ママが応えた.
「ガーランドさん・・・でよろしいのかしら」
「はい,いかにも.シド様も,貴女の様なお美しい女性と一緒でさぞ嬉しいことでしょう.
ガイアの国は現在緊迫状態が続いてですね.
それでこの子を貴女達の所へ匿わせてくれませんか」
ママは快諾し,そしてそれからパパ,ママ,そして僕の3人の「家族」生活が始まった.
何故僕だけを研究所から連れ出したのかは,その時は知る由も無かった.最初の内はパパとママ
に馴染めなかった僕だけど,差し伸べられた手に今まで感じた事の無かった感情を覚え,次第に
打ち解けていった.
それから何日かは,僕はパパ,ママの愛情をいっぱいに受けて生きてきたんだ.今まで
芽生えた事のない感情も生まれた.
でもそれも,ほんの僅かな期間で終局を迎える事になってしまう.
ガイア国軍の使者のあいつらが来て,僕をパパ,ママから引き離したんだ.
「ママ,どうして僕,この人達といっしょに行かないといけないの?」
ママは何の返事もなく,僕に手を振っているだけ.孤児だった僕にとって夢の様な日々の名残は,
一瞬にして消え去ってしまった.国軍の使者,ガーランドに無理矢理手を引っ張られて,
僕は気付いた.以前のガーランドとは様子が違うことに.
「ねぇガーランド.サンプルってなに?」
「お前には・・・我が国軍が生み出した最高の技術の実験台になってもらう.それが『狭間』
を生きる者の定めなのだよ」
「ハザマ・・・って何?」
「お前の作った『数遊び』に興味があってなぁ・・・それを利用させてもらうのだ」
最終更新:2011年05月30日 19:32