「結局、明日も掃除係なんて……」
「美雪がいけないんじゃないの?」
「というか拭き掃除は解るんですけど、桶に水入れて運ぶとか完全にフ……」
「雰囲気重視に決まってるだろ」
「そうですか」
『次は、拭き掃除ね……!』と愛さんに凄まれながら言い渡され私たちは水の入った桶を抱えながら奈積さんと一緒に廊下を歩く。
「奈積さん、私だけのせいにしないでください。……っと。」
向こうから鈿女さんが歩いてくる。私と奈積さんは軽く会釈する。
その時、ふとした拍子にバランスを崩して、慌てて立て直そうとする。が、自分の足につまづきそうになり、それを立て直そうとして……。
「……………っ!?」
「おい、バカっ! みゆっ……」
…………現実感のない浮遊感。
「はっ…………!」
気がつけば、私はすっ転んでいて、……うっ、うずめさんに……おっ、桶の中の水がっ…………。
今、この瞬間。この場所の時間が停止したように感じた。
その場にいた三人が誰も突然のことで動けなくなっていた。
風に揺れる草木が、決して時間が停止してはいないと語っている。
「すっ、すいませんでした!」
三人の中で一番に我に返り、とっさに頭を下げる私。
とにかく謝らないといけない。そう思った。相手がどのように思っているかなんて関係ない。
「申し訳ありません。お客様」
奈積さんも続けて頭を下げる。
「すぐに代えの浴衣を……」
「私は怒ってないから、そんなに頭を下げなくてもいいわよ。……でも着替えは早めにもらえると、嬉しいかな」
確かに苦笑を浮かべている鈿女さんだが、怒っている感じはしない。
「美雪、すぐにお持ちして。ここは私が片付けるから」
「……あっ、はい!」
私は急いで浴衣とタオルを取りに行き、戻ってくると奈積さんが雑巾で水を拭き取ってくれていた。鈿女さんはいない。
「お客様はお風呂に行ってもらってる。浴衣、早く届けてきて」
言われるがままにお風呂場に向かう。鈿女さんはお風呂場に向かう途中だったのか。
お風呂場の扉を開けると……。鈿女さんがちょうど浴衣を脱いだところだった。
……ある意味でのタイミングの良さ。女性同士なのに赤面してしまう。
従業員として特に考えず扉を開けてしまったしなぁ。まさか、脱いでるとは……。
って、少し遅かったら色々と厄介なことになってたんじゃ……。
それにしても、鈿女さんって私より少し背が高いくらいなのに、意外と胸がある…………。それに比べて私の胸は………………。
って、じゃなくてじゃなくて。何を考えてるんだ? 私はっ!
「かっ、替えの浴衣をお持ちしました」
「ありがとうね」
「本当にすいませんでした」
「だから、いいわよ。私は平気だから」
そう言われてしまうと何も言えなくなる。私は掃除に戻るしかなかった。
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