「ふむ……まさか、私も呼ばれるとは」
グーを作り、パーを作り、体の機能を確かめる少年。
特徴的な白の学生服と、少し癖のある黒髪の彼は、多ジャンルバトルロワイアルの◆GvGzqHuQe.こと【魔人皇】ジーヴだ。
「もっとふさわしい書き手もいるだろうに、主催があの男だからか?」
投下が多いわけではない、序盤を支えたわけでもない。
そういった意味ではもっと別の書き手が出るべきだとは思う。
だが彼の手がけた終盤二作は、一人のキャラクターを大きく動かした。
今や、あのロワに無くてはならない重要なポジションのキャラと言える。
故に、彼もその姿なのだろう。
「まあ、どうでもいい……」
ため息を一つこぼし、頭をくしゃりと掻く。
どうでもいいと告げるのは、この書き手ロワに対してか。
それとも、自身の命についてか。
「ひとまずは、お前の相手をしなくてはいかんようだからな」
そのどちらでもない、が。
やらなければいけないことは、分かっている。
後ろからは、今にも襲いかかって来んとしている一人の緑髪の少女。
あどけなさの残る微笑みには、裏がある。
「ふっふ~ん、察しが良くって助かるぜ」
少女はにかっ、と笑うと戦いの構えを取る。
「デデデザタイムオブレトビューション」
戦いに入る前に、形式を整えていく。
ラウンドコール中は動かない、それは格闘ゲームの鉄則。
「デュエル 1」
それは、相手と同時に動き出すという平等さを作るため。
「デッサイ ダ」
武器を取り出すジーヴの姿を、少女――アークはじっと見つめている。
「デステニー」
そして、戦いの火蓋が落ちた。




見てくれは普通の少女。
自分のロワで例えればC.C.に少し似ているだろうか。
そんなことをふと考えながら、ジーヴはヴァイオリンを構える。
ただのヴァイオリンではない、魔人の持つ人殺しのヴァイオリン。
防具こそはないものの、機動力があるであろう相手に防具を着込むのも悪手と取れる。
だから、一本のヴァイオリンだけでいい。
飛びかかってくる少女に対し、淡々と無慈悲にヴァイオリンを振るう。
だが、アークは怯むことなく。
「南斗爆星波!!」
腕を交差させ、十字を切り裂く。
「なっ!?」
驚きはしたものの、弾速が遅かったのが幸いして素早く飛び退く事に成功する。
「チッ、中段飛び道具なんて格ゲーじゃチートクラスなんだが、それでもこんなに遅けりゃ意味無ぇか」
難なく着地をこなしながらも、少女は短く愚痴をこぼす。
「なんで、って顔してるなァ」
無表情を装っていても、ジーヴの顔には若干の焦りが生まれている。
もちろん、アークはそれを見逃さない。
「新安価ロワにおける鹿目まどか風アンリミテッド暁見ほむら誕生の経緯を知ってるか?」
ジーヴがアークを睨み続ける中、アークは笑いながら語る。
「まぁ、要するにこじつけだよ。
 筋道さえ通せば何にだってなれる、ゲームのバグって設定ってのはいいもんだなァ!!」
自ロワの情報、それは書き手ロワにおいて書き手の最大の武器になる。
そして、生み出した張本人である彼ならば、どんな事も出来る。
ましてや、その設定の根幹となったアンバーの姿なのだから。
「わかるか? つまりよぉー、こういう事も出来るンだよ!!」
ニヤニヤと少女の姿のまま笑っているアークが、突然高速で呪文を唱え始めた。
「アクセス→エピローグ「再始動」
 セレクト→エヌアイン完全世界
 チョイス→エヌアイン、およびブリッツガイスト」
目まぐるしく紡がれていく言葉とともに、アークの姿がアンバーから変わる。
金髪赤目、特徴的な青い服の少年に。
黄色い玉がふわりふわりと浮いている。
「アクセス→本編「そろそろ署名活動とかした方がいいよ」
 セレクト→戦国BASARAX
 チョイス→毛利元就」
続けてつぶやいた言葉とともに、アークの背後に無数の兵たちが集まる。
奇妙な月輪を手に、アークは駆ける。
エヌアイン完全世界において、エヌアインというキャラクターはなにもかもが高水準でそろっているいわゆる"強キャラ"だ。
それに、イカれ技であるブリッツガイストを加え、毛利の設置ガー不が加わる。
ジーヴが守りに入ったのを一瞬で崩し、雷球と共に殴りかかる。
「おいおい、ジーヴさんよぉ、最初の勢いはどこへやらだなぁ!?」
防戦一方、と言うよりは初狩りに近いほど、アークはジーヴをボコボコにしていく。
守りを固めればガード不能が、近寄って攻めに転じようにも雷球が。
どうしようもないとあぐねているジーヴを、アークはひたすらに殴り続ける。
地面をかけずるようなアッパーカットの後、ふわりと浮いてジーヴの体に連撃を加え、大振りの蹴りで地面に叩きつけていく。
吹き飛ぶジーヴの姿を見ながら、アークは笑う。
「そうだよ! 本編で1mmでも触れてもらえりゃ、この俺の力として扱うことが出来る!!」
金髪の少年から緑髪の少女へ、少女からまた別の姿へ。
声すらをも変えて、ジーヴへと笑いかけていく。
「まぁ、この俺は初狩りは趣味じゃない。さっさと終わらせてもらうぜ」
目つきが変わる。
本気で終わらせるつもりなのだと、ジーヴは悟る。
「アクセス→エピローグ「だがこの翌日には――」
 セレクト→吉村と村田
 チョイス→金化
 チョイス→ニセンイチローインストール
    ↑割り込み処理:両儀式」
呪文を紡いだ後、アークの"目の色"が変わった。
比喩的表現ではなく、そのものが本当に変わっていた。
「はははは!! 見える、見えるぜぇぇえ!!
 テメーの死線がよぉおお!!」
体勢を立て直そうとしていたジーヴに、アークは一気に詰め寄っていく。
防御態勢を取ろうとしたところで、アークのナイフがジーヴを切り裂いていく。
ゆっくりと崩れ落ちるジーヴ。
「……命は投げ捨てるものではない。なーんてな」
勝ち誇った表情を浮かべ、アークはその場を立ち去っていく。



「その通りだ」
呼び止めるのは、ほかでもないジーヴの声。
振り返れば紛れもなく狭間偉出夫……いや、ジーヴの姿がある。
あり得ない、と思いながらも再びナイフを構える。
「ありがとう、A"OS"IMA」
何かをつぶやくジーヴの気配は、明らかに先ほどのものとは変わっていた。
ジーヴの後ろには、まるで学生服の男がいるような感覚を覚える。
「ロワのギミックとロワ参加の原作をリスペクト、さらにクロスオーバー。
 ……使わせてもらった、貴様が格闘ゲームを武器に戦うのならば、私はRPGを武器に戦う」
真・女神転生if...において、ゲームオーバーは存在しない。
主人公やパートナーが死んでも、天界から悪魔の力を宿し戻ってくる。(詳しい説明は省略)
今回はガーディアンとして、もう一人の自分◆OS/EHl54Zkをその体に宿したのだ。
彼が、たった一話だけ書いていた登場話の人物、蒼嶋の姿を借りたそれを。
そして、ジーヴは突然無数の香を焚き始める。
さらに飴玉を一気に四つ口に放り込み、アークを見据えていく。
よく見れば装備もプレイヤーの中ではもっぱら最強と名高い八束の剣。
さらに防具はドルフィンヘルム、髑髏の稽古着、復讐の小手と通称"三種の神器"でそろっている。
なぜ、瞬時にそこまでのアイテムを揃えることができたのか?
ジーヴはゆっくりと口を開く。
「きずぐすりというのは序盤しか使われないアイテムだ。
 だが――――数が多ければ話は別だ」
彼の支給品は傷薬の9個1セットが32セットほど。
序盤でしか使えない回復アイテムも、真・女神転生if...初期ロットを知る彼ならば上手に扱える。
"アイテム生成バグ"、詳しくは省くがアイテムを限界まで所持しているとアタックナイフが登場する。
アイテムのIDと個数の入れ替えを繰り返していくうちに、任意のアイテムを生み出していく恐るべきバグ技だ。
「はっ、そういうことかよ」
早めに止めを刺さなければ、そう思いアークは再びナイフを握りしめる。
生半可な力では、彼は倒せないと認識を改める。
「しかし……これだけでは原作のバグを用いただけだ。
 パロロワにおいての醍醐味、クロスオーバーをしなくてはな」
手を繰り返し握っては開きを繰り返し、ジーヴは軽く足踏みをする。
そしてふうっ、と一気に一息つき。

「変身」
構えを取ると同時に、ジーヴの体が七色に光り輝いた。
光の中から現れたのは、仮面の騎士。
自由の女神のような姿の"魔神皇"としての狭間偉出夫を象ったかのような、そんな姿。
さらに横に立つのはアルター"駿朔"。
ガーディアンとして憑依した◆OS/EHl54Zkを触媒にすることでアルターを生成していく。
それに投げてよこすのはLAWを司るジーザス装備一式とヒノカグヅチ。
値上の最強装備を、アルターに明け渡していく。
「正直、三話しか書いていない私がif以外のネタを使うのは気が引けるが……貴様が"なんでもあり"ならそうするしかないだろう」
アークのファイトスタイルは"何でもあり"。
ならば、自分も何でもありになるしかない。
原作とクロスオーバーで、なんとか戦力を増強していく。
「ストリートファイターZEROシリーズ的に言えば、ドラマティックバトル、だな」
「アーク製品で言やぁ、ギルティイスカだけどな」
「一理ある」
「まぁ、勝つのは俺だがな!!」
飛び出していくアークと、それに反応するジーヴ。
金カラーの影響で超速を手にしているアークと、ラスタキャンディによって加速したジーヴ。
二人の戦いは目で追うことなど出来はしない。
鳴り響く音と、巻き起こる爆発だけが、戦闘が起こっているということを教えてくれる。
「ぐっ!!」
吹き飛ぶジーヴの姿が一瞬見え、すぐに消える。
「ぬあっ!!」
吹き飛ぶアークの姿が一瞬見え、すぐに消える。
2vs1という不利の状況でも、対等に渡り合えているのはアークのなんでもありがそれだけ猛威を振るっているということ。
肉弾メインでゴリゴリと殴りかかる◆OS/EHl54Zkを援護するように魔法を打ち、アークはそれを正面から張っていく。
防禦など微塵もなく、ただただ殴りあう二人。
「埒があかねえなぁ」
「同感だ」
両者消耗は激しく、ふつうならば立っているのがやっとのほどだ。
それでも、ニヤリと二人は笑う。
「だから、一点に集中させてもらう」
ジーヴが右手を掲げると同時に、◆OS/EHl54Zkが再び粒子となりジーヴの右手に集まっていく。
ifを破壊する槌、イフブレイカーへと"Alter"していく。
「上等じゃねぇか」
アークはその構えを見て。
なんと、両手を広げた。
「来いよ、テメぇの全部で俺を倒して見せろ」
ニヤリ、と少女の姿のまま、笑顔を崩さない。
アクセスにアクセスを重ね、今のアークの姿は"竜宮レナ"である。
アンバーで読みとったジーヴの人となりから、この姿でいるのが最適だと判断したからである。
Wikiから事典へアクセスし……と難解な経路をたどったから少し時間はかかったものの、手に入れることはできた。
「最高、最速、最加速!!」
そして、何よりもアークには切り札がある。
ジーヴが全力を出せば出すほど強力になる、最後の切り札が。
最高速度に達したジーヴの拳が、アークの胸に深く突き刺さる。
がふり、と血を吐いたアークは。
「残念だったな」
笑いながら、そう言った。



                          -紡がれし光の波動- インフィニティ・リヴァイヴァー


.

「はははははは!! 致死に至る攻撃なんぞ、全て、無意味よ!」
光に包まれた世界の中、アークは笑う。
必中必殺のカウンター秘奥義、それを発動させることでジーヴの攻撃を無力化したのだ。
まさかここまで引きずり出されるとは思っていなかったが、結果として勝利したのだから、問題ない。
ただ一つ、わからないことがあるとすれば。
「にしても、ここはどこだ?」
ここがどこかわからないと言うこと。
極光術によって齎された光にしては、長すぎる。
いつまでたっても白が落ちないのだ。
「知りたいか」
後ろからするのは、先ほどまで聞いていた声。
「ここは、私の精神世界だ」
先ほどまで聞いていたのと同じ声、つまり目の前の男はジーヴということ。
胎児に繋がっているかのような姿になっているが、そういうことなのだろう。
「第三ラウンド、ってことか」
把握したことを飲み込み、そのまま言葉にしていく。
「そういうことだな……だが」
少し顔を伏せてから、ジーヴはニヤリと笑い。
「最終ラウンドだ」
アークへと、告げていく。
「言ってろよ!」
ニヤリと笑ったジーヴの顔が気に食わなかったのか、アークは初めて不快そうな顔で拳を掲げた。

だが。
「……あら?」
何も起きない。
「アクセス、アクセス、アクセス!!」
どれだけ叫んでも、どれだけ繋ごうとしても。
何も、起きやしない。
「ここは、私の世界だ」
そう、この世界は狭間偉出夫、ないしその姿を借りているジーヴの世界。
ジーヴの数少ない思い出と、記憶だけが刻まれている。
「どれだけ繋ごうとも、貴様が頼りにしていた"原作"と"自ロワ"には繋がらん」
だから、アークが繋いでいた電脳世界にはアクセスできない。
「そして、貴様はここで終わる」
淡々と語りを続けるジーヴは、あるものを取り出した。
「私の精神世界を、私の手で壊すからな」
それは、スーパーファミコンのアダプター。
アークは、ジーヴが何を考えているのか、全くわからなかった。

もし、もしだ。
精神世界における、その本人の精神体が消え去ってしまったら。
そこに取り残された存在はどうなるのだろう?
真・女神転生if...の玲子ルートで。
取り残された赤根沢玲子は、どうなったのだろう。

ジーヴは、それを知らない。
自己流の解釈はあっても、公式見解はない。
ただ、起こった事実を知っているだけ。

でも、それは。
致死の攻撃すら飲み込む目の前の男を、闇に葬り去れる唯一の手段であるということが、わかる。
「永遠に、さまようがいい」
ジーヴは、まっすぐにアークを見据えながら。
スーパーファミコンのアダプターの、本体接続部を。
迷うことなく一気に耳に押し込んだ。
「――――待て、待てよぉぉぉぉぉっ!!」
アークが叫ぶ、ジーヴにすがりつこうとする。
これから起こる何かが、大変なことだということはわかるから。
「悪いが聞こえない」
ジーヴは告げる。
耳の奥の方まで本体接続部を押し込みながら。
「耳にアダプターが刺さっていてな」
そして手元に残ったコンセント部分を握りしめ。
端子部分に手を当てる。



ー>quit

Shut Down?(y/n)

y

「ジオダイン」

Bye...

【【魔人皇】ジーヴ(◆GvGzqHuQe.)@多ジャンルバトルロワイアル 死亡】
【oub×アーク(◆oub/vvrBRg)@新安価ロワイアル 死亡】

054:未来新生/チェンジ・フューチャー・フェイト ◆時系列順に読む 056:欲望と絆と集う書き手達
054:未来新生/チェンジ・フューチャー・フェイト ◆投下順に読む 056:欲望と絆と集う書き手達
【魔人皇】ジーヴ 死亡
oub×アーク 死亡

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最終更新:2013年04月25日 16:05