星なき闇の世界に一人の男が漂っていた。
彼の名は◆MiRaiTlHUI。
平成ライダーロワの書き手であり、仮面ライダー、否、変身ヒーローや変身ヒロインが関わるロワにて広く名を知られた存在である。

「う~ん……」

そんな彼だが名の知れた書き手の割りにはどこか心細そうな顔つきだった。
殺し合いに拉致されたから、でもない。
いきなり宇宙に放り出されたから、でもない。
そもそも彼が今いるB-2は宇宙空間と言えども所詮は擬似。
生身でも息することもできるし凍死もしない。
主催者も宇宙空間を本格的に再現してしまっては、モバマスロワなどの一般人よりの書き手が詰んでしまうと理解している。
ようはちょっとすごい無重力空間みたいなものだ。

まあ、もしここが本物の宇宙空間でも、今の◆MiRaiTlHUIなら、平気で生存できるかもしれないのだが。
つまるところ、それが彼を悩ませているものの正体の一つである。

「パロロワメモリかあ。これ、いったいどのくらいまでガイアメモリに準拠してるんだろ」

平成ライダーロワには仮面ライダーWも参加している以上、彼はガイアメモリにも詳しい。
ガイアメモリ――地球の記憶がプログラムされたUSBメモリ型アイテム。
使用したいメモリに応じて専用のコネクタ手術を行い、コネクタからメモリを体内に挿入することでドーパントという一種の怪人に変身できる。
だが、拒否反応や、精神のみのドーパント化、メモリとの適合率が高すぎると変身を解除しても体外に排出されないなど問題も多い。
また、その力ゆえ、メモリには精神を侵す毒素があり、使用者は多くの場合汚染によってエゴが増幅され、自らを制御出来なくなる。
メモリの障害を取り除くにはライダーのマキシマムドライブ等でメモリブレイクをしなければならない。
その際使用者には軽くやつれたり、ひどい場合は記憶喪失などの後遺症が残るほか、死亡する場合もある。
変身ベルトさえあれば、汚染なしに強力なドーパントへ変身することも可能なのだが……。

「まあ、実際はそこまで準拠はしてないんだろけど」

別に事態を楽観視しているわけではない。
誰よりもガイアメモリの功罪を知っている彼だ、パロロワメモリが怖くないといえば嘘になる。
とはいえ、ここは平成ライダーロワでもなければオーズロワでもなく、また変身ロワでもない。
書き手ロワなのだ。
仮面ライダーWという一部のロワでしか登場していない作品の一要素をそこまで前に出しはしないだろう。
主催者がパロロワ関係者なら、なおさら、一部のロワの書き手にだけ、開始時点から有利に働くようにはするまい。

これはあくまでも、ガイアメモリに似た何物か。
ぶっちゃけてしまえば、書き手にキャラの外見と能力を与えるためだけの理屈付けの道具として考えるべきだ。

「ただ、それでも、このパロロワメモリを考えるにあたって、ガイアメモリを糸口にすることはできるんだよね」

◆MiRaiTlHUIは考察を続ける。
彼は手に汗握るバトルや熱い展開が目立つ書き手だが、志村純一のように裏から暗躍する存在を描くのも得意としている。
考察だってお手のものなのだ。
それにそもそもリレー企画における考察とは、真実を見極めるというよりも、こういう設定はどうでしょうと提案する面が強い。
早めに考察しておけば、それだけ、真実としても採用されやすく、メモリへの対処へと繋げられるのだ。

「まずはパロロワメモリとガイアメモリとの予想できる相違点だね」

ガイアメモリを書き手ロワという企画に適応させるとして、改変が入りそうな要素はいくつかある。
一つは、使い回しが効くかどうかだろう。
ガイエアメモリは、相性こそあれど、基本誰でも使用出来るし、使い回しも可能だ。
しかし、書き手ロワではそうはいくまい。
魔改造や誰でもライダーといった風潮が受け入れられにくいというのもあるだろうが、それ以前の問題だ。
このメモリに詰まっているのは地球の記憶ならぬそれぞれの書き手の記憶だ。
他人のメモリを取り込んだ所で、それは自分の作品ではない。
というか、他人の作品をリレーするならともかく、そっくり使ってしまうなど書き手として論外だ。
主催者もそんなことは許さないだろうし、そもそも、取り外し不可だと断言している。
まず間違いなく、このパロロワメモリは、各人専用の装備である。
まあオーズロワでの自分や、変身ロワでの自分のように、別ロワ所属でも、同一の書き手なら使用可能かもしれないが。
ちなみに、自分はオーズロワや変身ロワでも書いてきたはずだが、メモリに込められているのが平成ライダーでの記憶だけだからかイマイチはっきり覚えていない。

次に、そのことと関係してだが、このメモリは、原作で言うところのメモリブレイクは不可能だろう。
仮面ライダーWでは、マキシマムブレイクといういわば必殺技でなら使用者を殺さずに、体内のメモリだけを破壊することができる。
一部メモリは破壊不可だが、それでも体外へと排出させることは可能だ。
が、その一部が厄介だ。
強力なメモリの過剰使用・改造したメモリの使用・複数のメモリの兼用など、正規では無い用法を行った者は生命を脅かされる場合があるのだ。
パロロワメモリは言うまでもなく、改造メモリである。
首輪の役目も果たす以上、恐らく、マキシマムブレイク相当の必殺技が直撃すれば、マスカレイド・ドーパント用の物同様、使用者ごと爆発する仕組みだろう。
そうでない可能性もなきにしもあらずだが、確証も持てないのに、必殺技を自他に放つのは余りにもリスキーだ。

ぱっと思いつく相違点はこんな所だろう。
◆MiRaiTlHUIは自分が死んでも誰かに伝わるよう、メモに書き残すと考察を続ける。

「じゃあ共通点の方はっと」

一つ目は言うまでもなく、変身能力だ。
今の自分達は常に変身した状態であり、超常的な力が備わってる者も多いとおもわれる。
込められているのが自分たちが書いてきた物語である以上、全員が全員、相性が良すぎてメモリの記憶を通常よりも余計に引き出せてしまうはずだ。
原作ではそのような存在のことを過剰適応者というように、それは何しもいいことばかりではない。
ガイアメモリは適合率が高かったり使用を重ねると次第に強力になっていくが、それは同時に精神汚染の深化を意味する。
メモリには精神を侵す毒素があり、使用者は多くの場合汚染によってエゴが増幅され、自らを制御出来なくなってしまうのだ。
フィルターとなるベルトがあれば別だが、自分たちはベルトどころか専用のコネクタ手術をされることもなく、メモリと一体化させられてしまった。
間違いなく、精神汚染は侵攻中だ。断言してもいい。

何故ならば、ただの人間のはずの自分が、拉致誘拐され、殺し合いに巻き込まれておきながら、こうして冷静に考察できているこの状況こそ、異常だからだ。
まるで仮面ライダーWにおける二人の探偵のように。
自分たちが描いてきた物語の人物のように。

多分だが、このパロロワメモリは自分たちを人間ではなく、“書き手”という“物語の登場人物”へと“書き換えていく”道具なのだ。
毒素により書き手としてのエゴを増幅された自分たちは、自ロワを完結させるためなら、或いは書き手としての信念を貫くためなら、人殺しも厭わなくなる。
そうならなくとも、次第に違和感を感じることもなく、対主催として行動したり、敬愛する書き手のために命を差し出したりするようになってしまうのだ。

流石に原作のように、汚染の果てや、進化に追いつけずに死亡してしまうことは、主催者も望まぬことだろうからないとは思うが……。
いや、むしろ、この書き手ロワが停滞した時には、全員が全員汚染が侵攻しきって全滅しましたという打ち切りエンドが投下されるかもしれない。

……そんなのは、嫌だ。

「君も、こんな想いだったのかな」

◆MiRaiTlHUIは自らの身体へと話しかける。
パロロワメモリにより変じた今の彼の身体は、一見仮面ライダーカブトの主人公である天道総司のものだ。
しかし、これが◆MiRaiTlHUIの記憶が再生されたものである以上、実際は天道ではなく、擬態天道のものだろう。
擬態天道――通称からも伺えるように、そのキャラクターは、度重なる人体実験の結果ネイティブと化した元人間であった。
勝手に身体を改造され、天の道をゆく男の贋作にされ、けれどももう、“天道総司”という与えられた存在にすがるしかなかった一人の男。
その姿を模している今の自分は、言ってしまえば、贋作の贋作だ。
主催者もまたそうであることを望んで彼をこの姿にしたのかもしれない。
彼が描いた擬態天道のように、世界に絶望し、唯一無二の“天道総司”になるために数多の命を奪った、あの男と同じ道を辿ることを期待して。

ああ、確かに、原作通りなら、今の自分の正体は人間ではなくて、そのことに恐怖も憎しみもないと言えば嘘だけど。

「僕は――俺は――オレは嫌だよ」

そんな期待は願い下げだ。
リレーとは確かに誰かと期待に応えるものではあるが、しかし、それは望まれるままの作品を繋げることではない。
紡がれた物語を継ぎ、それでいて期待を超えてこそ、書き手ではないか。
自分は物語を書く機械ではない。人間だ、人間なのだ。
誰の贋作でも、偽物でも、ない!

「だから変えさせてもらうよ、主催者。君の思惑も、俺自身も」

◆MiRaiTlHUIという書き手は、マーダー、対主催問わず、多くのキャラクターたちを“変身”させてきた。
擬態天道を天道総司の贋作ではなく、天道総司という天の道を継ぐ一人の仮面ライダーとして覚醒させた。
全てを喪ったキングに王としての風格を取り戻させ、その彼から王を襲名した紅渡に世界を救う決意をさせた。
ゴ・ガドル・バに仮面ライダーに興味を抱かせ、仮面ライダーの宿敵であることを誇りとして散らせた。

変わること。変えること。変われること。変身すること。
それこそが、◆MiRaiTlHUIという書き手が描いて来た“未来への系譜”。
彼の、◆MiRaiTlHUIのリレー創作でパロロワなのだ。

「オレの名前は◆MiRaiTlHUI――未来への系譜。天の道を往き、全てを司る男を継ぐ者を描いた書き手――またの名を、仮面ライダーミライ」

そうして男は、主催者に、外見を、種族を変えられた男は。
俺――天道総司でも、僕――天道総司の名を借りた男でもない、一人称と口上に自らを変えて、天に仇なすことを声高らかに宣言する!

「繋いでやるよ。変えてやるよ。この書き手ロワの、未来を!」


【1日目・深夜/B-2 擬似宇宙空間】
【未来への系譜/仮面ライダーミライ(◆MiRaiTlHUI)@平成ライダーロワ】
【状態】健康、一人称“オレ”
【外見】天の道を往き、全てを司る男を継ぐ者@平成ライダーロワ
【装備】無し
【持物】不明支給品1~3、パロロワメモリについての考察メモ
【思考】基本:主催者の思惑も、変えられてしまった自分自身も、自分の手で変えてみせる
1:未来を変えるためにも主催者の思惑を探りたい
2:爆弾機能もだが、メモリによる精神汚染もどうにかしたい

※パロロワメモリについての考察・体感まとめ
  • 使い回し不可。ただし同じトリップなどの同一の書き手なら、別ロワ所属でも使いまわせるかも。ただし別ロワの記憶は曖昧になっている
  • マキシマムブレイクなどの必殺技によるメモリブレイク、強制排出不可。適合者死亡時に共に消滅
  • 強度の精神汚染あり。書き手としてのエゴや信念に飲み込まれがちに。一般人離れした物語の登場人物のような精神状態に
  • 過剰適合により、チート能力を使えうる反面、使えば使うほど、精神汚染及びメモリの一体化・強化が進行
 ある種、書き手たちは常時キャラクターへと変身状態なため特殊能力を使わないでも徐々に汚染は進行

053:バブルヘッドは弾けない ◆時系列順に読む 055:ゲームは一日一時間
053:バブルヘッドは弾けない ◆投下順に読む 055:ゲームは一日一時間
未来への系譜/仮面ライダーミライ 060:When They Cry

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最終更新:2013年04月25日 15:45