やってらんねー、と思ったわけだ。
何がってもちろん殺し合い。
バトルロワイアルなんて言葉はそりゃもう飽きるくらい目にしてるけど、自分でやるなんて願い下げってもんよ。
ぶっちゃけあたしはそんなことする程ヒマじゃない。書くならそりゃいくらでも書くけどさぁ。
肝が据わってるって言いたい?別に、取り乱す一般人キャラなんてあたしのシュミじゃないだけ。
それにそんな珍しいもんでもないでしょ。超人変人なんでもござれの今どきのパロロワ、登場話から平然としてる奴だって珍しくなんかない。
あ、あたしの名前は「
抉り〆る楽神の欠片《エックスカーテン》」
長いとか言うな。トリップで言えば◆tu4bghlMIw。
へいへい、先日めでたく完結しましたアニロワ2ndの書き手でござい。
どうにも、あたしのメンタルは「結城奈緒」をメインに固定されているようだ。
まぁ妥当と言えば妥当かな。一応登場話と死亡話を書かせてもらった訳だし、それなり以上の愛を込めたと自負してる。
いやだからって「そのもの」になって喜ぶのはちょっと違うけどさぁ。
つーかここまでがらっぱちなキャラじゃなかったってば。
それとも何だろうか。この感情は脱力系女子中学生を通したアニ2の「結城奈緒」だからこそのもので、リアルのあたしだったらまた違うのだろうか。
まー知らん。
なんにせよあれでしょ、なりきりって奴でしょ。ちょっとは聞いたことある。
それならまぁ、それなりにやらせてもらうとしましょうか。
とりあえず考察の真似事でも。そんな大層なもんじゃないけどね。
考えるのはもちろんあの主催、「◆ANI2to4ndE」のことだ。
何ていうか、何なんだろうね。あれ。
ご存知の通り、って言っていいのかはともはかく、あたしもアニ2の最終回制作には一枚噛んでるわけで。
つまりはあいつを構成する要素の一つな訳だ。
それなのにあたし本人もこうしてここにいる。思いっきり殺し殺されしてもらうつもりのようだ。
どういう理屈か。その理由は。あいつの腹かっさばいたら小さいあたしが出てきたりするのだろうか。
ん~、まぁ考えて分かる筈もないか。「結城奈緒」にゃ頭脳労働は似合わないしね。
あたしはあっさり考えることを止めた。100kbの大考察なんてできる人に任せとけばいいの。
それにあれよ。無理してあれこれ考えたってさぁ。
「多元宇宙」
「まぁいい」
この二つの便利ワードが飛び交うアニ2の関係者が主催ってんじゃ、するだけ無駄ってもんじゃない?
あたしとしてはアニ2+主催=逃亡の公式を強く推したい所なんだけど。
首だけになっておかえんなさ~い、ってね。
さて移動移動。ここらで状態表を入れてスパっと短くまとめてもいいんだろうけど、そういう訳にもいかないらしい。
はい情景描写。
あたしは今船にいる。ほんのちょっと揺れてる。
情景描写終わり。
何よ短いって?書き手ならもっと心に響く描写を綴ってみろって?
まじうっぜー。
四六時中そんなこと考えてられるかっての。それにあたしは今筆を取ってるわけでもPCに向かってるわけでもない。
いわば書き手としてはオフの状態なのだ。
それでもうるさく言う。ならこれでどうだ。
あたしは今「アニ2に出てきたまんまの豪華客船」にいる。
どうだ。
驚いたかこのやろー。
よりにもよってあたしはあの最大級の惨劇の舞台からスタートしているのだ。
何の嫌がらせだこれは。
それに描写っても、そもそもこの船は元ネタからしてそんな丁寧な描写はされてないのだ。
あたしに言えるのはせいぜいそこで誰それが死んだーとか、あっちで誰それが死んだーとか、ここで皆死んだーとか、そういう観光案内のお姉さんみたいなことだけ。
そんなので良いなら多少は詳しく話してあげるけど?
ああいらない、と。それはへたれなことで。
まぁそんなえらい悪趣味な趣向で始まったわけだけれど、ぶっちゃけあたしはそこまで焦っては居ない。
一つには、やはりあたしが「結城奈緒」であることが大きい。
あの惨劇において奈緒は登場こそすれその役割は完全に部外者。
全部が終わってからやっと船に訪れ、ちょっとばかし不思議体験アンビリバボーしただけのちっちゃい存在だ。
つまりいきなり原作再現が起こるにしてもあたしはあの展開に関しちゃ唯一って言っていい「安全圏にいる存在」なのだ。
それにまだ序盤も序盤だしね。仕込みの段階でしょう、色々と。
あたしは悠々と、それこそ観光でもするように船の中を歩く。
完全に物見遊山気分で出口へ向かい、途中ゆったりした気分でトイレに立ち寄る。
ホラーものでトイレと言えば典型的な死亡フラグだけど、そんなことは関係ない。
外に出る前にちょっとばかし身なりを整えて、と思っただけだ。
まぁ、「結城奈緒」になった今の姿を自分の目で見て見たいってのもある。
やっぱ興味あんじゃん。間違いなく好きキャラだしさ。
あたしは取っ手を押しごふじょーへと入る。もちろん選んだのは女性用を示す赤の扉だ。
ひょいと鏡を覗いた。丁寧に髪を撫で付けていたのはいかにも胡散臭げな雰囲気をまとったタレ目気味の男……。
「高遠ぉ!?」
うわ、思わず全力で叫んでしまった。
つか叫ばずにいられるかっての。何だこの仕打ち、何だこの世界。
「結城奈緒」だとばかり思っていたあたしの外見は紛うことなき「高遠遥一」だ。
ああそうだと分かったとたん視界が高くなったような。心なし腕も太くなった気がする。
「多元世界は認識すると同時にその存在が確定する」ってやつか。いや過ぎる。
まぁいい、何て言ってる場合じゃないって。女言葉でずっと通してたのに、これじゃキモいおっさんじゃない。
ていうか本当に高遠だ……。声もまんま小野健一だし。
「いや~我が社としましてはこれ以上の出費はいかんともしがたく……」
「黙れ!そして聞け!我が名はゼンガー!ゼンガーゾンボルry」」
「ディオンドラの姉御~~」
ごめん。ちょっと調子乗った。アニ書き手だからということで一つ。
いやそんなことしてる場合じゃない。あたしの姿が高遠だった。この事実が指し示すことはたった一つ。
「船にいても安全である」というあたしの論理がが根底から覆されてしまったのだ。
つーか死ぬ。まじ死ぬ。高遠なら船で死ぬ。
そうと分かったら一秒でもこんなとこにいてられるか。三十六計逃げるにしかずだ。
さっきからちょくちょく「結城奈緒」とは思えない知的な単語が混じってたのも高遠成分だと考えれば納得が行く。
あたしは猛ダッシュで出口に辿りつくとどことも知れぬ真っ暗闇の中に飛び出した。
これはこれで危険だが死亡フラグで満干全席の場所にいるよりはまし……。
「ごっふぁ!」
って何だ。外に出たと思った瞬間急に体が重くなった。
頭がガンガンする。立っていられない。うずくまったあたしに追い討ちをかけるように吐き気が襲う。
暴走する胃液を押さえ込み、どうにか体を這わせる。視界がだんだん暗くなり手の平から漏れ出るように意識が遠くなっていく。
死亡フラグ、いきなり発動したかも。
一話死亡ならせめて、誰かしらに影響を与える形に……。
バイバイ。
とか言って死亡表記を入れてスパッと終わるのもありなのかも知れないがどうやらそうはならなかったらしい。
気が付くと、あたしは船の入り口(ってもさっき言った出口と一緒の場所なんだけど)に倒れていた。
気分はすっかり元通り。頭は痛くもなんともないし、吐き気だってしない。
一体どういうこと、とそれでも多少ふらつきが残る体を起こす。これで姿が高遠でなけりゃ多少は絵になったものを。
意味もなく首を振ると真っ白な壁に場違いに貼り付けられた紙が目にはいった。
粗雑なざら半紙にいい加減な印刷、セロハンテープによる貼り付けといい加減なことこの上ない。
何より気に入らないのがそれがちょうど「戻ってきたときに気が付くような」場所にわざわざ貼り付けられていたことだ。
そこにはこのように書かれていた。
『船から出たくば今度こそロワ内でミステリーを成立させること』
右下にはちっちゃく「どうしてもというなら惨劇でも可。死ぬけど」とも書かれている。
所謂、制限という奴らしい。
殴っていい?
「ばっ……!」
馬鹿じゃないの、とあたしは言い切ることができなかった。
ふざけている。まったくもってふざけている。
あたしの置かれたこの状況が、ではない。蛆が湧いてるとしか思えない(恐らく)主催の頭の中がである。
理不尽な制限を設ければ「ちょwwwww」とか言ってもらえると思ってるのだろうか。
一発ネタに芝を付ける者達が、本気で笑っているなどと本当に思っているのか。
だとしたらお笑い草だ。お山の大将だ。そんなのの一部に私が入ってるなんて考えただけで嫌になる。
ほんとどうしよ。あたしは初めて真剣に頭を使い始めた。
行動制限は無茶くちゃ。勝手に定められた方針は無理難題。そのくせそれらの出し方は一発ネタときている。
二話……いいとこ三話だろう。もちろん、賞味期限の話だ。
こんな扱い難いキャラが生かされる筈がない。
書き手は冷徹だ。腹を抱えて笑うその下で冷静に「切り時」を考えている。
「伸びしろなし」あるいは「ロワ運営に支障をきたす」と判断されれば最後、逃れようのない死が待っている。
つまりだ、しょーもないネタのためにあたしはいきなり死の危機に瀕しちゃったのだ。ロワ的な意味で。
一発ネタでキャラを食い潰すのはやめようねホント!
あーむかつく。何か知らんがすっごいむかつく。
フラグを積んで積んでそれらが成就した結果の死ならまだしも、そんな大人の事情が見え隠れする死に方は絶対イヤだ。
やる方もやられる方も楽しくないんだってそんなのほんとは。
あたしは考える。書き手として、フラグ管理のプロとしての頭をフル稼働させて考える。
そして、導き出した応えは――。
◇
がりがり。がりがりと特大の破砕音を立てて船は進む。
大地を割り裂け目に自らを割り込ませさらに道を作り上げるその勇姿はあたかも砕氷船の如くである。
豪華客船は進む。
問答無用で、陸の上を突き進む。
「こうすりゃ人とも遭遇しやすいでしょ。あたしが船から動けないなら、船を動かせばいいってね……」
優雅に舵を切りながら、抉り〆る楽神の欠片《エックスカーテン》は一人ごちた。
そうなのだ。
船が水の上しか進めないと、誰が言った。
【一日目・深夜/新潟県・信濃川上流から内陸にかけて進行中】
【抉り〆る楽神の欠片《エックスカーテン》◆tu4bghlMIw@アニメキャラバトルロワイヤル2nd】
【状態】健康。
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品0~3
【思考】
1:死ぬにしてもくだらないのはイヤだ
2:さて、どうしよ
【備考】
※外見は高遠遥一@金田一少年の事件簿、キャラのベースは結城奈緒@舞-HIMEです
※制限により船から出ると行動不能に陥ります。「ロワ内でミステリを成立させる」と解除されるらしいが……?
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最終更新:2009年05月13日 17:12