもツボが出ているこ
ともあります。

 胴体に一番近いツボから井穴の方への順で、灸点墨を付けてか
ら、硬く捻った糸状灸を1壮します。たいてい1壮で充分ですが、
痛みが残っているときには、もう1壮します。

 痛むラインが2,3本あるときは同じように灸します。

 痛むラインの灸を終えたら、試しに患部を動かしてもらいます。
動かして痛みや辛さが残っていたら、痛む直前の格好で痛む辺り
を、鍼柄ほどの太さの物を縦横に動かして、一番凹んだ所を見付
け、圧痛があったら、灸点墨を付けてから灸をします。

 鍼の場合の動作鍼に相当する方法です。施灸後また動かして痛
むようなら、同じようにツボ探しをして、灸をします。動かして
痛む所が無くなるまで続けます。

 状態によっては、動かすと前腕・下腿など胴よりに痛みが出て
くることもあります。指を動かす筋肉の筋腹や起始は前腕の肘よ
りや下腿の膝よりにあるし、指を動かすときには肩甲骨や骨盤や
背骨もいっしょに動いているからです。

 また、手指の痛みの場合でも手指を使う姿勢によっては足腰に
も辛さが出てくる場合もあります。そういう場所の治療は鍼でし
てもよいでしょう。今まで説明してきた、動作鍼の方法で施術し
てください。

 おわりに、施灸した所の延長線上の指の井穴を押してみて、一
番痛い所に灸をします。指が何本か有れば、それらの井穴の痛さ
を比較して一番痛い所を選びます。

 はじめに灸したと所と同じ井穴になったら、指端や骨空に灸を
します。鍼の場合の最後の引き鍼に相当する方法です。

 足の親指の井穴の場合には、陰経側なので、そこで止めずに陽
経側の足指か手指の井穴の中から次に痛い所を見付けて、灸して
終わります。次に痛い所が分かりにくい場合は、陽明の指井穴を
選びます。

(4)多いのは、親指の辛さ

 こういうお灸の仕方は、指だけでなく手首足首までの辛さにも
使えます。

 いちばん多いのは、マッサージなどのバイトのし過ぎで親指を
痛めたという例ですが、残念ながら撮らせていただいた写真がピ
ンぼけでした。そこで、親指の痛い方で治療中の写真を撮らせて
くださる人を募集しています。そういう方は術伝事務局までメー
ルをくださるようお願いします。

 今回は、写真がとれた手首の橈屈で痛みが出る方と遠位指関節
捻挫の方の例を紹介します。

(5)手首の橈屈が辛い例

 左手首を橈屈すると、指で示した部分が辛い人です(写真3)。

写真3

 小指の外よりの井穴から順に、井穴と痛む辺りを結ぶ線上で凹
んだ所をツボ探し用ステンレス棒で押してみて痛い場所を探し、
青い丸印を書きました(写真4)。念のため、そのラインを肘近
くまで調べましたが、前腕には余りツボが出ていませんでした。

写真4

 先ずは、小指外よりの井穴に灸しました(写真5)。

写真5

 その後に印を付けた所を前腕よりの方から指の方への順で灸し
ていきました(写真6、7、8)。

写真6
写真7
写真8

 はじめに痛かった所の施灸を終え後、試しに橈屈をしてもらっ
たら(写真9)、新たに2カ所痛む場所が見付かったので、そこ
に赤い丸印をつけ(写真10)、そこに灸しました(写真11)。

写真9
写真10
写真11

 もう一度橈屈してもらったら痛む場所が無くなったので、小指
骨空に灸して仕上げました(写真12)。

写真12

(6)突き指で指を曲げられない例

 左手薬指を突き指して、痛くて指が曲げられないとのことでし
た(写真13)。

写真13

 左手薬指を調べ、痛む所に灸点墨で印を付けました(写真14)。

写真14

 余りにも指先なので、その指の井穴では遠くとは言えないので、
巨刺に準じた方法でやってみようかと右薬指を調べたら、左より
は少ないですがツボが出ていたので(写真15)、順に灸しました
(写真16、17)。

写真15
写真16
写真17

 その後に、左薬指をツボ探し棒で調べ直したら(写真18)、ツ
ボが減っていました。このツボの出方からすると、小指よりを突
いた可能性が高いと思います(写真19)。

写真18
写真19

それらのツボに順番に灸し(写真20,21,22,23)、最後に小指側
の薬指井穴に灸して仕上げました(写真24)。

写真20
写真21
写真22
写真23
写真24

そしたら、他の指と同じ位に曲げられるようになりました(写真25)。

写真25

(7)おわりに
 指は、経絡の末端であり、指への灸で全身の経絡的歪みを調整
できたりもします。逆に言うと、指の辛さがその指と経絡的に関
係する所(体幹部内の臓器も含めて)の歪みを大きくさせてしま
うことも考えられるかなと思います。

 また、指の辛さで肘膝までを診ることと、肘膝から先に手足の
要穴が多いことを考え合わせると、指の辛さは、その指の延長の
手足の要穴に関係していることになりますし、また、それら要穴
と経絡的関連のある体幹部のまだ顕在化していない歪みや変動の
反映の可能性もあります。

 指の痛みをほって置かずに、できるだけ早く辛さを解消した方
が良いと考える理由の一つですし、他の肘膝から先の辛さにも同
じようなことが言えるのではないかと考えています。

 筆者は、治療中は、主に息の深さで効果的かどうかを観て匙加
減し、治療直後は、喜んでもらえたか、嬉しそうな表情になった
か、足取りが軽くなったかなどで有効かどうか判断し、その後は、
次の日の朝の寝覚めが良かったかなどで効果を上げたか判断して
います。

 局所治療をしても、治療中に息が深くなり、治療後に喜んで嬉
しそうな表情をしていれば、全身治療としてみても、かなり効果
的だったと考えてよいのではないかなと考えています。息が深く
なったり、嬉しそうな表情をするのは、全身的なことだと思いま
すので。

 この辺りの判断は、「鍼は引き鍼」内の「治療は対話」に詳し
く書きました。(「鍼は引き鍼」も、そのうち掲載したいと思い
ます)

 逆に、辛さが減り可動域が改善しても、喜んでいただけないと
きには、匙加減を間違えたかなと思い、次はもう少し工夫してみ
ることにしています。これは、全身治療するときも同じです。

 耳、手、足裏、肘膝から先だけで治療する流派の人もいるし、
この辺りの全身と局所の相関関係は、東洋医学の面白い所だなと
思ってみています。

 今回書いた方法で、指の痛みは、かなり解消できると思います。
試してみてください。

 また、この方法で解消できなかったり、改善できても直ぐにぶ
り返したりすれば、単なる運動器系の病変ではない可能性が高く
なるということかなと考えています。

 そういう場合は、腹診など含めて全身の慢性期の養生が必要に
なると思います。そういう場合の処置は、「養生の一本鍼」とい
うテーマで別途書きたいと思っています。逆に言えば、この方法
で解消できれば、単なる運動器系病変の可能性が高く、そういう
意味で、判断の一つに使えるのではないかと考えています。


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