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術伝流一本鍼no.72 (術伝流・体得篇(12))

治療中の変化に合わせる勘をみがく

1.はじめに

 体得篇ということで、鍼灸を身に付けていくコツを書いてきま
した。独習の際にも役に立つと思います。多くは、私が独習して
きた過程で実践してきたことですから。

 鍼灸の臨床で大切なのは、目の前の患者さんのその時の体の状
態を把握することです。治療中も刻々と変化していく状態を臨機
応変に把握していきます。外来語を使えば、リアルタイムに把握
することが大事です。

 初心者のうちは、どうしても鍼灸で何かする技術の方に目が行っ
てしまいます。が、その技術を使う状態か、使う時期かを判断で
きるかどうかの方が、より重要です。しかも、リアルタイムに判
断し、患者さんの体のその瞬間に状態に合った技術を選んでいき
ます。

 それには、色々な知識を身につけることよりも、勘の良さが大
切です。少しずつ勘を磨いていきましょう。

2.二人組の練習で声を掛け合う

 そういう鍼灸の臨床に必要な勘の良さを身につけていくために、
先ずは、二人組での練習で工夫を重ねていきましょう。

 二人組での練習では、鍼の太さなどは、患者さん役が決めた方
が良いです。刺鍼する深さ、動かし方なども患者さん役が決めま
す。患者さん役は、自分の体の中の変化に意識を向け、できるだ
け詳しく言葉に出していきます。施術者役は、それに合わせて刺
鍼できるように工夫していきます。

 できるだけ多くの人、色々なタイプの人と二人組練習をした方
が、勘の良さが向上しやすいです。ですから、二人組稽古の会や
合宿を開催して、多くの人を診る機会を増やすのが良いと思いま
す。先輩などに頼んで、指導者になってもらい、同じ位の技量の
人達に声をかけて集まってもらい、二人組練習をしましょう。

 私は、先輩方に頼み込んで、鍼灸学校3年の夏休みには、合宿
を3回、3年秋には月に数回ほど二人組の稽古の会を開いてもら
い、それらに参加していました。それで、卒業してから「講座を
して」と後輩に頼まれて断れず、今に至っています。

 こういう練習を、できれば十数人で、少なくとも月2回を2年
間位は続けると、勘は磨かれていくように思います。

3.敏感な患者さんに合わせる

 鍼灸の臨床を続けていると、たまに驚くほど敏感な患者さんに
会うことがあります。

 例えば、「no.57応用(9)筋痛症の症例3」の女性のような
人です。この人は、肘近くのツボなどに刺鍼していると、どの指
のどちら側の井穴から邪気が出ていっているか言えました。それ
で、その言葉も参考にしながら、施術をしました。
術伝流一本鍼no.57 応用(9)筋痛症)

 これほどではなくても、敏感な患者さんは、結構沢山います。
そういう人に出会えたら、勘を磨くチャンスと思います。治療中
も刻々と変わっていく訴えに合わせて、施術法を変化させて対応
できるようにしていきましょう。

4.按摩十年

 鍼灸技術の上達の秘訣として、東鍼校(東洋鍼灸専門学校)には
「按摩十年」という言葉が伝わっているそうですね。この言葉の
意味も、要するに、按摩十年の経験を積むと手で触れて患者さん
の体の状態がリアルタイム把握しやすいということではないでしょ
うか?

 按摩に限らず、二人組での操体、太極拳の推手など、二人で組
んでする体と体のコミュニケーションを続けていくと、患者さん
の体のその時の状態を把握し、その変化に即時即応する勘が磨か
れやすいように思います。

 中でも按摩指圧は、筋肉の中の状態も把握しやすいので、その
経験を積むことは、筋肉の状態変化を把握するのに役立つと思い
ます。

5.刺鍼時の筋肉の状態の変化

 私は、ツボというのは、筋肉の機能性病変と思っています。

 正常な筋肉は、必要に応じて緊張弛緩します。が、ツボの底の
芯の部分のカチカチに硬い部分の筋肉は、過緊張して弛緩できな
くなった状態のように感じます。

 それに対して、ツボの出ている部分の場所の皮膚に近い方の虚
した感じを受ける筋肉は、過弛緩して緊張できなくなった状態の
ように思います。

 つまり、ツボの出ている部分の筋肉は、皮膚に近い方はフニャ
フニャした感じで、奥はカチカチに硬い感じがします。

 そういうツボになった部分に刺鍼していくと、上の方の虚した
部分は、豆腐に鍼を刺した時のようにスーッと抵抗なく入ってい
きます。

 そして、ツボの底の硬い部分の手前で少し粘っこい感じを受け
ます。

 ツボの底の硬い部分は、弾鍼、横揺らし、雀啄などをしている
と、硬さがなくなり過緊張の状態ではなくなります。硬い状態が
続いている間は、邪気が出続けていることが多いです。硬さがな
くなると、邪気の量は大幅に減少することが多いです。

 それから、鍼を抜いてくると、刺入していった時に豆腐を刺す
ようにスーッと入った部分で、2,3回鍼が抜けにくくなることが
あります。その部分の筋肉が過緊張して鍼を噛んでしまうからだ
と感じています。

 そういう状態の時は、押手で鍼を引き上げる方に少し力を入れ、
弾鍼、横揺らしなどをします。すると、その部分の筋肉も弛緩し、
鍼が動き抜けるようになります。

 1か所でなく、2,3か所、そういう感じの場所を通過すること
が多いです。

 そして、抜き終わった後、ツボの出ていた部分の筋肉を調べて
みると、フニャフニャやカチカチが改善し、全体的に弾力が出て
いるように感じることが多いです。

 そういうことを感じ取るためにも、按摩指圧の経験を積むこと
は良い修行になると思います。

6.気功や皮膚操体では、真気の変化

 それに対して、気功や皮膚操体では、真気に対する勘が磨かれ
やすいように思います。

 気功や皮膚操体をしている時に、自分の体の中の変化に意識を
向けていると、温かい水やガスが動いているような感じがするこ
とが増えていきます。それを二人組での練習の時に、相手から感
じられるようになると、鍼灸している時にも感じやすくなるよう
に思います。

 真気の変化は、皮膚表面の温度にも関係しているようです。そ
のためか、赤ん坊の額で体温を診る機会が多かった人は、変化を
把握できるようになるのが早いように、20年近く鍼灸を伝えて
きた経験上、思います。

7.自然のものとの付き合いを多くする

 赤ん坊というのは、言葉でのコミュニケーションが取りにくく、
大人よりも野生動物に近いように思います。ですから、赤ん坊と
スキンシップが多かった人は、勘が磨かれやすいのかなと思いま
す。

 そういう意味では、自然なものとの付き合いを多くすることも、
勘を磨くには役立つように思います。ペットを飼育したり、空を
見て天気の変化を予測したり(観天望気)、虫取り、魚釣り、登
山、ダイビングなど、山野川海に遊ぶこととかですね。

 また、体と体のコミュニケーションと言う意味では、性行為も、
互いに楽しめれば、勘を磨くのに役立つかもしれません。

8.おわりに

 でも、そういうことは必須なことではなく、そういう体験を積
む機会があれば、勘を磨くのにも役立つということだと思います。

 必須に近いのは、初めの方に書いた、二人組で鍼灸しあう経験
を沢山すること、敏感な患者さんに合わせることの2つだと思い
ます。そういう機会を増やしていきましょう。

 次回は、その2つのことをしていく時に、患者さんの体のその
時の変化を判断する基準になる一番のポイントについて書きます。


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