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術伝流・先急一本鍼・運動器偏 11.肩肘腰膝の応急処置のまとめ
術伝流一本鍼no.11 肩肘腰膝の応急処置のまとめ

 腰、肩まわり、膝、肘の応急処置について書いてきまし
た。

 運動器系の応急処置、つまり、関節まわりの辛さや痛み
の応急処置は、みな、基本的に同じなので、今まで書いて
きたことをまとめて、その要点が理解しやすくなるように
しておきます。そうすれば、色々な運動器系の応急処置に
応用しやすくなると思いますので。

(1)応急処置の基本

1.遠くに強く引く(図1)

図1

 応急処置の方法の基本は、「遠くに強く引く」ことです。
患部から遠くに強く刺激して邪気を引き、患部に蠢(うご
め)いている邪気を遠くに引き離し、体の外に邪気を出し
ます。

 患部が頭首胴のときには、「遠く」として手足末端、特
に手足の甲が使われます(写真1)。

写真1

2.応急処置の手順の基本

 手順の基本は、
①:手足→胴体→手足、
②:陽→陰→陽
の二つで、組み合わせると
③:手足(陽→陰→陽)→胴体(陽→陰→陽)→手足(陽→陰→陽)
となります。

 状況に応じて、この基本手順を少しずつ変化させて対応
します。陽経側だけの刺鍼で良いときには、「手足→胴体→
手足」の手順で刺鍼します。

3.応急処置の後始末の基本

 後始末の基本は、陽経側だけに刺鍼したときと陰経側に
も刺鍼したときでは違います。

①陽経側のみに刺鍼したときには、「手首・足首
から先の陽経側に引き鍼」します。

②陰経側にも刺鍼したときには「頭の散鍼をして
から手甲に引き鍼」します(写真2、3)。

写真2

写真3

 以上の3つが応急処置の基本で、必要に応じて運動鍼、動作鍼、
腱付着部痛の鍼などを付け加え、組み合わせて対処します。

(2)よく付け加える技法

1.運動鍼

 運動鍼は、患部から遠いところで患部に関係するツボを
探して、そのツボへ刺鍼しながら患部を辛くない範囲でゆっ
くり動かし、つまり、曲げたり捻ったり逆に戻したりをゆっ
くり繰り返してもらいます(写真4)。

写真4

 動かしているうちに動作範囲が広がり、動かせる動作の
種類も増え、辛さが軽くなります。

 腰痛で足甲に刺鍼した場合など、患部が動かしづらいと
きには、患部に動きが伝わるような運動をすると、運動鍼
に近い効果があります。

 例えば、腰痛で足甲に刺鍼中なら、首や手首を捻転した
り、首なら前後屈したり、手首なら掌屈背屈したりすると、
腰を捻転・前後屈する運動鍼に近い効果が出せます(写真
5)。

写真5

 こういう動きは、腰の捻転や前後屈の動きと連動性があ
るので、腰を捻転・前後屈するのに近い効果が出るわけで
す。操体法の「体の色々な動きの連動性」の応用なので、
操体鍼と名付けてもよいかなと思っています。

2.動作鍼(図2)

図2
 動作鍼は、関節の可動域制限に効果がある刺法です。

 動作制限のある動作をして、痛みが出始める少し手前の
姿勢で止まってもらい、その姿勢でツボを探し、その姿勢
のまま刺鍼します。いったん動作を戻してから、再び同じ
動作をしてみると、関節可動域が広がっています。

 また、痛みが出る少し手前の姿勢で止まってもらってツ
ボを探し、その姿勢のまま刺鍼するということを繰り返す
と、一鍼するごとに動かせる範囲が広がっていきます。

 動作鍼のツボは、動作制限のある動作で、最も伸びよう
としている筋肉の最も伸びようとしている部分に出ている
ことが一番多いです。次に多いのは、最も縮もうとしてい
る筋肉の最も縮もうとしている部分です。

 動作が少ししかできない場合には、関節の直ぐ近くにツ
ボが出ますが、だんだん大きく動作できるなるに従って関
節から遠い場所にツボが出るようになります。

 また、肩の場合に、水平より上に腕を挙げようとすると
きには、肩甲骨まわりの肩甲骨と肋骨の間にツボが出ます
(写真6)。

写真6

 水平より上に腕を挙げるときには、肩甲骨を回転させて
いますが、肩甲骨と肋骨の間にツボが出ていると肩甲骨が
回転しにくいためです。

3.腱付着部痛の鍼

 腱付着部痛の鍼は、腱が骨に付いているところが痛むと
きに、その筋の筋腹にツボを探して刺鍼します。肘頭、踵
(かかと)など浅い所で骨に腱が付着している場合の痛み
に使います(写真7)。

写真7

 筋腹にツボができたことに因って、その筋肉が縮み、そ
のため腱付着部が引っ張られて痛むときに、特に効果があ
る刺鍼法です。

(3)運動器系応急処置の手順

 運動器系応急処置の手順は、以下が基本です。

①手足の甲への引き鍼(+運動鍼)
②患部の基本刺鍼
③患部の動作鍼など
④後始末
 .1)頭散鍼(陽のみのときは省略)
 .2)手足甲への引き鍼

 ①の手足甲への引き鍼は、患部が横隔膜よりも
上の時は手甲、下の時には足甲が使われることが多いです。④の手足甲への引き鍼も①に準じますが、
陰経や陰位に刺鍼し頭に散鍼した時には、手甲を使います。

(4)患部別の基本刺鍼と動作鍼など(図3)


図3

 患部、つまり辛い所の刺鍼は、ツボが出やすい所の基本
刺鍼と、動作鍼などです。

1.腰

 腰痛では、基本刺鍼は、腰から尻、膝裏から脹ら脛(ふ
くらはぎ)など。

 動作鍼は、捻転制限と前屈制限が中心です。捻転制限で
は、腰椎3の横輪切りラインの背中から横腹にかけてにツ
ボが出ます。前屈制限では、腰椎5番を中心に背中側と殿
部〜足裏の足太陽にツボが出ます。

2.肩の周り

 肩痛では、基本刺鍼のツボは、首から肩、肩甲骨の周り、
脇の下周りに多いです。大椎〜胸椎7番の華佗経に出る人も
います。

 動作鍼は、挙上制限と捻転制限が多いです。挙上制限で
は、脇の下〜上腕陰経、腕と肩や胸の間に張っている筋肉
(写真8)、肩甲骨周囲にツボが出ます。捻転制限では、
肩峰〜胸と肩峰〜背中にツボが出ます。

写真8

3.膝

 膝痛の基本鍼は、膝裏〜脹ら脛です(写真9)。

写真9

 動作鍼は、正座不可が中心です。足裏側では、膝裏のH
字の両端と真ん中の3カ所から、足首方向と殿部方向に3
本ずつツボが出やすいラインがあります。表側では、膝皿
の両端と真ん中の3カ所から足首方向と腹方向に3本ずつ
ツボが出やすいラインがあります。

 もう少しで正座ができるけど体重が掛けられない場合の
ツボは足の付け根、特に裏側の大腿の一番殿部に近い辺り
から臀部にかけて出ていることが多いです。

 正座がきまろうとしているときに、最も伸びようとして
いる場所です。悪い方の足を上にした横向きで寝て、足を
同じ角度に曲げて、ツボを探し刺鍼します。

4.肘

 肘痛の基本刺鍼は、肘の手平側で、肘から3〜15cm位
の範囲です。

 動作鍼は、屈曲制限、伸展制限、捻転制限があります。
屈曲制限では、手陽経にツボが出ていることが多いです。
伸展制限では、手陰経にツボが出ていることが多いです。
捻転制限では、前腕の太い所に出ていることが多いです。

 肘頭の骨上が痛いときには、そこに腱が付着している筋
の筋腹にツボが出ます。上腕側が多いです。

 詳しくは、今までの「運動器系応急処置」の各項目を参
照してください。特に、今回のまとめを読んで施術の仕方
が思い浮かばなかったら、各項目を読み直して、しっかり
理解し、身に付けるようにしてください。

(5)色々な応用が可能

 この術伝流一本鍼による運動器系の応急処置は、これま
で書いた以外にも色々な運動器系の症状に効果があります。
寝違い、鞭打ち、顎関節症、股関節痛などです。

 そういう症状に対しても、基本的に全く同じで、手足の
甲への引き鍼しながら運動鍼、症状別の基本刺鍼、動作鍼
(腱付着部痛の鍼を含む)を組み合わせて施術するだけで、
辛さを解消できます。

 また、手首足首、指なども、ちょっとした応用で対処で
きます。

 筆者自身は、坐骨神経痛、三叉神経痛、膠原病性皮膚筋
炎などや、線維筋痛症に似た手足の辛さやシビレ感などに
も、基本的に同じ方法で対処して成果を上げています。

 また、頭痛、偏頭痛、めまい、耳鳴り、にきび、ものも
らい(麦粒腫)、口唇ヘルパス、乳腺炎、片麻痺などにも、
他の方法と組み合わせて使っています。場所や症状によっ
て少しずつ違いがありますが。

 今まで書いてきた腰などの写真は、日曜日に開催してい
る術伝の講座で、該当の症状が出ている方をモデルにして
撮影してきました。

 寝違い、鞭打ち、顎関節症はじめ、例に挙げたような症
状は比較的患者さんが少なく、モデル患者さんを探すのが
難しく、写真を撮るのができないでいます。

 そういう症状をお持ちでモデル患者さん役を引き受けて
くださる人、また、そういう人をご存知の人は、術伝事務
局まで連絡してください。よろしくお願いします。

 モデル料はお支払いできませんが(すみません)、治療
費はいただきませんし、紹介者の人はじめ見学も歓迎しま
す。

 症状が重いと難しいですが、術伝の講座会場に来られる位
でしたら、少なくとも辛さを半減する程度はできると思いま
すので。

 関節可動域制限は人によって少しずつ違うので、腰、肩、
膝、肘など今まで書いてきたものでも構いません。

 次回からは、手首足首、指など写真が撮れたものから順
に、運動器系応急処置の応用例を掲載していきます。

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 術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て
いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役
をしてくださる方を募集しています。

 くわしくは、術伝流のモデルをみてください。

 よろしくお願いします。

感想など

 感想などありましたら、術伝事務局までメールをください。

よろしくおねがいします。

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最終更新:2018年07月05日 13:58