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術伝流操体no.3 腰の動作制限を改善する

[1]応急処置から学ぶ操体の基本  (3)腰の動作制限を改善する

1.はじめに

 前回(術伝流操体no.2)は、腰痛の人に効果がある横向き寝からの操
体を紹介しました。

 今回は、それで起き上がれるようになったけれど、立ち上がって試し
にいろいろ動いてみたら動作制限が残っていた場合の操体を紹介します。

 腰痛でも立って歩ける程度の場合には、こちらを先に試しても効果が
あることが多いです。

2.腰痛の動作制限は前屈と捻転の2つ

 腰痛の場合の動作制限は、おもに2つあると思います。前屈ができな
い場合と、捻転ができない場合の2つです。

 前屈ができない場合には「顔が洗えない」という言葉が出てくること
が多く、捻転ができない場合には、「こっちに振り向くのがつらい」と
いう表現をされる方が多いです。

3.前屈制限を緩和する操体

 操体では、基本的に、ある動作ができなかったら、その逆の動作をし
ます。これを橋本敬三先生は「逆モーション・バック運動」と呼んでい
ました。

 ですから、前屈ができない場合には後屈すればよいということになり
ます。

1) 手順

(1)支えてあげながら後屈してもらう

 痛くない範囲で前屈してみて、前屈できる限度を確かめたら(写真1)、
そこからゆっくり体を後屈してもらいます。

写真1

 ふらついたりしないように背中などを支えてあげます(写真2)。

写真2

(2)視線や手首の動きを加える

 背中が直立に近くなったら、目で天井の方を見るように顎を上げていっ
てもらい、それにつれて後屈していくようにしてもらいます。

 両方の手首を小指側が手のひら側にまわっていくように捻転すると、
すこし余分に捻転できると思います。

 操者は背中側にまわって両方の手首の捻転をすこし協調してあげても
よいと思います(写真3)。

写真3

(3)体重移動を加える

 体重を爪先のほうに移してもらいます。そうすると、またすこし余分
に後屈できると思います。

 操者は膝などでお尻を押してあげてもよい(写真4)と思います。

写真4

(4)息が深くなるかイイ感じなら続ける

 息が深くなったり、イイ感じがしたら続けます。わからないときには、
つらくなければ、体重をもどしたくなるまで続けます。

(5)体重を戻したくなったら終える

 体重を爪先のほうから戻したくなったら終わりにします。また、イイ
感じが消えたり、お腹の息が浅くなったりするのも終わりにしていい合
図です。

 が、体重を戻したくなるというのがいちばんわかりやすいと思います。

(6)よくなったか前屈してみる

 よくなったかどうか確かめるために、ゆっくり前屈してみます(写真
5)。

写真5

 この場合には、まず体重を踵のほうに移します。それからゆっくり床
を見るようにしながら前屈していきます。両方の手首を小指側が手甲側
にまわるように捻転していくと、より前屈しやすいと思います。

2) 別法

 この操体にはいろいろなバリエーションがあります。

別法1:柳生影流の技を用いる(写真6)


写真6

 受け手に操者の両方の手首をつかんでもらい、操者と受け手が背中合
わせになるようにします。

 そこから、操者が前屈し、操者の背中に受け手を乗せていきます。

 操者が疲れたり、受け手が戻りたくなったら終わりにします。

 受け手が操者より背が低く軽い場合にうまくいくことが多いです。

 もともとは古武術の柳生影流の技で、手をつかまれた瞬間に背中合わ
せになり背を丸め両腕を振り下ろすと、相手を投げ飛ばすことができる
のだそうです。腕をつかんだ相手は早く動かれた場合に懸命に腕をつか
むので受け身が取れないとも聞きました。

別法2:四つん這いの上に寝てもらう(写真7)


写真7

 操者が四つん這いになり、操者の背中の上に受け手の背中を乗せても
らいます。

 布団の上などで行うと、うまくいくことが多いです。

別法3:横向き寝で背を反らしてもらう(写真8)


写真8

 受け手に横向きに寝てもらい、ゆっくり後屈してもらいます。操者は
受け手の背中側に位置し、無理にない範囲で、受け手の腰を押しながら、
大腿部や肩を手前に引きます。これも布団や畳の上でするとうまくいく
ことが多いです。

別法4:背中の皮膚を寄せる(写真9)


写真9

 うつ伏せで寝てもらうとうまくいくことが多いですが、座位や立位で
もうまくいくことがあります。

 肩甲間部と腰椎部に操者の手のひらを当て、その両方の皮膚を近づけ
るようにズラします。

 お腹に息が深くはいったり、イイ感じがしたら続けます。

 座位や立位でする場合には、爪先のほうへの体重移動や手首の捻転を
付け加えると効果が出やすくなります。

3) 1人で行う方法(写真10)


写真10

 身長が160cm以上あれば、部屋の入り口の上の部分に手をかけ、両
足を一歩前に出します。そうすると自然に後屈します。

 目は天井を見るようにし、体重を爪先のほうに移します。

 体重を戻したくなったら終わります。

 背が低い人は、もう少し低いものにつかまってするとよいと思います。

 壁に頭を付けて一歩前に出てもよいかな。

4.捻転制限を緩和する操体

 左右どちらかに振り向きにくい捻転制限がある場合には、やりにくい
ほうから、やりやすいほうに捻転していく逆モーション・バック運動を
します。

 左捻転がしにくければ右捻転をするわけです。

1) 手順

(1)逆向きに捻転していく

 立位で、痛くない範囲で左右捻転してみて、やりにくいほうがどちら
か、どの程度か確かめます(写真11、12)。

写真11

写真12


 やりやすいほうに捻転していきます。ふらついたりしないように支え
てあげます(写真13)。ラクに捻転できるまで捻転します。

写真13

(2)視線や手首の動きを加える

 ラクに捻転できるまで捻転し止まった姿勢で、目を今まで捻転してい
た先を見るように動かします。

 そして、捻転した側の手首を小指側が手のひら側にまわるようにねじ
り、反対側の手首を小指側が手の甲側にまわるようにねじります。

 そうすると、体ももうすこし余分に捻転できるようになります。

 操者が手首の捻りをすこし強調してあげるのもよいと思います(写真
14)。

写真14

(3)体重移動を加える

 捻転していくほうの足に体重を移動します。すると、またすこし余分
に捻転できるようになります。

操者が体をささえてあげる(写真14)と、体重が移しやすいです。

(4)息が深くなるかイイ感じなら続ける

 息が深くなったり、イイ感じがしたら続けます。

 わからないときには辛くなければ、体重をもどしたくなるまで続けま
す。

(5)体重を戻したくなったら終わる

 体重を戻したくなったら終わりにします。

(6)良くなったか反対側に捻ってみる

 良くなったかどうか確かめるために、ゆっくりやりにくかった側に捻
転してみます(写真15)。

写真15

 このときに、まず、目で捻転していく先を見るようにし、体重も捻転
していく側に移し、捻転していく側の手首は小指側が手のひら側にまわ
るようにねじり、反対側の手首は小指側が手の甲側にまわるようにねじ
ると、より体を捻転しやすくなります。

2) 別法:仰向け膝倒し(写真16)


写真16

 仰向けで膝立から倒しやすいほうにしばらく膝を倒してもらいます。

 ようするに、立ち姿勢での捻転と同じことを仰向けでやってもらうだ
けです。つまり、逆に言えば、捻転解消の操体は、仰向け膝たおしとい
う定番操体の立位版というわけです。

 これと同じことを皮膚操体でする方法もありますが、寝方別繰体のと
ころで、くわしく解説します。

3) 1人で行う方法

 部屋の真ん中の柱などに手をかけ、そこを支えにして捻転しやすいほ
うに体を捻転し、捻転していくほうの足に体重をかけます(写真17)。
体重を戻したくなったら終わります。

写真17

 もちろん仰向け膝たおしを自分でしても構いません(写真18)。

写真18

5.立位の動作制限は同じやり方で解消できる

 立位での動作制限は、基本的に、今回練習したのと同じやり方で解消
できます。

 つまり、立位での動作制限を解消する操体の基本形は次のようになり
ます。

(1)制限動作と逆向きの動作をする

(2)目の動き、手首の動きを加える

(3)体重を移しやすいほうに移す

(4)息が深くなるかイイ感じなら続ける

(5)体重を戻したくなったら終える

(6)良くなったか確かめる

6.操体の基本手順

 前回の基本手順ともほぼ同じです。前回の手順で書けば——。

(1)ラクな姿勢になってもらう
  (=ラクな姿勢で立つ)

(2)目立つところをすこし強調してイイ感じを探す
  (≒やりやすいほうをすこし強調)

(3)ほかにイイ感じがないか探し、あったら付け足す
   1.目の動き、手首の動きを付け足す
   2.体重を移しやすいほうに移す

(4)息が深くなるかイイ感じなら続ける

(5)姿勢を変えたくなったら終える
  (体重を戻す=姿勢を変える)

 ということで、基本的に、操体というのは、みな、この手順で良さそ
うかなという気がします。

7.立位での操体は体重を移すのがポイント

 立位での操体のポイントの1つは、体重を移しやすいほうに移すこと
です。

 体重をある方向にかけるというのは、そう長い時間続けられる動作で
ないので、操体のタワメの間が短くなり、1つの操体にかける時間を短
くできます。

 つまり、短時間で効果が上がりやすくなります。

8.今回の操体は、盤若身経に由来する

 今回は、腰痛にまつわる動作制限を解消する操体を紹介しました。

 橋本敬三先生が盤若身経として発表された立位での基本運動を、腰痛
動作制限に応用のしたものです。橋本先生は付け加えることとして体重
移動を書いていましたが、それに目の動きと手首の動きを加えました。

 ですから、それほどつらくないときにも試してみて左右差や前後差が
あるようなら試してみると、立位での体のバランスが改善します。

 後屈がしにくいときには、前屈をしてみてください。

 習慣にできるとよいですね。

9.おわりに

 腰の痛みの解消に関しても、まだいろいろな操体がありますが、使う
頻度は、前回と今回に紹介したものにくらべてグッと少なくなります。

 細かいものを覚えるよりも、よく使う基本的なものを覚え、それにま
つわる自然則を覚えていったほうが臨床の場で使いこなしやすいと思い
ます。

 それで、次回からは、肩こりなど上半身のつらさを解消する操体に進
みます。

10.Nスペで紹介された腰痛の運動療法

追記:2017.1.2ーーーーー
NHKスペシャル 腰痛・治療革命〜見えてきた痛みのメカニズム
http://www.nhk.or.jp/kenko/nspyotsu/a01.html

 ようやく、ここまで来たか〜と言う感じです。
ただ、まぁ、操体の橋本敬三先生のレベルまでは、あと何年か
かりますかね。

1.腰痛など運動器系の痛みは、筋肉の機能性病変が原因

2.痛む方向と逆の逆モーションバック運動を基本に、イイ感
じの方向に動くと改善する

 筋肉の機能性病変は、鍼灸など伝統医学の世界では、ツボや経
絡として昔から利用されてきました。詳しくは、以下。
ツボと経絡の観方

ーーーーー

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最終更新:2017年01月03日 08:25