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術伝流操体no.7 古い五十肩は、脇の下から

(1)応急処置から学ぶ操体の基本 6.古い五十肩は、脇の下から

1.はじめに

 ここ2回は、肩の辛さを軽くする操体と、肩の可動域制限を解
消する操体を紹介してきました。

 今回は、古く重い五十肩などで、脇の下まわりに痼りができ
ている場合の操体について説明していきます。

 五十肩や肩凝りも古く重くなると、脇の下や上腕の手平側、
そして、脇の下と胸の間、脇の下と背の間、この2カ所に水掻
き状に張っている筋肉の中、も痼りができていることが多くな
ります。

 そういう場合には、先に、そういう脇の下まわりの痼りを弛
めると、首や肩の痼りが弛みやすく、また、可動域制限も解消
されやすくなります。

 特に、腕が30度位までしか上がらないときは、脇の下や上腕
の手平側にツボが出ていることが多く、その部分が痼りになっ
て伸ばそうとしても伸びないので、腕が少ししか上げられなく
なるようです。

2.脇の下に皮膚の操体をしながら、手の指揉み

 さて、今回紹介する操体の1つ目は、脇の下から上腕の手平側
に出ているツボに皮膚操体することを切っ掛けにしながら、経
絡的に関連する手指の指揉みや体重移動などを加えるというも
のです。

1) 脇の下から上腕の手のひら側に出ているツボを探す

 ラクな姿勢で座って腕を辛くない範囲で横に上げてもらい、
脇の下から上腕の手平側をよく見て、溝状に凹んでいる所を探
します(写真1)。

写真1

 辛い一歩手前まで上げると見付けやすいです。

 脇の下に続く上腕の溝は、やや前方に挙上制限がある場合に
は親指側に、やや後方よりに挙上制限がある場合には小指側に
出ることが多いです。が、溝が斜めに走っている場合もありま
す。これは、その挙上制限のときに使う筋肉が斜めに走ってい
るからです。

 見つけた溝を脇の下の方に辿っていき、終点を肩の方(座位
で上の方向)に押し付けると圧痛があります。

 そこから、溝を戻りながら、その溝の中でも凹んでいる場所
を押してみると圧痛のある場所が他にも見付かると思います。

 そうして見付けた中で、圧痛の一番強い所を選びます。

2)選んだツボの上の皮膚をズラす

 選んだ所を押していた圧を少し弛め、皮膚を筋肉方向に軽く
張った状態程度、言い換えれば温度を測るような感じにします。

 そして、指腹がその部分の皮膚にピッタリ張りついたような
感じにしてから、その部分の皮膚をあちこちズラしてみて、一
番大きくズレる方向を探します。

 ズラし方は、

(1)溝と平行の2方向、脇の下方向と肘方向

(2)溝と垂直の2方向、親指側方向と小指側方向

(3)(1)と(2)の組み合わせ

(4)捻転の2方向、時計回りと反時計回り

(5)(3)と(4)の組み合わせ

という感じで試してみます。

 脇の下から上腕・手平側の溝の中のツボの場合には、溝と平
行で脇の下方向が、一番ズレやすいことが多いようです。それ
に捻転の2方向のどちらかを加えるとイイ感じになる確率が高
いように思います。

 受け手が言葉の通じる人なら、イイ感じがするか確認してみ
ます。

 ズラしやすい方向、イイ感じの方向が見付かったら、その方
向に皮膚をズラしたままの状態を、しばらく続けます(写真2)。

写真2

3)色々と付け足してイイ感じを増やす

 そして、イイ感じが増えていくように色々な付け足しをして
みます。

〈指反らし、指揉み〉
 この場合には、例えば、指を揉んだり反らしたりしてみます
(写真3)。

写真3

 反らしてピリピリビリビリする感じの強い指が効果的なこと
が多いです。

 溝が、拇指側のときには拇指や示指、小指側のときには小指
や薬指を反らすとビリビリする感じが強いことが多くなります。
経絡的に関係しているからだと思います。

 指揉みを加えるときには、指裏関節部の皺の横端の部分を揉
むと効果が出やすいです(写真4)。

写真4

〈体重移動〉
 体重を移しやすい方に移してもらいます。

 前にも書いたと思いますが、体重を移すと、下半身も動くの
で、下半身も含めた体丸事のイイ感じが味わえ、体全体の調整
が可能です。

 また、体重を移すという動作は余り長い時間続けられないの
で、1つの操体が短い時間で済むというのもよい点です。

〈首や反対側の手もイイ感じに〉
 また、首や反対側の手など受け手が自分で動かせる所をゆっ
くり動かしてイイ感じを探してもらうのもよいと思います。

4)腹に息が入ったか、イイ感じか確かめる

 受け手の腹に息が深く入っていくか確かめるようにしてくだ
さい。

 言葉が通じる人には、イイ感じが続いているなら続ける、イ
イ感じがしなくなったら終わりにしてもよいと伝えておくと、
分かりやすいかもしれません。

5)姿勢を変えたくなったら終える

 体重を元に戻したくなるなど、大きく姿勢を変えたくなった
ら終わりにします。

 受け手がイイ感じを感じられなくなったら終えてもよいと思
います。

 ツボを調べ圧痛が変化したか調べます。可動域制限が有った
場合には、可動域が改善したかも調べてみます。

 そして、その溝の中の他の場所も調べ、押して圧痛が有るツ
ボが出ていないか調べ、有れば、また、そのツボの上の皮膚を
ズラすことを切っ掛けにする操体をしてみます。

 ただし、圧痛が軽い場合には、そこを切っ掛けにする操体は
省いて、次の操体に移ってもよいと思います。また、可動域制
限が、すっかり、改善してしまったら、終わります。

3.脇の下の水掻きの痼りを動かす

 今回の2つ目は、脇の下の前後の水掻き、つまり、上腕拇指
側の脇の下から胸の間に張っている筋肉と、上腕小指側の脇の
下より背中の間に張っている筋肉の中の痼りを挟んで、その痼
りを痛くない方に動かしてみることを切っ掛けにする操体です。

 手首捻転や体重移動などを付け加えます。

3.1. 脇の下の胸側の水掻きの痼りを切っ掛けに

 先ずは、胸側の水掻きを拇指と示指中指で挟んで、痼りを探
してみましょう。

1) 痼りをイイ感じの方に動かす

〈痼りを探す〉
 ラクな姿勢で座ってもらい、脇の下と胸の間の水掻き状に張っ
ている筋肉を挟んでみます。腕を辛くない範囲で横に上げても
らうと探しやすいです。

 軽く挟むとクスグったいこともあるので、しっかり挟んで探
しましょう。

 2つ3つ見付かったら、一番痛いかイヤな感じのものを選びま
す。

〈痼りを痛くない方に動かす〉
 その痼りを肩の方に動かします(写真5)。

写真5

 一般的には、イイ感じの方向、痛みが減る方向に動かすので
すが、この場合には、肩の方に動かすと痛みが減る可能性が高
いです。

2) イイ感じを増やす

〈手首捻転〉
 先ずは、手首捻転を付け加えます。痼りと同じ側の手首を2
方向に捻ってイイ感じの方を探します。

 この場合には、ほとんど小指側を手平側に回す方が良いと思
います。そのまま、その方向に手首を捻っていくと、肘が曲が
り、手首が胸に近付くと思います(写真6、7)。

写真6

写真7

 そうすると、挟んでいた痼りの周りの筋肉が膨らんできて、
痼りが膨らんできた筋肉に埋もれるような感じで消えていき、
それと同時に痛みが減っていくと思います。

 受け手が言葉の通じる人なら聞いて確認してみてください。

自然則:痼りの在る筋肉を縮ませると、痼りは弛む
 操体の自然則として、基本的に、「痼りの在る筋肉を縮め
る方向に動かして、痼りが縮んで膨らんできた筋肉に埋もれ
るようにする」、つまり、「痼りは、筋肉が縮んだまま伸び
なくなった状態なので、その痼りよりも周りの筋肉が少し余
分に縮んだ状態の格好を続ける」と、痼りは弛みます。

〈体重移動、反対側の手や首をイイ感じに〉
 イイ感じを付け足すことに戻ります。2つ付け足せます。

 「体重をイイ感じの方に移す」ことと、「反対側の手や首
を、ゆっくり動かしてもらう」ことです。

 言葉の通じる人なら声を掛けてしてもらい、操者は倒れな
いように支えてあげます。

 言葉の通じない人の場合には、操者がゆっくり肩など動か
して体重を移してみて、移しやすい方に移してもよいと思い
ます。

3) 味わい方や終わり方は同じ

 姿勢を変えたくなったり、イイ感じが消えたら終わりにし
て、脇の下の痼りの辛さが減ったか確認してみてください。

3.2. 脇の下の背側の水掻きの痼りを切っ掛けに

 次に、背側の水掻きを挟んで痼りを探してみましょう。

1) 痼りをイイ感じの方に動かすことを切っ掛けに

〈痼りを探す〉
 ラクな姿勢で座ってもらい、脇の下と背の間に水掻き状に張っ
ている筋肉を挟んでみます。

 ここも腕を辛くない範囲で横に上げてもらうと探しやすいで
す。やはり、クスグったいこともあるので、しっかり挟んで探
します。

 2つ3つ見付かったら、一番痛いかイヤな感じのものを選びま
す。

〈痼りを痛くない方に動かす〉
 その痼りを肩の方に動かします(写真8)。

写真8

 胸側と同じように、肩の方に動かすと痛みが減る可能性が、
一番高いです。

2)イイ感じを増やす

〈手首捻転〉
 先ずは、手首捻転を付け加えます。痼りと同じ側の手首を先
ず反らせてから、中指が小指側に回っていく手首捻転をします
(写真9、10)。

写真9

写真10

 こうすると、挟んでいる痼りの周辺の筋肉がより縮んで膨ら
んでくることを確認してください。やはり、痼りが膨らんでき
た筋肉に埋もれるように目立たなくなり、痼りの辛さが減るこ
とも確認してください。

〈体重移動〉
 体重をイイ感じの方に移すことと、反対側の手や首をゆっく
り動かしてもらうことを付け加えるのも同じです。

 言葉の通じる人なら声を掛けてしてもらい、操者は倒れない
ように支えてあげます。

 言葉の通じない人の場合には、操者がゆっくり肩など動かし
て体重を移してみて、移しやすい方に移してもよいと思います。

3) 味わい方、終わり方は、同じ

 姿勢を変えたくなったり、イイ感じが消えたら終わりにして、
脇の下の痼りが辛さが減ったか確認してみてください。

3.3.  脇の下の水掻きの痼りを取ると、首や肩がラクになる

 脇の下と胸の間、そして、脇の下と背中の間、この2カ所に
水掻き状に張っている筋肉の中の痼りを、いま書いた2通りの
操体で弛めると、首や肩が急にラクになった感じがすることが
多いです。

 確認してみてください。

 人って陰の側の辛さって感じにくいみたいです。首や肩に比
べると、脇の下って体の陰の側ですね。そういう所の辛さを感
じるよりも、首や肩が辛いと感じるようです。

 もちろん首や肩も凝っているわけですが、首や肩を弛めても
まだ辛さが残っているときに、脇の下の周りを弛めると、急に、
肩や首もラクになったと感じると言われることが多いです。

4.操体の基本手順から見てみる

 今回の操体を操体の基本手順から見てみましょう。

(1) ラクな姿勢になってもらう
   (=ラクな姿勢で立つ、座る)

(2) 目立つ所を少し強調してイイ感じを探す
   (≒やりやすい方を少し強調)
    今回:痼りの上の皮膚をズレやすい方にズラす
       痼りを挟んで動きやすい方に動かす

(3)他にイイ感じがないか探し、有ったら加える
    1.目の動き、手首の動きを加える
    2.体重を移しやすい方に移す
    今回の付け足し:指揉み
            姿勢を、ゆっくり、変えてもらう
            体重移動
            手首

(3) 息が深くなるかイイ感じなら続ける

(4) 姿勢を変えたくなったら終える
   (体重を戻す=姿勢を変える)

5.自然則を味わい身に付けていく

 今回、操体の自然則として、

痼りのある筋肉を縮める方向に動かして、痼りが縮んで膨ら
んできた筋肉に埋もれるようにする、つまり、痼りは筋肉が
縮んだま伸びなくなった状態なので、その痼りよりも周りの
筋肉が少し余分に縮んだ状態の格好をしばらく続けていると、
痼りは弛む

というのは、どの筋肉にも言えるので、よく味わい身に付ける
ようにしてください。

6.おわりに

 そろそろ、操体の基本手順が頭にすぐ浮かぶようになったで
しょうか?

追記:今回の脇の下の水掻きの痼りを肩の方へ動かす操体を活
用し、整形外科のバイトで五十肩の患者さんを沢山改善し、特
別ボーナスをもらった人もいます。皆さんも、しっかり、身に
付け、活用してください。


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