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術伝流一本鍼no.64 (術伝流・体得篇(4))

腰痛などに手足甲に刺鍼して操体鍼

1.「手足の陽経に引く」:初めの一歩

 体得編の(2)、(3)でも書いてきたように、鍼の基本は
「手足陽経への引き鍼」です。これを身に付けることが、鍼の
世界で腕を磨き術を養うことの「初めの一歩」になります。

 和方鍼灸の基本は、出ているツボへの鍼灸、つまり、阿是穴
治療です。以下の言葉に代表されます。

「成書の経穴部位は、方角を示すのみ」(深谷伊三郎先生)

「邪気ある時は何れの所にも鍼を用ゆ、
   病なきは何れの穴にも鍼を禁ず」(『鍼道発秘』葦原検校)

 そして、「引く」という言葉や考え方も、和方鍼灸には、よ
く出てきます。

「鍼刺すに 心で刺すな 手で引くな
   引くも引かぬも 指にまかせよ」(杉山和一検校)

「鍼は邪気を退くるものなり」(『鍼灸重宝記』)
※手足末端に邪気を引いて患部から退ける

「病さかんなれば まず遠き所より引く」(『鍼道発秘』)

「邪気の至るや緊にして疾く 穀気の至るや徐にして和す」
(『杉山真伝流』皆伝之巻「鍼法察要」)
※邪気を引き終えると、真気が巡る

 このような昔の人の言葉に象徴されるように、和方鍼灸の基
本の一つは、「手足の阿是穴への引き鍼」です。「体幹部の症
状を、手足の阿是穴に鍼して、引く」ということです。

 そして、これは、自分の体幹部の症状を、自分の手足の出て
いるツボに引くことで、養生しながら練習が可能です。

 他人の体の内側の現象は、自分のものよりも分かりにくいで
す。先ずは、自分の体幹部の症状を手足阿是穴に引きながら養
生し、じっくり刺鍼中の体の中の変化を味わってください。

 杉山和一検校が書かれているように、いずれ「指に任せた」
鍼が打てるようになるための「初めの一歩」です。

2.足の甲に下半身の症状を引く

 前回は、肩など上半身の自分の症状を手甲に引く養生法を書
きました。今回は、腰など下半身の自分の症状を足甲の陽経側
に引く養生法です。

 手甲は、全て陽経側でしたが、足甲は、違います。足の親指、
足甲1~2間は、陰経側です。足甲の陽経側は、2指から小指
までです。鍼の場合は、2~3間、3~4間、4~5間という、
2指,3指,4指,小指に繋がる骨の骨間に取ります。

 体の前側の症状は、2~3間の出ているツボに引きます。横
側の症状には、3~4間の阿是穴です。後側は、4~5間です。

 座位で、壁などに寄り掛かった姿勢が良いと思います。首な
どを動かしやすいからです。

 その姿勢で、体幹部の症状に関係していそうな足甲のツボを
取り、刺鍼します。何か感じたら、それ以上は深く刺さないよ
うにします。

 そして、鍼を抜く方向にほんの少し動かす感じで、弾鍼など
しながら、首など空いている所を動かし、イイ感じの姿勢を探
します。スムーズに動くようになったら、鍼を抜きます。

 そして、刺鍼した所に変化があったか、症状に変化があった
か確認します。

3.腰痛の場合

 腰痛の場合は、重くなると座位も辛いかもしれません。そう
いう場合は、横向き寝などで、ラクな姿勢を探していく操体を、
しばらくの間、じっくりやった方がよいと思います。座位にな
れる程度なら、足甲に刺鍼しながらの操体鍼が可能です。

3.1. 患側の足甲4~5間に鍼して操体鍼

 座位で、患側の足甲の4~5間の地五会〜足臨泣の辺りに出
ているツボを探して刺鍼します(写真1,2)。

写真1
写真2

 前後屈制限なら、首を胸に近付けたり、天井に向けたりを、
ゆっくりラクな範囲で繰り返します(写真3,4)。置鍼して
手を離せるようなら、手首の掌屈背屈を組み合わせます(写真
3,4)。

写真3
写真4

 首や手首の動きは、腰に連動しているので、寄り掛かった
ような姿勢で腰が余り動かなくても、十分に効果が出ます。
無理の無い範囲で動かすようにしてください。

 刺鍼中に手技をしたい場合や、その時の押し手の感覚を味わ
いたい場合には、操体中も押し手は離さない方が良いと思いま
す。が、順番としては、先ずは、患部の症状の変化を味わう方
が先なので、初心者は押手を離して良いと思います。

 捻転制限なら、首と手首の左右捻転を、ゆっくりラクにでき
る範囲で繰り返します(写真5,6)。

写真5
写真6

 やりにくい方角は無理せず、やりやすい方を余分にする位で
良いです。操体の考え方ですね。

 どちらもスムーズにできるようになったら、止めて、鍼を抜
きます、そして、刺鍼した所の変化を確かめます。そして、立
ち上がって、症状の変化を確かめます。

3.2. 左右手甲4~5間に置鍼して操体鍼

 3.1.でラクに立てる位に改善したら、左右手甲4~5間に置
鍼して操体鍼をします。余り無理なく立てるようなら、初めか
らこちらをしてもよいです。

 先ず、手足甲4~5間に出ているツボに置鍼します(写真7)。

写真7

 ゆっくり無理のない範囲で、前後屈(写真8,9)や左右捻転
(写真9)をしてみます。

写真8
写真9
写真10

 この時、そういう動作がやりやすいように体重移動も付け加
えると、より操体らしくなりますし、効果も出やすいです。

4.膝

4.1. 足甲4~5間置鍼しながら脹ら脛の指圧

 患側の足甲4~5間の地五会〜足臨泣の当り、および、足甲
1~2間の大衝の辺りに出ているツボに置鍼します(写真11、
12)。

写真11
写真12

 これは、膝の痛みの原因となる、脹ら脛のツボに経絡的に対
応したものです。

 脹ら脛の外側の下委陽〜飛揚〜外丘のラインや、中央の承筋〜
承山のラインには、地五会〜足臨泣の辺りに出ているツボが効
果的です。

内側の下陰谷〜築賓のラインには、大衝あたりに出ているツボ
が効果的です。

 巨刺の作用を考えれば、健側の足甲4~5間の地五会〜足臨泣
あたりにも置鍼するのもよいと思います。

 その後、左右の手拇指を脹ら脛に回し、外側の下委陽〜飛揚〜
外丘のラインや、中央の承筋〜承山のラインや、内側の下陰谷〜
築濱のラインに出ているツボ(圧痛点)を指圧しながら(写真
13)、首を動かして、痛みの減る首の方向をさがします(写真
14)。

写真13
写真14

 ツボが幾つか有れば、順番に指圧します。そして、その度に、
首を動かして痛みが減る姿勢を探します。違う姿勢で痛みが減
る可能性がありますから。

 この場合も、どちらかの尻への体重移動を付け加えれば、よ
り操体らしくなりますし、効果も出やすいです。

4.2. 手甲4~5間に置鍼、座位で立位で操体鍼


 手甲4~5間に出ているツボを探して置鍼します。座位で、 膝
の屈曲伸展をゆっくりラクにできる範囲で繰り返します(写真
15,16)。椅子に腰掛けて、操体鍼してもよいと思います。

写真15
写真16

 手甲4~5間に置鍼したまま立ち上がり、ゆっくりラクにでき
る範囲で足踏みします(写真17)。

写真17

 この時、上げやすい方の足はより高く上げ、上げにくい方の
足はしっかり踏ん張ると、より操体らしくなりますし、効果も
出やすいです。

 また、対角刺の効果も狙(ねら)うのなら、左右両方の手甲
4~5間に置鍼したまま操体鍼してもよいと思います。

5.足首捻挫に、対角/上下/左右反対側に置鍼して患部を動かす操体鍼


 座位で、先ずは、患部の対角反対側の手首に出ているツボを
探して置鍼します。そして、患部の足首をゆっくりラクに動か
せる範囲で動かすことを繰り返します(写真18)。

写真18

 次は、患部の上下反対側の手首に出ているツボを探して置鍼
します。そして、患部の足首をゆっくりラクに動かせる範囲で
動かすことを繰り返します(写真19)。

写真19

 そして、その次は、患部の左右反対側の足首に出ているツボ
を探して置鍼します。そして、患部の足首をゆっくりラクに動
かせる範囲で動かすことを繰り返します(写真20)。

写真20

 いずれも、どちらかの尻への体重移動を付け加えると、より
操体らしくなりますし、効果も出やすいです。

 また、椅子に腰掛けてした方がラクなことも多いと思います。
その場合には、椅子に腰掛けて操体鍼するようにしてください。

6.おわりに

 貼る鍼とかが無い場合には、患側の小指(第5指)と隣の指(第
4指)の爪に、カッターなどで軽く☓印を描き(痕が残る程度に
傷つける,ただし爪が割れる程度では無く,表面に軽く痕が残る
程度)、首を前後屈したり、左右捻転したり、脹脛を按摩指圧
したりするのも効果的です。
 姿勢は、座位でも良いし、患側を上にした横向き寝でも良い
です。


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最終更新:2017年01月27日 23:34