そこは砂漠。足場は砂に覆われ、普通であれば歩くことすらままならないはずの場所。
木々など見えず、あるのは所々に生えたサボテンのみ。
もし普通の人間が足を踏み入れるならば、そう時間の掛からぬ間に脱水症状を起こすであろう空間。
そんな場所を、信じれらないような速さで動きまわる存在がそこにあった。
「さすがだな、ランサー。私の企画した場所でのクーフーリンの強さに違わぬ槍捌きだ」
「ふん、そちらこそ二次聖杯の企画主としてのこの戦いぶり、見事なものだ。これでもう少しスレに顔を出してくれたら言うことはないんだがな」
「それは言わないでくれ」
そんな会話を飛ばしつつ、互いの獲物をぶつけ合う二人の戦士。
一人は金髪の少女の外見をした、鎧を纏った剣士。その手には何も握られていないように見えるが、空気の層の奥にはまぎれもない剣の存在がある。
もう一方は全身を青いタイツに包んだ、紅い槍を持った男。
俺ロワトキワ荘に存在する、二次キャラ聖杯戦争。通称二次聖杯。
Fateの聖杯戦争に則った殺し合いをするという、パロロワ企画でも珍しいロワ。
彼らはそこの書き手である。
《始まりの剣》セイバー(◆.OpF6wOgZ2)、《紅槍の仮面使い》ランサー(◆3gGiI31R5A)。
片や二次聖杯戦争発起人、片やランサーを見事な采配で執筆しその強さを如何なく発揮した書き手(まあ色々やりすぎた面も否めないが)。
しかし、
「私のことを忘れてもらっては困るな」
その砂漠にいたのはその二人だけではなかった。
二人の間に投擲される短剣。
「ちっ、割と舐めてたのは事実だが、いざこう相手にしてみるとやっかいなところもあるなおい」
「何を言っている。Fate本編のHFルートでは状況が状況とはいえ我等はアサシンに遅れをとったことを忘れたのか」
「生憎だが俺が書いたのはセイバールートのランサーでな」
そう、その場にはもう一人、サーヴァントの姿を象った書き手が存在したのだ。
漆黒の煙と共にサボテンの上に具現化する気配。
黒き肉体を晒し、顔には髑髏の仮面。体に纏っているのはボロの腰布のみ。
Fateシリーズにおけるアサシンのクラスのサーヴァント、ハサン・サッバーハの特徴だ。
「うちのロワ、聖杯戦争にはいなかったが、てめえどこのやつだ?」
「アサシンの姿を持ったものがそう易々と口を割ると思うか?」
読み手のために敢えて解説をしておこう。
彼の名はハサン・0uDu0SETOk。トリップと姿を見ての通り、ニコロワγ書き手の一人だ。
「アサシンごときが三騎士クラスのサーヴァントを相手にできると思っているのかよ」
「ふん、私はこれでもトップマーダーだった者を仕留めたのだ。ちょうど今のように三すくみの状況でな」
「どうだ、ランサーよ。Fate/Zeroのセイバーとランサーのように一時休戦にしないか?」
「ハッ、生憎と俺はstay nightのランサーでな。このくらいのこと屁でもねえなぁ!!」
そう言ってハサンの投擲した短剣を弾きつつセイバーに槍を突きつけるランサー。
セイバーもそれを確実に受け止めていく一方でハサンへの警戒も忘れない。
ハサンは二人の戦いを剣、槍の間合いの外から眺めつつ隙を見ては攻撃を入れている。しかし流石は三騎士クラスのサーヴァントの姿を与えられた書き手。難なくそれらを捌いていく。
ランサーはセイバーとの戦いを譲らない。故に今はハサンの存在は眼中にない。
一方でセイバーはハサンの存在も若干邪魔に感じていた。ランサーはこう言っているが、彼の幸運値に合わせて万が一のことがあったらこちらも巻き込まれかねない。
しかしここで背を向ければ、間違いなくその槍をこの背に刺してくることだろう。
相手はあの《紅槍の仮面使い》。いくらランサーがネタにされることの多いキャラとは言え、彼の書くランサーを侮ることはできない。長期戦は必須だろう。
であればどこかで致命的なことになってしまう可能性も考えておかなければいけない。
「どうしたセイバー!集中できていないぞ!」
「他愛無し…」
気がつけばハサンは二人に増え、それぞれ短剣を手に投擲しようと構えていた。
(くっ、このままでは…)
◆
そんな彼らを、少し離れたサボテンの後ろから見つめる影が一つ。
(あれ、二次聖杯の書き手さん達と、あっちはニコロワγの人かな?
どうしよう、サーヴァントの姿の書き手さんならワンチャンあるかもしれないけど…)
白い髪と褐色の肌をした、黒い外套を羽織った少女は彼らを見つめてそう呟く。
一見Fateのイリヤスフィールの顔に見えなくもないが、声や肌の色が一致しない。ついでに付近にバーサーカーもいない。
最近アニメ化するとはいえあまりメジャーな漫画というわけでもないっぽい、Fateシリーズのスピンオフの一つ:Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤのキャラクター、クロエ・フォン・アインツベルン。
パラレルワールド・バトルロワイヤル書き手、Black Liner◆Z9iNYeY9a2である。
(見た感じ、本職のサーヴァントっぽい人ばっかりだし、書き手ロワ補正だって掛かってるかもしれないし…。
でも、やっぱりチャンスは生かしたいし…)
見たところによると、どうも彼らは三つ巴に戦いを繰り広げてる様子。
劣化アーチャーである自分の能力でも張り合うことは可能かもしれない。
いや、別に無理をして勝つ必要はない。”あれ”ができればいいのだ。
できるだろうか。
いや、やるのだ。
(そうよ!私だってパラロワを初期から支えていた書き手!乱戦だってそれなりにこなしてきたわ!
こんなところでビクビクしてるからいけないのよ!もっとガンガンいかないと!)
「お姉ちゃん何やってるの?」
「?!」
決意を心に立ち上がった瞬間、背後から声をかけられ驚くBlack Liner、以下クロ。まんまだって?覚えやすいと思うよ。
背後にいたのはハサンの仮面を頭につけた少女。
どうやら周囲を張られていたらしい。気配遮断スキル様々といったところか。
「お姉ちゃんも他所のロワの書き手なの?」
「えっとね!そう、そうなのよ!私パラレルワールド・バトルロワイヤル書き手のBlack Linerっていうの。クロって呼んで構わなくてよ!」
「そうなんだー」
「そうなの。パラロワをよろしく!」
「うん、分かった。でもね―――」
と、次の瞬間、その少女から、小柄な矮躯からは想像もできない殺気が迸った。
ガキン!!
「やっぱりこの体じゃそううまくはいかないね」
「…あんたもサーヴァントってわけ?」
とっさに投影した干将・莫耶でナイフを受け止めたクロ。
ロリアサシンの目は先ほどまでのおっとりしたものとは違い、ギラギラと血に飢えていたものとなっていた。
ロリアサシン。F/Zにおけるアサシンの没設定キャラクター。
一般的ロワでは姿を見せることはできない彼女が姿を現すことができたのもニコロワの特性ゆえだろう。
ニコγ本編では彼女の身体能力は少女のものでしかないと言われていた。しかし侮るなかれ。
漁夫の利とはいえあのトップマーダーゴンさんを仕留めたのは、他でもない彼女なのだ。
さらにその存在は、繋がれた先で同じアサシンのサーヴァント、赤座あかりをも殺している。あそこで偉そうにしているザイードの貌のやつは彼女の爪の垢でも煎じて飲むべきである。
ともあれそんな彼女を登場させたこの書き手の姿がそうなるのも当然といえるだろう。
「でも残念だね。今のであっちの皆にも気付かれたみたいだよ」
「やってくれたわね…。いいわ、見せてあげるわ。パラロワの、Fateのスピンオフの力をね!」
そしてロリアサシンが姿を消すと同時、襲い来る別のハサンの攻撃を受け止めた。
◆
槍が唸り砂を吹き飛ばす。
振るわれた聖剣の纏う風が大気を揺るがす。
投擲された短剣は届かぬとはいえその急所を確実に狙っている。
空中で顕現した多数の剣が砂の上に突き立ってゆく。
「その姿、イリヤスフィール…?しかしその魔術は間違いなくアーチャーのもの。
あなたは一体…」
「
「はっ、んなことどうせ倒しちまえば一緒だろうが!」
投擲されたナイフ、投影された剣は槍の、聖剣の一振りで弾かれる。
ランサーの左から干将・莫耶を構えて突撃するクロ、反対から短剣を振りかざし襲い掛かるハサン。
それをランサーは干将・莫耶は槍、短剣は腕を掴むことで素手で受け止める。
が、次の瞬間その背後をもう一人のハサンが襲い来る。
ランサーは掴んだ腕を引き寄せ背後にハサンを翳す。すると流石のハサンも身を引かせる。
その隙にセイバーが剣を構え、突きの体勢で突撃をかけた。
ハサンは飛びのき、ランサーは体を反らし避けるが、セイバーが視界に入っていなかったクロはとっさにそれらを干将・莫耶で受け止めた。
剣こそ刺さりはしなかったが、干将・莫耶は砕け散る。
とっさに飛びのき、剣を投影・射出。一箇所に集まった三人の周りを剣で囲む。
セイバーはそれを、剣の一振りで一斉に破壊、視界が露になったところで―――
「バイバイ」
捩れた剣が矢として放たれた。
爆発が砂地に巻き起こり、多くの砂を巻き上げる。
しかしその中には戦っていた相手の姿はない。
爆発の瞬間、セイバーは持ち前の直感で、ランサーとハサンは高い俊敏性でその場からはなれていたのだ。
互いに一定の距離を保ちつつそれぞれの武器を構えなおす4人。
「戦い方こそアーチャーのものですが、彼には及びませんね」
「あのさー、これでもこっちは必死なんだから。そういうことは言わないでよ」
「ふっ、貴様らが潰しあってくれればこちらも楽に勝利を収めることができる。存分にやりあうのだ」
4人が4人、理解していた。
このまま4人が入り乱れてのバトルロワイヤルをしているのでは、誰にでも等しく寝首をかかれる可能性があると。
三騎士クラスのサーヴァント二人に模造品とはいえエミヤの力を持った者、暗殺に長けたアサシンのクラスの技能を持つ者。
セイバーのみを執拗に狙っていたランサーも、ここにきて考えを改めたようだ。
「それにしても、やっぱり本職の人は強いな。Fate的に言うと、ネタの起源ってやつだっけ?
さすがに正面からの戦いは厳しいわ」
「それではどうするというのですか?背を向けて逃げるという選択でもするのですか?」
「まさか。こんなところで負けてるようじゃ自ロワの宣伝なんでできないし。隠し玉を切らせてもらうわ」
そう言ってその手に投影し直した干将・莫耶を投げつけたクロ。
と、次の瞬間ランサーの背後の砂が盛り上がり、何かが飛び出した。
「ドラゴンダイブ。そこから間髪入れずにストーンエッジ」
その指示と同時に、飛び出した何かは空中からランサーに突っ込んでいった。それはまるで龍が獲物を食らうがごとき覇気。
咄嗟でこそあったものの殺気に反応したランサーはかろうじてかわすことに成功。
地面に突入して粉塵を巻き上げた次の瞬間、鋭く尖った岩の破片が周囲に飛び散った。
ランサーを、セイバーを、ハサンまでも巻き込んで飛び散る破片、その中に飛び込むクロ。
追撃をかけようとしたハサン、しかし戻ってきた干将・莫耶によってその進路を阻まれる。
砂埃の収まった中心。そこにいたのは鮫とドラゴンを混合したような生物。
「お疲れ、ガブリアス」
クロが騎乗していたのは、マッハポケモン:ガブリアス。
パラロワにおいて参加者の一人、シロナのパートナーのポケモンである。
「さて、第二ラウンド開始だね!」
そういうが早く、ガブリアスは飛び上がり、騎乗するクロは弓を構える。
それに対してランサーは――
「ペルソナ!」
己の持つ能力をもう一つ開放した。
ペルソナ。彼の二つ名、仮面使いの由来。
二次聖杯におけるクー・フーリンのマスター、鳴上悠の持つ能力。
彼とランサーのコンビが猛威を振るった理由である。
「うお?!そうくる?」
放たれた矢はペルソナ、イザナギによって弾かれ、さらにその手にした剣をガブリアスの着地点に振り下ろした。
かろうじて防御こそ間に合ったものの、衝撃で吹き飛ばされるクロ。
「悪いな。それならこっちも奥の手使わせてもらうぜ。卑怯だなんて言うなよセイバー?」
「な…、ランサー、貴様まさか――」
「そのまさかよ!」
そういうと同時、ルーンの魔術に加え、イザナギ自身の魔法、マハラクカジャ、マハタルカジャがかけられていく。
RPGにおける補助魔法による基礎能力の増強、その恩恵を受けたランサーのステータスは幸運値を除いて全てが跳ね上がっていく。
そうはさせぬと飛び掛ったハサン、しかしイザナギのマハジオにより返り討ちにあい地面に蹲る。
「さて、これで準備は完了だ。てめえら覚悟はいいか?」
と、全てを終わらせたランサーは持ち前の素早さに加え増強された筋力、さらに鉄壁の防御をもって紅槍を構える。
セイバーは、この状況はまずいと直感で感じ取る。
それはあのランサーが猛威を振るったSS、FINAL DEAD LANCERの再現のような光景だったからだ。
ランサー(本多忠勝)を圧倒し、セイバー二人(アルトリア&ガウェイン)をも追い詰めたあの話。
風王結界を解き、露になった聖剣を構えるセイバー。
槍を構え直したランサーの元に、もう一人の、ザイード人格でない方のハサンとガブリアスが飛び掛る。
が、ランサーはびくともすることなく、そのまま足蹴りで一人と一匹を吹き飛ばす。
吹き飛んだ勢いのままに、槍をハサンに投擲。ザイード人格でないハサンは槍に貫かれ消滅する。
そこで素手になったランサーに、セイバーは容赦なく聖剣を振りかざす。
しかしランサーはヒラリヒラリとその剣筋から体を反らして回避する。
大振りの一撃を避けると同時に大きく後退して槍を回収。
そしてセイバーの追撃を受け止めたところでふと視界で何かが光った。
イザナギの腕をとっさに振るったところで、矢のように射出された何かを弾いた。
回転しながら地面に突き立ったそれはギザギザに曲がった刃を持つ短剣。
「ルールブレイカーか」
キャスターの宝具、ルールブレイカー(破戒すべき全ての符)。
これを受ければ自身にかけた強化の魔法全てが解除されてしまったであろう。
「くっ…」
射手はガブリアスの背に乗って上空からそれを矢として引いたのだ。偶然その姿が微かに視界に入ったおかげで助かった。
「負ける気はしねえが、あんまり時間かけすぎるのもこんな不確定要素混じっちまうからな。
一気に決めさせてもらうぜ」
と、ランサーは槍を構える。
それを見て一同はそのただならぬ気配に気付く。そう、これは魔力を充填している証だ。
「いくぞ。クー・フーリンの最強の一撃、その魂に刻むがいい―――!」
「―――まずい!」
恐らくこの後に待っているのは真名の開放。おそらくは”突き穿つ死翔の槍”。
ランクが上がってA+となった必中の対軍宝具。
クロの熾天覆う七つの円環では焼け石に水。セイバーの約束された勝利の剣であれば打ち勝てるはずだが魔力充填が間に合わない。
それでもセイバーは、その聖剣に可能な限りの魔力を集め、クロも避けられなくてもと減衰するであろう威力に賭け、迎え撃つために熾天覆う七つの円環を発動させようと構える。
そして、ランサーは飛翔。
「“突き穿つ(ゲイ―――)
「―――約束された(―――エクス)
まさにその真名を叫ぼうとした瞬間―――
「私を忘れてもらっては困るな」
ランサーの後ろに現れたハサン。そして、
「―――死翔の(ボル)
「ジャンプだ」
そのバッグから、何かが飛び出した。
それは、ニコロワγにおいて彼自身が登場させた支給品。
男色ディーノの尻を、その角で貫いた凶悪兵器。
――――シーザー・カエサル・エンペラー
それはその勢いのまま、ディーノの尻を貫いたように、
ランサーの尻を貫いた。
「アッーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
◆
いい男は言いました。
ゲイボルグなんて飾りです。
男を掘るのにそんなものはいらないのです、と。
◆
真名開放を中断されたランサー。
そのまま槍は変則軌道を描きながら見当はずれの方向に飛んでいった。
「他愛なし」
そう呟いたハサン(ザイード人格)は、その飛んできた槍に頭も貫かれ一瞬でその意識を消し飛ばした。
宝具開放が不発に終わったランサー。しかしそれだけでは終わらない。
「勝利の剣(カリバー)―――――!!!」
迎撃のために宝具発動態勢にあったセイバーにそんなイレギュラーを受け止める余裕などあるはずもなく。
魔力は不十分とはいえ発動させられた聖剣は。
「ギャアアアアアアアアア!!!!!」
地面に墜落するランサーへと直撃。光と共にその姿を消し飛ばした。
「…これ、いいのかな?」
「………」
◆
「それで、どうするのよ。二次聖杯の>>1さんは」
「決まっている。私の始めた俺ロワは聖杯戦争がテーマなのです。
なればこそ、この場においても聖杯戦争をする。それが私のスタンスです」
ハサンとランサーの気配がなくなったことを確認したクロとセイバー。
しかし互いのスタンスもはっきりしていない以上、そのまますんなり合流とはいかなかった。
「じゃあ、やっぱり私もやるの?」
「…本来であればそうなるのでしょうが今は止めておきましょう。あの戦いでの消耗が激しい。
最も、そちらが戦いを望むというのであれば、話は別ですが」
その言葉を受けて、クロは剣を収める。
そうだ、自分のスタンスも別にマーダーだとか戦うだとかではないのだ。
それに対し、セイバーも聖剣を収めた。
「では、これで別れということになるのでしょうね」
「そうね。やっぱりあんたと一緒に行動していたら戦うことになりそうだけど、正直勝てる気はしないし」
そう言ってクロはガブリアスの背に乗る。
実際セイバーはもしかしたらまだ能力を持っている可能性もあるが未だにそれを晒してはいないのだ。
もし実は他の能力もあった、なんてオチなら笑えない。
「それじゃ、私は行かせてもらうけど最後に二つ。
早く帰ってきなさいよ。俺ロワスレは>>1がいるかいないかで議論の進み方が全然違うんだから」
「善処します。それにはまずこの書き手ロワから生還しないといけないのですが」
「それともう一つ。同じFateキャラの縁ということで――」
そう言うと同時、ガブリアスが飛び上がったところでBlack Linerはこう、最後に叫んだ。
「パラレルワールド・バトルロワイヤルをよろしく!」
◆
「……俺、まだ生きてるのか?」
黒焦げになりつつも仰向けになり呟く男。
他でもない、ランサーである。
彼が生き延びられた理由は二つ。
カジャとルーン魔法による耐久力の強化。
セイバーの宝具の魔力充填不足。
これらの要素によりどうにかあの一撃に耐え切ることができた。
「…ハハッ、何だかんだでツいてるじゃねえか。何が幸運Eだよ、何がランサーが死んだ!だよ。
ハハハハハハハハ!」
何だかんだで生存できたことに喜ぶランサー。
そうだ、まだこのランサーの、ペルソナの強さを見せる機会はたくさんあるのだ。
それを、二次聖杯戦争を越え他のロワ書き手にも示すのだ。
「まずは、しばらく休んでからゲイボルグを拾いにいかなきゃな」
「そうだね」
「…………………」
「…………………」
(ああ、やっぱり幸運値も上げておくべきだったなぁ―――)
サクッ
◆
「………」
もう生き返ることのないように心臓を引っ張り出したロリアサシン、ハサン。
グチャリ、と嫌な音を立ててそれを踏み潰すと、真っ赤な鮮血が飛び散った。
それを見つめながら今後のことを、彼女は考える。
妄想幻像(ザバーニーヤ)。
第四次アサシンの持っていた宝具。
多重人格の英霊を、一つの個とすることで一人の英霊として呼び出した秘密。
そしてこのランサーの命を奪った、そしてニコロワではゴンさんとあかりを仕留めたのもこの彼女なのだ。
とは言っても身体能力だけならただの少女でしかない。
優れているのは、他のハサンより1ランク高い気配遮断スキルのみ。おそらく本編で首輪を装着していなかったためだろう。
なればこそ、この妄想幻像を有効活用して生き残っていかなければならない。
ハサンの姿で呼ばれた以上、それ以外の選択肢はないのだから。
「妄想幻像(ザバーニーヤ)――」
発動させると同時、ロリアサシンの姿は消え去り。
そこに現れたのは、先に槍で貫かれた、ザイード人格。
その手の短剣がキラリと光り――
「他愛な――」
『あー、あー、マイクテストマイクテスト…』
『あたしは…対主催として行動しようと思ってます!』
「ム…?」
◆
『だけど、あたしひとりじゃ主催者を打倒することは出来ない…』
『だから…私と志を同じくする人は、街の中のE-5にいるから、集まってください!お願いします!』
「まさか拡声器イベントの分岐点に自分がいるとは思わなかったわ」
ガブリアスの足を止めさせ、その拡声器の声に聞き入るBlack Liner。
拡声器自体に秘められた言葉にはこれといって特徴があるものではない。
対主催宣言、仲間を集う呼びかけ。
書き手であればそれなりの力を持ったものもいるであろうし、マーダーに対応可能な者もいるのかもしれない。
ただ、パラロワ書き手としてどうしても気になってしまうことがある。
「そういえばマーダーが対主催をおびき寄せるために使用、なんて話を書いたの私なんだっけ」
他でもない、己のロワでの乱戦イベントのもう一方のきっかけを書いた書き手として、どうしてもその可能性を否定できなかった。
別にマーダーに襲われているなどといったこともなさそうだし、自分が行かなくても大丈夫ではあろう。あのジンクスも含めて一刻も早く離れるべきだ。
と、そう考える一方で心の中でささやくもう一つの声。
「でもなー、やっぱり人集まるんだろうなぁ。だったら宣伝に持ってこいなんだけどなぁ」
かつては一ヶ月ほどで50話を突破し、4ヶ月で一回目放送を迎えられるほどの勢いを持っていた自ロワ。
しかし今はそれほどの勢いなどない。それは仕方のないことなのだろう。序盤の勢いがずっと続くロワなどそうそうない。
ただ、最近は雑談スレの書き込みも減ってしまったように思う。これは読み手も減ってしまったということなのではないか。
あの頃を望むのは高望みだろうが、もっとたくさんの人にも読んでもらいたい。
だからもっと色んな人に伝えるのだ。自分の存在を、自分の所属ロワを。
拡声器イベントにまぎれれば多くの宣伝が行える可能性がある。
一方で、乱戦の中で死んでしまう可能性もある。死んでしまっては元も子もない。
さて、どうするべきか。
「あの二次聖杯の>>1さんなら、どうするんだろうね」
「ガゥ!」
【1日目・深夜/F-4 砂漠地帯】
【《始まりの剣》セイバー(◆.OpF6wOgZ2)@二次キャラ聖杯戦争】
【状態】魔力消費(小)、疲労(中)
【外見】アルトリア・ペンドラゴン@Fate/Stay night
【装備】エクスカリバー
【持物】基本支給品、不明支給品0~2(確認済み)
【思考】
基本:聖杯戦争を行う
1:聖杯戦争を勝ち抜く
2:スレへの復帰か…
[備考]
※氏の中での聖杯戦争の参加者認定基準は現時点では以下のようになっております
- Fateキャラの姿、あるいは能力を象った書き手
- 二人一組で行動している者(主従関係などにあればなお有力)
【ハサン・0uDu0SETOk(◆0uDu0SETOk)@ニコニコ動画バトルロワイアルγ】
【状態】魔力消費(小)
【外見】ハサン・サッバーハ@Fate/Zero
【装備】ハサンの短剣
【持物】基本支給品×2、シーザー・カエサル・エンペラー@ニコロワγ、不明支給品0~1(確認済み)、不明支給品0~2(未確認)
【思考】
基本:アサシンとして頑張る
1:他の参加者は無理をなるべくせずに殺す
2:何か声が聞こえるけどどうしよう
[備考]
※妄想幻像の発動においては、何故かザイード人格の呼び出しが優先されるようです
【1日目・深夜/E-4 市街地】
【Black Liner(◆Z9iNYeY9a2)@パラレルワールド・バトルロワイヤル】
【状態】魔力消耗(中)
【外見】クロエ・フォン・アインツベルン@:Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
【装備】ガブリアス@パラロワ
【持物】基本支給品、不明支給品0~2
【思考】
基本:パラロワをもっと色んな人に読んでもらうために宣伝する
1:そのために存在感アピール
2:拡声器イベントだけどどうしよう?
【《紅槍の仮面使い》ランサー(◆3gGiI31R5A)@二次キャラ聖杯戦争 死亡】
最終更新:2013年04月27日 00:15