ぼく――零崎傾識という書き手を語る場合が仮にもあった場合。
そのプロフィールに勿論のこと「主人公」なんて三文字や「主役」という二文字は当てはまらない。
それは我らがトップ書き手、零崎崩識さんにお任せしとけばいい。
仮定も何も、この世界は書き手ロワであり、メタ的に言えば一つの《物語》なのだけど、ぼくは精々言ったところでサブヒロインCを頂けただけでも僥倖と言えるだろう。
いやまあ僥倖とは言い切れないのだけど。
ヒロインと称したように、ぼくの今の姿は一見八九寺真宵のそれだ。
しかし零崎一賊の命名法則からすれば僕は男の子ということになる。
果たして僕は男なのか女なのか。
肉体が女性で精神が男性だとすれば、それは零崎ではなく匂宮出夢じゃないか。
全くもって戯言だ。
ともかく。
ぼくには「主人公」なんて荷が重すぎることなどできないし、肩も重い。
いーちゃんに主人公を目指させたのはぼくだが、その話でも述べたはずだ。
イメージはできる。
具現化はできない。
というか、そもそも、この身体で主人公というのは中々にぱっとしないのではないだろうか。
繰り返し何度も言うが、今のぼくは八九寺真宵だ。
迷子で蝸牛な怪異だ。新西尾仕様だから実質生身の人間と代わりはないけれど。
そんなぼくが主人公になると言っても、外見的にも、内面的にも、みんなピンと来ないのではないだろうか。
だから、まあ、なんだ。
ぼくに「主人公」になる気なんてさらさらなかった。
なかったのだが。
「君、アイドルににゃらないか!?」
かといって、「アイドル」になる気があるかと聞かれたら、話はまた別だ。
ていうか、なんで「アイドル」なんだ。殺し合いはどこに行った。
「はぁ。とりあえずどうしてぼくをスカウトしてるんですか?」
「ティンときたからにゃ!」
「勘かよ。てか、誰だよ、あんた」
唐突に、簡潔に。
前振りも前置きも無く、如何にも当然の様にぼくの手を掴んできたそいつに、面倒臭げに問いかける。
いきなり手を掴まれるなんて、セクハラもいいところだが、そいつはどう見ても女だった。
いや、ぼくの中身が男なら、これはこれでセクハラになるのだろうか。
どうでもいいことを考えてると、そいつは、何かに気付いたようにはっとなり、器用に右手でぼくの左手を掴んだまま、左手でポケットを探る。
そのまま手慣れた動作で差し出されたのは名刺だった。
「おっと、申し遅れたにゃ! ベリーはこういうものにゃ!」
そこには『モバマスロワ所属 ストロベリーエンジェルP(◆44Kea75srM)』と書かれていた。
ベリーというのは自分で付けた愛称なのだろう。
……正直言うと少しほっとした。
多分彼女の身体の元ネタの語尾なのだろうが、新西尾書き手的に、その口調は心臓に悪い。
こうもがっちり触れられた状態でエナジードレインでもされてたら、死は免れ得なかった。
まあ案外自縛霊になるだけで、正しく迷い牛になってただけかもしれないけどね。
ともあれモバマスロワといえば、今時めずらしい純一般人ロワと名高いところだ。
何やらロリコンには優しくないところらしくて実に心苦しいが、ひとまずそれは置いておこう。
……あれ、置いといていいのか?
しつこいくらいに言うが、今のぼくは八九寺で、どこからどう見てもロリだし。
死亡フラグもいいところだぜ。
やばい、逃げよう。
「肉体的には小学5年生なので辞退させてもらいます」
「大丈夫にゃ! モバマスの最年少アイドルは9歳にゃ!」
「八九寺P的にはぼくはむしろプロデューサーなので辞退させてもらいます」
「大丈夫にゃ! モバマスにはプロデューサーアイドルという子もいるにゃ!」
「名前的にぼくは実は男の子かもしれないので辞退させてもらいます」
「大丈夫にゃ! アイマスDSなら男の娘もプロデュースできるにゃ!」
すごいな、アイマス!
それでいいのかよ!?
9歳の肋に頬ずりしてえええええ!
「それにそもそも、えーっと」
「ぼくは、《◆xzYb/YHTdI》、《◆xR8DbSLW.w》、《空上戯論<トーキングオーバーヘッド>》、《『不撓怒涛』》、
《零崎傾識》……とか呼ばれているけれど別に呼び方は何でも構わないよ」
「じゃあベリーは傾識って呼ばせてもらうにゃ! 傾識、勘違いしてるかもだけど、モバマスロワにおける『アイドル』は、いわば対主催のことにゃ!」
アイドルが対主催?
いまいちピンとこないけど、なんだか興味が湧いたのでもう少し彼女の聞いてみることにする。
「そうにゃ、モバマスロワでは、『アイドル』と『ヒロイン』と『ただの人』が主なスタンスにゃん!
人々を笑顔にしようとするアイドル、人質に取られている恋するプロデューサーを救おうとゲームに乗るヒロイン、
殺し合いに翻弄されアイドルとしても輝けず、ヒロインとしての覚悟も抱けない、ただの人間。
こんなかんじにゃん! もちろん、友達のために人を殺すことを選んだ子とかもいて、単純に3つに分けれるわけじゃにゃいのだけど」
なるほど、そういうことか。
確かに、全員が一般人なモバマスロワじゃ、対主催とか、マーダーだとか、一般人みたいな、普通のロワでのスタンス分けよりも、そっちのほうが似合いそうだ。
にしても、「アイドル」、「アイドル」か。
さっきぼくは、この姿で「主人公」は似合わないと言ったし、かといって「ヒロイン」はおこがましいが、「アイドル」ならありかもしれない。
八九寺真宵はメタな話だとCDデビュー済みだし。
それに、モバマスロワが描こうとしている「アイドル」というのも気になる。
新西尾ロワでの主催者たちの目的は、《完全なる人間の創造》だ。
安心院なじみ風に言うのであれば、《主人公の育成》。
だとすれば、モバマスロワはどうだろうか?
「アイドル」同士を殺しあわせているモバマスロワの主催者たちの目的は?
案外、《完全なるアイドルの創造》なのでは?
そんなことを考えていたその時。
瞬間の出来事だった。
轟音が鳴り響き、ぼくの視界が白と紫でうめつくされていく。
何が、とは聞くまでもなかった。
見れば分かる。
それでも信じられない気持ちだった。
空から壁と見紛うような馬鹿でかい剣が降ってきて、しかもその上から声がした。
「ちょおおおおおっっと待ったあああああああ! アイドル? 今、アイドルって言ったわね!?
アイドルデビューって言ったわよね!? そういうことならこの私をデビューさせなさああああっい!」
外見的特徴、内面的特徴ともかくとして、物語は変わらずぼくの登場話。
ここにきてまさかの新キャラ登場である。
「ふっふっふ、来た来た来たあああ! RPGロワデビューして約二年!
遂に私も書き手ロワデビュー! 待ってってね、別ロワの書き手&読み手たち!
お姉さんがばっちりあなたたちのハートと自信をブレイクしてあげるわ!」
「みゃ、みゃーっ!? 誰にゃ、残念枠も腹パン枠も幸子だけで十分にゃ!」
まあそうだよな。
なんていうか主人公にはキャラの濃さは付き物だし、同時に主人公と同行する人たち。
いわばパーティメンバーもキャラが濃くなきゃ面白くないのは分かるけど。
今のぼくはアイドル候補生?なのだから、もっと普通で不通な子でいいんだけど。
「誰!? 聞いた、ねえ、今聞いた!? 教えて欲しいのね、私の名前を教えて欲しいのね!
私は……私は……そう……」
女の人は嬉々として、両の腕をゆっくりと持ち上げ、胸の辺りにまで導く。
間違いない、あれは、誰、誰と不思議がる奇異と驚愕の視線をもっともっとと楽しんでいる顔だ。
「私はッ!!」
ぐい、と握り拳から人差し指と中指を立ち上げて、前を向き、笑顔を振りまく。
笑顔を作り、茶目っ気に舌を少し上に出してるんだろう、多分。
正直痛い。まじ痛い。
「超事象クライマックス繋ぎ系聖女書き手☆ダブリュクル・アーミティッジ・ホームワールドちゃんでぇ――――っすッッ!」
「なんかやめてください! 気持ち悪いです」
思わず八九寺口調で、言い切ったぼく。
戯言も程々にしてほしいよね、まったく。
でも略してダブリュンちゃんは、傷ついた顔一つせず、とうっ!っと剣から飛び降りるや否や、ぼく――を素通りしてジェリーちゃんに襲いかかった。
「みゃ、みゃー!?」
「あら、こんなところに乳があるわね! ぐっへっへ、けしからん、けしからん!
さあ、お姉さんにもみもみさせなさ~い! ほれほれほれほれ~!」
「あ、ちょ、だめ、だめにゃん! ベリーは外見はみくにゃん準拠だけど、おっぱいは雫ちゃんサイズにゃからあああ!
だめにゃん、おっぱいはいくらなんでも駄目にゃーーーー!!」
「すごいわ、これ、ぼよよんよ、ぼよよん! メイメイさんよりもおっっきいいいいいい!」
「にゃあああああああああああああああ!」
取り残されるぼく。
どうやらとても長くなった登場話はここでお開きみたいだ。
だけどまだ物語は進み、もっというなら加速していくだろう。
そんな中なし崩し的にスカウトされてしまったぼくはどこまで抗えるかぼくも分からない。
まぁ。それは。これからのお楽しみだ。
【1日目・深夜/C-2 街】
【零崎傾識(◆xR8DbSLW.w)@新西尾維新バトルロワイアル】
【状態】:健康
【外見】:八九寺真宵@化物語
【装備】:なし
【持ち物】:基本支給品、不明支給品1~3
【思考・状況】
基本:新西尾ロワ書き手として行動
1:でも、主人公は他に任せて、アイドルしてみるのもありか
※外見は八九寺ですが、性別は不明です
【ストロベリーエンジェルP(◆44Kea75srM)@モバマスロワイアル】
【状態】:健康
【外見】:及川雫サイズ@アイドルマスターシンデレラガールズに巨乳な前川みく@アイドルマスターシンデレラガールズ
【装備】:なし
【持ち物】:基本支給品、不明支給品1~3
【思考・状況】
基本:他の書き手をスカウトしまくるにゃ!
1:ぎにゃああああああ!
【ダブリュクル・アーミティッジ(◆wqJoVoH16Y)@RPGキャラバトルロワイアル】
【状態】:超事象クライマックス繋ぎ系聖女書き手☆
【外見】:アナスタシア・ルン・ヴァレリア
【装備】:聖剣ルシエド@RPGロワ
【持ち物】:基本支給品、不明支給品0~2
【思考・状況】
基本:あんなことやこんなことをしてむっふっふできゃー、きゃあ~☆
1:いいではないか、よいではないか~
2:超時空シンデレラに私はなああっる!
最終更新:2015年05月23日 01:28