―光泉―
真の次元の狭間或いは無の世界に於いて,私は見た.幾重にも連なる砂の塔と造形師と
呼ばれる民のことを.砂の塔は,邦畿の白砂宮といった.塔には,造形師が住んでいる.
今日も私と造形師との日々が始まる.
この世界の太陽は一定の位置に,あたかも人工的に置かれたの如く浮き,紫色の流体を
最低部にある都市国家に降り注がせている.都市国家,と言っても無の世界には国が
二つしかない.ガイアとテラという国だ.2国間は互いに協定を結んでおり,国民はその
協定のおかげで今日も平和に暮らしている.
とある白砂宮で,その日目覚めた私は,甲冑を身に付け,
砂嵐が発生していないか確かめ,外に出た.
もうこの無の世界に来てから数日が経っていた.
偶然辿り着いたこの世界.自らの望むままこの14番目の世界の真実を探る為の旅は,
ここで一段落着いている.今日はどうしようか.ガイアの白砂宮へ行き造形師達と言葉を
交わすのも良いかもしれぬ.いいや,それともテラへ赴き,魔導文明に浸る方が良いだろうか.
2国を分かつ国境まで辿り着いた私は,未だ迷ったままである.国境では警備隊が蛮族からの
襲撃を防いでいる.私の住む白砂宮は比較的両都心部から離れた郊外に位置しているので,
治安が少し心配だ.警備隊の者達と挨拶を交わした後,私は行き先を決めた.
今日はテラへ行こうではないか.魔相を揃え,魔力を高めるにはテラの砂脈から流れる
温泉に入るのがベストだと聞いたことがある.
テラへと通じる魔導ヴィークルに乗り込み,かの国の温泉が沢山湧現している地へ辿り着いた.
至るところから魔導エネルギーが噴出している.それを感じ取ることは私にとって容易い.
私は甲冑を取り外し,早速露天の温泉に入った.
客へのサービスか,私のところへ酒が運ばれてくる.
私はそれを取ろうとしたが,それにはこう書かれていた.
一杯200ギルになります
いいですとも!
私の魔相が揃い始め,魔力が充分に高まったのを感じながら,私は明日はどこへ行こうかと
考えを巡らせていた.偶にはこのような日々を送るのも良いであろう.
最終更新:2011年05月21日 00:45