レベル1でラスボス遭遇

 気がつくと浜辺にいた。潮の匂いが鼻腔に届き、月を映す暗闇の中の波は引いては打ち、引いては打つ。
 砂の白さと海水の透明さから、昼なら青さが広がるきれいな海だったのだろうと推察された。
 はて、自分がなぜ観光地っぽい地にいるのか、疑問に持った。もっとも、ほかに疑問を浮かべることがある。
「二頭身……このデフォルメされた身体……もしかして……」
 彼は自分の物語によく登場する、パワプロクンポケットの登場人物の姿だった。
 主にパワプロクンポケット7のストーリーの中核を担うヒーローのリーダー、レッドの姿だ。
 野球ゲームになぜヒーロー? などと疑問をもたれても、そういうゲームだからとしか答えようがない。
「てか、この姿って記号なんだとスタッフも答えているんだがな……」
 実際等身の違いでギャップが起こった話はない。パワポケが参加している他ロワ、ロボロワでも反応は普通だ。
 なのにここでは等身が違う。そのことに彼―― パワポケロワの最多投下書き手◆7WJp/yel/Yことさすらいのヒーローはため息を吐く。
 ためしに軽く腕を振ると、目にも留まらぬ速さで拳が繰り出された。細い木を蹴ると、あっさりと折れた。
 力は元となったキャラ、レッドに準じているらしい。
 さすらいのヒーローにとってこれがバトルロワイアルっぽいものだとは、なんとなく分かった。
 噂の書き手ロワという奴だろうか?
「さて、どうしたものか」
 さすらいのヒーローは迷う。特に彼は目的がない。強いて言えば、自ロワに書き手が欲しいくらいか。
 元キャラ的にいえば、危険対主催者ともなるのだろうが、レッドではないさすらいのヒーローは正義にそこまで執着はしていない。
「とりあえず、人を探すか」
 方針をあっさりと決めて、人を探すためにデイバックを取った。
 すると、尋常でない殺気を感じて飛び退る。今までさすらいのヒーローがいた位置に衝撃波が走った。
「ほう、今のを躱すとは」
 現れた存在に背筋が凍る。レッドほどの実力を持っても分かる、圧倒的な差。
 彼の目の前には、白銀の複眼に黄金のカミキリムシに似た仮面。触角を二本伸ばし、黒いマントをつける、黄金の怪人。
 漫画ロワの主催者、JUDOに似た存在が現れた。


(やべぇ……こいつはやべぇ)
 漫画ロワの主催は、ナイアやアンチスパイラルに並ばされるほど次元の違う存在だと、今本能に刷り込まれた。
 レッドの実力と、目の前の存在を目にすることで初めて分かる圧倒的存在。
 吐きそうになりながらも、さすらいのヒーローは構えを取る。
「くくくく……」
 目の前の存在が笑った。圧倒される。さすらいのヒーローは死を覚悟した。
「なに、固くなるではない。殺すつもりはないのだからな」
「殺すつもりは……ないだと……?」
 JUDOがうなずく。仮面で表情は分からないが、嘲笑しているのだろう。
 怒りがこみ上げ、わずかに恐怖心を上回る。地面を蹴って、一撃その仮面へと入れた。
「ほう……」
(これで――殺せない!!)
 分かりきってはいた。さすらいのヒーローは両目を瞑る。

「いったいじゃない!! この、大馬鹿ぁあぁぁぁぁぁ!!!」

 すぐさま耳に痛い釘宮声がさすらいのヒーローの耳に届いて、爆発に巻き込まれながら天へ昇った。


「いったー……女の子の顔を殴る? 普通」
「……なんであんな姿になったんだよ」
 さすらいのヒーローはところどころ煙を出しながら、桃色のブロンドの小柄の少女、ルイズの姿を模した書き手に質問する。
 ああ、とルイズの姿をした書き手は咳払いをひとつして、さすらいのヒーローの正面を向いた。
「わたしは漫画ロワしたらば管理人、【魂爆】ウィクスゥこと◆KaixaRMBIUよ。敬いなさい」
 小さな胸を張る少女を前に、さすらいのヒーローは疑わしそうな視線を向けた。
 返ってこない声をに、すぐさまウィクスゥは不機嫌になる。
「ちょっと! こっちの話を聞いているの!!?」
「いやー、聞いているけどさ……先にこっちの問いに答えてくれないかな?」
「ああ、あんたの実力が知りたかったから」
「俺の実力?」
「うん。パワポケのヒーローの姿をしているけど、能力までそのままって限らないのよね。わたしが実際そうだし」
「あっさりと攻撃を受けたもんなぁ……」
「うっさいわね! まさか十分で変身が解けるなんて思わなかったわよ! しかも連続で変身できないみたいだし!!」
「十分?」
「そりゃ、最初はルイズの姿と能力で落ち込んだわよ。漫画ロワの則って虚無の魔法使えないし。
わたしだってタイガーロイドとか、散様とかがよかったのに……でも変身できるかもってやったらビンゴだし」
「声まで変わっていたぞ。釘宮どころじゃねえ。男声だし」
「特撮ではよくあることよ。仮面ライダー(新)の四話あたりが分かりやすいわね。改造人間の悲劇も描いている神回よ。今度見なさい。
それに……JUDOの声が納谷悟朗ってわかっているわねぇ……」
「おい、話がずれてる」
 ウィクスゥはこほん、と咳払いをして話を続ける。もっとも、話を中断したさすらいのヒーローは落ち度がないのにキッと睨まれた。
「話は実力のほうね。わたしはJUDOに変身して力を振るっていたけど……弱すぎるのよ」
「本当か?」
「能力としてはそうね、仮面ライダーZXくらいまで落ちているわ。あとJUDOが使える能力、次元関連の力もない。
まあ、あいつが持っているかどうかなんていまだ不明だけどね。次元の牢獄を作ったのはツクヨミっぽいし。
あ、話がずれたわ。許しなさい。JUDOとしての圧倒的な力も、能力もないのよ。変身した限りじゃ。」
「見掛け倒しか?」
「うーん……でもJUDOが見せた旧1号~スーパー1には変身できるのよね。さっきXライダーで海で戯れていたし」
「戯れるな!」
 ウィクスゥはさすらいのヒーローのツッコミを無視して、話を続けた。
「JUDOがオーバースペックしすぎて再現できないんじゃなか、ってわたしは思うのよ。
前回……ああ、書き手2ndね。あの時は光太郎さんをさらにチートさせたり自重しなかったくせに」
「それで……俺の実力を試して何がしたかったんだ?」
 さすらいのヒーローが早く本題に入ってくれ、と願いながら聞いてきた。
 ウィクスゥはにやり、と笑って胸を張る。この顔は釣りに成功した人間の表情だ、とさすらいのヒーローは本能で警戒した。
「あなた、わたしと組みなさい」
「……へ?」
 ウィクスゥの提案に、さすらいのヒーローは呆けた声を出す。と、いうより予想外だ。
「ぶっちゃけ、わたしは変身するまで無力なのよ。十分で変身が解けたってことはライダーロワの制限と同じ、と見ていいわ。
変身しない間、強い相方が必要でしょ?」
「強い相方ね……あんたはそれを得てどうするんだ?」
「決まっているでしょ! マーダーするのよ!!」
 笑顔で告げる少女の顔に、言葉が似合わずさすらいのヒーローは唾を吐き捨てたくなった。
 さすらいのヒーローの元となったキャラは、極端ではあるもの正義をもつ存在だ。
 マーダーになるといわれて、これ以外の反応を取りようがない。パワポケをある程度知っているらしい目の前の少女は、それを承知しているのではないのだろうか?
「まあ、聞きなさいって。どの道バトルロワイヤルをするなら、人死にには避けられないでしょう?
レッドの姿をしているとなると、あなたならそれを避けるように行動するでしょう?」
「当たり前だ!」
 威勢よく答えているもの、実は先ほどは迷っていた。だが少女の言葉が、対主催の道を決定付けさせる。
「だからわたしと組みなさいよ」
「なんでだよ!」
「この書き手3rdを盛り上げるためよ!!」
 はあ、とさすらいのヒーローは首をかしげる。もうちょっと目の前の少女にはコミュニケーションとか、相手に分かる言葉でしゃべるとかを心得て欲しい。
「いい? いつの時代もマーダーは求められているものよ!」
「そりゃ物語の中だけだ。少なくとも……」
「リアル? 果たしてそうかしら?」
 ウィクスゥはニヤリ、と笑ってさすらいのヒーローを見た。
 月光の背に切れ長の瞳を細める姿は、妖しい色気を伴っている。
「わたしたちはこの物語にそって作られた、都合のいい存在よ」
「書き手2ndがそうだったからか?」
「いいえ、わたしが書き手だからよ」
 ウィクスゥのその台詞だけ、氷のように冷たかった。
「わたしたちは書き手。話を書くものよ。話を書いて、話を盛り上げて何ぼの存在。
リアルとて、物語の中に用意されたキャラとて、そこは変わりない。いいえ、変えてはならない!」
 ウィクスゥの声はだんだん熱を帯びる。どこかひたむきな姿は、マーダーになるという前提条件さえ吹き飛ばして同意しそうだ。
「ここが書き手3rdというなら宣言するわ! わたしは書き手の誇りにかけてマーダーとなる! この書き手3rdを盛り上がる!
そのために巨大マーダーチームを作るわよ! さすらいのヒーロー!!」
「お、おう……」
「あんたは下僕一号! 技巧派よ。拒否権はないわ」
「ちょっとまてぇぇぇぇぇ!!」
「そうねぇ……当面の方針は仲間集め! そして情報収集!! 行くわよ、下僕1号!! マーダーチームを作り上げてみせる!!
とりあえず……昭和ライダーにちなんで十人は欲しいわね」
「こっちの話を聞けぇぇぇぇぇ!!!」
 ウィクスゥのマイペースに翻弄されながらも、さすらいのヒーローは少女についていく。
 一人にして犠牲者を出しても困るし、さすがに少女を殺すような真似は気が引けたのだ。
 どうするか、悩むさすらいのヒーローにあ、と声を出してウィクスゥが振り向いた。
「そうそう、マーダーコンビといえばシャワー! あんたは見張りね。着いてきなさい」
 そんなこと聞いたこともねえよ! と内心さすらいのヒーローは突っ込んだ。
 もしかしたら、目の前の少女はマーダーを勘違いしているかもしれない。さすらいのヒーローは深々とため息を吐いた。


【一日目・深夜/沖縄・海岸(本土へは大きな橋があります)】

【【魂爆】ウィクスゥ ◆KaixaRMBIU@漫画ロワ】
【状態】健康。JUDOに二時間変身できない。
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品0~3
【思考】基本:マーダー(自称)で書き手3rdを盛り上げる。
  1:シャワーを浴びる。マーダーコンビのお約束。
  2:仲間と情報を集める。下僕を増やす。とりあえず十人。
【備考】
※外見はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔です
※JUDO@仮面ライダーSPIRITSに変身できますが、なぜか仮面ライダーZXくらいの能力です。
JUDOが変身した仮面ライダーにフォームチェンジができます。


【さすらいのヒーロー◆7WJp/yel/Y@パワプロクンポケットバトルロワイアル
【状態】健康。戸惑い。
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品0~3
【思考】基本:対主催。
  1:ウィクスゥどうしよう。
  2:仲間を集め、主催を倒す。
【備考】
※外見はレッド@パワプロクンポケット7です

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【魂爆】ウィクスゥ 094:そう言えばこれって二次創作じゃなくて擬人化物なんだよな
さすらいのヒーロー 094:そう言えばこれって二次創作じゃなくて擬人化物なんだよな

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最終更新:2009年03月26日 16:44
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