累積: - ___ 昨日: - ___今日: -

鍼灸症例問答no.2 下腿痛

(1)はじめに

 ペンネーム「母さんの鍼」さんの鍼灸症例2つめです。

(2)「下腿痛」について

 ・主訴は左下腿痛
 ・70代の男性

1.患者さんの症状

 (1)約1週間前に、左足関節を内反捻挫。

 (2)その後、左足の下腿裏が痛くなり、まっすぐ足を伸ばすこと
    が出来ず、立つのもやっとの様子。

 (3)痛みで片足で立つことが出来ず、ズボンもうまく脱げずふら
    つく

2.医師の診察

  ・病院で受診した際、左足の膝関節、足関節など3箇所レントゲ
   ン撮影

  ・特にに骨に異常はなく、痛みは神経からきているのではないか
   とのこと。

3.患者さんの身体の状態観察と判断

 (1)伏臥位で下肢を診ると、年齢のせいか皮膚に張りがなく、痩
    せぎみ

 (2)左膝裏横紋外端の上下に、定番のツボが出ていた。

 (3)SLR(下肢伸展挙上テスト)で、30°〜40°で大腿後面の痛み
   を訴えた。

  ・腰痛はなく、レントゲンでの異常もないとのことで、ヘルニア
   は除外。

  ・臀部から坐骨神経の走行に沿っての痛みではなく、坐骨神経痛
   も除外。

  ・下肢後面を伸ばした時に起こる、ハムストリングの伸張痛と思
   われた。

  ・医師の診察で、器質的な異常がなく、機能的な循環不全も考え
   られること、ハムストリングによる伸張痛もあると思われたた
   め、鍼の適応と判断

4.実際に行ったこと

 (1)左足の甲に引き鍼。

 (2)左膝裏横紋外端の上(大腿側)と下(下腿側)のツボに刺鍼。

 (3)(2)の大腿側の更に上方臀部寄りに、一直線に数箇所ツボが
    出ていたため、順番に刺鍼。

 (4)左足関節の捻挫部分に熱感はなく、外果周りが幾分腫れてツ
    ボが出ており、順に刺鍼。

 (5)左右臀部を肘を使って緩める。

 (6)ハムストリングの伸張痛を取るため、痛がらないように拇指
    球・小指球で緩める。

 (7)左前脛骨筋を拇指で指圧。

 (8)左足の甲に刺鍼で終了。

5.施術後の変化

 (1)顔が晴れ晴れとして、見違えるようになった。

 (2)左足がまっすぐの伸ばせるようになり、何事もなかったかの
    ように、スッと立って歩けるようになった。

 (3)施術前より安定して、片足立ちでズボンがはけた。

 (4)そのまま飼っている犬を連れて、散歩に出かけた。

6.感想

 (1)施術後、痛みが取れて歩けるようになり、「まるで魔法のよ
    うです!」と満面の笑みで、喜んで下さった。

 (2)立つこともおぼつかない方の施術だったので、慎重にならざ
    るを得なかった。内心どうなることかと思ったが、良くなる
    ことを念じて、施術をした。元気になった患者さんの変化に
    は目を見張るものがあった。

 (3)直近の捻挫の処置はこれで良かったのか、より良い方法を知
    りたいと思った。

(3)遊風のコメント


 医師の診断をふくめ、患者さんからの情報入手や身体観察判断は、
イイ感じです。

実際に行ったこと
(1)左足の甲に引き鍼。

これは、何番目の指と何番目の指の間かな?

(2)左膝裏横紋外端の上(大腿側)と下(下腿側)のツボに刺鍼。
(3)(2)の大腿側の更に上方臀部寄りに、一直線に数箇所ツボ
   が出ていたため、順番に刺鍼。

 こういう場合には、刺鍼前にしらべて、胴体に近いほうから順に刺
鍼したほうが良いかも。

 胴に近い側を刺鍼したあとに膝裏あたりがまた痛み出すことがある
ので。

(5)左右臀部を肘を使って緩める。
(6)ハムストリングの伸張痛を取るため、痛がらないように拇指
   球・小指球で緩める。
(7)左前脛骨筋を拇指で指圧。

 (5),(6),(7)を鍼でしなかったのは、範囲が広いからかな?

 男性には鍼をイヤがる方が多いので、刺鍼回数を少なくしようとし
たのかな?

(8)左足の甲に刺鍼で終了。

 これは、何番目の指と何番目の指の間かな?

施術後の変化
(1)顔が晴れ晴れとして、見違えるようになった。

 表情の変化をまず見たのは良いですね。

(2)左足がまっすぐの伸ばせるようになり、何事もなかったかの
   ように、スッと立って歩けるようになった。
(3)施術前より安定して、片足立ちでズボンがはけた。

 お見事です。

(4)そのまま飼っている犬を連れて、散歩に出かけた。

 良かったなと思います。犬が急に走り出したりすると、ちょっと心
配ですが。

感想
(3)直近の捻挫の処置はこれで良かったのか、より良い方法を知
   りたいと思った。

 捻挫もすでに1週間たっているということで、捻挫が原因で左下半
身に無理をした結果の症状だと思います。

(4)左足関節の捻挫部分に熱感はなく、外果周りが幾分腫れてツ
   ボが出ており、順に刺鍼。

 捻挫したところに熱感がなかったということだし、結果がでたので、
こういう方法で良かったと思います。

 もうすこし早くて熱感がある場合や、左足首の捻挫患部に鍼をしよ
うとして押し手を作ると痛い場合には、手首足首から先の運動器系の
症状のときに使う「巨刺・上下刺・対角刺」をしても良かったかも知
れません。

 右手首の対称点、左手首の対称点、右足首の対称点の順に刺鍼する
方法で、8月第3週の日曜日に練習していると思います。

 また、まだ患部に熱感がある場合には、散鍼したり、散鍼で熱が引
かない場合には、局所冷却(ポイント・コールド)をしても良いと思
います。

 局所冷却は、局所の熱い部分に、お灸のツボをさがすときのような
感じで、楊枝の頭くらいのものでピンポイントのツボをさがして、そ
のポイントだけ冷やす方法です。

 全体を冷やすと血行が悪くなり、長引いてしまうことがおおいです
が、ポイントだけ冷やすと熱感だけ消えて、痛みも引きます。

 そのあとは、また、鍼にもどって関連するところを刺鍼し、おわり
に足の甲などに引いて仕上げます。

局所冷却(ポイント・コールド)のやり方

1.冷凍庫の氷を1個取り出し、一度水にくぐらします。

2.薄手のビニール袋にいれて、氷のすぐ上に結び目を作り固定します。

3.結び目をもって、氷の角の部分をさがしたピンポイントのツボにあ
 てます。(受け手のおなかの息を観察すると、息が深くなると思い
 ます)

4.暗赤色の患部が明るいピンク色になったら終わりにします。
(敏感な人なら氷をあてているのが気持ちよく感じられ、終わりの時
 期もわかる人がおおいです)

(4)コメントに対する返信

実際に行ったこと
(1)左足の甲に引き鍼。

これは、何番目の指と何番目の指の間かな?

   ・4-5間です。

こういう場合には刺鍼前に調べて、胴体に近いほうから順に刺鍼し
たほうが良いかも。
胴に近い側を刺鍼した後に膝裏あたりがまた痛み出す事があるので。

   ・刺鍼の時、動作鍼のように曲げて悪いところからやる場合と、
    胴体に近いところからやる場合があるようですが...

(5)左右臀部を肘を使って緩める。
(6)ハムストリングの伸張痛を取るため、痛がらないように拇
   指球・小指球で緩める。
(7)左前脛骨筋を拇指で指圧。

(5),(6),(7)を鍼でしなかったのは、範囲が広いからかな?
男性には鍼をイヤがる方が多いので、刺鍼回数を少なくしようとし
たのかな?

   ・刺鍼しなかったのは、今回が初診の方で、高齢であり、負担
    をあまりかけたくなかったためです。

   ・鍼は拒否はしないものの、さりとて積極的ではないように感
    じられたので、肝心の所で刺鍼しようと考えました。

(8)左足の甲に刺鍼で終了。

これは、何番目の指と何番目の指の間かな?

   ・3-4間です。

もう少し早くて熱感が有る場合や、左足首の捻挫患部に鍼をしよう
と押し手を作ると痛い場合には、「巨刺・上下刺・対角刺」の方法
8月第3週の日曜日に練習している

   ・熱感や疼痛がある場合は「巨刺・上下刺・対角刺」ですね。
    講座の時、今一だったので、効果が出せるように練習したい
    と思います。

   ・コツは、対象となるツボをきちんと取る、ということでしょ
    うか?

患部に熱感がある場合には散鍼したり、散鍼で熱が引かない場合に
は、局所冷却(ポイント・コールド)をしても良い。ピンポイント
のツボをさがして、そのポイントだけ冷やす方法。
全体を冷やすと血行が悪くなり、長引いてしまうことがおおい。

   ・なるほど、冷やす時はつい全体を冷やしてしまい、
    ポイントで冷やすという考えはなかったです。

(5)遊風の再コメント


実際に行ったこと
(1)左足の甲に引き鍼。
これは、何番目の指と何番目の指の間かな?
   ・4-5間です。

これは経絡的相関通りですね。

刺鍼前にしらべて、胴体に近いほうから順に刺鍼したほうが良い
かも。胴に近い側を刺鍼したあとに、膝裏あたりがまた痛み出す
ことがあるので。
  ・刺鍼の時、動作鍼のように曲げて悪いところからやる場合と、
   胴体に近いところからやる場合があるようですが...

ンそうですね。

 時間がないときには、手足の甲への引き鍼のあと、すぐに動作鍼に
入ります。

 時間があるときには、手足甲に引き鍼したところから背骨にいたる
までの経絡的相関を見て、ラクな姿勢で背骨に近いほうから手足首ま
で一通り刺鍼してから、動作鍼にいきます。

 後者のほうが、悪いところに関係する全体を見るので、比較的長持
ちする傾向にあります。

 でも、時間がないときには、前者ですね。手足甲への引き鍼しなが
ら運動鍼、動作鍼1から3か所、もう一度手足甲への引き鍼で、10分
くらいで治療できますから。

 症状の程度がかるそうなら、時間があっても前者で良いこともおお
いです。

 前者のときには、初めの引き鍼をしながら運動鍼をしてもらうと、
そのあたり全体の調整ができます。しかし、下半身は難しいかな。

 下半身の症状でも立って動ける程度なら、手の甲に引き鍼しながら
運動鍼したりもします。

(5)左右臀部を肘を使って緩める。
(6)ハムストリングの伸張痛を取るため、痛がらないように
   拇指球・小指球で緩める。
(7)左前脛骨筋を拇指で指圧。
(5),(6),(7)を鍼でしなかったのは、範囲が広いからかな?
男性には鍼を嫌がる方が多いので、刺鍼回数を少なくしようと
したの?
  • 刺鍼しなかったのは、今回が初診の方で、高齢であり、負担
  をあまりなかったためです。 
  • 鍼は拒否はしないものの、さりとて積極的ではないように感じ
 られたので、肝心の所で刺鍼しようと考えました。

 これは、良い判断だったと思います。

(8)左足の甲に刺鍼で終了。
これは、何番目の指と何番目の指の間かな?
  ・3-4間です。

 これもだいたい予想通りですね。

 足の甲3,4は冷えにも関係しているので、お年寄りということも
考え合わせると、冷えもからんでいた可能性もありますね。

もう少し早くて熱感が有る場合や左足首の捻挫患部に鍼をしよう
と押し手を作ると痛い場合には、「巨刺・上下刺・対角刺」
8月第3週の日曜日に練習している
 ・熱感がある場合・疼痛がある場合は、「巨刺・上下刺・対角刺」
  講座の時、今一だったので、効果が出せるように練習したい。

 そういう場合には、まだ急性期なので、できるだけ遠くに引いたほ
うがよいのですが、手首足首の場合に手足甲はあまり遠くとは言えな
いので、「巨刺・上下刺・対角刺」で使う、左右、上下、対角の対称
点を遠い順から対角、上下、左右の順で行います。

  • コツは、対象となるツボをきちんと取る、ということでしょうか?

 そうですね。

 練習のときに、うまくいかなかったのは、受け手が熱感があるよう
な急性期でなかったからの可能性が高いです。

 一度、手首足首から先の捻挫打撲で、まだ炎症がある時期のものに
すれば、左右、上下、対角の対称点にちゃんとツボが出ていますので、
身に付けられると思います。

患部に熱感がある場合には散鍼したり、散鍼で熱が引かない場合
には、局所冷却(ポイント・コールド)をしても良い。ピンポイ
ントのツボを探して、そのポイントだけ冷やす方法。全体を冷や
すと血行が悪くなり長引いてしまうことがおおい。
 ・なるほど、冷やす時はつい全体を冷やしてしまい、ポイントで
  冷やすという考えはなかったです。

 これは仙台のコン先生がよく使われているので、私もいろいろ試し
て、今の方法に落ち着いています。

 バイクの事故でなかなか炎症が引かない人にしたら、すぐに効果が
出ました。

 でも、もちろん、ひどい炎症の場合には、一時的に全体を冷やす必
要がある事態も考えられます。まぁ、程度問題、使い分けてください。

 逆に、炎症が治まって、冷たくなり、青アザや黒っぽいアザみたい
になって、押すと痛い感じのものは、悪血がとどこおっているタイプ
で、これには、補の灸や灸頭鍼が効果的です。

(4)おわりに

 2回目の症例報告ですが、あいかあらず、みごとな内容でした。

 質問などは、「「術伝」掲示板」のほうにおねがいします。


   >>>つぎへ・・・鍼灸症例問答no.3



   >>>目次ヘ・・・・・・・・・症例問答

   >>>このページのトップヘ・・鍼灸症例問答no.2

   >>>術伝HPトップへ ・・・・トップページ

術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」



お知らせとお願い

術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集

 術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て
いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役
をしてくださる方を募集しています。

 くわしくは、術伝流のモデルをみてください。

 よろしくお願いします。

感想など

 感想などありましたら、「術伝」掲示板に書いてください。

 また、「術伝」掲示板でも、旧掲示板「養生の杜」と同じように、
養生についての雑談や症例相談などもしていきたいと思っています。


 よろしくお願いします。

間違いなど

 間違いなど見つけた方は、術伝事務局あてにメールをください。

 よろしくお願いします。

「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集

 「術伝」では症例相談用メーリングリスト( 術伝ML(muchukand))の
参加者を募集しています。

 よろしくお願いします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

   >>>術伝HPトップへ ・・・・トップページ

最終更新:2010年08月25日 06:42