少陽経病証
(1) 基本的に
少陽の病は、体の横・側面に主症状がでる病で、ツボが深く、変わり
にくく、ぶり返しが多いことが特徴です。
また、かるくても治りにくい病は、少陽位にツボが出ていることが多
いです。
代表例は、まず、 体の横側面に関係のある病、脇痛、偏頭痛・耳鳴り・
眩暈などで、古典にも書かれています。
「少陽之為病、口苦、咽乾、目眩也」
つぎに、経過が長く、かるくても治りにくい傾向の病で、喘息、アト
ピー、花粉症などのアレルギー疾患でも、少陽経にツボが出ます。また、
経過が長くなると、肩こり、腰痛、悪血証などでも少陽よりにツボが出
ます。
片麻痺になることが多い脳血管障害の原因になることもあり、そうい
う方は左右どちらかの横腹のスジバリがひどく、脈の左右差も大きいこ
とが多いです。とくに上腹部中焦の水毒が多い場合には可能性が高くな
ります。
なかなか変わらず、良くなってもぶり返すことが多いし、良くなって
いく過程で、昔の症状が復活することもよくあります。とくに、薬など
で症状のみ消した場合に多いです。
典型例はアトピーと喘息の複合症状で、治療の過程で咳と皮膚炎が繰
り返し出現しながら軽くなっていくことが多いです。
患者さんにそういう点をよく話し、時間がかかることも伝えます。
また、ツボの出ている側面が、体の上下で、左右入れ替わることも多
いです。
歯医者さんで体全体ほぼ右がコっていて、左耳の直下だけ左がコり、
左耳の耳鳴りのある方がいました。仕事中の特有の姿勢に由来すると思
われます。
(2)ツボが出やすいところやねらい目
まずは、手足の少陽経。手では、手の甲の2,3間、3,4間、4,5間(中渚)
と、外関など。灸では、中指・薬指の拳先、骨空、指端も使えます。足
では、足徹腹(外承扶)、風市、外丘〜飛揚、足甲3,4間、足臨泣など。
つぎは、体の横側面。頚では、横頚中央。背では、肩貞、痞根・腰徹腹、
環跳。腹では、横腹(章門)、五枢〜維道、居髎。
また、少陽経と表裏の手足厥陰に出ることもあります。内関、上曲沢、
陰包、蠡溝など。
経過が長いので、古い病でツボが出る体の境目にも多くなります。左
右境界では、背の肩甲間部華陀経、胸の膻中や腹の臍まわり。上下境界
(横隔膜あたり)では、背の膈兪・督兪、腹の心下部や章門。体と手足
の境目では、肩貞、居髎、外承扶(足徹腹)。(「古いツボ、古い病」参照)
そのほか症状におうじてツボは出ます。耳関連では、耳まわりの翳風,
完骨,風池、内耳の水毒が関係するときは足太陰のツボ。中風(予防)に
は、横腹のスジバリ。花粉症は、上衝もあるので合谷、鼻水に上星、鼻
の後ろの玉沈など。喘息では、肩甲間部華陀経、膻中など。
(3)手順
経過が長いので慢性期や応急的予防処置が多いです。急性期は慎重に。
中風など脳血管障害が疑われるときは、救急医療と連携します。
(1) 応急的予防処置
横向きに寝てもらい施術します。左右入れ替わりのあるときは途中で
寝方を変えてもらいます。
手の甲・内関に引き鍼したあと、頭から足に上から下に(2)のツボ
を刺鍼するのが基本手順です。中央部は痞根→章門→腰徹腹の順(陽陰陽)
足の陰経にツボが出ていれば刺鍼し、頭を散鍼し手の甲に引いて仕上げ
ます。
陰経や腹への刺鍼は、状況を見ながら慎重にして、刺鍼しないことも
あります。腹の章門に刺鍼しないときは、内関と足の陰経以降の刺鍼は
省略も可能です。
症状に応じて、症状ごとのツボをそのツボが出ているあたりを刺すと
きに加えます。耳鳴り難聴のときは耳まわりに熱のあることが多く、散
鍼します。
(2) 慢性期
ツボを考慮して慢性期の型の順で刺鍼します。必要に応じて、灸・灸
頭鍼をし手の指端の灸で仕上げます。
喘息で肩甲間部華陀経に細い溝状のくぼみがあるときは、灸頭鍼が効
きます。
灸や灸頭鍼と置鍼を中心とするときは、手の中指か薬指の骨空に灸し
たあと、横向き(うつぶせ)で頭から足に、つぎに仰向けで上から下に
施術し、手指端の灸で仕上げます。
花粉症では、鼻関連の頭のツボに置鍼すると鼻水対策になります。
(3) 眩暈発作、突発性難聴
これらは、少陽病でも発作的な病ですので、手早い刺鍼が大切になり
ます。体の横側を邪気が突き上げる(上衝)病態だと考えます。
手甲、内関の順に引き鍼したあと、完骨,翳風,風池など耳まわりのツ
ボに刺鍼し、体の横側に出ているツボを首から足にむかって刺鍼してい
きます。横頚中央、肩貞、大包、痞根、風市、外丘、地五会など。
途中でツボの出方が左右逆になる場合もあります。ツボが出ていない
ときには省略しますし、発作が軽減したらその時点で止めます。
頭に散鍼したあと、手甲に引き鍼して仕上げます。
眩暈がひどい場合などは、内関に鍼しないで施術したほうが良いこと
もあります。
患者さんの状態をよく確かめながら施術することが大切になります。
表位の急性症状でもあるので、該当箇所も参照してください。
(4) 子供の喘息
子供の喘息には、肩甲間部や命門〜横腹の小児鍼や背骨ゆすりや、
くすぐりが効きます。(応用の「子供にコロコロ」参照)
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最終更新:2012年04月18日 12:41