-ホラゲロワ書き手が全滅してちょっと経ってから。

「あれっ…なんで俺生きてんだろう…?さっき恐竜に噛まれたはずだよな…」
 乾いた血溜まりの中から起き上がるのはホロゲロワの書き手◆hr2E79FCuoである。
「夢…じゃなかったみたいだなあ…」
 周りを見渡して現状を理解する。
「くっそ…まさかいきなり殺されるなんてなあ…。まあ、死体にもちゃんとメモリを刺してくれてありがた…」
 くはない。
 彼は自分の姿を確認した後、閉口した。
「確かに俺はどのキャラも一度しか書いてないからこれといって思い浮かぶキャラも無いかもしれないけど…だからって…こんなのあんまりじゃないか!」
 彼の変身した姿は日野貞夫。
 ホラゲロワにおける彼の扱いの悪さは読んだ者ならばわかるだろうが、結構酷い。
「まあね…一回死んだのに蘇ってる時点でなんとなくわかってはいたけどさ…」
 ため息を吐きながら自分の置かれている立場を考える。
 今の自分はあの『ホラゲロワの日野様』である。
 ロワという舞台に適応しながらも恐ろしい怪物たちによって

また日野様が死んでおられる。

 とネタにされてしまったあの日野なのだ。
 いわば生まれた瞬間に敗北が確定しているようなものだ。
 通常ならばそもそも開幕前に敗北しているのだが。
「いやあ…当然だけど復活できても死ぬのって痛いんだなあ…」
 日野の蘇生アイテムとして登場した鏡石は死後に機能する物なので死の瞬間は普通の人間と変わらないのだ。
「いきなりこのザマだもんな…このままだと◆hr2E79FCuoがまた死んでおられるって言われちゃうよな…」
 開幕する前から見せしめとしての死亡。しかも恐竜による丸かじり。
 ホラゲロワ本編に負けず劣らずのこの扱い。このままいくとどうなるか、ホラゲロワを読んだことのある人間ならば少し考えれば想像できる。
 書き手である彼ならばもはや考える必要も無い。
「どうしてこんなロワに出なきゃならないのかなあ…」
 ちなみに、また死んでおられた(一度目)彼がルールを知っているのにはちゃんと理由がある。
 ティラノにガブリといかれた彼の死体はサイレントヒル的な不思議な力だか堕辰子的な神通力だかわからないけどとにかくすごい力でF-4のマンモス校の一室に飛ばされた。
 そして復活するまで放置されていたのだが、その際に流れた彼の血によってホラゲ的な血文字によってルールが記されていたのだ。
 誰が血文字を書いたのかわからないがホラゲとはそういうものだ。
「趣味が悪すぎるんだよなあ…」
 血文字も、自分の状況も。
 ついでにクリーチャーが暴れすぎなホラゲロワも。

「そうだよ…あんなことになるはずじゃなかったんだ…。俺は、また死んでおられるなんて言われるために鏡石を持たせたわけじゃない…そうだ…!きっと…」
 クリーチャーやらなんやらのためにホラゲロワにおいてほとんどネタキャラとなってしまった日野だが、その能力は低くない。
 むしろ殺人クラブの日野として登場しているため人間としては高すぎるくらいの力はある。殺人クラブの部長は、手刀で人を切ることができるのだから。
「きっと今、俺がここで輝くためにあの石を登場させたんだ!」
 死ななきゃ安いを地でいくロワにおいて、鏡石という残機システムは圧倒的なアドバンテージとなる。
 手元に無いため正確な数はわからないがおそらく自分が書いたとおり鏡石は13個。いや、一つ使ったから後12個あるはずだ。
 その分復活ができるということになる。威力が高すぎて一撃で5回死ぬ、なんてオーバーキルも無い。
 手元に無いならどこにあるのかと言われれば、おそらく腹の中だろう。なぜならやたらと腹がごろごろしているからだ。
 なぜ腹の中にあるのかと言われれば…日野が蛇の腹の中に入ってしまったのが悔しかったからだろう。難しいことは無しだ。
「何度か復活できるからと言っても気をつけないといけないな…」
 彼は自分の書いた日野を思い出す。
 彼の話の中で、日野は蘇るたびに死への恐怖が強まっていた。日野でありながらマーダーとしての活躍ではなく、汚名返上の為の活躍を望んでいるのもその恐怖から来る物だろう。
 その日野のメモリである以上、彼もまた死ねば死ぬほど恐怖に支配されるだろう。
 メモリを刺されただけの普通の人間ならば尚更だ。
 しかしこの場で輝き、また死んでおられる様を返上するためにはその恐怖を乗り越える必要があるのも事実だ。
「ならやるしかないよな」
 そして彼は日野であることにもう一つのメリットを感じていた。
 それは演技力である。
 殺人クラブの部長でありながら、原作では頼れる…か、どうかはわからないが主人公の所属する新聞部の部長としてその異常性を隠していた。
 ホラゲロワにおいても相手が世間知らずだったとはいえ自分の本性を隠しながら接近している。
 彼には善人を演じるだけの演技力があるのだ。
 演技はどこまで行こうと演技だが、通すことができればそれが全てになる。
 普通の高校三年生日野貞夫のメモリを持つ◆hr2E79FCuoを演じきったとき、彼は『ホラゲロワの日野様』の悲劇を回避することができるかもしれない。
 原作の舞台に近い存在である、このマンモス校に飛ばされたのもきっとそれを暗示しているのだろう。
 そして彼はまだ気づいていないが、彼がホラゲロワにおいて投稿した八尾比沙子の幻視や雛咲真冬の持つ霊に関する能力も得ている。
 気づいたところでおよそ戦闘には向かない能力だが、気づいたとき彼の危機回避能力。それがもたらす生存力は桁外れのものとなるだろう。
 はっきり言って『ホラゲロワの日野様』を割り当てられながらいい目に会える気はしない。
 だとしてもやらなければならない。やればやるだけ、痛いのを回避できるのだから。
「そうだ、あらかじめホラゲロワっぽい人には気をつけないとな」
 少し失礼に思われるかもしれないが、『ホラゲロワの日野様』の姿をしている以上彼が同僚のホラゲロワ書き手たちを警戒するのは残念ながら当然である。
 また日野様が死んでおられる。を繰り返すわけにはいかないのだ。
 特にシザーマンがいようものなら死んでは蘇り…を繰り返す自分の体はまるでプラナリアのように遊ばれてしまうに違いない。
「誰が敵かわからないのがロワだけど、彼らには特別注意しておきたいね」


 もっとも、◆hr2E79FCuoが知らないだけで他のホラゲロワ書き手は全滅しているのだが。
「やれるはずだ…俺には死ぬだけの痛みと引き換えに、失敗から学習できるチャンスがあるんだから!」
 彼は歩き始めた。
 もはや呪われていると言える『ホラゲロワの日野様』の運命を超え、日野という名前のように暗い野原を照らす太陽のように輝くために。
 殺人鬼の体に、主人公のような決意を宿しながら。


【1日目・黎明/F-4 マンモス校】
【日野様がまだ生きておられる(◆hr2E79FCuo)@ホラゲロワ】
【状態】健康
【外見】日野貞夫
【装備】無し
【持物】体内に鏡石
【思考】
1:死ぬのは嫌だから基本的には逃げ腰。
2:しかし名を上げるチャンスだと思ったら多少無茶をする。

※鏡石による復活は二時間程度はかかる。
※何かの拍子に幻視、霊視、霊との会話、死体や霊から残留思念を読み取ることができるようになります。
※幻視について:目をつぶって集中することで20m程度の範囲にいる相手の視界から物を見ることができるようになります。


「でも…どうせならやっぱイケメンな真冬さんになりたかったなあ…」


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日野様がまだ生きておられる 064:Oye Como Va

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最終更新:2013年04月26日 19:34