時に近くで響く雷鳴。
激しく打ち付ける雨音。
たまにはこんな雷雨も風情かもしれない。
……こんな状況でなければ。
「美雪ぃ……」
「…………奈積さん。はっきり言って良いですか?」
「ぅっ…………」
「邪魔です」
雷が鳴り始めてからというもの、奈積さんは私にしがみついている。感じるのは明らかな恐怖。
「まさかとは思いますけど、雷が苦手なんですか?」
「美雪なら異聞で判ってるくせに……」
「判らないから聞いているんです」
そう思いっ切り怖がられると、今の私の技術じゃあ恐怖以外読み取れないし。
「はははは。こんなこったろうと思ったわ」
突然、拓弥さんが笑いながら部屋に入って来た。
「ちゃんとノックしてください」
「ん? ノックしたと思うんだがな。雷にかぶったとか?」
「さっき落ちた雷とかなり間があったと思うんですけど。それより知ってるんですね。奈積さんのこれ」
「そうよ。そいつは雷が大の苦手でな、子供ん時に何があったか知らんがな。狐だから?」
「うるさい! そんなんじゃ……」
突然、大きな雷鳴が響く。
「うわっ、けっこう近くに雷が落ちたな……」
奈積さんは既に半ベソだ。それに比べて……。
「拓弥さんは平気なんですね。雷」
「まぁな。雨は好きじゃねぇけど、晴ればっかしじゃつまんねぇだろ。たまには雨も良いもんかなってさ」
「あっ、意見が合いましたね。私もそんな風に思ってたんです」
「今年の六月までは美雪ちゃんいなかっただろ。奈積は一人の部屋だったわけ。そして、俺の部屋はその隣。去年までは雷の度に部屋に押し入れられて、今の美雪ちゃんみたいにしがみつかれてたってな」
「今年は楽そうですね?」
「そう思うか?」
「はい……」
楽じゃないってこと?
ん? なんだあれ。
拓弥さんの腰に別人の腕が回ってる!?
「………………拓弥ぁ……」
この声って……。
「もしかして、晴美さん?」
「正解。まさか、こいつも雷が苦手なんて考えもしなかったがな。
こいつらがなんで雷をそこまで苦手か、よぉ解からんな」
「同感です」
確かに大きい音はびっくりするが、恐怖はしない。育ちの違いだろうか。
「からかい終わったら帰ってください」
「はいはい。冷たいねぇ」
普段素っ気無くて冷たいのはどっちだ?
「雷に驚いて小便漏らすなよ? ひっひっひっ……」
そう言って腰にしがみつく晴美さんを気にする風もなく引きずって拓弥さんは帰った。
あの状態で普通に行動する拓弥さんって……。なんか慣れって怖い。
引きずられて抵抗しない晴美さんも晴美さんだ。
が……。何よ、今の発言。
再び、大きな雷鳴が響く。
「すご……。んぎゃっ?」
奈積さんが力を込めて抱きしめてきた。まったく……。
「みっ、美雪ぃ……」
声も、なんかもう涙声だ。
…………。
…………なんで顔を赤くしているの?
「まさか! 奈積さん!?」
微か聞こえる水音は、本人に確認することなく拓弥さんの忠告(?)は手遅れ確定となったことを教えていた。
……奈積さん、あんた何歳よ?
わっ、私の服まで濡れてきたし。いくななんでも密着しすぎだって。もう、ぶん殴ってやろうか?
……その後の処理に少なくない時間を費やす必要があったのだった………………。
・次へ