ゆらり、ゆらり。

肉の腐りつつあるその体を大きく揺らし。

ふらり、ふらり。

今にも崩れてしまいそうな覚束無い足取りで。

そいつは、向かっていた。

白濁とした眼球の中に。

混濁とした意識の中に。

獲物を捉えていた。

殺意を芽生えさせていた。

あの姿を一目見た時から、抑えきれない激情がそいつを包んでいた。

――――殺さなくてはならない。

本能がそう告げる。

理由は、遥か遠く、曖昧な記憶の中。

ぴちゃり、ぴちゃり。

腐った体液を滴り落とし。

ずるり、ずるり。

地面に擦れる足の肉を撒き散らし。

そいつは、獲物のすぐ側まで迫っていた。

歓喜か。単なる反射か。

唸り声とも吐息とも付かぬ音が喉から漏れた。

獲物はそこで振り返り、恐怖で顔を引きつらせた。









「う、わああああああああああああああああーーーーーーーー!!!!????????」

ゾンビ。振り返れば、そうとしか言いようのない姿形をした人間がすぐ後ろに立っていた。
そいつの姿を見た途端トラウマが蘇る。それはもう鮮明に蘇る。弾かれる様に日野様は後ろに跳んでいた。

「なななななんだ、あんたはぁ!? まさかホラゲロワの誰かか!?」

それは呼吸なのか。不気味に喉から音を鳴らすそのゾンビは、答えるでもなくただ一歩を踏み出した。
これは書き手ロワ。クリーチャーなどいるはずはない。
なら考えられる事はこのゾンビがホラゲロワ書き手の誰かという事なのだが、こんなキャラクターはホラゲロワにはいないはずだ。
金髪で短髪。白人。生前は端正なマスクをしていただろう事も伺える。
強いて言うならバイオハザードのレオン・S・ケネディに似ているが、目の前のゾンビの体格はゆうに190cmを超えている。レオンはそんなにごつくはない。
だったら他ロワ出典のゾンビなのだろうか。パロロワメモリの影響で他ロワの事はよく分からなくなってしまっているが、その可能性は充分にあると言える。

「ち、違うのか? ホラゲロワ書き手じゃないのはいいけど、何で最初のエンカウントがこんなやつなんだよ……」

じりじりと迫るゾンビに押される様に日野様は下がる。
怖い。ぶっちゃけクリーチャーなんてもうごめんだ。マーダーだっていいからせめて話の通じる人間に出会いたい。
俺はロワがやりたいんだよ! ロワをやらせてくれよ! そんな思いすら込み上げてくる。
そしてその思いは段々と怒りに変わっていく。

「もう……頭来たぞ」

日野様のメガネがキラリと光った。
いやむしろこれはチャンスなんじゃないか?
トラウマを克服し、汚名を返上し、日野様の格を取り戻すチャンスが早々に訪れたと解釈すべきなんじゃないか?
考えてみれば相手はたかがゾンビ1匹。恐れることはない。
事実ホラゲロワでも日野様はゾンビを1匹解体していた。
しかしそれが日野様の最後の“かっこいい方面での活躍”となってしまっていたのもまた事実。(まあその話のメインは別参加者に日野様がボコボコにされる展開だったが)
だから、あの時からやり直すのだ。かっこいい日野様をやり直すチャンスが与えられたのだ。
手刀だって原作仕様なのか、ホラゲロワ仕様なのか、のろまなゾンビ相手ならそれを試す事も簡単に出来る。

「…………ヒヒ……」

こいつも解体してやる。

「ヒッ…ヒヒヒヒッ……!」

いつもの笑いと共にゾンビに跳びかかった。
手刀を構え狙うのは、狙って下さいと言わんばかりに黒線のタトゥーが刻まれたその首筋!

「ヒャーハッハッハッハッハッハッ――――――――――カハッ!」

振るった手刀は首の前を通過していた。
届かなかった。
裏腹に、腹部にめり込んでいたのはゾンビの丸太のような足。
目にも留まらぬ凄まじい速さの蹴りが、先に日野様の腹部に届いていたのだ。
吐き気を覚える暇もなく、血反吐混じりの涎と鏡石が1つ、口の中から吐き出される。
そして体は数十メートルも後ろまで吹っ飛ばされていく。

「な…………んで…………。ゾン……ビ……だろ…………?」

日野様は知る由もない。
そのゾンビが何処の誰なのか。その書き手が誰なのか。
そのゾンビはクリフ・フィッター。
とある世界の天才屍霊術師レザード・ヴァレスの屍霊術によりゾンビ化した、地球人とは比較にならない身体能力を持つクラウストロ人だ。
簡潔に言ってしまえば、日野様の知るゾンビとはスペックが桁外れの存在なのだ。

そして吐き出された鏡石はゾンビの顔に付着し、効力は発動する。
地球人とは比較にならない身体能力を持つ故に、鏡石の効力も劇的に変わる。
地球人である日野様ならば一度死んでから鏡石が発動するまではホラゲロワ仕様により数分のタイムラグがある。再生も2時間はかかる。
しかし地球人を遥かに凌駕するクラウストロ人の身体能力や再生力ならばどちらも数秒の事!

「あん……俺は……」

自分を取り戻したクラウストロ人は、地面に横たわる日野様を見つけると、何かを悟った様に大きく頷いた。
――――殺さなくてはならない。
本能がそう告げる。
理由は、遥か遠く、曖昧な記憶の中。
彼はAAAロワ書き手、◆cAkzNuGcZQ。キャラクターボイスは東地宏樹。
同時にホラゲロワ書き手でもある故に、日野様は殺さなくては気が済まない本能がある!
そしてホラゲロワ書き手でもある故に、鏡石には充分の警戒を払う本能がある! その面倒臭さも骨身にしみて理解している!

◆cAkzNuGcZQは腰を落とす。そして左腕に闘気を溜め始める。

「あいつがあの眼鏡野郎だってんなら……」

日野様の姿は横たわるままだ。だが容赦をする気はない。
辺りの空気が闘気に呼応し、まるで呼吸しているかのような音を立てている。

「こいつで終わりにしてやるぜ!」

この技を選んだのは、一気に終わらせる為。
◆cAkzNuGcZQの左腕が輝きだす。

「てめえの顔も見飽きたぜぇーーーーーーー!」

AAAロワの別キャラの決め台詞まで飛び出した!
でも同じ東地ボイスキャラだから許される事!
つか言いたくなっても仕方がない!

「や、やめ――――」
『マックス・エクステンションッ!!!!!!!!!!』

日野様に向かって果てしなく巨大な光弾が撃ち出された。

「ぐ、が……」

そして日野様は、ここで輝いた。
輝きの中でその肉体も、剥き出しとなった鏡石も消滅し、後に残るものは何もなかった。




【日野様がまだ生きておられる(◆hr2E79FCuo)@ホラゲロワ 日野様がもう死んでおられる】
【ホラーゲームバトルロワイアル 全滅だって言ってんだろ!】


バン
                                           総合評価 Dクラス
                                        ――――――――――――
                                        特別編 書き手ロワ 完





「んで……何が起きてやがんだっけ?」





【1日目・黎明/F-4 マンモス校グラウンド】
【キャラクターボイスは東地宏樹(◆cAkzNuGcZQ)@AAAロワ】
【状態】健康
【外見】クリフ・フィッター@AAAロワ
【装備】無し
【持物】不明
【思考】基本:現状を把握したい
1:何が起きてやがんだっけ?
※能力不明


※鏡石は発動の間もなく全て消滅しました。

063:G-2遊園地 書き手式庭球決戦!! ◆時系列順に読む 065:モバマスロワ勢だからね、仕方ないね
063:G-2遊園地 書き手式庭球決戦!! ◆投下順に読む 065:モバマスロワ勢だからね、仕方ないね
062:101回目のリバイバル 日野様がまだ生きておられる 死亡
キャラクターボイスは東地宏樹 :[[]]

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最終更新:2013年04月26日 20:07