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和方鍼灸の基本 - (2016/06/20 (月) 10:13:10) のソース

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&color(green){和方鍼灸の基本}

&bold(){&size(12){&color(green){指が動きやすい}}&size(24){&color(green){姿勢、出ているツボ、引き鍼}}}&bold(){&size(15){&color(green){}}}
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#contents

*はじめに
 和方鍼灸の基本の
1.&bold(){指が動きやすい姿勢}
2.&bold(){出ているツボ}
3.&bold(){引き鍼}
の3つについて、江戸時代からの鍼灸書を引用して解説します。

*指が動きやすい姿勢
 &bold(){姿勢}は、指が動きやすいもの。
何故なら、杉山和一検校の作とされる和歌に
>「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな 
>      引くも引かぬも 指に任せよ」
とあるように、指が自由に動かないと、治療中も刻一刻と変化
していく「患者さんの体」に対応するのが難しくなるからです。

 姿勢については、「礼と姿勢([[術伝流一本鍼no.61]])」で
詳しく説明しています。

*出ているツボ
 ツボは、患者さんの体にその時に&bold(){出ているツボ}を取ります。
指を滑らして取るのが基本で、体の部位別に滑らし方がありま
す。そういうことも含め、体で覚えていきます。

 阿是穴治療は、和方鍼灸の基本の一つです。
>「成書の経穴部位は、方角を示すのみ」(深谷伊三郎先生)

>「邪気ある時は何れの所にも鍼を用ゆ 
>   病なきは何れの穴にも鍼を禁ず」『鍼道発秘』
>                  (葦原検校)
 &bold(){出ているツボ}の出やすい場所や探し方は、先急,養生の運動
器系内科系の各項目で、それぞれ詳しく説明しています。

 ツボが出ているというのは、現代の言葉で言えば、その部分
の筋肉が一時的機能性病変を起こしているということだと思い
ます。ツボの表面に近い方は、過弛緩型の一時的機能性病変、
そして、ツボの奥の痼りは、過緊張型の一時的機能性病変と思
います。

**体はツボを感じている
 「&bold(){体は、出ているツボを感じている}」ことが多いです。

 経絡に沿って、指を動かしていくと、&bold(){出ているツボ}の上で、
指が跳ねたりする現象が観察できます。

 詳しく言うと、ツボの出ている部分の10cm位上の空中を、
皮膚に平行に指先をゆっくり動かすと、&bold(){出ているツボ}の真上
で指を動かすスピードが変わったり、指が皮膚から離れる方向
に跳ねたりする現象が観察できます。

&ref(rtf-jaki-wo-jikkan.jpg)

 前腕だと実験実証しやすいからで、背中でも腹でも同じ現象
は起きます。また、「私は邪気は分からない」と言う人の指も
動くことが多いというか、殆どの人の指が動きます。試してみ
てください。

 この観察から、私は、&bold(){出ているツボ}からは邪気が常に少し
噴出しているのではないかと考えました。頭で意識できなくて
も、心で思えなくても、指はイヤな感じを受けて避けるように
動くようです。

 生物は、アメーバのような単細胞生物から進化しました。特
別な感覚器官は無いけれど、イイ感じの物には近付き、イヤな
物からは逃げられなければ、生物として生き延びることはでき
なかったはずです。

 人間の細胞の一つ一つにも、そういう原始的能力が残ってい
るのかもしれません。

付記(2015.12.8):ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ですから、初めのうちに邪気が感じられないからと言って落
ち込む必要は有りません。指は感じていることが多いです。そ
れまでの人生で勉強してきた学問知識常識などが邪魔して、意
識に上って来にくいだけです。

 自分に刺鍼すること、同じ志を持った同士で刺鍼しあうこと
の2つを続けていけば、やがて分かるようになります。

1.指が動きやすい姿勢で刺鍼する
2.出ているツボを取る
3.自分や患者さん役の体の望みに合わせて刺鍼する
 この3つも大切です。

 そういう点を大切にしながら、自己刺鍼をしていくと、先ず
自分の体の邪気の動きが感じられるようになります。それから、
二人組稽古で6割以上の確率で結果が出せるようになってから、
しばらくして、体が調子が変化して、その後に、患者さん役の
邪気が感じられるようになることが多いです。

 私は、鍼灸学校に入学する前から、ヨガ、野口整体、気功太
極拳、操体などをしていたせいか、自分に初めて刺鍼した時か
ら深さに応じて違った種類の変化が体に起こることを感じるこ
とができました。

 自己刺鍼を続け、頭痛、発熱、モノモライなどの顔の炎症な
どの時に手甲に刺鍼していたら、邪気が来るのを感じることが
できるようになっていきました。

 それから、二人組での稽古の多い講座を探し、通い始め、2
年位してから稽古相手の邪気を感じ始め、それからは、だんだ
ん、邪気に合わせて指が動くようになっていきました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

*引き鍼
 &bold(){引き鍼}は、
先ずは「&bold(){手足に引く}」、
次は「&bold(){陽に引く}」。
この2つを確実にできるように体で覚えていきます。

「手足に引く」「陽に引く」の「引く」とは、

>「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな 
>   引くも引かぬも 指にまかせよ」(杉山和一検校)

>「鍼は万病一邪と心得べし」『鍼道発秘』(葦原検校)

>「病さかんなれば まず遠き所より引く」『鍼道発秘』
>                   (葦原検校)

>「けだし鍼は邪気を退くるものなり 
>  邪気さえ退く時は自ら正気は盛になる理なり」
>                 (『鍼灸重宝記』)
(手足背に引き、患部から邪気を退ければ、真気は自然に巡る)

>「邪気の至るや緊にして疾く、
>   穀気の至るや徐にして和す」
>   (『杉山真伝流』皆伝之巻「鍼法撮要」〈気察〉)
「病が盛んな時には、患部には邪気が沢山蠢(うごめ)いてい
る。手足背など遠い所に引き、患部から邪気を退けると、患部
には真気が巡る。刺鍼した場所には、先ず邪気が来て緊張した
感じがするが、やがて真気が来て和(なご)んだ感じになる」
ということかなと思います。

 これら記述は、私が鍼灸している時に実感していることに近
いですし、敏感な患者さんの話とも近いです。

 邪気とは、今の言葉で言えば「生体内雑電気」かなと思いま
す。明治鍼灸大学時代の伊藤和憲先生の研究で「過緊張した筋
肉は活動電位を出し続けている」というのがありますが、その
活動電位と関係が深そうに思います。

 また、邪気は、漢方的には、体の中の邪毒のうち、目に見え
ず、形が分からないが、電気や空気のように機能は感じられる
物と思われます。

 そして、邪気は、水毒や瘀血から湧き出すとされるので、腐っ
た水からメタンガス(気体)が出てくる感じかなと思います。

 「症状が出ている所、古いツボ、傷跡、水毒、瘀血には、邪
気が沢山有る(蠢いている)。そこから邪気を退けると、症状
は改善し、ツボ、つまり、筋肉の一時的機能性病変も改善し、
傷跡の改善も進み、水毒や瘀血の毒性も低下する」ということ
のようです。

 体の中の電気生理学的研究が進むと解明できるかもしれない
なと思っています。

 敏感な人は、ピリピリビリビリした感じを受けることが多い
ですし、敏感な患者さんには「小さな雷(稲妻?)」という表
現をされた人もいます。

**手足に引く
 体幹部の邪気を経絡的に関係する手足の&bold(){出ているツボ}に
引きます。体幹部とは、頭首胴のことです。

(症状が出ている所には、邪気が蠢いています)

***手足陽経に引く

&ref(ksf-tate-soukan.jpg)図1

 体幹部の表面に近い皮下や筋肉部分などで蠢いている邪気を
引くには、手足陽経に&bold(){出ているツボ}を使います。

 体幹部の外寄りの筋肉部分などが、体の前側か、横側か、後
側かによって引きやすい経絡が違います。

前)体の&bold(){外寄り前側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足陽明}の
&bold(){出ているツボ}に引きやすいです。
(体の外寄り前側は、前から見えやすい部分)

横)体の&bold(){外寄り横側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足少陽}の
&bold(){出ているツボ}に引きやすいです。
(体の外寄り横側は、横から見えやすい部分)

後)体の&bold(){外寄り後側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足太陽}の
&bold(){出ているツボ}に引きやすいです。
(体の外寄り後側は、後ろから見えやすい部分)

***手足陰経に引く

&ref(keiraku-byoushou1110.jpg)図2

 体幹部の奥の方の内蔵部分などで蠢いている邪気を引くには、
手足陰経に出ているツボを使います。

 体幹部の奥の内蔵部分などが、体の前側か、中央(横側)か、
後側かによって出やすい経絡が違います。

前)&bold(){体の奥の前側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足太陰}の
&bold(){出ているツボ}に引きやすいです。
(体の奥の前側は、体の内側で前側にあり、手術の時に腹側か
ら開始する胃腸系など)

中)&bold(){体の奥の中央}で蠢いている邪気は、&bold(){手足厥陰}の
&bold(){出ているツボ}に引きやすいです。
(体の奥の中央は、体の内側で中央にある子宮や肝臓など)

後)&bold(){体の奥の後側}で蠢いている邪気は、&bold(){手足少陰}の
&bold(){出ているツボ}に引きやすいです。
(体の奥の後側は、体の内側で後側にある腹膜後器官や脊髄
など、手術する時に背側から開始する臓器など)

**陽に引く
 体幹部の内部で蠢いている邪気を引くための、もう1つ方法
で、座位立位で同じ高さの背中側に&bold(){出ているツボ}を
使います。背中側には、後頭部や後頚部も含みます。

 例えば、上焦で蠢いている邪気は、胸椎1〜7の華佗経など
に出ているツボに引きます。

&ref(dm-joushou.jpg)図3 

 そして、目や鼻の病を「陽に引く」時には、後頭部や後頸部
も使います。

**引き方
 邪気が来始めたら、押手を引き気味にしながら弾鍼などしま
す。邪気が来始めたかどうかは、色々な兆候(きざし)がある
ので、それを把握できるよう、体で覚えていきます。また、敏
感な患者さん(役)なら教えてくれます。

 「邪気の引き方」については、「1回の刺鍼中に起こる兆し
と合わせ方 [[術伝流一本鍼no.77]]」に詳しく書きました。

*おわりに
 繰り返しになりますが、術伝流鍼灸講座では、和方鍼灸の基
本を身に付け、それを応用し、先急や養生の型を身に付けます。

 和方鍼灸の基本は、以下です。
1.&bold(){指が自由に動く姿勢}
2.&bold(){出ているツボの見付け方}
3.&bold(){手足に引く}、&bold(){陽に引く}

追記2015.12.8.:ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 繰り返しになりますが、上記3点をしっかり身に付け、患者
さん役の体に合わせて刺鍼することを心掛けて行けば、やがて、
邪気は感じられるようになります。多くの場合は、結果が6割
以上出せるようになった後です。

 6割以上になっても邪気が感じられないという人も居ますが、
そういう人の指は、患者さん役の体の変化に応じて動いている
ことが多いです。ですから、結果が出せるわけですね。

 そういうことも含めて、
>「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな
>      引くも引かぬも 指に任せよ」
なのかなと思っています。
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