「和方鍼灸の基本」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

和方鍼灸の基本 - (2016/11/30 (水) 12:51:14) の編集履歴(バックアップ)


累積: - ___ 昨日: - ___今日: -

和方鍼灸の基本

指が動きやすい姿勢、出ているツボ、引き鍼


はじめに

 和方鍼灸の基本の
1.指が動きやすい姿勢
2.出ているツボ
3.引き鍼
の3つについて、江戸時代からの鍼灸書を引用して解説します。

指が動きやすい姿勢

 姿勢は、指が動きやすいもの。
何故なら、杉山和一検校の作とされる和歌に
「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな
      引くも引かぬも 指に任せよ」
とあるように、指が自由に動かないと、治療中も刻一刻と変化
していく「患者さんの体」に対応するのが難しくなるからです。

 姿勢については、「礼と姿勢(術伝流一本鍼no.61)」で
詳しく説明しています。

出ているツボ

 ツボは、患者さんの体にその時に出ているツボを取ります。
指を滑らして取るのが基本で、体の部位別に滑らし方がありま
す。そういうことも含め、体で覚えていきます。

 阿是穴治療は、和方鍼灸の基本の一つです。
「成書の経穴部位は、方角を示すのみ」(深谷伊三郎先生)

「邪気ある時は何れの所にも鍼を用ゆ
   病なきは何れの穴にも鍼を禁ず」『鍼道発秘』
                  (葦原検校)
 出ているツボの出やすい場所や探し方は、先急,養生の運動
器系内科系の各項目で、それぞれ詳しく説明しています。

 ツボが出ているというのは、現代の言葉で言えば、その部分
の筋肉が一時的機能性病変を起こしているということだと思い
ます。ツボの表面に近い方は、過弛緩型の一時的機能性病変、
そして、ツボの奥の痼りは、過緊張型の一時的機能性病変と思
います。

体はツボを感じている

 「体は、出ているツボを感じている」ことが多いです。

 経絡に沿って、指を動かしていくと、出ているツボの上で、
指が跳ねたりする現象が観察できます。

 詳しく言うと、ツボの出ている部分の10cm位上の空中を、
皮膚に平行に指先をゆっくり動かすと、出ているツボの真上
で指を動かすスピードが変わったり、指が皮膚から離れる方向
に跳ねたりする現象が観察できます。


 前腕だと実験実証しやすいからで、背中でも腹でも同じ現象
は起きます。また、「私は邪気は分からない」と言う人の指も
動くことが多いというか、殆どの人の指が動きます。試してみ
てください。

 この観察から、私は、出ているツボからは邪気が常に少し
噴出しているのではないかと考えました。頭で意識できなくて
も、心で思えなくても、指はイヤな感じを受けて避けるように
動くようです。

 生物は、アメーバのような単細胞生物から進化しました。特
別な感覚器官は無いけれど、イイ感じの物には近付き、イヤな
物からは逃げられなければ、生物として生き延びることはでき
なかったはずです。

 人間の細胞の一つ一つにも、そういう原始的能力が残ってい
るのかもしれません。

付記(2015.12.8):ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ですから、初めのうちに邪気が感じられないからと言って落
ち込む必要は有りません。指は感じていることが多いです。そ
れまでの人生で勉強してきた学問知識常識などが邪魔して、意
識に上って来にくいだけです。

 自分に刺鍼すること、同じ志を持った同士で刺鍼しあうこと
の2つを続けていけば、やがて分かるようになります。

1.指が動きやすい姿勢で刺鍼する
2.出ているツボを取る
3.自分や患者さん役の体の望みに合わせて刺鍼する

 この3つも大切です。

 そういう点を大切にしながら、自己刺鍼をしていくと、先ず
自分の体の邪気の動きが感じられるようになります。それから、
二人組稽古で6割以上の確率で結果が出せるようになってから、
しばらくして、体が調子が変化して、その後に、患者さん役の
邪気が感じられるようになることが多いです。

 私は、鍼灸学校に入学する前から、ヨガ、野口整体、気功太
極拳、操体などをしていたせいか、自分に初めて刺鍼した時か
ら深さに応じて違った種類の変化が体に起こることを感じるこ
とができました。

 自己刺鍼を続け、頭痛、発熱、モノモライなどの顔の炎症な
どの時に手甲に刺鍼していたら、邪気が来るのを感じることが
できるようになっていきました。

 それから、二人組での稽古の多い講座を探し、通い始め、2
年位してから稽古相手の邪気を感じ始め、それからは、だんだ
ん、邪気に合わせて指が動くようになっていきました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ツボと経絡については、「ツボと経絡の観方」で詳しく
説明しています。

引き鍼

 引き鍼は、
先ずは「手足に引く」、
次は「陽に引く」。
この2つを確実にできるように体で覚えていきます。

「手足に引く」「陽に引く」の「引く」とは、

「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな
   引くも引かぬも 指にまかせよ」(杉山和一検校)

「鍼は万病一邪と心得べし」『鍼道発秘』(葦原検校)

「病さかんなれば まず遠き所より引く」『鍼道発秘』
                   (葦原検校)

「けだし鍼は邪気を退くるものなり
  邪気さえ退く時は自ら正気は盛になる理なり」
                 (『鍼灸重宝記』)
(手足背に引き、患部から邪気を退ければ、真気は自然に巡る)

「邪気の至るや緊にして疾く、
   穀気の至るや徐にして和す」
   (『杉山真伝流』皆伝之巻「鍼法撮要」〈気察〉)
「病が盛んな時には、患部には邪気が沢山蠢(うごめ)いてい
る。手足背など遠い所に引き、患部から邪気を退けると、患部
には真気が巡る。刺鍼した場所には、先ず邪気が来て緊張した
感じがするが、やがて真気が来て和(なご)んだ感じになる」
ということかなと思います。

 これら記述は、私が鍼灸している時に実感していることに近
いですし、敏感な患者さんの話とも近いです。

追記:2016.9.28ーーー
 例えば、筋痛症系の患者さんは、電気のような物が動いて指
から出ていくと言う話をされる事が多いです。
術伝流一本鍼no.57:応用(9)筋痛症
ーーー

 邪気とは、今の言葉で言えば「生体内雑電気」かなと思いま
す。明治鍼灸大学時代の伊藤和憲先生の研究で「過緊張した筋
肉は活動電位を出し続けている」というのがありますが、その
活動電位と関係が深そうに思います。

 また、邪気は、漢方的には、体の中の邪毒のうち、目に見え
ず、形が分からないが、電気や空気のように機能は感じられる
物と思われます。

 そして、邪気は、水毒や瘀血から湧き出すとされるので、腐っ
た水からメタンガス(気体)が出てくる感じかなと思います。

 「症状が出ている所、古いツボ、傷跡、水毒、瘀血には、邪
気が沢山有る(蠢いている)。そこから邪気を退けると、症状
は改善し、ツボ、つまり、筋肉の一時的機能性病変も改善し、
傷跡の改善も進み、水毒や瘀血の毒性も低下する」ということ
のようです。

 体の中の電気生理学的研究が進むと解明できるかもしれない
なと思っています。

 敏感な人は、ピリピリビリビリした感じを受けることが多い
ですし、敏感な患者さんには「小さな雷(稲妻?)」という表
現をされた人もいます。

追記:2016.10.15ーーー
 堀泰典先生の『体内静電気を抜けば病気は怖くない!』を読
んだら、堀先生の言う体内静電気こそ、邪気の正体のように思
いました。体内静電気を鍼で抜く話も出てきましたので。
ーーーーーーーーーーーー
追記:2017.11.30ーーー
電磁波を放電しよう!体にたまった電磁波の抜き方、知っていますか?
ーーーーーーーーーーーー

手足に引く

 体幹部の邪気を経絡的に関係する手足の出ているツボ
引きます。体幹部とは、頭首胴のことです。

(症状が出ている所には、邪気が蠢いています)

手足陽経に引く


図1

 体幹部の表面に近い皮下や筋肉部分などで蠢いている邪気を
引くには、手足陽経に出ているツボを使います。

 体幹部の外寄りの筋肉部分などが、体の前側か、横側か、後
側かによって引きやすい経絡が違います。

前)体の外寄り前側で蠢いている邪気は、手足陽明
出ているツボに引きやすいです。
(体の外寄り前側は、前から見えやすい部分)

横)体の外寄り横側で蠢いている邪気は、手足少陽
出ているツボに引きやすいです。
(体の外寄り横側は、横から見えやすい部分)

後)体の外寄り後側で蠢いている邪気は、手足太陽
出ているツボに引きやすいです。
(体の外寄り後側は、後ろから見えやすい部分)

手足陰経に引く


図2

 体幹部の奥の方の内蔵部分などで蠢いている邪気を引くには、
手足陰経に出ているツボを使います。

 体幹部の奥の内蔵部分などが、体の前側か、中央(横側)か、
後側かによって出やすい経絡が違います。

前)体の奥の前側で蠢いている邪気は、手足太陰
出ているツボに引きやすいです。
(体の奥の前側は、体の内側で前側にあり、手術の時に腹側か
ら開始する胃腸系など)

中)体の奥の中央で蠢いている邪気は、手足厥陰
出ているツボに引きやすいです。
(体の奥の中央は、体の内側で中央にある子宮や肝臓など)

後)体の奥の後側で蠢いている邪気は、手足少陰
出ているツボに引きやすいです。
(体の奥の後側は、体の内側で後側にある腹膜後器官や脊髄
など、手術する時に背側から開始する臓器など)

陽に引く

 体幹部の内部で蠢いている邪気を引くための、もう1つ方法
で、座位立位で同じ高さの背中側に出ているツボ
使います。背中側には、後頭部や後頚部も含みます。

 例えば、上焦で蠢いている邪気は、胸椎1〜7の華佗経など
に出ているツボに引きます。

図3 

 そして、目や鼻の病を「陽に引く」時には、後頭部や後頸部
も使います。

引き方

 邪気が来始めたら、押手を引き気味にしながら弾鍼などしま
す。邪気が来始めたかどうかは、色々な兆候(きざし)がある
ので、それを把握できるよう、体で覚えていきます。また、敏
感な患者さん(役)なら教えてくれます。

 「邪気の引き方」については、「1回の刺鍼中に起こる兆し
と合わせ方 術伝流一本鍼no.77」に詳しく書きました。

おわりに

 繰り返しになりますが、術伝流鍼灸講座では、和方鍼灸の基
本を身に付け、それを応用し、先急や養生の型を身に付けます。

 和方鍼灸の基本は、以下です。
1.指が自由に動く姿勢
2.出ているツボの見付け方
3.手足に引く陽に引く

追記2015.12.8.:ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 繰り返しになりますが、上記3点をしっかり身に付け、患者
さん役の体に合わせて刺鍼することを心掛けて行けば、やがて、
邪気は感じられるようになります。多くの場合は、結果が6割
以上出せるようになった後です。

 6割以上になっても邪気が感じられないという人も居ますが、
そういう人の指は、患者さん役の体の変化に応じて動いている
ことが多いです。ですから、結果が出せるわけですね。

 そういうことも含めて、
「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな
      引くも引かぬも 指に任せよ」
なのかなと思っています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


   >>>術伝流鍼灸操体講座へ・・・・・・・・・術伝流鍼灸操体講座

   >>>このページのトップヘ・・和方鍼灸の基本

   >>>術伝HPトップへ ・・・・トップページ

術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」


お知らせとお願い

術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集

 術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て
いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役
をしてくださる方を募集しています。

 くわしくは、術伝流のモデルをみてください。

 よろしくお願いします。

感想・間違いなど

 感想などあったり、間違いなど見つけた方は、術伝事務局あてにメールをください。

 よろしくお願いします。

「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集

 「術伝」では症例相談用メーリングリストの参加者を募集しています。
参加希望の方は、術伝事務局あてにメールをください。

 よろしくお願いします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

   >>>術伝HPトップへ ・・・・トップページ