変態人形と想う少女と

早朝、まだひんやりとした空気がシティーエリアと名付けられた現代風の建物が建ち並ぶ空間をなでていく。
そのエリアの一角、子供達の遊技場、またの名を公園という施設に彼らは居た。

一人は左右の目が違った色の輝きを放つ、オッドアイの人形。
一人は「にぱー☆」という可愛らしい笑顔が似合う、小柄な少女。
○ロワの書き手、変態紳士と想いのととであった。


「皆とはぐれてしまったようだな」
「そうみたいやな……って、おもむろにワイの尻に触るなぁー!」
「おや、これは酷いことを言うね。実は私は半日に一回まロい尻に触らなければ死んでしまうのだよ」
「どう考えても今考えた設定やろそれ。小学生でももう少し気の利いた言い訳するで」
「ははは、恥ずかしがらなくて良いのだよ想いのとと君。
さあ、私の胸に思う存分飛び込んでおいで……!そして一緒に揉み合おうではないか」
「せんせーいここに変態がいまーす。さっさと捕まってお茶の間に話題を提供すればいいと思いまーす」
「ふっふっふ、私は死なない。何度でも甦るさ!」
「再犯する気満々やし!?それ以前に痴漢くらいで死刑にはならへんし!?」
「おや、知らないのかねとと君。我が国ではまロい尻を持つ女性に危害を加えたものは即刻死刑と相場が決まっているだろう?」
「あんたはどこの国の住人や!?パラレルか、パラレルワールド設定なんか書き手ロワ!?」
「……頭は平気かね君は。パラレルワールドなど、存在するはずがないだろう」
「なんかワイが頭おかしい人にされとるしー!?」

ボケと突っ込みが似合う良いコンビである。実に微笑ましい。

「何が微笑ましいや!なんならあんた、ワイの代わりにこの変態人形を突っ込み倒してみいや!」
「やだ…そんなに激しく突っ込まれたら、僕……困っちゃうよ」
「誤解を招くような言い方をするなー!!!」
「ふむ、ところで君は男かね?」
「脈絡も糞もない会話をすんな!どっからどう見てもワイは少女やろうが!」
「最近は男の娘というのがはやっているではないかね。
君の年齢ならば十分リアリティはある、胸も無いようだs……おっと、落ち着きたまえよ。
カルシウムが不足しているのではないのかね?牛乳を飲めばカルシウムは摂れるし、そのまな板も(ry」
「くそっ、このっ、一発くらい殴らせーや!!」

一応状況描写しておくと、公園で二人の少女が仲良く追いかけっこをしている。
うん、何もおかしな所はない。実に一般的な光景だ。
何故か追いかけている方は鬼のような形相をしているが、元気なのは良いことである。
遊びにも真剣に取り組むその姿勢は、正に古手梨花の所属する“部活”そのものであった。

ともあれ。

「冗談はこのくらいにしておいて……とと君、君のいた日本は恐らく私の居た日本と同じ、
つまり、同じ世界から連れてこられたと考えて良いだろうね」
「はあ…はあ……何を今更言うとるんや?そんなん、決まり切ったことやろ」
「ならばこの姿についてはどう説明するかね?
君は元居た世界では関西弁を喋る古手梨花だったのかね?
少なくとも私はこんな姿でもないし性格でもなかったと自負しているが」
「それは……主催者がワイらを連れてきたときに色々やったんやないか?
アンスパなら何してもおかしくないで。実際、ワイらは無意識にこれが書き手ロワ3dやと認識させられたわけやし」
「ふむ、そうくるかね。しかしそれでは納得のいかない事があるのだよ」

変態紳士は最後の支給品である携帯をいじりながらそう告げた。

「いつの間に携帯なんて持っとったんや?」
「今は私たちが仲むつまじく話している以外には状況描写が何も成されていないではないか。
つまり、私たちが何をしていても後から描写が加われば何の問題も無いのだよ」
「そらまたメタメタな話やな」
「ああ……想いのとと、何をするの!?……そこは……そこはらめえ!」
「何を読者様に想像させるつもりや!何もしてない、ワイは何もしてへんで!?」
「とと君って……そんなカラダで何気に激しいんだね……もう僕、耐えられないよ……!」
「事実をねじ曲げるなー!あんた携帯いじってるだけやろ!」

ちっ、と舌打ちを一つ。
実に残念だが、このままでは話が進まないのでそろそろ本題に入って貰いたい。

「今私が見ているサイトはご存じ、○ロワwikiだ。」
「それがどないしたんや?」
「不思議なことに、今この場にいるはずのロニーさんやびーはち、
最速兄貴や鬱の繋ぎ氏までもが私が書き手ロワに来る以前に読んでいなかったSSを書いているのだよ」
「へっ?それってどういう……」

彼女の疑問も当然のものである。
何故なら

「残りの二人はともかく、びーはち氏と鬱の繋ぎ氏は私たちと行動を共にしていたのだからSSを書くことなど不可能なはずだ。
それ以前に、こんな短期間でこれだけのSSを紡ぐことは不可能だろう。
それなのに現にSSは紡がれ、○ロワは進んでいる。これは一体どういう事だろうね?」
「つまり……ホントにパラレルワールドやっちゅうことか?」

彼らが書き手ロワに連れてこられた世界をA世界とすると、連れて行かれなかったB世界が存在する。
そして、今見ているwikiはB世界のものなのではないか。
想いのととはそう推論する。少し不安気に、だが。

「それならば辻褄があうだろうね。だが、私はもっと恐ろしい仮定を胸に抱いているのだよ」
「…………なんや」
「……私はこのぺったんこな胸に恐ろしい仮定を…」
「別に言い直さんでもええわ!あと、虚しくならへんのか!?」
「私の精神は佐山だよ。別に胸が無くたって何の憂いもない。
そう言う君はどうなのかね、口調はウルフウッドのようだが中身はどっちよりなのだね?」
「……ノーコメントや」
「まあ、触れないであげよう。
話を戻すが、その前に2,3質問をさせて貰って良いかな」
「別に、変なのじゃなければ何でもいいけど」

そう投げやりに答えながら、ととは直感的に分かっていた。
彼女は、鋭い眼光を放っている変態紳士は変なことなど言わないだろう事を。
そして、彼女の質問がどのようなものであるかを、なんとなく。

「君の家族は何人かね?君は本当は何歳で、何をしていた?君は本当は男かね、女かね?」

初対面ならばありきたりで、しかしロワという極限状況では普通はしないだろう質問。

沈黙。先程までの軽々しい雰囲気など、とうに吹き飛んでしまっている。
今存在するのは、重々しい、空気に鉛が混じったかのような空間。
通常ならすぐに答えが返ってくるその質問は、しかしいくら待っても返事を貰えることはなかった。

「……誰もが、思っていても口には出さんことを」

そう言いながら、軽くため息。はき出した二酸化炭素が冷たい空気にとけ込んでいく。
その顔は仕方ない、とでも言うようなもので。
まるで、隠していたものが見つかった時の諦めにも似たそれは、ひとつの意味を成している。

「全部、分からん。さっぱりや。まるで記憶喪失なったみたいに、そこら辺の記憶だけがすっぽり抜けとる」
「そうか……やはり、私だけでは無いのだね」
「そうや、ロワとかの知識は全部思い出せるのに、プライベートな記憶は全く無い。
思い出せないんじゃなくて、本当に始めから存在せえへんかったみたいにな」

出来れば、自分だけであって欲しかった。
口に出さずとも、なんとなく互いの心が伝わってくる。
しかし、初めての以心伝心は、最悪の形を持っていて

「何となくあんたの言いたいことは分かる、でも、一応言っときや」
「ふむ、それでは遠慮無く言わせて貰おう。
私は懸念している。私たちは、必要な記憶だけを植え付けられた……人形ではないかとね」


蒼星石という人形の姿の書き手は、そう言った。
はっきりと、断言した。

「確かに、ワイらの体を無理矢理改造して幼女にしたり人形にしたりするよりは、そっちの方が簡単やろうな。
主催は人の頭の中をいくらでも弄れそうなヤツや。現にワイらは知らないはずの主催者のことを何故か知っとる」

それはつまり

「ワイらは自分たちが書き手やと思いこまされとる哀れな操り人形やっちゅうことか」
「人の体を自由に改造できる技術を持っているならば一から人の体を作ることも可能なはずだ。
そして、各々のボディーに能力やら必要な知識やらだけを植え付けられ、ここに送られた、と。
そうすれば○ロワwikiの謎も容易に解ける。始めから本物の書き手は攫われてなど居なかった」
「主催がそんなことをする目的は?」
「十中八九、ただの気紛れ、娯楽だろう。書き手ロワ開きたいなーと。ただそれだけのことだよ。
しかし、本物の書き手を攫ってしまえば、他のロワが回らなくなってしまう。主催者もそんなことは望んでいないのだろう。
だから、書き手の一部記憶だけを私たちに移し替えて……」
「うちらはとんだ偽物やっちゅことか……」

それは死刑宣告にも近い、絶望的な状況。
ただ、書き手ロワ3rdの為だけに創られた人格、創られた記憶、創られた身体。
仮に主催者を倒したとしても、帰る家など存在しない。帰りを待っている家族など居ない。
もし、本当にそうなのだとしたら

「どうするかね?抗うのを止め、素直にマーダーの餌になってロワ進行に一役買うかね」
「そんなのは……ゴメンや」

だけど、だからといって易々と死ぬ気など、想いのととには無かった。
何が何でも生き延びる。そう考えて何が悪い。
例えこの想いさえ創られたものだとしても、それを否定する気にはなれない。
何かに一生懸命になることは、それだけで価値があるものなのだから。
何者にも代え難い“意志”と言う名の、絶対の価値が。

「ワイは絶対に死なん。生き延びて生き延びて生き延びて、主催に一発ぶちかましてやらんと気が済まん」
「仮に主催を倒したとして、そこからどうするというのかね?」
「そんなのは倒してから考えるわ。今はそこまで頭が回らん。
でも、書き手2nd生還者のネコミミ氏もなんだかんだで上手くやってたし、なんとかなるんちゃうか?」
「楽観的だね。実に無計画な、しかし素晴らしいことだ」

基本的に、世の中はポジティブな人間ほど成功しやすいと言われている。
それがロワの中で当てはまるかどうかなんて、誰にも分からない。
だけど

「よっしゃ、気合い入ってきたわ!行くで、えーと……」
「変態、と言うのが嫌なら紳士で構わないよ。とと君」
「ほんなら行くで紳士、まずは仲間捜しや!」


今はただ、彼らの行く末に希望があらんことを……

ところで

「まだ私は君が男でないという証拠を見せて貰っていないのだが?
これは実に重要なことだよ、とと君!!!最優先事項に違いない!
もしも君が男の子だった場合を考えてみたまえ!……想像してみたかね?
男装の少女と女装の少年、私は常識人だから控えめに言わせて貰うが……実にヒャッハァだね?
さあ、こうしては居られない。早速“確認”を……」
「いい加減にせえやーーーーーーーーーー!!!」

こんなこともあったが、蛇足は蛇足であって蛇足でしかないのであった。


【1日目 朝/シティーエリア】

【変態紳士@マルチジャンルバトルロワイアル
【状態】変態という名の紳士
【装備】ワルサーPPK@オールロワ、ブーメラン@現実
【道具】支給品一式、携帯電話@現実
【思考】
0.とと君、早速“確認”を……
1.様々な人に書き手としての流儀、やり方、思いを聞くのも悪くない
2.マロい尻を持つ人はいるかな?

【想いのとと@マルチジャンルバトルロワイアル】
【状態】健康、精神に多大な負担
【装備】クロスボウ@ラノレイション
【持物】基本支給品、不明支給品0~2
【思考】
0.駄目だこの変態、早く何とかしないと……
1.何が何でも主催者をぶっ倒す
2.びーはちのことはあまり心配していない

※自分たちが主催者によって創られた存在ではないかと考えています

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ループ・ザ・ループ 変態紳士 書き手が書き手ロワ3にログインしたようです
ループ・ザ・ループ 思いのとと 書き手が書き手ロワ3にログインしたようです

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最終更新:2009年08月27日 21:48
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