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 ヴオォォォ……ヴオン! ヴオン! 
 甲高いエンジン音が夜の闇に響く。
 キュオオオオ
 タイヤが鳴き、車体が横滑りしていく。
「やっぱ峠はいいねぇ~」
「うぐっ……頼むから……ドリフトしないでくれ……」
「ふ~ん。あっ、そっ!」
「えっ!」
 俺、塩見晃司と拓弥は身曾岐神社へ車で向かう。
 拓弥は彼の親友と甲斐ので名の知れた走り屋たちと共に走り屋のチームを結成している。
 愛車のハチロクを駆り曲がりくねった夜の広域農道を疾走する。

 季節は初夏。緑が一層生い茂る初夏だ。
 そういえば夏は色々なことが起こった季節だった。
 俺があの旅館に佐藤と一緒に転がり込んだのも夏。
 そしてあれは夏の初めことだった…………。


 身曾岐神社での用事も終え、道の駅こぶちざわに車を停めた。
 今日は木曜日という事もあり、走り屋も含め車の姿はほとんどない。
「本当にお前の助手席は恐怖だよ。俺を殺す気か!」
「そうかぁ? そんなに怖いのけ?」
「そうだよ」
「ほら、缶コーヒー」
「どうも」
 やっとハチロクから降りれた俺に拓弥は缶コーヒーを渡した。
 コンビニの袋に缶コーヒーを大量に持っているが、その理由は彼の趣味の一つであるオマケ収集(主に自動車)のせいであった。
 おまけが出ると一度に大量に購入するため、在庫を抱えることがたまにあった。
 少しぬるい缶コーヒーの口に含む。苦い味が口内に広がる。
 と、そこへ一台のレガシィが道の駅に入ってきた。
「ん? ここに来る時に抜いた白いセダンじゃねぇけ?」
「本当だ」
 俺たちは缶コーヒーを飲みながら、そのレガシィから降りてきた運転手を見た。運転手は女性だった。
「ん? あれって中学のとき転校してきた川嶋美穂じゃないか!?」
 間違いない。あの目。あの輪郭。表情の暖かさ……。大人っぽくなってはいるが間違いなくあれは川嶋美穂だ。
「いや、あんたと俺は同級生じゃないから知らないよ……」
「確か川嶋美穂って両親が亡くなられて予定よりも数ヶ月遅れで転向してきたんだ」
「そうなのか」
「まぁな。……実は川嶋美穂が数ヶ月遅れで転向してきたのには別に理由があるんだ」
「なに言ってんだよ。……いや?」
 さすが拓弥だ。伊達に異界に関わってはいないようだ。
「じゃあ、両親の死は……」
「言い訳さ。川嶋美穂は両親と神隠しに遭った」
「そうか。そのパターンだな」
「ああ、マジだ 川嶋美穂が神隠しに遭っていたとき、異界で彼女を俺が色々と世話していたんだ」
「そうなのか……」
「あれは俺と佐藤が中学一年の初夏だった」
 拓弥は煙草をくわえ火を点けていた。
 しばらく話を聞くつもりなのだろう。


 そう中学一年の初夏だ……。
 あんな事忘れるわけねぇ……。

 

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最終更新:2013年02月20日 18:54