―異邦人―


この14番目の世界で,ゴルベーザの他にもう一人,クリスタル鉱石で出来ていない男がいた.

過去のカオス神殿にて現われたガーランドだ.

14番目の世界の始まりは,クリスタル鉱石で出来た駒である私にとってみれば,不明な事だ.
不明な事だが,混沌の軍勢をこういった姿でも指揮する私にとっては,些細な事に過ぎぬ.
しかし,ここである疑問が生ずる.何故この14番目の世界に居続けているのが,本来の
私ではなく,あの少年に造られたクリスタル鉱石の姿の私なのだろうか.本来の私は,何故
この世界に居続ける事を拒み,去ったのだろうか.
その謎を解き明かす鍵を,私は既に手に入れていた.

私が発動させた非幻想跳躍シルドラによって,幻想跳躍を打ち消された混沌の女神コスモス
と,あの少年を我が居城に呼び寄せたのだ.

「あがいても無駄だ.お前達は真実を語らねばならぬ.この私,皇帝の前にひれ伏すが良い」

コスモスとあの少年は,一緒なれて嬉しかろう.だが,私はそんな暇は与えぬ.

「答えよ,混沌の女神コスモス,何故お前は,また戦士達を呼び寄せたのだ」
「私が呼んだのではありません.あなた達カオス勢を呼んだのは,あの人の方です」
「あの人,だと?」

今度は少年が答える.

「僕の・・・パパのことだよ」
「パパ・・・.それにしても何故貴様は混沌の駒などを作った?そのせいで,もとの世界に
還れなくなった者がいるのだぞ.一体どうしてくれる?」
「それは・・・おとうさんに認めてもらいたかったから・・・」
「ほう・・・ではそのおとうさんとやらに登場してもらおうか」

この3人は,家族らしいな.
私は「おとうさん」と呼ばれる人物の側により,仕置きを与えようとした.

「やめてよ!」
「やめて下さい!」

「随分と派手にやってくれたものだな.まさか数多の幻想から人を呼び寄せておいて,
自分ら家族だけとんずらしようとは」

仕置きを実行しようとした時,あの男がこの城にやってきた.

「貴様は・・・ガーランド」
「貴様,あの女に手を出すな・・・.彼女はこのわしのものだ」
「何か訳ありのようだな.では貴様らにまだ生ける時間を与えてやろう」

私が非幻想跳躍を携えている限り,こやつらは永久に我が居城にいるままだ.この私を
置いてとんずらなどさせはせぬぞ・・・.

と,僅かに気を余所に移したのがいけなかった.
私はあの時の少年にシルドラの背骨を奪われてしまった.

「師匠,ここは僕がなんとかします!3人で逃げて下さい!」

あの少年が返す.

「ディリクレ!それじゃあ君はどうするんだ?!」
「僕なら大丈夫です.さぁ,早く幻想跳躍を!」

小僧,何をする.例の3人とディリクレと呼ばれた4人が姿を消すと,私の居城がたちまち
音を出して崩れ出した.

「フン,駒風情が,いらぬちょっかいを出しおって」
「ガーランド・・・貴様はどちらの味方だというのだ」
「味方だと・・・?この世界には味方も敵も存在せぬ.あるのは家族の旅の始まりのみよ」
「ゴルベーザはどうする?」
「奴のことはわしが片を付ける」
「私は,どうなるのだ」
「異世界の者は,時既に遅し,消滅する定めだ」

なんということだ・・・私の野望が潰えたというのかッ・・・?!貴様達は一体・・・.



皇帝は,本当に最後の断末魔をあげ,塵と化した.

…この14番目の世界とは何であったか,判明した今,この物語を語る必要はなくなった・・・.それでは,さらばだ.






最終更新:2011年07月14日 12:28